福島第一原発刑事裁判の初公判


佐藤和良

東京電力福島第一原発事故の刑事裁判の初公判が決まりましたので、ご案内します。

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初公判が決まった!
今こそ支援団に結集し、福島原発事故の原因と刑事責任を明らかにしよう!

ようやく、東京電力福島第一原発事故の刑事裁判の初公判が決まりました。

東京地裁刑事4部(永淵健一裁判長)は、5月24日、第1回公判期日を6月30日10時、東京地裁104号法廷と指定しました。

思えば、あの2011年3月11日の福島第一原発事故から6年、福島原発告訴団14,716人の集団告訴から5年、昨年2月の検察官役の指定弁護士による勝俣恒久元東京電力会長ら3名の強制起訴から1年が過ぎました。

福島原発刑事訴訟支援団は、昨年1月の結成以来、「一日も早く裁判を!」と東京地裁刑事4部に、公正かつ早期の公判開始を申し入れ、東京地裁前の要請行動を続けてきました。厳しい現実にあきらめず、みんなで、ここまできたのです。

翻って、未だ政府の原子力緊急事態宣言は解除されず、なおも10万余の人々がふるさとを追われ、長期の低線量被曝の受忍の強制の中で、生存権を脅かす福島第一原発事故の深刻かつ甚大な被害に苦しんでいます。

福島第一原発事故の原因究明と東京電力旧経営陣の刑事責任を明らかにして、真の被害者救済の道を開くために、私たちは東京地裁が公正な訴訟指揮と公正な裁判を行うよう、あらためて求めます。

6月6日の第四回目の公判前整理手続きにあわせ、東京地裁への要請行動を行います。そして、6月30日の初公判には、万余の人々で東京地裁を埋めましょう。みなさまのご参集を呼びかけます。一緒に声をあげ続けましょう。

2017年5月24日 福島原発刑事訴訟支援団
団長 佐藤和良
https://shien-dan.org/

https://shien-dan.org/20170630/

共同声明 40年超え老朽炉を廃炉に!


2016年6月20日

共同声明 40年超え老朽炉を廃炉に!
高浜原発1・2号機の運転期間延長認可に抗議

本日(6月20日)、原子力規制委員会は、関西電力高浜原発1・2号機について、40年超えの運転期間延長認可を下しました。福島原発事故後、運転期間を原則40年に制限する制度が導入されたあと、延長の認可がだされた初めてのケースになります。私たちはこれに強く抗議します。

老朽炉の寿命延長に対し、これを危惧する声が広がっています。しかし、審査の公開資料は白抜きだらけで、第三者による検証はできず、初の寿命延長審査にもかかわらずパブリックコメントも実施せず、住民や市民、自治体等の意見を聞こうともしませんでした。6月13日、私たちは、熊本地震によって懸念された「繰り返しの揺れ」問題などの評価について、国会議員の仲介により、会合を申し込みましたが、原子力規制庁は「多忙」を理由に異例の拒否。6月15日には要請書の受け取りすら拒否しました。老朽炉の危険性を具体的に批判され、それが公になることを恐れたからでしょう。このように、議論を避け、密室審査を続ける姿勢に怒りを禁じ得ません。被害をこうむる住民の意見を無視するなど到底許されることではありません。

福島原発事故を受けて、原発の運転期間は「原則40年」と決めたはずです。原子力規制委・規制庁はこともあろうに、老朽化した原発の実態も把握せず、認可ありきで審査を急ぎ、審査ガイドを破ってまで、期限内の認可を強行しました。福島原発事故の教訓を葬り去り、事故を再び繰り返すことは断じて許されません。

地震の活動期に入り、巨大地震がいつどこで起きてもおかしくない状況で、設計が古く、設備の劣化が進み、点検も不十分な状況で認可するなど、危険極まりない行為です。
高浜1・2号の耐震性が不十分なことは、熊本地震に照らしても明らかです。熊本地震のようなくり返しの揺れを考慮した耐震評価は実施されていません。

元原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦氏は、熊本地震のデータから、「入倉・三宅式」を用いて基準地震動を策定すると過小評価となり、日本の地震データを基にした「武村式」と比べて4分の1の過小評価となるため、「入倉・三宅式」は使うべきではないと警告を発しています。これはまさに高浜1・2号に当てはまる問題です。同時に、各地の裁判や運動の中で、市民が主張してきたことでもあります。規制委・規制庁は16日に島崎氏から意見聴取を行いました。しかし、その警告を無視するかのように高浜1・2号の運転延長を認可しました。

老朽化した高浜1・2号の特有の危険性が具体的に明らかになっています。電気ケーブルの劣化により事故時に絶縁性が急低下し、制御ができなくなる恐れがあります。しかし、規制委・規制庁は具体的な判断基準も持たずに、関電のいいなりです。

高浜原発1号機は、全国の原発でもっとも原子炉圧力容器の中性子による脆性破壊が発生し易い原発です。廃炉が決まっている玄海原発1号より脆性遷移温度は高く、事故時にECCSの水を注入すれば、圧力容器が壊れる危険があります。やはり中性子の照射により炉心の金属板を留めるボルトにひび割れが生じている恐れがありますが、まともに検査すら行われていません。

さらに、熊本地震が示したように、「屋内退避」を中心とした規制委の指針では、住民の安全を守ることはできません。

40年超えの危険な運転延長は認められません。高浜原発1・2号機は、認可を取り消し、直ちに廃炉にすべきです。

<16団体> 福井から原発を止める裁判の会/高浜原発40年廃炉・名古屋行政訴訟を支える市民の会/避難計画を案ずる関西連絡会/脱原発はりまアクション/おおい原発止めよう裁判の会/3.11ゆいねっと京田辺/原発なしで暮らしたい丹波の会/脱原発わかやま/グリーン・アクション/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜/川内原発30キロ圏住民ネットワーク/玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/国際環境NGO FoE Japan/福島老朽原発を考える会/原子力規制を監視する市民の会

<連絡先> 原子力規制を監視する市民の会TEL:03-5225-7213 090-6142-1807(満田)
住所:東京都新宿区下宮比町3-12明成ビル302

【緊急声明】 G7首脳たちは、福島原発事故のもたらした人々の苦しみにこそ目を向けるべき


満田夏花

G7伊勢志摩サミットの宣言文が発表されました。
いろいろひどいとは思いますが、とりわけ原発部分については目を疑う内容です。
「我々は,福島第一原子力発電所における廃炉及び汚染水対策の着実な進展,並びに福島の状況に関する国際社会の正確な理解の形成に向けて,国際社会と緊密なコミュニケーションの下でオープンかつ透明性をもって日本の取組が進められていることを歓迎する。原子力の利用を選択する国にあっては,原子力は,将来の温室効果ガス排出削減に大いに貢献し,ベースロード電源として機能する。」などとしています。

FoE Japanでは、以下の緊急声明を発表しました。
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【緊急声明】 G7首脳たちは、福島原発事故のもたらした
人々の苦しみにこそ目を向けるべき

http://www.foejapan.org/energy/world/160527.html

本日、「G7伊勢志摩首脳宣言」が発表されました。
この中で、福島原発事故に関して、「廃炉及び汚染水対策の着実な進展」「オープンかつ透明性をもって日本の取り組みが進められている」とし、「原子力は,将来の温室効果ガス排出削減に大いに貢献し,ベースロード電源として機能する」としています。
しかし、宣言文では、福島原発事故がもたらしたとりかえしのつかない惨禍、永遠に失われてしまった美しい故郷やそこで暮らす人々の営みやつながり、そして、今もその被害が続いていることにはいっさいふれていません。
事故はまだ終わっていません。多くの方々が過酷な収束作業にあたっていますが、大量の汚染水はもれ続けており、タンクの数が追いつかず逼迫した状況にあります。対策として登場した「凍土壁」は、経産省の密室の会議の中で、きわめて不透明なプロセスで選定された上、未だにその効果を発揮していません。本来であれば、規制をすべき立場の原子力規制委員会が、汚染水の放出をせかしている状況です。
福島県からだけでもいまだに10万人近くの人々が故郷から離れ、避難生活を送っています。その多くが、「帰還しない」「帰還か移住か決められない」としています。それなのに、政府は、遅くとも来年の3月までには、帰還困難区域を除く避難区域を解除し、自主的避難者の住宅支援を打ち切る予定です。すなわち、統計上からも「避難者」をどんどん減らし、被害を小さくみせ、形だけの復興を演出しているのです。福島県県民健康調査で甲状腺がんまたは疑いと診断された子どもたちは、現在、166人にのぼっています。
世界の首脳たちが目を向けるべきは、このような現実、いまも続く人々の苦しみです。福島原発事故の被害の大きさをふまえ、核なき世界に向け、再生可能エネルギーの促進や省エネ型の社会、大量エネルギー消費社会からの脱却をこそめざすべきでしょう。

大津地裁高浜3、4号機運転禁止仮処分決定に関する声明


脱原発弁護団全国連絡会

2016年3月10日

大津地裁高浜3、4号機運転禁止仮処分決定に関する声明

2016年3月9日、大津地裁(山本善彦裁判長、小川紀代子裁判官、平瀬弘子裁判官)は、関西電力高浜原発3、4号機の運転を禁止する仮処分決定を行い、10日にも3号炉は運転を停止するとされる。トラブルで停止中の4号炉と併せ、同原発は運転を停止することとなる。
現に運転中の原発に対して運転を禁止する仮処分決定が出され、現実に運転を停止させるのは今回の決定がはじめてである。まさに、司法が市民から付託された力を用いて、原発事故による災害から住民の命と健康を守ったのである。

この決定は、まず判断基準の枠組みとして次のように判示する。
「債務者において,依拠した根拠,資料等を明らかにすべきであり,その主張及び疎明が尽くされない場合には,電力会社の判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。
しかも,本件は,福島第一原子力発電所事故を踏まえ,原子力規制行政に大幅な改変が加えられた後の(前提事実(7)) 事案であるから,債務者は,福島第一原子力発電所事故を踏まえ,原子力規制行政がどのように変化し,その結果,本件各原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され,債務者がこの要請にどのように応えたかについて,主張及び疎明を尽くすべきである。」(決定文43頁)
「当裁判所は,当裁判所において原子力規制委員会での議論を再現することを求めるものではないし,原子力規制委員会に代わって判断すべきであると考えるものでもないが,新規制基準の制定過程における重要な議論や,議論を踏まえた改善点,本件各原発の審査において問題となった点,その考慮結果等について,債務者が道筋や考え方を主張し,重要な事実に関する資料についてその基礎データを提供することは,必要であると考える。そして,これらの作業は,債務者が既に原子力規制委員会において実施したものと考えられるから,その提供が困難であるとはいえないこと,本件が仮処分であることから,これらの主張や疎明資料の提供は,速やかになされなければならず,かつ,およそ1年の審理期間を費やすことで,基本的には提供することが可能なものであると判断する。」(決定文43頁)との基本的な枠組みを提示している。我々が求めてきた判断の枠組みを福島原発事故の重い現実を踏まえて肯定したものであり、正当な判断枠組みである。

そして、原発の安全性をめぐる過酷事故対策(争点2)、耐震性能(争点3)、津波に対する安全性能(争点4)、テロ対策(争点5)、避難計画(争点6)の5つの争点のうち、テロ対策を除く4つの争点に関して、安全性は疎明されていないとして、裁判所は運転の差し止めを認めた。

まず、過酷事故対策に関しては、「福島第一原子力発電所事故の原因究明は,建屋内での調査が進んでおらず,今なお道半ばの状況であり,本件の主張及び疎明の状況に照らせば,津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。その災禍の甚大さに真撃に向き合い二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講ずるには,原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。この点についての債務者の主張及び疎明は未だ不十分な状態にあるにもかかわらず,この点に意を払わないのであれば,そしてこのような姿勢が,債務者ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとするならば,そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるものといわざるを得ない。」(決定文44頁)とした。 福島原発事故の事故原因が完全に明らかになっていないとの認識を示したものである。
つづいて、
「福島第一原子力発電所事故の経過(前提事実(6)イ)からすれば,同発電所における安全確保対策が不十分であったことは明らかである。そのうち,どれが最も大きな原因であったかについて,仮に,津波対策であったとしても,東京電力がその安全確保対策の必要性を認識してさえいれば,同発電所において津波対策の改善を図ることが不可能あるいは極度に困難であったとは考えられず,防潮堤の建設,非常用ディーゼル発電機の設置場所の改善,補助給水装置の機能確保等,可能な対策を講じることができたはずである。しかし,実際には,そのような対策は講じられなかった。このことは,少なくとも東京電力や,その規制機関であった原子力安全・保安院において,そのような対策が実際に必要であるとの認識を持つことができなかったことを意味している。現時点において,対策を講じる必要性を認識できないという上記同様の事態が,上記の津波対策に限られており他の要素の対策は全て検討し尽くされたのかは不明であり,それら検討すべき要素についてはいずれも審査基準に反映されており,かつ基準内容についても不明確な点がないことについて債務者において主張及び疎明がなされるべきである。」(決定文44頁)とし、非常用電源と使用済み燃料ピットの冷却設備について、安全性の疎明が不十分であるとした。

住民側が、もっとも力を入れて主張してきた耐震性能の確保については、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動を検討する方法自体は,従前の規制から引き続いて採用されている方法であるが,これを主たる考慮要素とするのであれば,現在の科学的知見の到達点として,ある地点(敷地)に影響を及ぼす地震を発生させる可能性がある断層の存在が相当程度確実に知られていることが前提となる。そして,債務者は,債務者の調査の中から,本件各原発付近の既知の活断層の15個のうち, FO-A ~FO-B~熊川断層及び上林川断層を最も危険なものとして取り上げ,かつこれらの断層については,その評価において,原子力規制委員会における審査の過程を踏まえ,連動の可能性を高めに,又は断層の長さを長めに設定したとする。しかしながら,債務者の調査が海底を含む周辺領域全てにおいて徹底的に行われたわけではなく( 地質内部の調査を外部から徹底的に行ったと評価することは難しい。),それが現段階の科学技術力では最大限の調査であったとすれば,その調査の結果によっても,断層が連動して動く可能性を否定できず,あるいは末端を確定的に定められなかったのであるから,このような評価(連動想定,長め想定)をしたからといって,安全余裕をとったといえるものではない。また,海域にあるFO-B断層の西端が,債務者主張の地点で終了していることについては, (原子力規制委員会に対してはともかくとしても)当裁判所に十分な資料は提供されていない。債務者は,当裁判所の審理の終了直前である平成28年1月になって,疎明資料(乙132~136等)を提供するものの,この資料によっても,上記の事情(西端の終了地点)は不明であるといわざるを得ない。」(決定文48頁~49頁)
「(3) 次に,債務者は,このように選定された断層の長さに基づいて,その地震力を想定するものとして,応答スペクトルの策定の前提として,松田式を選択している。松田式が地震規模の想定に有益であることは当裁判所も否定するものではないが,松田式の基となったのはわずか14地震であるから,このサンプル量の少なさからすると,科学的に異論のない公式と考えることはできず,不確定要素を多分に有するものの現段階においては一つの拠り所とし得る資料とみるべきものである。したがって,新規制基準が松田式を基に置きながらより安全側に検討するものであるとしても,それだけでは不合理な点がないとはいえないのであり,相当な根拠,資料に基づき主張及び疎明をすべきところ,松田式が想定される地震力のおおむね最大を与えるものであると認めるに十分な資料はない。また,債務者は,応答スペクトルの策定過程において耐専式を用い,近年の内陸地殻内地震に関して,耐専スペクトルと実際の観測記録の乖離は,それぞれの地震の特性によるものであると主張するが,そのような乖離が存在するのであれば,耐専式の与える応答スベクトルが予測される応答スベクトルの最大値に近いものであることを裏付けることができているのか,疑問が残るところである。」(決定文49頁~50頁)と判示している。
また、「債務者のいう,地震という一つの物理現象についての「最も確からしい姿」(乙16 ・53頁)とは,起こり得る地震のどの程度の状況を含むものであるのかを明らかにしていないし,起こり得る地震の標準的・平均的な姿よりも大きくなるような地域性が存する可能性を示すデータは特段得られていないとの主張に至っては,断層モデルにおいて前提とするパラメータが,本件各原発の敷地付近と全く同じであることを意味するとは考えられず,採用することはできない。ここで債務者のいう「最も確からしい姿」や「平均的な姿」という言葉の趣旨や,債務者の主張する地域性の内容について,その平均性を裏付けるに足りる資料は,見当たらない。」(決定文50頁~51頁)とした。
この部分の判示は、現在全国の原発訴訟において、中心的な論点として真剣に議論されている論点に関し、住民側が主張してきた事実と論理を認めたものであり、その影響は全国に波及するものと評価できる。

続いて、津波に関する安全性の確保に関しては、「西暦1586年の天正地震に関する事項の記載された古文書に若狭に大津波が押し寄せ多くの人が死亡した旨の記載があるように,この地震の震源が海底であったか否かである点であるが,確かに,これが確実に海底であったとまで考えるべき資料はない。しかしながら,海岸から500mほど内陸で津波堆積物を確認したとの報告もみられ,債務者が行った津波堆積物調査や,ボーリング調査の結果によって,大規模な津波が発生したとは考えられないとまでいってよいか,疑問なしとしない。」(決定文52頁~42頁)として、安全性は疎明されていないとした。

さらに、避難計画について次のように重要な判示を示した。
「本件各原発の近隣地方公共団体においては,地域防災計画を策定し,過酷事故が生じた場合の避難経路を定めたり,広域避難のあり方を検討しているところである。これらは,債務者の義務として直接に関われるべき義務ではないものの,福島第一原子力発電所事故を経験した我が国民は,事故発生時に影響の及ぶ範囲の圧倒的な広さとその避難に大きな混乱が生じたことを知悉している。安全確保対策としてその不安に応えるためにも,地方公共団体個々によるよりは,国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり,この避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれるばかりか,それ以上に,過酷事故を経た現時点においては,そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているといってもよいのではないだろうか。このような状況を踏まえるならば,債務者には,万一の事故発生時の責任は誰が負うのかを明瞭にするとともに,新規制基準を満たせば十分とするだけでなく,その外延を構成する避難計画を含んだ安全確保対策にも意を払う必要があり,その点に不合理な点がないかを相当な根拠資料に基づき主張及び疎明する必要があるものと思料する。しかるに,保全の段階においては,同主張及び疎明は尽くされていない。」(52~53頁)としている。
避難計画の問題が、規制委員会の判断の対象外とされていることを前提として、国家主導の具体的で可視的な避難計画の策定が必要であり、過酷事故を経た現時点では信義則上の義務が国にはあるとの立場を示したものである。諸外国では当然とされている考え方ではあるが、このような考え方が日本では採用されていないことの不合理を明確に指摘したものであり、画期的な判断である。

大津地裁決定は、市民の意識の変化に対応して、司法も大きく変化してきていることを明確に示した。福島原発事故のような深刻な災害を二度と繰り返してはならない、そのため安全性が確実に疎明されていない原発の再稼働は認められないということを、公平、冷静に、かつ明確に宣言したものといえる。
政府は、原発をベースロード電源に位置づけるようなエネルギー基本計画こそが非現実的なものであり、これを転換させることこそ現実的であることを認識しなければならない。また、政府と原子力規制委員会は、この決定の指摘を重く受け止め、新規制基準を根本から見直し、また避難計画の問題を規制に明確に取り込むべきである。
脱原発弁護団全国連絡会は、この決定を心から歓迎し、このような決定を下した裁判所に深い敬意を表するとともに、この決定を導いた原告団、弁護団の努力に深く感謝する。
そして、全国の市民の脱原発を願う運動と深く連動して、全国の原発を司法の力で止めていくための闘いを全力で展開していくことを宣言する。

以上

脱原発弁護団全国連絡会
共同代表 河合 弘之
同  海渡 雄一

ひだんれん記者会見


川崎哲

先の3月1日の外国特派員協会での長谷川・武藤ひだんれん共同代表らによる記
者会見に基づき、福島の現状と被害者の取り組みについて、約4分間の英語字幕
つきビデオ「Five Yeas On – Voices of Fukushima」を作成しました

海外の方むけの素材としてご活用また拡散いただければ幸いです。

 

https://vimeo.com/158130748

福島原発事故にかかる強制起訴議決にもとづく公訴提起の意義と今後の展望


海渡雄一

第1 公訴提起される

本日、東京第五検察審査会が平成27年7月17日に検察審査会法第41条の6第1項の議決をした事件につき,本日,検察官の職務を行う指定弁護士は,下記被疑者勝俣恒久、武藤栄、武黒一郎を業務上過失致死傷罪(平成25年法律第86号による改正前の刑法211条1項前段)で東京地方裁判所に公判請求した。
我々は、検察官の職務を行う指定弁護士から、本日お昼頃、直接公訴提起の事実を告知され、また、公訴事実の要旨の交付を受けた。

第2 公訴事実の要旨

公訴事実の要旨は次のとおりである。
「被告人3名は,東京都千代田区に本店を置く東京電力株式会社の役員として,同社が,福島県双葉郡大熊町に設置した発電用原子力設備である福島第一原子力発電所の運転,安全保全業務等に従事していた者であるが、いずれも各役職に就いている間,同発電所の原子炉施設及びその付属設備等が,想定される自然現象により,原子炉の安全性を損なうおそれがある場合には,防護措置等の適切な措置を講じるべき業務上の注意義務があったところ,同発電所に小名浜港工事基準面から10メートルの高さの敷地を超える津波が襲来し,その津波が開発電所の非常用電源設備等があるタービン建屋等へ浸入することなどにより,同発電所の電源が失われ,非常用電源設備や冷却設備等の機能が喪失し,原子炉の炉心に損傷を与え,ガス爆発等の事故が発生する可能性があることを予見できたのであるから,同発電所に10メートル盤を超える津波の襲来によってタービン建屋等が浸水し,炉心損傷等によるガス爆発等の事故が発生することがないよう,防護措置等その他適切な措置を講じることにより,これを未然に防止すべき業務上の注意義務があったのにこれを怠り,防護措置等その他適切な措置を講じることなく,同発電所の運転を停止しないまま,漫然と運転を継続した過失により,平成23年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震に起因して襲来した津波が,同発電所の10メートル盤上に設置されたタービン建屋等へ浸入したことなどにより,同発電所の全交流電源等が喪失し,非常用電源設備や冷却設備等の機能を喪失させ,これによる原子炉の炉心損傷等により

1 同年3月12日午後3時36分ころ,開発電所1号機原子炉建屋において,水素ガス爆発等を惹起させ,同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果, 3名に,これにより飛び散ったがれきに接触させるなどし,よって,そのころ,それぞれ同所付近において,傷害を負わせ,

2 同年3月14日午前11時1分ころ,同発電所3号機原子炉建屋において,水素ガス爆発等を惹起させ,同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果,1 0名に,これにより飛び散ったがれきに接触させるなどし,よって,そのころ,それぞれ同所付近において,傷害を負わせ,

3  4 3名を,上記水素ガス爆発等により,長時間の搬送・待機等を伴う避難を余儀なくさせた結果,死亡させ,

4 上記水素ガス爆発等により,病院の医師らが避難を余儀なくさせられた結果,同病院で入院加療中の者1名に対する治療・看護を不能とさせこれにより同人を死亡させたものである。」

第3 公訴事実の構成の特徴

予見可能性の対象を小名浜港工事基準面から10メートルの高さの敷地を超える津波が襲来するかどうかの点においている。この論理からすれば、貞観の津波に関する予測津波高さは誤差を含めると軽く10メートルを超えており、貞観の津波の想定の報告は受けていたが、東電設計の15.7メートルのシミュレーションを知らされていなかった保安院関係者も起訴できることとなる。
また、結果回避措置については、「防護措置等その他適切な措置を講じることなく,同発電所の運転を停止しないまま,漫然と運転を継続した」と構成されており、対策を講じないで運転を継続したこと自体を過失と捉えている点は、告訴団が主張していたことを正面から認めたものであり、高く評価することができる。

第4 公訴提起の意義

1. 世紀の裁判で裁かれるのは東電・保安院そして原子力ムラに取り込まれた検察庁である。

今回の起訴の画期的な意義は、市民の正義が原子力ムラの情報隠蔽を打ち破ったことにある。
福島原発事故に関してはたくさんの事柄が隠されてきた。この議決の根拠となった東電と国による津波対策の方針転換に関する情報の多くは2011年夏には検察庁と政府事故調の手にあったはずである。この隠蔽を打ち破ったのが、今回の検察審査会の強制起訴の議決である。市民の正義が政府と検察による東電の刑事責任の隠蔽を打ち破ったのである。
告訴団の事故の真実を明らかにし、責任を問う真摯な態度が検審の委員の心を揺り動かしたのである。東電を中心とする原子力ムラや検察からの圧力のもとで二度にわたって、検審の委員11人のうちの8人の起訴議決への賛同を得ることができた。原発事故で人生を根本から変えられた福島の人々の切実な思いが東京の市民にも伝わったのである。今回の強制起訴は、明らかにされた事実関係からすれば当然のことではあるが、情報の隠ぺいの闇から真実を救い出したという意味で、奇跡のように貴重なものだ。

2. 政府事故調と検察が真実を隠ぺいしたことはもうひとつの事件である

これらの情報は徹底的に隠された。それはなぜだったのか。考えられる推測はただひとつである。原子力推進の国策を傷つけるような事実は、隠ぺいするしかないと、2011年夏の段階で、政府事故調と検察のトップは決断したのだろう。このことは、福島原発事故そのものに匹敵するほどの、行政と司法と検察をゆるがせる「もう一つ」の福島原発事故真相隠ぺい事件と呼ぶべき事件である。

3. 指定弁護士チームは最強

起訴により、今後開かれる公開の法廷において、福島原発事故に関して隠されてきた事実を明らかにする作業が可能となった。第二東京弁護士会の推薦を受け、東京地裁は石田省三郎、神山啓史、山内久光ほか2名の5名を検察官役に指定した。石田・神山コンビは無実のゴビンダさんの再審無罪を実現した刑事弁護のプロである。望みうる最高の刑事弁護士が検察官役に選任され、検察官役の体制はドリームチームと言っていい。

第5 今後の展開と残された未解明の謎

1.今後の手続きはどのように予測されるか

予測される手続き展開としては、起訴後、おそらく公判前整理手続きが実施されると思われる。争点整理と証拠調べの方針を固めるまでにかなりの時間を要することは避けがたい。
証拠調べが始まったら、集中的に審理が進む可能性がある。検察官役の弁護士たちは、東電の内部資料、政府事故調の調書等を見ることができ、その立証には大いに期待できる。

2.法的論点より事実の争いが中心になる

第一次議決の際には、過失責任を巡る具体的危険説と危惧感説の対立構造になると言う見方もあり、通説と異なる法的見解は裁判所には受け入れにくいという見方もされていた。
しかし、第二次議決の認定した事実関係を前提とする限り、本件は何も法的には難しい点のない、普通の業務上過失事件である。もと東電役員の被告人は災害の結果を具体的に予見し、対策まで検討しながら、対策のコストと原子炉運転停止のリスクという経済的な理由から、いったんやると決めていた方針を転換し、対策を先送りしたのである。

したがって、法的な争点よりも事実に関する争点が重要である。とりわけ2007年に福島沖の大地震を想定して津波対策を講ずる方針が決まっていたかどうか、2008年3月のQA集(福島県向けに作成されたものと思われる)で推本の長期評価をとりいれる方針が決まっていたことは重大な意味を持っている。また、2008年6月に東電の土木調査グループが武藤副社長に防潮堤など対策を説明し、その当否が現実に検討されたかなどが決定的に重要な争点となる。

3.残された未解明点

また、残された問題としては、保安院の役割を解明することが重要である。
すなわち2006年には3年以内に津波対策を含めて耐震バックチェックを完了させる方針であったのに、これが骨抜きにされていった経過を明らかにする必要がある。
告訴団としては、津波第二次告訴として、森山善範(保安院原子力発電安全審査課長,ついで保安院審議官)、名倉繁樹(保安院原子力発電安全審査課審査官)野口哲男(保安院原子力発電安全審査課長)と、酒井俊朗(東電の津波対策の責任者・マイアミレポートの作成者・土木学会委員)と、高尾誠(東電の津波対策のサブ責任者・土木学会幹事)の5名を追加告訴している。この件は現在東京第1検察審査会に係属している。
我々は東電の勝俣、武藤、武黒の3名の強制起訴を実現した。彼らと同様に本件において中枢的役割を果たした東電2名と保安院関係者3名についても、検察審査会の強制起訴決定を勝ち取り、東電役員の刑事責任を追及する裁判との併合審理を目指している。
また、これと関連するが、東電の1F3のプルサーマル計画との関連も解明しなければならない。QA集は福島県に対する説明などのために作成されたものと考えられるが、福島県は、プルサーマルの実施は耐震性の確保が前提としてきたが、耐震性の確保から津波対策が除かれた経緯には、福島県の幹部が関与していた。
その全貌を明らかにしなければならない。

海渡 雄一
(福島原発告訴団弁護団
東電株主代表訴訟弁護団
脱原発弁護団全国連絡会共同代表)

福井地裁高浜原発異議決定を受けての弁護団声明


高浜原発3・4号機については、本年4月14日、福井地方裁判所の樋口英明裁判長、原島麻由裁判官、三宅由子裁判官による運転差止仮処分命令が発令されていましたが、本日、同裁判所の林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官により仮処分命令は取り消されました。

私たちは、福島原発事故のような事故を二度と招いてはならないという観点から新規制基準の不合理性、基準地震動の策定手法の不合理性、津波の危険性、工学的安全性の欠如、シビアアクシデント対策・防災対策・テロ対策の不備といった様々な危険性を指摘しました。

これに対して、本決定は、原子力規制委員会の判断に追随するだけの形で私たちの主張立証を排斥しました。
とりわけ、基準地震動に関しては、「最新の知見に従って定めてきたとされる基準地震動を超える地震動が到来しているという事実」は、「当時の基準地震動の想定が十分でなかったことを示すものである」と認めながら、「いずれも福島原発事故を踏まえて策定された新規制基準下での基準地震動を超過したものではない」とし(113頁)、新規制基準下ではこのようなことは起こらないとされています。
しかしながら、一方で、本決定は、「新規制基準の策定に関与した専門家により『基準地震動の具体的な算出ルールは時間切れで作れず,どこまで厳しく規制するかは裁量次第になった』との指摘がされていること」も認めており(105頁)、
この認定からすれば、新規制基準における基準地震動の策定手法は見直されていないのですから、上記決定は、論理矛盾を来しているといわざるを得ません。
さらに、本決定は、「あらかじめ判明している活断層と関連付けることが困難な地震でマグニチュード7を超えるものが起こる可能性を完全に否定することはできない」とし(122頁)、「本件原発において燃料体等の損傷ないし溶融に至るような過酷事故が起こる可能性を全く否定するものではないのであり,万が一炉心溶融に至るような過酷事故が生じた場合に備え」なければならないとしています(223頁)。本決定は、福島原発事故の深刻な被害から何も学ぼうとしない、極めて不当な決定であり、原発周辺住民が事故によって被害を受けることを容認していると言わざるを得ません。

林潤裁判長は、11月13日の審尋期日の際に「常識的な時期」に決定を出すと発言しましたが、私たちが指摘したすべての問題点について正面から検討した上で本日12月24日に決定を出すというのは「常識的な時期」とは到底いえず、年末も押し迫った常識外れなこの時期に出した本決定は、高浜原発3・4号機の再稼働スケジュールに配慮した、結論ありきの決定であると言わざるを得ません。
高浜原発3,4号機が再稼働して重大事故を起こした場合、その責任の重要部分は再稼働を許した3人の裁判官にあるということになります。

しかし、私たちは、このような不当決定に負けることはありません。なぜなら、理論的正当性も世論も私たちの側にあるからです。福島原発事故のような事故を二度と招いてはならない、豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪われたくない、子ども達の未来を守りたいという国民・市民の思いを遂げ、ひいては失われた司法に対する信頼を再び取り戻すため、最後まで闘い抜くことをお約束します。

2015年(平成27年)12月24日
脱原発弁護団全国連絡会、大飯・高浜原発差止仮処分弁護団
共同代表 河合弘之・海渡雄一

日印原子力協定「大筋合意」報道を受けて


満田夏花

本日は、官邸前にて、日印原子力協定締結反対、武器輸出反対の抗議の声がとどろきました。インドともスカイプで結び4名の方に力強いアピールをいただきました。ご参加のみなさま、ありがとうございました。な、なんと武器や原発を売り歩く安倍首相も登場!?
原子力協定締結協定にはいたりませんでしたが、原子力協定締結に向けてのMoU(覚書)が締結された模様です。
武器輸出に関しては、「防衛装備移転に関する協定」が締結されたようです。これを受け、FoE Japanでは緊急声明を発表しました。広めていただければ幸いです。

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【緊急声明】日印原子力協定「大筋合意」(覚書MoU締結)報道を受けて
~世界の核不拡散体制をゆるがし、福島原発事故の痛みを忘れた
無責任な原子力協力は許されない~
FoE Japan

本日、12月12日に開催された日印首脳会議において、原子力協定が「大筋合意」され 、原子力協定に関する覚書(MoU)が締結されたと報道されています。
事前報道によれば、「使用済み核燃料を核兵器に転用しないという確約にめどがだった」(NHK )、「インドが核実験を実施した場合、日本が協力を停止す

る規定を盛り込む」(産経新聞 )などとされていますが、MoUの詳細は現時点では明らかになっていません。
いずれにせよ、協定が締結に至れば、はじめてのNPT(核不拡散条約)非加盟国との原子力協定となり、日本が守ってきた核廃絶の国是を大きく損なうことには変わりありません。被爆国である日本が、NPTやCTBT(包括的核実験禁止条約)を批准せず、核兵器を所有するインドの立場を認めたことにはほかならず、国際的な核廃絶の努力に大きな悪影響をもたらすことになります。

もし、日本がインドに対して、日本が協力する原発の使用済み核燃料の再処理を認めるとすれば、原子力協定としてははじめてのことになります。たとえ「軍事転用をしない」という約束をとりつけたとしても、インドがプルトニウムを取り出すという事実には変わりなく、今までの原子力協定の一線を大きく踏み越えるものです。世界にとっては大きな脅威になります。
パキスタンとの軍拡競争を繰り返しているインドに対して原子力協力を行うことは、南アジアの安定を大きく損なうものです。
インドはIAEAの追加議定書を批准していますが、民生利用と軍事利用の核施設を分け、 前者のみをIAEAの査察対象としており、原子力の軍事利用に歯止めをかけられる保証とはなりません。
なによりも、福島原発事故を起こし、多くの被害者が苦しんでいるさなかに、斜陽ビジネスである原子力産業を救済するために他国に原発を輸出し、他国の住民を危険にさらす非倫理性は到底看過できるものではありません。
現在インドでは22 の原発が稼動していますが、多くの原発立地で市民による命がけの反原発抗議が展開されています。クダンクラムやジャイタプールなどでは建設に反対する住民の非暴力行動を、警察が暴力的に鎮圧し、死者やけが人もでています。
広大な国土を有し、送電ロスが大きく、分散型の再生可能エネルギーの潜在能力が高いインドにおいて、大資本による原子力の推進は、住民にリスクを押し付け、地域の活力を奪うことになりかねません。
私たちは、一部の企業の目先の利益追求のための、中央集権的で危険な原発輸出と武器輸出を進めることは、両国の社会および国際社会に大きな悪影響をもたらすものとして強く抗議します。
軍事や原子力ではなく、環境的に持続可能な社会の実現のための協力に転換することを求めます。

国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986
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なぜ日本は、ヒロシマ・ナガサキの大惨事にもかかわらず、 原子力を受け容れたのか


IPPNWドイツ支部

広島、長崎の大惨事から70年目を記してIPPNWドイツ支部が論評を出した。「なぜ日本は、ヒロシマ・ナガサキの大惨事にもかかわらず、原子力を 受け容れたのか 」との記事のタイトルが既に物語っているように、IPPNWの論評は、原爆攻撃のために数多くの被爆犠牲者を出した日本が、なぜいとも簡単に核エネルギー を受け容れていったのか、その背景を掘り下げると共に、私たちに大きな疑問を投げかけている。論評は日本人にとって、大いに思考を促すものなのではないか と思う。

原文(ドイツ語)へのリンク:

http://www.ippnw.de/atomwaffen/humanitaere-folgen/artikel/de/yin-und-yang-weshalb-japan-sich.html

なぜ日本は、ヒロシマ・ナガサキの大惨事にもかかわらず、原子力を受け容れたのか
ヒロシマ・ナガサキから70

2015年8月11日

(和訳:グローガー理恵

1945年8月6日、原子爆弾 リトルボーイは広島で炸裂し、市は灼熱の地獄へと 化した。その3日後 の1945年8月9日には長崎が、同様の過酷な運命に襲われたのだった。広島、長崎と、原子爆弾が炸裂したその日、数万人の人々が亡くなり、その年の末ま でに命を奪われた人々の数は、20万人近くに及んだ。あとの何十万人という犠牲者には、彼らの生涯にとって消えることのない傷痕が残った。それは、ー 負傷や火傷を負い、放射線被曝の影響を受け、自分の家族や故郷を喪失し、精神的外傷を負い、被爆者としての烙印を押されたー傷痕であった。

この8月には、広島と長崎が原爆爆撃されてから70年目を記することになるが、この広島と長崎で起こった大惨事ほど、強く日本人の集団的記憶の中に 焼き付いた史実はない。それ以後、日本市民の大多数は、広島・長崎原爆投下の生存者である被爆者たちと共に、全ての核兵器の廃絶を唱え、世界中で2千回以 上行われた核兵器実験の被害者たちとも連帯している。さらに、今年の11月には広島で、初の 世界核被害者フォーラムが開催され、そこにおいて、放射能汚染されたウラン採掘地帯に住む住民や民間および軍事核事故の犠牲者など、すべての被害者が話す機会を得られることになっている。

しかし、それ以上にもっと驚くべき事実がある。それは、今日において、日本の原子力産業が世界で最大かつ最強な原子力産業のひとつとして数えられるということである。いわゆる 原子力ムラと も呼ばれている日本の原子力ロビーは、日本国内で何十年もの間ずっと政治や社会に決定的な影響を及ぼしてきており、与党とも密接に結託している。彼らは実 際、日本で最も影響力の強い産業ロビー団体なのである。ここで、ある疑問が湧く:それは、「いかにして、この軍事核産業が産み出した原爆のためにあれほど 酷く苦しんだ国が、民間原子力産業を自国の産業の柱石としていく事になったのか?」という疑問である。我々は、IPPNWドイツ支部と交流/繋がりのある 日本の人々に、この疑問を提示してみた。
広島市大学・広島平和研究所で働くロバート・ジェイコブス (Robert Jacobs) 博士/准教授は、「原爆投下後の何年かの間、日本人は全ての原子核テクノロジーを猛烈に拒絶した」と説明する。戦後日本と結びついた米国は、「日本人は原 子力に対して非理性的な恐怖感を懐いている」とすら報告している。1945年の8月、人類は核の破壊的な力を知ることになったのであるから、 おそらくは、世界中のほとんどの人々が、原子力というものに対して、日本人と同様な反応を示したのではないだろうか。しかし米国は、このような世界的な拒 絶反応を阻止したかった。冷戦が始まった頃、アメリカの核兵器保有は、軍事上ドクトリンの最も重要な軸足となり、核兵器基地が太平洋にも、且つ一番うまく いった場合には、ソ連への飛行距離をできる限り短くするために、日本にも出来ることになっていた。つまるところ、日本人の原子力への非理性的な恐怖が原子力の受容に変わることが肝要となったのである。

これを踏まえて、1953年、ドワイト・アイゼンハワー米国大統領 は‘’平和のための原子力 (Atoms for Peace) ”  計画を開始した。それは、「兵器級プルトニウムの生産過程で多量のエネルギーが発生する ー そのエネルギーを電力生産のためにも利用することができる」という提案であった。すなわち、この 平和のための 原子力’’ を世界中に広めることで、原子核テクノロジーの悪いイメージを糊塗して、広い社会的受容を得るための道を拓くという意図であった。

このアイディアは日本においても素早く支持者を見つけた。ー特に、勢力や威力、そして大儲けを嗅ぎ出したや政治家や企業家の中に…。日本では従来、 政治と企業が非常に密接に絡み合っている。ー原子力の場合だと、企業、政治家、原子力規制庁との間の密接度が、容認できるような限度を超えてしまってい る。

しかしながら、原子力支持者にとって、まず、やらなければならなかったことは、日本社会に存在する原子力への根強い不安を打ち破ることであった。そ して、日本人がどのように語義を捉え把握するのか、原子力の主唱者は 心得ていたのである。彼らはまず第一に、用語表現を変更緩和させることにした:いわゆる 【peaceful use (平和利用)of nuclear energy(核エネルギー)】 という言葉は【核エネルギーの平和利用】ではなく【原子力の平和利用】と和訳された。日本語で 【nuclear(核) weapons (兵器)】 は 【核兵器】と呼ばれるため、【原子力】は【核兵器】とは異なった事柄を表す言葉であるとして、多くの日本人が心の中で、民間と軍事核産業は別々のものであ ると区別して考えるようにさせた。単に核を原子力と呼ぶことで、その事が可能になった。しかし事実は、米国の核産業が示したように、民間核産業も軍事核産 業も密接にかみ合っていたのである。

次のシンボリックなステップは、再建された広島市の都心に原発第一号機を建てることであった。ー 広島市を破壊し、あれだけの多くの人々の命を奪い去った、あのの原子に続いて、今度は、有益で、市を復興させて、国やその経済に新しい生を与えてくれるであろうという の 原子がやって来ることになる、との明白な印として…。このような陰陽的思想は、多くの日本人の共感を得たかもしれないし、それ自体で何人かの被爆者にとっ ては、「何のためにこのような事が起きなければならなかったのか?」という彼らの問いに対する答えとなったかもしれない。…しかし、被爆者と広島市民の圧 倒的多数は、原子核テクノロジーを拒絶し続けたのだった。そして、広島に原発を設置する計画は、地元住民による猛烈な反対のために失敗に終わった。朝日新 聞の新しい調査によると、全ての被爆者の内その“3分の2 (⅔) “が、これまで、原子力を拒否している、という。

しかし米国は、日本国内に民生原子力を根づかせようと、〝原子力平和利用博覧会〞と名付けられた大規模な宣伝活動に資本提供することにした。〝原子力平和利用博覧会〞は、1955年から1957年にかけて日本の10都市で開催された。この〝博覧会〞は、 広島の平和記念資料館にもやって来た。そのために、資料館に常時展示されていた、原爆の惨状や放射線の恐怖を伝える資料、被爆者の遺品などの展示品が館外 に移され、博覧会の後も、原子力平和利用をテーマにした展示物が、何年もの間、資料館内の展示会場を占めることになった。そして、これらの出来事は、事態 を傍観するしかなかった多くの被爆者の怒りをかったのだった。

この原子力ロビーによる集中的なプロパガンダは、政府と繋がりのあるテレビ局や新聞の高揚的報道によって盛り立てられた。「原子力の平和利用は我々 の経済を成長させる」とのスローガンは、間もなく、日本社会に浸透遍在していき、テクノロジーの進歩に好意的な日本市民の心に刷り込まれていった。その頃 から日本人の間で、”とは、ヒロシマとナガサキの恐るべき大量虐殺と結びついたものであり、”原子力は、経済成長と人々の幸福に結びついたものであるとの概念が生まれるようになった。

1956年以後、日本原子力研究所が東京から東北の地域にある小さな東海村に発足した。それに続いて出来たのが、核燃料生産工場、使用済燃料再処理 施設、そして日本で最初の原子力発電所であった。東海村は、日本の原子力産業の核心となった ーとともに、フクシマ原発事故以前に20以上の所在地に位置した58基の原子炉を有していた、腐敗した、規制不十分な、事故慣れした産業のシンボルとも なった。すでにフクシマ超大規模原子力事故が起こったずっと以前から、原子力施設において漏洩や爆発、火災が発生し、その度ごとに、一部で大量の放射能放 出を伴っていた事があったという事実が、日本の原子力産業の特色を現わしている。

「今日、多くの日本人は、なぜ、地震、津波、火山噴火で度々悩まされている国が、なんら疑問を発することもなく単純に、原子力を受け容れることがで きたのだろうか、と思案している。さらに彼らは、経済界・政界の有力者が当時から間違っていると分かっていながら、これらの危険性を無視した背後には何が あったのだろうか、と問うている」と、広島平和研究所の ジェイコブス博士は述べる。

さらに、見て見ないふりをする習慣や政治家、企業、原子力規制庁の間の癒着といった背景が原因として付け加わり、東海村やフクシマの原子力災害の発生に寄与していった。

そして、国会事故調査委員会は2012年6月、「フクシマ原子力災害の原因は、これまでの規制当局の原子力防災対策への怠慢と、当時の官邸、規制当 局の危機管理意識の低さ、そして責任を持つべき官邸及び規制当局の危機管理体制が機能しなかったためであり、自然災害というよりも人的ミスに帰する」との 結論に至った。今回、再び、日本市民に高レベルの放射能を浴びさせたのは外敵ではなく、自分の国の規制当局と企業の過失/怠慢によるものであったという認 識は正に、多くの被曝者に諦めと茫然自失をもたらした。

ジェイコブ氏は書く:「原爆被爆者たちは、核時代の終わり、核兵器の廃絶、そして、自分たちの身にふりかかった、あの苦しみを、もう誰一人として味 わう必要のない世界を渇望している」と。 だが、その逆に彼らは、フクシマ原子力災害の後、あるイメージと向かい合わされている:それは、自分たちの故郷 が放射能汚染されてしまったために避難施設で生活し – 線量計をつけて学校へ通い– 健康診断に一生涯、臨まなければならず– そして原爆被爆者と同様に、がん発病率の増加や子孫への遺伝的影響、社会的烙印を恐れている – 女性、子ども、老人たちのイメージなのである。

これらのイメージは、原爆の犠牲者たちが実際に目指している未来とは全く正反対のものを描き出している。臨床心理学者である福島県・いわき明星大学 の窪田文子 (のりこ)教授は彼女の論評をこう結んでいる:「ヒロシマは、70年経った今も放射線被曝の影響と闘っている。だからこそ広島の人々は、自分たちと同様 に、今、放射線被曝と取り組んでいる福島の人々に対して特別な心情を懐いている。」

(日本語訳:グローガー理恵)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3068:150825〕

子ども・被災者支援法の基本方針改定が閣議決定


満田夏花

本日、原発事故子ども・被災者支援法の基本方針の改定が閣議決定されました。
http://www.reconstruction.go.jp/topics/m15/08/20150825144311.html
2015年7月10日から8月8日まで行われた一般からの意見応募では、1,500件のコメントがよせられました。
このパブコメの内容や対応が公開されないままの閣議決定となりました。
(閣議決定後、パブコメ内容・対応が公開されました⇒
http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/20150825093158.html)
~パブコメ出された方は、どう扱われているか、ご確認ください。

今回の基本方針は、線量が低減したとして、「避難指示区域以外から新たに避難する状況にはない(※)」「支援対象地域は縮小又は撤廃することが適当となると考えられる(当面は維持)」「(空間線量等からは」支援対象地域は縮小又は撤廃することが適当」「当面、放射線量の低減にかかわらず、支援対象地域の縮小又は撤廃はしないこととする」した上で、福島県による自主的避難者への無償住宅提供の打ち切り方針を追認しています。

※もともと復興庁が示した基本方針案では、「避難する状況にはない」とされていました。轟々たる批判をうけて、「新たに」と付け加えたものと思われますが、避難者の選択する権利を奪うという本質的な問題は変わっていません。

この閣議決定に関しまして、FoE Japanでは、基本方針の問題点をやや詳細に解説する内容の声明を出しました。以下からご覧ください。

【声明】 原発事故子ども・被災者支援法 基本方針改定の閣議決定を受けて:避難者切捨ての方針で、法の理念に反する
http://www.foejapan.org/energy/news/150825.html

また、被災当事者団体や支援団体などで構成する、「原発事故被害者の救済を求める全国運動」でも、一連の帰還政策や被害矮小化と一体化した、この基本方針改定の本質をつく声明を出しました。こちらもぜひご一読ください。

【緊急声明】被災者切り捨ては、この国の未来の切り捨て。支援法の立法趣旨・基本理念からさらに大きく逸脱した支援法改定基本方針の閣議決定に抗議し、撤回を求めます。
http://act48.jp/index.php/2-uncategorized/30-2015-08-25-07-58-18.html

FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986