22,000人以上の子供たちに 見つかった 新たな嚢胞と結節


IPPNWドイツ支部:福島の小児甲状腺がん症例数が100件以上に – 22,000人以上の子供たちに 見つかった 新たな嚢胞と結節

和訳:グローガー理恵

2015年6月10日

5月18日、福島県の甲状腺検査の最新結果データが公表された。その間、急速に成長した腫瘍や、または転移が見られた甲状腺がん症例のある計103人の子供たちが手術を受けなければならなかった。

それに付け加えて23人に甲状腺がんの ’強い疑い’  があるとの診断が下されている。ここで懸念されることは、過去2年間の間に、解明が必要とされるような検査結果がさらに増えているということである:最初 のスクリーニング(先行検査)においては、まだ何の甲状腺異常も検出されなかった22,837人の子供たちに、今、2巡目のスクリーニング (本格検査)で嚢胞や結節が確認されたのである。

しかも、その内の235人に見つかった嚢胞/結節のサイズが非常に大きかったため、さらなる解明が緊急に必要とされたのだった。これまでの時点で、 5人に新しいがん腫瘍が見つかり、手術が行われた。- もう単なる「スクリーニング効果」だけで説明がつけられない、憂慮すべき現象である。

そして更に、日本全国で甲状腺がん症例数がもっと上昇することが予測されなければならない。2013年のUNSCEAR報告書には、フクシマ原子力事故により日本国民が受ける甲状腺の集団預託実効線量 (生涯甲状腺線量の集団積算線量) は 【112,000人・シーベルト】になるであろうと推計されている。この数値にしたがい、BEIR-VII報告*のリスク係数【0.009/人・グレイ】 を用いて算定すると、およそ1,000件の甲状腺がん症例数を予測しなければならなくなる。しかしながら、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連 科学委員会)によって示された集団線量はシステマティックな過小評価に関わる数値であろうから、おそらく、もっとはるかに高い症例数を予測しなければなら ないだろう。

原文(ドイツ語)へのリンク:

http://www.fukushima-disaster.de/deutsche-information/super-gau/artikel/f8c64211e80db4835cad2d7c8d865abc/mehr-als-100-schilddruesenkrebsfaell.html

(注)

*BEIR 委員会:「電離放射線の生物学的影響」に関する委員会。米国科学アカデミー(NAS)/ 米国研究評議会(NRC)の下に置かれている放射線影響研究評議会(BRER)内の1 つの委員会である。もともとは、1954年のビキニ事件をきっかけに、アメリカ国内の放射線防護基準の策定に資するために設けられたBEAR(原子放射線 の生物学的影響)委員会が前身で、1970 年に名称変更されBEIR 委員会となっている。BEIR 報告は、アメリカ国内にとどまらず、国際的な放射線防護基準の基礎とされるICRP(国際放射線防護委員会)の勧告やUNSCEAR(国連・原子放射線の 影響に関する科学委員会)の報告にも大きな影響をこれまで与えてきた。(ソース:http://www.csij.org/01/archives/radiation_002.pdf )

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3021:150625〕

フクシマ作業員の健康調査における難題


アレックス・ローゼン

IPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン医師による福島を巡る論考は、発表される度ごと、ドイツ在住のグローガー理恵さんが翻訳されたうえで、ご連絡いただいています。本サイトでは継続して掲載させていただいていますが、また新しい原稿をお送りいただきました。

2015年4月10日

和訳: グローガー理恵

フクシマ原子力災害の後、福島第一原発の敷地の中で働いてきた作業員たちは、途方もなく最も高い放射線被曝量を浴びたと言ってよいであろう。 しか し、現場の作業員たちの圧倒的多数は東電の従業員ではなく、もっと著しく酷い労働条件のもとで働く、下請け業者に雇われた臨時雇用労働者たちである。 労 働者の多くは、まともに登録もされておらず、彼らが受けた放射線被曝量も適切に記録されていないし、彼らの健康状態の実態や変化もモニターされていないの である。 多くの場合、現場で働く作業員は、短期間の臨時仕事に動員された不熟練の日雇い労働者たちであり、その後に、彼らを追跡できるような手がかりは ない。

日本のメディア報道によれば、日本のマフィア・やくざは、フクシマ原発現場のクリーンアップ作業、放射能汚染された冷却水の処理作業、または、事故 現場周辺における巨大な建設-構築計画などを請け負っている、東電の下請け業者との有利な労働契約のお蔭で利益を得ているという。

また、自ら進んで、または、善意からではあるが無鉄砲なボランティア活動の一環として、放射能汚染された地域において除染作業に関わっている数多く のボランティアもいるのだが、その中にも、高いレベルの放射線被曝量を浴びている人達がいるのである。 ボランティアの多くは、当局による除染作業努力に 成果が見られないために絶望しており、そのために彼らは、自分たちの手で、自分たちの故郷を再び住居可能にするための手助けをしたいのである。 しかし、 そうすることによって、彼らは自らを長期的健康被害に晒すリスクを冒していることになる。さらに、彼らの被曝がコントロールされるようなことはなく、被曝 線量も測定されることはないのである。

現在、広島・長崎原爆犠牲者の調査を長年にわたって行ってきた日米共同研究機関 「放射線影響研究所 (RERF-Radiation Effects Research Foundation)」が、 少なくとも、福島原子力災害の事故処理作業に従事したことが確認されている作業員達に及ぶ長期的な健康影響の調査をしようと試みている。 放射線影響研究 所 (RERF)は、2011年の3月から同年の12月までフクシマ原発現場での作業に従事していた計2万人以上の作業員を対象にして健康調査をしたいと述べ ている。 しかし実際に、不熟練の臨時雇用労働者や下請け業者の従業員として何年もの間、損壊した原子炉が並ぶ福島第一原発の敷地の中で危険な作業をして きた人々を、この大規模な調査に含めることができるのかどうか、疑わしい。

一例を挙げるなら、これまでに健康診断の参加を求められた凡そ2,000人の原発事故処理作業員達の中で、その内の35%だけが健康診断に参加する ことを明らかにしているのみである。 放射線影響研究所(RERF)の方は、作業員たちとの連絡がとれなかったり、または、作業員たちの現住所を突き止め ることができない、と主張している。 このことは、健康調査に、過度のレベルの放射線被曝量に晒された作業員たちのほとんどを引き入れることができないと いう懸念を確かなものにしているようである。  したがって、放射線被曝がもたらす長期的な健康影響に関する疫学上の評価をすることは不可能になるということである。

IPPNWドイツ支部は既に長い間、フクシマ作業員たちのための包括的な健康上のアフターケアを要求してきている。 そして、我々が繰り返し力説し てきたことは、「そのような健康調査には、安全規制・規準の対象に全くなっていない多数のボランティア作業者たちや、下請業者に雇われ、東電の従業員に適 用される安全-健康管理の基準に適わないような労働条件のもとで働く労働者たちも含めた、ありとあらゆる全ての作業員を引き入れなければならない」という ことである。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2955:150413〕

原文(独語)へのリンクです: http://www.fukushima-disaster.de/deutsche-information/super-gau/artikel/8c2ad6cfb8f78853ae03dd40ca40d3af/fukushima-arbeiter-verweigern-gesund.html

何千、何万という「がん疾病」の過剰発生を危惧


IPPNW プレスリリース

何千、何万という「がん疾病」の過剰発生を危惧

IPPNW記者会見 – フクシマ原発災害4周年にあたって

2015年3月3日

(和訳: グローガー理恵

フクシマ原子力災害から4年、日本の人々への健康影響が現れ始めている。原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (UNSCEAR)によるデータは、日本では放射能汚染のために16,000件までのがん症例の過剰発生と9,000件までのがん死の過剰発生が予測されるということを示している。  医師団体IPPNWは、実際の数値は、それよりも、もっとはるかに高くなるかもしれないと見なしている。 なぜなら、UNSCEAR報告書に記載された放射能放出量(ソースターム)の数値は、日本原子力研究開発機構(Japan Atomic Energy Agency)からの情報だけをベースにしており、独立した研究所/機関によって出された明らかにもっと高い数値を考慮していないからである。

さらに、UNSCEARによる内部被曝線量の算定やフクシマ原発の作業員の線量 計算に関しても深刻な懸念がある。

甲状腺がん症例は、予測される 「がん罹患」のほんの一部を示しているにすぎない。 最初の一巡目の甲状腺集団スクリーニング(先行検査)の枠内での細胞診において、計109人の子供た ちに甲状腺がん診断が確定された。 その間、この内の87人が、手術を受けた。 これまで、県民健康調査検討委員会は、これらの予期されなかった高い症例 数は 「スクリーニング効果」のためである、としてきた。 スクリーニング効果とは、もっと後になった時点になってから初めて臨床症状が出たであろうという症例 が、集団スクリーニングで発見されることの知見である。

しかし、2014年の12月から再検査 (本格検査 )の最初のデータが出ている。 再検査を受けた子供たちの57.8%に結節や嚢胞が見つかったのである。 最初のスクリーニング(先行検査 )においては、これらの(結節もしくは嚢胞が見つかった)割合が、まだ48.5%であった。 この事は、最初のスクリーニング (先行検査 )において、まだ何の異常も見つからなかった12,000人以上の子供たちに、現在、再検査(本格検査 )で、嚢胞と結節が確認されたということを意味する。 すでに、これらの子供たちの内11人に穿刺吸引細胞診がなされ、今、その内の8人にがん疾患の ‘強い 疑い’があるとの診断が下された。 過去2年間の間に発生したに違いない、これらの ”がん症例” を、もはや、「スクリーニング効果」で説明することはできない。

甲状腺スクリーニング(検査)は、福島県のみに限定されている。 日本の他の地域においてや非常に放射能汚染された福島に隣接した県(複数)におい てでさえも、同じ類の集団スクリーニングは実施されていないのである。 究極的には、他の県においても多数の甲状腺がん疾患が発生するかもしれない可能性 があるにもかかわらずである。

「二巡目のスクリーニング(本格検査)結果は憂慮すべきことです。 確かに、これまでのところは、まだ再検査結果の部分的なデータのみが提示されて いるだけですし 、原子力災害による長期的な健康影響を評価できるには、まだ時期が早過ぎます。  しかし、チェルノブイリからの経験に基づきますと、甲状腺がんの疾患数が、長年に亘り、さらに増加していくことが予測されます」と、IPPNW副会長、ア レックス・ローゼン医師は説明する。

甲状腺がんは、放射能汚染が人々に及ぼす健康影響のほんの僅かな一部を提示しているに過ぎない。IPPNWは、過去の原子力事故の体験に基づき、① 白血病、②リンパ腫、③固形がん、④心臓血管系疾患、⑤ホルモン障害、⑥神経障害、⑦精神障害などの罹患率の上昇を予測する。 さらに、精神的外傷や当局に失望させられ、放置されたという感情が及ぼす、甚大な心理社会的影響が付け加えられる。

以上

*(注)何千、何万という「がん疾病」の過剰発生: フクシマ核災害がなかったら、がんを発病をしなかったであろうという人々がフクシマ核災害が誘因となってがんを発病する。そういった人々の数が何千、何万になるであろうということを意味する。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2921:150305〕

甲状腺がんは氷山の一角にすぎない


Deutsche Welleがアレックス・ローゼン医師(IPPNW)にインタビュー: ローゼン医師 「フクシマにおける子供たちの甲状腺がんは氷山の一角にすぎない」

このインタビューは、ちきゅう座で1月10日にご紹介させて頂きました、IPPNWドイツ支部公表の論評「甲状腺がん症例がさらに増加」に関連したものです。

インタビューの最後にアレックス・ローゼン先生は、こう述べています:

『我々は、「人々が放射能汚染された環境に残るのか、そこを去って移住するのかについて、自分たちで決定することができないということ」 を批判します』と。

このローゼン先生の言葉は、岐阜環境医学研究所所長、松井英介医師、そして国連特別報告者、アナンド・グローバ氏の訴えでもある「被災者は健康な環境に住める権利があり、移住したいと願うのなら移住できる権利がある」ということに、共鳴するものです。

フクシマ大惨事から4年、状況が日々悪化していく中で、今、緊急にフクシマの被災者の方々に援助の手を差し伸べることこそが、政府に課された最大の義務であり、何よりも最も優先しなければならない課題ではないでしょうか。

原文(独語)へのリンク:http://www.dw.de/rosen-schilddr%C3%BCsenkrebs-bei-kindern-in-fukushima-ist-nur-die-spitze-des-eisbergs/a-18176688

ドイチェ・ヴェレ (Deutsche Welle)

ローゼン医師: 「フクシマにおける子供たちの甲状腺がんは氷山の一角にすぎない

2015年1月9日

(和訳: グローガー理恵)

フクシマ原発大災害の後、子供たちの甲状腺がん症例数が増加している。 大人は全く甲状腺検査を受けていない。 核戦争反対医師団 (IPPNW)のアレックス・ローゼン医師は日本の当局を批判する。

–  Deutsche Welle (以下DWと省略): 甲状腺スクリーニングは、どのような検診が土台となって行われたのでしょうか?

Alex Rosen (以下ARと省略): 日本の甲状腺集団スクリーニングは、福島県全域における年齢18歳以下の子供たち36万人以上を対象にした大規模なスクリーニングに関わるものです。 今までに、このような検査が行われたことはなかったのです。 先ず、住民からの大きな圧力があって、検査が実施されるようになりました。 

スクリーニングの土台となった検診は、甲状腺の触診、そして、甲状腺の結節、嚢胞またはがんの疑いある異常に関する超音波検査です。 当局 は、それぞれの検査結果を公表することを躊躇しています。 多くの親達は、検診が大急ぎでなされたことや検査結果を通知してもらえなかったことの不満を訴 えています。 また、指令によって、他の医師たちはセコンドオピニオンを与えることを禁止されているのです。

–  DW: 60,505人の子供たちが再検査 (本格検査 )されて、その内の57.8%に結節や嚢胞が見つか りました。 これらの数値は、どのように評価されるのでしょうか?

AR: これは、正確には言えないことです。 なぜなら、これと比較できるような全世界に及ぶ国際的なスタディーが存在しないからです。 ですから、ある健康な年齢18歳以下の人口集団において、実際に、嚢胞や結節の数が、いくつなら正常であるのかということが分からないわけです。 しかし、スクリーニングが始まったころ、日本の担当当局者らはこう述べました:  「検査で何も出てくるようなことはないだろう」と。 そうですから、検査によって、このような非常に多数の子供たちに異常が見つかり、100人以上の子供たちにがんの疑いありと分かったとき、彼らはびっくり仰天したわけです。 

これまでのところ、当局はずっとスクリーニング効果を引き合いに出しています。 我々は、集団スクリーニングにおいて確定される検出結果を、そのように(スクリーニング効果と)呼んでいるのです。

多数の健康な人が検査される集団スクリーニングでは、何年か後になってから初めて気づいたであろうというような疾患の検出結果がはっきりと 出ます。 すなわち、何の病気の症状もない患者たちを検査することで、それが時には、ある疾患の初期段階を発見することになることになるわけです。 集団 スクリーニングによって、症状のある人が医者にかかるまで待ってから明らかになる疾患の数よりも、もっと多数の疾患数を見つけることができます。

新しい(本格検査の)データをベースにしますと、この2年間の間に、結節や嚢胞、そして、がん疾患が新たに生じた子供たちの数が多いことが分かります。 このことを、スクリーニング効果」で片づけることはできません。

–  DW:チェルノブイリでの経験に従って判断すると、フクシマ地域の住民には、がん疾患する高いリスクがあるということを予測しなければならないのでしょうか?

AR: その通りです。 我々は、1986年にウクライナで起こった原発事故を通して、放射性放射線の、そして何よりも放射性ヨウ素の放出が、特に甲状腺がん発病のような極めて深刻な健康被害をもたらすことを学びました。 日本では2011年3月に、多量の放射能が放出されました。 人々は、水、空気、食べ物を通して放射性ヨウ素を吸入しました。 放射性ヨウ素は、とりわけ、子供たちや青少年の甲状腺に付着して、そこで 甲状腺がんを誘発するのです。 これはよく知られていることです。 それだから、我々は、今後数年間、何十年間の間に、日本において甲状腺がん発病率が増加することを予測しているのです。 悲しいことですが。

–  DW:想定可能超大規模原子力事故の後、なぜ甲状腺という器官は健康被害に冒されるのでしょうか?

AR: 原子炉大災害により、放射性物質は環境中へと広まっていきますが、その放射性物質の中にヨウ素131があるので す。 身体は、普通のヨウ素と放射性のヨウ素との区別をすることができず、呼吸する空気、食べ物、水を通して放射性ヨウ素を吸入してしまいます。 ヨウ素 は甲状腺ホルモン生産に必要な元素です。 ヨウ素131は周辺の組織を被曝させ、甲状腺の異常や発がんを誘発していく可能性があります。 

原子炉事故の後、通常は、予防ヨウ素剤が全住民に配布されるべきなのです。 予防ヨウ素剤を摂取すれば甲状腺がヨウ素で詰まって、放射性ヨ ウ素を吸入できなくなります。 日本では、こういった知識があるにもかかわらず、ヨウ素剤の摂取がなされませんでした。 この事も、また日本の災害管理に 関して批難すべき点です。

–  DW: 多数の子供たちに転移が見られました。 そして、甲状腺の部分的摘出手術が実施されなければなりませんでした。 これは、子供たちの人生にとって、どのようなことを意味しているのでしょうか?

AR: 「がん」の診断結果が出た子供たちの数は112人です。 その内の84人 に転移があり、がんが拡がってしまっていたり、または、がんが非常に大きかったため、子供達の命にかかわるような問題となっていました。 それで、彼らは 手術を受けなければならなかったのです。 甲状腺の部分が摘出された場合、子供たちは一生、甲状腺ホルモンを摂取していかなければなりません。 しかし、 過酷なファクターは、彼らが生涯ずっと、超音波検査や血液検査などのアフターケア検診を受けていかなければならないことです。 なぜなら、いつでも再発す る可能性があるからです。 甲状腺がんのために死に至るケースは、甲状腺がん症例のおよそ7%ぐらいです。

–  DW: 大人はフクシマ原子力事故の後、検診を受けていないのでしょうか?

AR: 受けていません。 日本の大人は、一般に、この疾患に関する検診を受けていません。 また、そのような計画もありません。 大人が甲状腺がんを発病するリスクというのは、そんなに高くないのです。 これはチェルノブイリの経験から分かっていることです。

甲状腺がんは最も早い時期に現れる病気であり、氷山の一角にすぎません。 我々は、他の疾病の発生を予測しているのです: 放射線によって、白血病、乳がん、腸がん、心血管疾患が誘発されます。 日本では一般に、これら全ての疾患に関する検診が行われていません。

–  DW: 原子力災害から4年近く経って、もうすでに長期的な健康への影響を評価することができるのでしょうか?

AR: いいえ、できません。 我々は、潜伏期間が長い、すなわち、これから40年後になってから現れるような可能性の ある幾つかの疾病を予測しています。 これは、原子力災害時に生まれた子供たちは、放射線による影響が原因となって病気になる、高いリスクを生涯抱えてい くであろうということを意味しています。 この事が、健康影響の科学的な研究調査作業をする上で難題となります: がんという病気は、その出所の表示を掲げていないのですから。 我々が、発がんの原因がフクシマの放射性放射線によるものなのか、それを確実に証明できるようなことは決してないでしょう。

-DW: 核テクノロジーのない世界を促進する、国際的に組織化された医師団であるIPPNWは、どのような援助を提供していますか?

AR:  IPPNWは、日本の医師たち、科学者たち、被災者の方々、そして市民社会との繋がりを持っており、スクリーニング(検診)のデータに関する我々の解釈や 我々の「ノウハウ」を、彼らに提供しています。 これは、我々がチェルノブイリ災害後にウクライナやベラルーシで集積してきたものです。 我々は論説を書 き、それが日本語に翻訳されます。 日本から専門家をドイツやベラルーシに招き、そこで彼らが専門家たちと意見交換できるようにしています。

我々の仕事は、何よりも先ず、科学的、医学的分野において進められます。 日本は経済的に豊かな国です。かつてのチェルノブイリ事故後の状況とは違い、我々が日本に医療援助を提供する必要はありません。 チェルノブイリ事故があった、あの頃は、ドイツからの献身的な医師が超音波機器をウクライナへ持っていったり、病院を建てたり、被災者を検診したりしまし た。

日本の人々が必要としているのは、そして、彼らが国内のメディアから得られないものとは:  信用できる、真実性が確認された情報であり、自分たちの持つ 「健康への権利」が真摯に受け止められているのだということを、彼らが感知することです。

日本で、そのような事は起こっていません。 人々は放射能汚染された環境で生活することを強いられています。  ほんのわずかな人たちだけが、このような環境から離れられる可能性を持っています。 でも、そうすると、彼らはもう医療支援を得られなくなってしまうのです。

我々は、「人々が放射能汚染された環境に残るのか、そこを去って移住するのかについて、自分たちで決定することができないということ」 を批判します。

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2910:150224〕

甲状腺がん症例数がさらに増加


IPPNWドイツ支部

(和訳: グローガー理恵 )

2015年 1月 6日

福島で甲状腺集団スクリーニングの最新データが公表された。 データは初めて、日本の子供たちにおける甲状腺がんの新規症例数の増加を示している。 最初の一巡目のスクリーニング(先行検査 )の枠内で既に、84人の子供たちに甲状腺がん診断が確定され、その中の一部には既に転移が見られた。 その結果として、これらの子供たちにおいて甲状腺の部分的摘出手術が実施されなければならなかった。 さらに、24人の子供たちに、「がんの疑いあり」との細胞診の結果が出ている。 これまでのところ、日本の当局は、これら全ての症例は所謂「スクリーニング効果 (独語:Screeningeffekt )」に起因するものであるとしている。 「スクリーニング効果」とは、まだ臨床症状がなく、もっと後になった時点になってから初めて臨床症状が出たであろうという症例が、集団スクリーニングで発 見されることの知見を説明する用語である。

しかし今、最初のスクリーニング(先行検査)で既に把握されていた子供たちにおける再検査 (本格検査 )の最初のデータがある。 これまで、60,505人の子供たちに再検査が実施され、その内の57.8%に結節もしくは嚢胞が見つかった。 最初のスクリーニング(先行検査 )において、これらの(結節もしくは嚢胞が見つかった)割合は、まだ48.5%であった。 これを具体的な数値で表すと:  最初のスクリーニング (先行検査 )においては、まだ何の異常も見つからなかった12,967人の子供たちに、現在、再検査(本格検査 )で、嚢胞と結節が確認されたということである。 しかも、その内の127人に見つかった嚢胞/結節のサイズが非常に大きいため、さらなる解明が緊急に必要とされている。

また、最初のスクリーニング(先行検査)で小さな嚢胞もしくは結節が見つかった206人の子供たちの再検査において、非常に急速な(嚢胞/結節の) 増大が確認されたため、さらなる診断検査が始まった。 目下のところ、これらの子供たちの内11人に穿刺吸引細胞診がなされ、今、その中の4人にがん疾患の ‘強い 疑い’がある。 これら(4人)のケースにおいて、がん疾患の診断が確定されるのであれば、もはや、この事を「スクリーニング効果」で理由づけることはできなくなる。なぜ なら、これは、過去2年間の間に発生した新規症例に関わる問題となってくるからである。

「確かに、原子力災害による長期的な健康影響を評価できるには、まだ時期が早過ぎますが、これらの最初の検査結果は確かに憂慮すべきことです」と、IPPNW副会長、アレックス・ローゼン (Alex Rosen) 医師は説明する。

「これまでのところは、まだ再検査結果の部分的なデータのみが提供されているだけです。 チェルノブイリからの経験に基づきますと、甲状腺がんの疾患数が、さらに長年に亘り増加していくことになるでしょう。」

UN (UNSCEAR)によって出されたデータに従えば、フクシマ原子力災害がもたらす健康影響として1,000件以上の甲状腺がん症例数が予測されている。 一方、UNは彼らの算定を疑わしい仮定に基づかせているため、実際に予期される症例数は、多分、その何倍も高い数値となる。

同時に、甲状腺がんは、放射能汚染が人々に及ぼす健康影響のほんの僅かな一部を提示しているに過ぎない: 過去の原子力事故の体験に基づけば、①白血病、②リンパ腫、③固形がん、④心臓血管系疾患、⑤ホルモン障害、⑥神経障害、⑦精神障害などの罹患率の上昇 が予測される。 さらに、精神的外傷や当局に失望させられ、放置されたという感情が及ぼす心理社会的な影響を無視することはできないということが、付け加えられる。
福島や日本におけるその他の放射能汚染地域の人々が緊急に必要としているのは:

①包括的な医療支援/アドバイス

② それぞれの人々の必要に適合した透明な健康診断の提供

③ その提供された健康診断によって、疾病を早期発見し早期治療できるようにすること

④ 患者が自分たちの健康診断の結果にアクセスできるようにすること

現在、日本では、これら全ての事柄が存在していない。

IPPNWドイツ支部は当局責任者に訴える:

「被災者になおこれ以上の健康被害が発生することを防ぐために、必要な措置を講ぜよ」と。

 

以上

県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要PDFへのリンク: http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96850.pdf

県民健康調査「甲状腺検査(本格検査)」実施状況 PDFへのリンク: http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96851.pdf

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2866:150110〕

IPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン(Alex Rosen)小児科医が「IPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析」について説明:”Nuclear Hotseat” ポッドキャストから…(2)


グローガー理恵

6. UNSCEARは非がん疾病および遺伝的影響を無視している

LH:(30:28)  これは、IPPNWがUNSCEASRに対して申し立てた異論表の中で、私にとっては大変に印象深い点だったのですが、非がん疾病と遺伝的影響がUNSCEARによって無視されているということですね。

AR: そうなのです。これは、また別の大きなイシューなのです。長年の間、私たちは、放射線、電離放射線が、「がん」だけでなく、例えば、心臓血管系疾患、緑内障、心理的/神経的影響、内分泌系疾患、甲状腺疾患などのような非がん疾病も誘発するということを知っているのです。

私たちは、これら全てのことを、広島や長崎の犠牲者達や、また、チェルノブイリのリクビダートル(爆発の後に事故処理のために現場へ送り出された人々)からも認識しているのです。そして、このことはUNSCEARによって完全に無視されました。彼らは、あたかも、それを証する科学的証拠が存在しないかのように振る舞っています。しかし、例えば、広島や長崎で低線量被曝をした人々の中に心臓血管系疾患や甲状腺疾患が発生したという放射線による顕著な影響を明らかにしている、多数のスタディーが存在しているのです。

そして、同じことが、例えば、私が前に言及しましたティム・ムソーによる動物の研究調査のような、将来世代における何世代にも及ぶ影響や遺伝的影響に当て嵌まるのです。そればかりでなく、英国の核作業員の子供たちにおける白血病罹患率の増加ー 子供たちの親が放射線被曝した場合ー も同様のことなのです。したがって、これらの影響/結果は簡単に言い逃れができるようなことではないのです。しかし、この事実はUNSCEARによって簡単に無視されました。

7. 核フォールアウトと自然放射線の比較は誤解を招く

LH:(32:13) さらにIPPNWの分析によりますと、UNSCEARは、核フォールアウトと自然放射線とを比較することで誤解を招くようなことをやったということですが…。

AR: これは、UNSCEARや他の機関/組織が度々やっていることなのです。彼らは、「やあ、私たちは、年間1ミリシーベルトか2ミリシーベルトの追加放射線量について議論してるだけのことだから、これが実際に有害だなんてことはあり得ないよ。だって、自然バックグラウンド放射線なんていうのは、もうすでに年間で2ミリシーベルトになるんだから。」と言っているのです。

ここが、彼らの誤っているところなのです。明らかに、自然バックグラウンド放射線というものは、私たちが完全に避けられることができないものです。そして、世界にはバックグラウンド放射線量が他の地域よりも高かったり低かったりする地域があるのです。しかし、研究調査が再三再四、明らかにしていることは、線量が高い地域では実際に、より多くのがん発症があり、線量が低い地域における人々のがん罹患率はもっと低いのです。

そして、地殻内の放射性物質が多い環境に住んでいるために、より多量のラドンガスに晒されている人々における発がん率はより高く、飛行機で旅することが多い人達、大西洋横断飛行は宇宙放射線に照射される度合いが増えますが、このような人達における発がん率は高くなります。より高いレベルの地殻放射線に晒されている人達においても、がん発症率がより高くなります。なぜなら、がん、または、発がんするリスクと被曝線量の相関関係は直線的であり閾値なしの直線で、それはゼロまでに下がります。低い放射線量でさえも、かなりの、がん発症のリスク上昇をもたらすのです。そして、彼らが人々に伝えようとしているような、ある境界値以下だったら安全であると言えるような閾値なんてないのです。

フクシマのフォールアウトのために、年間たったの1ミリシーベルトか2ミリシーベルトの被曝線量を浴びるのだとしたら、あなたは心配することは何もありません、というのは真実ではありません。これは、ある人が、「いいかい。君が一日に一本のタバコを吸っているだけのことじゃないか。それはみんながやっていることだよ。だから心配することなんてないよ」と、言っているようなものです。

でも、健康な生活を営みたい人達、放射線に晒されたくない人達、発がん率の上昇を望まない人達、ー 彼らは、健康で核フォールアウトによる放射能汚染のない環境に住む権利を持つべきです。これは人為的なものであり、防ぐのが可能なことなのです。フォールアウトが起こったために、もうそれを防ぐことができない地域に居る人々には汚染区域を離れて別の場所へ移る選択が与えられるべきです。ーでも、そのようなことは、起こっていないのです。

8. UNSCEARのデータ解釈には疑問がある

LH:(34:32) 次の結論はナンバー8です。私は、これは、見事で控えめな表現だと思うのですが、IPPNWが

UNSCEARのデータ解釈は疑わしいと述べていることです。

AR: はい。 私たちがここで、意味していることは: それは、単に、データと仮定についての基本的な算定に関するだけのことではないし、また単に、彼らの算定の方法に関するだけのことでもない。しかし、最終的には、結論を引き出すことであり、結論として、「オーケー。これで、我々は(UNSCEARは)、何人の死亡者、もしくは、何件のがん症例数が予測されるのかを推算することができる」と、述べることができるのではないだろうか、という意味です。

しかし、UNSCEARはそういったことをしていないのです。彼らは自分達が出したデータについて真剣に考察していないのです。そうです。私たちの言っていることは、両天秤策のようなものです。一方で、私たちはUNSCEARがシステマティックに過小評価していると批判し、他方では、UNSCEARは少なくとも、自分達の手中にあるデータを利用して、それらを、人々が理解できるような方法で解明するようにせよ、と求めているのですから。

これが、住民が晒される集団線量であると人々に告げたところで、それが大いに役立つとは言えません。なぜなら、集団線量の数値をもらったところで、人々は実際、何もすることができないのです。しかし、公にアクセスが可能であるリスク係数を実際に用いて、健康影響はどうであるか、何件のがん症例数またはがん死亡をもたらすかを算定するのです。そうすれば、人々に、実際に何が予測できるのかということを教示することができます。同時に、私たちが前述しましたような要因が理由となって、おそらく、これらの予測や評価はやはり過小評価になるものと、私たちは述べなければなりません。

9. 政府によってとられた防護措置が誤って伝えられている

LH:(36:07) もうひとつ持ち出された批判というのが、政府によって為された防護措置が誤って伝えられているということですが…..。

AR: そうです。UNSCEARは報告書の中で、「もし政府が、あれだけよく住民を防護していなかったのなら、住民の被曝線量はもっと高くなっていたであろう」と言及しているのです。

日本の住民がもっと高い放射線量に晒されたかもしれないということは、明らかに事実ですが、私たちは、日本政府の素晴らしいクリーンアップの努力とか素晴らしい防護への努力とか言って、喝采を送る気にはなれないのです。なぜなら、福島で実際に何が起こったのかと言えばーこれは私たちの意見ではないのです、これは日本の国会事故調によって言明されたことなのです: 「住民を実際には守るべきであったはずの危機管理体制がまったく機能しなかった。完全なる大混乱の中で、住民は何をしてよいものか分からず、手元には何のプランもなく、首相は完全に不意打ちを喰わされた状態であった。例えば、彼は、住民に放射線の拡散状況を知らせることができたはずである、緊急時環境線量情報予測システム(Speedi)の存在を知らなかった。それどころか、ある人々は低線量の区域から高線量の区域に避難させられた。なぜなら政府の上層部において誰一人として、このシステムが存在することを知らなかったからである。」

私たちは皆、安定ヨウ素剤が、核災害によって放出された放射性ヨウ素が甲状腺へと入り込み、甲状腺がんを誘発するのを防ぐことができることを知っているのです。しかし、日本では、集団パニックを防ぐために、ヨウ素剤は住民に配布されませんでした。ですから、災害への緊急対応や避難、避難範囲やクリーンアップの取り組みに関してたくさんの問題があるのに、「全てが完璧でうまくいった。そうでなかったら災害はもっと大変なものになっていたのだ」と、実際に述べるのは、まったく有益なことではありません。

「緊急対応が如何に酷かったのか、何をもっと適切に為すことができたのか」との国会事故調の批判に、私たちも加わるということは、この時点で、まさに適切なことだと感じています。なぜなら、私たちは、50以上もの原子力サイトがあり地震多発国である日本において、核事故はいつでも起こり得る可能性があるという問題について論じているからです。それは一度起こったことなのだから、もう二度と起こるようなことはない、というようなことではないのです。私たちは、チェルノブイリから、フクシマから、ハリスバーグ(スリーマイル島原発事故)から、核災害というはいつでも、どの国でも起こり得るのだということを知っているのです。住民のための安全対策と公衆安全を改善するために、「今回は、全てがうまくいった」と、単に述べるだけのことでは何の役にも立ちません。なぜなら、そうでは、なかったのですから。

そして、明らかに、もっと酷いことになっていたかもしれないのです。そうです。日本は、言わばラッキーだったのです。風が東方に向かって吹いていたために、放射能の80%以上が海の方へと吹かれていったことで、日本の人達はラッキーだったのです。もし風が、たったの一日でも南方向へ吹いたのだとしたら、首都東京は放射性フォールアウトを被っていたことでしょう。これは、それが、どんなことをもたらしたのであろうかと想像したくもないようなことなのです。しかし、実際において、一日だけ風が北西方向に吹いたということが、今、私たちが見ているような、放射性フォールアウトの影響を受けた都市やコミュニティーにおいて、ほとんどの問題を引き起こしているのです。そうです。ある意味で、この核大災害はもっと酷いことになっていたかもしれないと言えます。

10. 集団線量推計値からの結論が提示されていない

LH: (39:27) 最後のポイントは、集団線量推定値からの結論が提示されていないということですが……。

AR: はい。私が言いましたように、UNSCEAR報告書は集団線量推定値について言及しています。これは、UNSCEARは、今後何十年間の間に、日本国民が「何人・シーベルト」に晒されるのかということを述べているわけですが、彼らは、それが人々にとって、どんなことを意味するのか、実際に述べていないのです。例を挙げてみますと: UNSCEARは、日本全国の生涯線量の集団積算線量が【48,000人・シーベルト】になると述べています。合計集団線量(生涯線量の集団積算線量)とは、フクシマ核事故のために被曝した日本における全ての人の生涯における、一人当たりの個人被曝線量の全てを加算したものです。これが【48,000人・シーベルト】なのです。

そして、国際的に認められているリスク係数を使って、これを計算しますと、日本におけるがん過剰症例数が4,000件 から16,000件になるとの結果が出ます。これは、すでに説明しましたように、過小評価されたものをベースにしているのです。

したがって、もし、実際に正しいデータおよび正しい仮定を用いるのだとしたら、この数値は、おそらく、もっとはるかに高いものとなるでしょう。しかし、UNSCEARが表示し算定している数値だけを用いるのだとしたら、4,000件から6,000件のがん症例の過剰発生、2,000件から9,000件のがん死の過剰発生を論じていることになります。

すなわち、もし、フクシマ核災害がなかったら、がんを発病しなかったであろうという人々が、フクシマ核災害が誘因となってがんを発病する、そういった人々の数が16,000人になるであろうということです。また、化学療法、手術もしくは放射線治療を受けて生き延びる人々は多数いるけれども、フクシマ核災害によって誘発されたがんのために死ぬ人々が9,000人もしくは9,000人以上ちょっとになるであろうということになります。このことは、人々に知らされなければならない事柄です。

これは、認めなくてはならないことであり、「いいかい、聞いてくれたまえ。フクシマは大惨事だったのだ。だから、こういった結果を誘発することになるのだ」と、言わねばなりません。そして、私たちができることは、ー ①実際に食物の放射能汚染を厳しくコントロールすること、②人々を、特に若年世帯と子供たちを放射能汚染地域から移住させること、③彼らが放射能汚染区域を離れるために、私たちができる、ありとあらゆる全ての支援を提供すること、④がんや他の疾病を早期発見して、より良い治療が施されるために充てられた健康管理と健康診断を提供することー によって、この数値を低減させるように試みることです。

しかし、これに関しては、ほとんど何も起こっていません。人々は、経済的要因のため、放射能汚染された地域へ帰還することを奨励されている、これが事実なのです。彼らは、これらの地域が空になってほしくないのです。彼らは、この核災害が起こったことを忘れたいのです。彼らは、人々が何事もなかったが如く、いつものように生活し続けていってほしいのです。彼らは、これから何十年間の間に核災害による健康影響が生じることを認めたくないのです。彼らは、人々が、健康被害に苦しむであろうということを認めたくないのです。私が、ここで「彼ら」と呼んでいるのは、核エネルギーからお金を受け取っている、核エネルギーの陰に潜む原子力ムラの政治家たち、核エネルギーを支持する会社、国家の規制機関を指しているのです。

「彼ら」の全てが、この大惨事を隠蔽しており、UNSCEARもこの動きの一部なのです。UNSCEARは「彼ら」を援助しています。 私たちは、科学者として医師として、このことを、すなわち、UNの組織体が実際にこの大惨事を隠蔽して取り繕っていることが、容認できないのです。

ーIPPNWによるUNSCEAR報告書の破滅的分析ー

LH:(42:44) これは、UNSCEARおよび彼らの報告書の破滅的分析ですね。あなたの評価では、UNSCEARによるこのような振る舞いは、意見の相違や彼らが用いているデータの別の解釈から来ているのことなのでしょうか、それとも、核産業を守るためのUNSCEARによる虚言やプロパガンダが多少あるのでしょうか?

AR: これは取り組む上で、とても困難なイシューだと思います。まず、UNSCEARはUNの組織体なのであるということを分からなければなりません。そして、UNの組織体として、UNの加盟国が派遣団員や代表者を、この組織体に派遣しているのです。ここで問われることは:「どの国が代表者を派遣しているのか?」ということです。それは、原子力国家です。それは米国であり、カナダであり、ドイツであり、日本であり、インドで…..あるのです。

これらの国は核エネルギーを保有しており、核プログラムを持てる能力があるのです。そして、明らかに、これらの国には、核エネルギーおよび核能力を保持していく上での既得権益があります。したがって、彼らは、核プログラムから直接出てきた科学者や、これらの核プログラムの中で育て上げられた科学者をUNSCEARに派遣しているのです。それらの科学者の中には、IAEAで専門家として働いてきた経歴のある科学者もいますし、核燃料企業で働いてきた科学者もいます。

ですから、これらの人達が核エネルギーに批判的であるとは言えません。核エネルギーや電離放射線による健康被害に関する批判的論文を発表した何れの科学者もUNSCEARに入るのを認められたことがありません。UNSCEARは、原子力国家の権益を代表する科学者達のクラブなのです。このことに人々は気づかなければなりません。UNSCEARは、独立した研究組織体ではありませんし、一方では、批判的な科学者で成り立っている組織体ではなく、他方では、核を支持する科学者で成り立っている組織体なのです。

UNSCEARは全くの核支持派です。UNSCEARのメンバーには、自分達の国で、一生涯、核産業のために働いてきた科学者達がいます。また、UNSCEARの報告書に引用されている科学者にも、やはり自分達の国で、一生涯、核産業のために働いてきた人達がいるのです。ですから、私は、彼らが虚言していて、プロパガンダをやっているとまでは言いません。しかし、彼らの思考は集団思考であり、彼らは非常に核支持派である組織からの出身者なのです。

彼らは決して異なった見解などを耳にしたことがないのです。そして、彼らは、全く逃れることが不可能であるような特定の意見/判断の偏りを持っているのです。科学において、真の科学において必要なことは、科学者それぞれが様々の異なった意見を持っていて、種々の異なった分野からの科学者達がお互いに論議しあい、実際に、各々の仮説を査定して、それぞれの見解をお互いに評価し合うことです。そうすれば、そこから最終的に出されるものが、可能な限り、真実に近い結論となるのです。ですから、私は、UNSCEARが故意に虚言しているとかプロパガンダを用いているのだとは言いません。しかし、私が言わなければならないことは、UNSCEARの情報と論文は、そのために、誰が勘定を支払っているのか、また勘定支払人はどこから来ているのかを明らかに示しているということです。

ーIPPNWの批判的分析は、メディア、政府、UNSCEARによってどのように受けとめられたか?ー

LH: (45:41) IPPNWの批判的分析はメディアによってどのように受けとめられたのでしょうか?それに対する政府からの反応はありましたか?UNSCEARはIPPNWによる批判的分析の存在を認め、それに対して応答してきたのでしょうか?

AR:  大変に興味深い質問です。私たちは、この批判的分析を公表する前にUNSCEARから連絡を受けました。去年の10月、UNSCEARは、彼らの報告書の一種のエグゼクティヴ・サマリー、ティーザーと言うかプレビューのような類のものを国連総会で公表したのです。それで私たちは、そのプレビューを読んでから、即座にUNSCEARに返答を出して、彼らに告げました。:「さて、聞いてください。私たちは、あなた方のエグゼクティヴ・サマリーを通読したのですが、私たちには、これらの点、イシューに問題があるのです。これらの点を、私たちは批判的に見ているのですが、あなた方は、私たちと意見交換をしたくありませんか?」

そこで彼らが何をしたかと言いますと、実際に、彼らは私たちの言い分を幾らか受け入れたのです。今、私たちは、彼らの最終報告に、幾つかの私たちの表現や言い分を見つけています。しかし結論は、そのまま、以前と同様です。

私たちがUNSCEARに宛てた最初の文書の中で、私たちは、彼らを、こう批判しました。: 彼らは象牙の塔に座っていて、実際に、遠方の他国に住む人々の一人一人が持つ苦悩や個人個人の状況を検討することなしに、これらの人々についての判決を下している。そして、ただ、「心配することはないですよ。全て、大丈夫になるでしょう」と言っているが、実際に福島に行って、そこの人々と話をして、彼らがどのような状況/気持ちでいるのかを尋ねることもしないでいる。

それで、UNSCEARの最終報告書で彼らが述べている結論は同じです。ー「全て、大丈夫になるでしょう」ーでも彼らは、そこに「被災者達が苦しんでいることを認識し、現地の人々の一人一人のストーリーに気を配ることは、明らかに非常に重要なことである」との文章を付け加えているのです。

ですから、私たちは、ある意味では、彼らが応答してきており、私たちの批判をいくらかは取り上げたのですが、彼らの結論においては何も変わっていなかった、と見ています。私たちは、何れにせよ、そのようなことを期待してはいません。また、UNSCEARの組織を弱めるようなインパクトを与えるようなことも期待していません。なぜなら、明らかに、彼らは、批判的思考もしくは、核エネルギーに関する批判点を許さないようなバックグラウンドから来た人達なのですから。

彼らがお金を儲け、このような地位に収まって、UN組織体の中で世界中のあちらこちらを飛び回っていられるのは、彼らが核エネルギーに批判的であるからではなく、彼らが、政府に、こう言ってほしいと頼まれたことを言っているからなのです。

私たちの論文に対するメディアの反応に関してですが: 2つの大きな記者会見がありました。ひとつはニューヨークの国連の前でヒューマン・ライツ・ナウと一緒にした記者会見と、もう一つはベルリンでの記者会見でした。

両方ともかなりよい参加者数でした。私たちの所見に関しての、テレビ出演もありました、新聞記事にもなりました、ラジオでも放送されました。

全体的にみれば、これは、とても科学的で特定なテーマですので、メインストリームメディアには余り受けません。でも、それが私たちの意図ではないのです。私は、今後何年もの間、UNSCEAR報告書が言及され引き合いに出されることになり、人々は常に、「そうだね。UNSCEAR報告者は、ああ述べているよ。こう述べているよ」と言うことになるだろうと考えています。

私たちの意図は、人々にUNSCEARとは別の見解を提供したいということだけなのです。私たちは、「そう…UNSCEAR報告書ではそう述べられているかもしれないけれど、UNSCEAR報告書に書かれていることが実際に真実なのか、私たちの批判と疑問について読んでくれませんか」と言いたいのです。私たちは、私たちが真実を自分達の掌中に握っているのだとは思っていません。IPPNWの組織は余りにも小さすぎますし、日本における何十万人という人達を対象にして、実際に、これらの人々にどのような影響が及ぼされたのかを突き止めていくための非常に大規模な研究調査を行うには、私たちのリソースは余りにも限られています。

しかし、私たちが科学者および医者として、また人間としてできることは、批判的な疑問を提示して問うていくことです。: 「これは本当に信じられることだろうか?これが本当に真実なのだろうか?」と。そして、この私たちの「問い」を理解してくれたジャーナリスト達は、私達が、- ①自分達の患者を、とにかく守りたいと試みている、②公衆衛生に害をもたらしている産業ロビーに立ち向かおうと試みている、③放射能汚染のない健康な世界を促進している、 – 医者達なのである、ということに気づいてくれたのだと、私は考えます。そして、彼らは正しく理解してくれており、私たちのメッセージを広めてくれるものと、思うのです。

私たちは、これから何年か何十年か後に、人々がUNSCEAR報告書を考察するとき、IPPNWによる批判的分析も見つけてくれ、その結果、彼らが、UNSCEARの調査結果について、より批判的で偏らない見解を、おそらく、持ってくれるであろうということを望んでいます。

ー どのようにすれば、この重要な分析に国際的注目が向けられるようになるか? ー

LH:(49:49) この重要な分析に国際的注目が向けられるように援助するために、私たちは何をすることができるでしょうか?

AR: そうですね。 今、私たちは、このIPPNWの批判分析を、この10月に催される国連総会で、UNSCEAR報告書を再検討することになっている様々な国連代表団に、実際に届けようと試みています。

個人、ブロガー、ジャーナリスト、このテーマに関わっている全ての人ができることは、この情報を広め、こう述べることです: 「そう。これがUNSCEAR報告書です。読んでごらんなさい。いろんな情報を見つけることができます。それから、これがIPPNWによるUNSCEAR報告書の批判的分析です。これは、UNSCEAR報告書の限界や問題点がどこにあるのかをよく理解するために役に立ちますよ。」

例えば、あなたの(Libbeさんの)ショーやブログ、Wikipedia記事のようなニュース・アウトレットを通じて、誰かが、この情報をもっと広く知らせることができれば、ですね。ー 私は、この情報が人々に届くことがとても重要だと思います。

この情報をもっと広く知らせることができる人とは、自分のクラス・プロジェクトのための調査をしている学生になるかもしれません。自分達の生徒に何を教えていこうかと探索している先生になるかもしれません。政策を形付けるために調査している政治家たちや彼らの助力者かもしれません。バックグラウンド調査をしているジャーナリストになるかもしれません。または、原子力発電所に近接したところに住んでいて、フクシマで何が起こったのかを知りたいと願っている一般大衆かもしれません。

これら全ての人々は、企業・産業、ロビー団体の利害関係、強力なロビー団体によって色づけされていない、そして、フクシマ・フォールアウトの結果として電離放射線がもたらす健康影響について、実際に理解しようとの意図を持った医師達や科学者達によって注釈された、「UNSCEAR報告書に対する科学的で偏りのない取り組み方」から学び、利することになるでしょう。

LH: 以上はアレックス・ローゼン、ベルリンからの電話でした。彼はドイツ人の小児科医、IPPNWドイツ支部副議長、IPPNW理事会の前副会長です。彼が言及していたUNSCEAR報告書の批判的分析は英語、独訳、和訳があります。

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2779 :140927〕

IPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン(Alex Rosen)小児科医が「IPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析」について説明:”Nuclear Hotseat” ポッドキャストから…(1)


グローガー理恵

Nuclear Hotseat ポッドキャストは、スリーマイル島原子力発電事故を体験し生き延びた女性、リベ・ハレヴィー(Libbe HaLevy)氏によって営まれているポッドキャスト・ステーションです。彼女の番組のメイン・イシューは核問題であり、彼女は核問題に関わる人達や核エ キスパートを番組に招待しインタビューしています。そして、7月22日、ハレヴィー氏はIPPNWのアレックス・ローゼン医師をインタビューし、6月6日 に公表された「IPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析」に関して様々な興味深い事柄を質問しています。

アレックス・ローゼン先生は、それに答えて、科学的/医学的な論文である「UNSCEARフクシマ報告書に対する批判的分析」を、できるだけ解りやすいように説明して下さっています。

Nuclear Hotseat Podcastによる放送、アレックス・ローゼンとのインタビュー(英語)へのリンクです:

ー 6月6日に公表されたIPPNWによるUNSCEARフクシマ報告書の批判的分析*の中で、IPPNWは「UNSCEARによる仮定とデータ は、計画的且つ意図的な過小評価であると見なされなければならない」と批判し、その理由として次の10点を挙げています; Podcastでは、HaLevy氏がAlex Rosen医師に、これらの主要点について、一つずつ取りあげながら質問していきます。:

1 UNSCEARのフクシマ報告書のソースターム推定値の妥当性に疑問を持つ
2 UNSCEARの内部被曝線量の算定に関して深刻な懸念がある
3 フクシマ作業員達の線量評価は信頼できない
4 UNSCEAR報告書は、放射性降下物による人間以外の生物相への影響を無視している
5 胎芽/胎児の放射線に対する特別な敏感性/脆弱性が考慮されていない
6 UNSCEARは非がん疾病および遺伝的影響を無視している
7 核フォールアウトと自然放射線の比較は誤解を招く
8 UNSCEARのデータ解釈には疑問がある
9 政府によってとられた防護措置が誤って伝えられている
10 集団線量推計値からの結論が提示されていない

《(注):*IPPNWによるUNSCEAR報告書の批判的分析の和訳は下のリンクに掲載されています:
https://docs.google.com/file/d/0B9SfbxMt2FYxYV9QZERZRXppaTA/edit?pli=1》

Nuclear Hotseat Podcastから:アレックス・ローゼン医師にIPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析について訊く

(日本語訳:グローガー理恵)

-IPPNWのUNSCEARに対するスタンスについてー

Libbe HaLevy(以下LHと省略): (14:20) UNSCEARに対する、IPPNWの従来の関係やスタンスは、どういったものですか?

Alex Rosen (以下ARと省略 ): UNSCEAR、国連放射線影響科学委員会は、核エネルギーや特にチェルノブイリ核大災害に対する彼らのスタンスを、IPPNWだけでなく、世界中の医師 達や科学者達によって、広く批判されてきています。そして、UNSCEARが、フクシマについて発表したステートメントやプレス・リリースを見れば、また もや、歴史、同じストーリーが繰り返されていることが分かります。私たちは、UNSCEAR報告が、現地で実際に何が起っているかということを明確に示し ているものではないと考えているのです。

IPPNWドイツは、チェルノブイリ以来ずっと、取り繕って核大災害の事実を隠蔽してきているUNSCEARのスタンスを批判しつづけてきました。 現在、私たちは、米国の支部やその他世界の12以上のIPPNW支部と共に、UNSCEARのフクシマに関する報告は間違っている、どこが間違っているの か、実際に指摘しそれを公表するために活動しています。

LH: IPPNWは論評、すなわち、UNSCEARのフクシマ報告書の注釈付き論評を発表しました。まず、この具体的なトピックにはいるまえに、質問ですが、この論評はどのように作成されたのでしょうか?

AR: そうですね。私たちは国際的な組織ですから、このUNSCEAR報告書を課題として研究している人たちが、世界中にいるわけです。主に、アメリカやドイツ の支部がこのUNSCEAR報告書について、Skypeコールをしたり、お互いに関連文献を送ったり、意見を交換しあったりして、世界中からの専門的知識 を得ています。インド、英国、オーストラリア、オーストリア、スイス、ナイジェリアのようなアフリカの支部からです。世界中の科学者達や医師らが電離放射 線の健康被害に関する専門的知識を寄せ合ってまとめ上げること、これは、実際にUNSCEARの調査結果を批判的に見つめ、私たちが誤っている、または欠 けていると見なしたことを公表するためなのです。

1. UNSCEARのフクシマ報告書のソースターム推定値の妥当性に疑問を持つ

LH:(16:28)  UNSCEAR報告書について、IPPNWの分析は、10の具体的な結論を出しています。ーその結論について、それぞれ個別的に見てみることにしましょ う。そうして、UNSCEAR報告に関して、このような結論と批判へと導いた正確な要因について説明して頂きましょう。まず一番目は、「UNSCARのソースターム推定値の妥当性は疑わしい」についてですが…。

AR:  はい。 まず私たちがUNSCEARの報告書を見て、一番最初に浮かんだ明らかな疑問というのは: どのようなファクトをベースにして、フクシマにおける健康被害 の算定をしたのか、ということです。放射能汚染を検査する上で、最も重要なパラメーターの一つは、もちろん、核事故によって、どれだけの放射性核種、放射 能量が放出されたのかということです。

国際的に、いろいろな研究組織/機関による算定もしくは推定評価が公表されています。それらは、放射能放出の数量または規模に関するいろいろな数値 を出しています。しかし、ここで、UNSCEARがやっていることは、最も信用できると主張できるような、最も中立的な情報源からの数値や、最も高い推定 値と最も低い推定値の間にある中央値をとっていないのです。

彼らは日本原子力研究開発機構の科学者達が出した放射能放出量の推定値をとっており、その値は、ノルウェー大気研究所またはオーストリア気象学中央研究所のような中立的ソースによる推定値よりも数倍低いのです。

例を挙げてみますと:UNSCEAR報告書には、セシウム137の推定値が、-放射能汚染の話をする場合、この特定の核種を知っていることは重要な ことですが-【9 PBq(ペタベクレル)】であると述べられてあります。これは、【9千兆Bq】のことです。ノルウェー大気研究所が出したセシウム137の推定値は 【37PBq(ペタベクレル)】ですが、これはUNSCEARの推定値の4倍以上になります。ここで、私たちは、ノルウェーがまったく正しくて、日本原子 力研究開発機構が完全に間違っている、と言っているわけではないのです。

私たちが言っているのは、いろいろな数値が出ているけれど、誰がこれらの数値を公表しているのか、どのような関心を持ってか、彼らの計算にはどれだ け妥当性があるのだろうかと、もっとよく検討しなければなりません。 また、フクシマ核災害の共同責任者として、国会事故調から厳しく批判された組織である日本原子力研究機構からの最も低い数値を使うということは、理に適っ ていることでしょうか?そして、もし彼らの低い推定値をとるのなら、明らかに、その数値を使った計算は、結果として、健康被害をシステマティックに過小評 価していることになります。

2. UNSCEARの内部被曝線量の算定に関して深刻な懸念がある

LH:(19:11)  内部被曝量の計算に関して深刻な懸念があるということですが……。

AR:  はい。これは、UNSCEAR報告書に関する、私たちの分析の中で取り組まれている次のイシューです:内部被曝線量の計算に関する懸念。放射能放出量を 検討した後の次のパラメーターは、放射能放出の規模ですが、これは、どれぐらいの放射能が実際に人々によって取り込まれたのかを調べたいということです。 取り込むということは、大気中に浮かぶ放射性塵を吸入したり、または、飲み物/食べ物で摂取するという意味です。

ということは、日本の特に、東北本州の汚染地域における飲食物の放射能汚染を調査し、どれだけの放射能の量が人々によって摂取されたり吸入されたり するであろうかということを検討することが、とても重要になってきます。そのためには、食物サンプルが必要になってきます。まず一番最初に、みんなの食物 の中にどれだけの放射能が含まれているのかを計算し推定するために、畑やマーケットに行って、実際にサンプルを手に入れてくることが必要です。それから、 人々が食べる量、食物の生産地を仮定する必要があります。

UNSCEARは、まず第一に、内部被曝線量の全部の計算を単一の情報源を基にして、やっています。

さて、独立した検査が為される独立した科学委員会もしくは機関を、この情報源にするということも可能なのですが、UNSCEARは、その代わりに、 内部被曝線量を算定する上で、国際原子力機関、IAEAを単一のソースとしているのです。このIAEAというのは、民間の核エネルギーを促進するために設 立されたことは、誰もが知っていることです。ですから、彼らには、実際にフクシマ核大災害の多くの弊害を明かにすることに大きな関心がないのです。

事実、IAEAのソースは偏っており、内部被曝線量の計算のベースとして、最も確実で信頼できるものとは言えないでしょう。しかし、UNSCEAR は、彼らの算定の単一のソースとして、IAEAの食物データベースを用いているのです。そして、UNSCEAR報告書のどこにも、①どのようにしてこれら のサンプルが採取されたのか、②誰が採取したのか、③どこから採取されたのか、④いつ採取されたのか、まったく述べられていなくて、ただ単に、「スプレッ ド・シート/食物のデータベース」を引き合いに出しているのですが、これらが報告書に現れてくるようなことは全くなく、「スプレッド・シート/食物のデー タベース」は、後になってから、追補のような形で公表されることになっていると、述べられてあるのです。しかしながら、このデータがどこから出たのか、そ の出所を確かめたいと願っている私たちのような研究者や独立した科学者達は、未だに、それにアクセスができない状態でいるのです。

ですから、これらの食物サンプルが、どれだけ確実な根拠を持ったものであったのかということをチェックする、またはコントロールする方法がないわけ です。私たちが分かっていることは、IAEAのデータベース(その中のある部分はWHOによって公表されている)によって示された最高レベルの放射能汚染 濃度値が、日本政府によって示された数値よりもはるかに低いということです。

ですから、私たちは、(UNSCEARが)このデータベースを唯一のソースとして用いることで、内部被曝による影響が、実際に、過小評価されている ことを非常に懸念しているのです。さらに付け加えて言うならば、UNSCEARが算定のベースにしている仮定、 ①人々が、どれだけの量の放射能汚染地域からの食物を摂取しているのかの仮定、②フクシマでは、食物の放射能汚染検査やコントロールが、どれだけ為されて いるのかの仮定 ……これらの仮定が、とにかく間違っているのです。

3. フクシマ作業員達の線量評価は信頼できない

LH:(22:40) IPPNWによるUNSCEAR報告書の論評で挙げられている別のイシューは、フクシマ作業員らの線量評価に信頼が置けないということですが…。

AR:  はい。また、これも、どのようなソースをベースにして算定するのかというポイントに関わることです。フクシマ作業員の集団について検討するとき、彼らの 健康影響を算定評価するために、作業員達に関する独立した調査データを用いるのが当然だと思うのですが…。しかし実際は、そうではなく、UNSCEAR は、単独的に東電からだけの数値をベースにしているのです。でも考えてみて下さい。東電は、核災害で破産した以前には、福島第一原発を運営していた会社な のです。東電は、日本で何基かの原子力発電所を所有している会社であり、核エネルギーで、何十億ドルでないとしても何百万ドルもの金額を稼いでいた会社で すから、この大災害をこれ以上酷く見せることには、明らかに興味を持っていないのです。

それどころか、私たちが見ているのは、東電が自分達自身で人々を雇うのではなく、しばしば下請負業者を雇っていることです。そして、これらの下請負 業者は、また更に別の下請負業者を雇うのです。ですから、結局は、東電の中で東電のために、実際に汚い仕事をやっているのは、東電の規則/基準とは、ずっ とかけ離れたところにいる人達になってしまうわけです。そうなると、これらの下請負業者たちが、放射能汚染に晒された作業員達の被曝線量を適切に測定する 安全基準を固守しているのか、それを実際に確かめることが非常に難しくなってきます。

線量計が紛失していた報告や、線量表示をごまかすために線量計を鉛のカバーで被っていた報告や、下請負業者のグループがやくざとの関係があるとの報 告がありました。ですから、これらの段階で、たくさんの疑わしい取引や頽廃があるわけです。それで、作業員たちの健康影響を算定評価する上で、使用可能な 独立性のあるデータはなし、政府からのデータは何もなし、独立した研究者達からのデータは何もなし、ただ東電自身のデータだけで、東電からの数値を単独の ソースとして用いることは、再び、システマティックに健康被害の過小評価へと導くことになります。

4. UNSCEAR報告書は、放射性降下物による人間以外の生物相への影響を無視している

LH:(24:43) IPPNWが出した別の結論は、UNSCEAR報告書が、放射性降下物による人間以外の生物相への影響を無視しているということですが…。

AR: はい。 これがどういうことを意味するのかと言いますと、私たちは明らかに人間だけについて議論しているのではなく、植物や動物についても 議論しているのだということです。そして、私たちがチェルノブイリから何を学んだのかと言えば、特に動物集団においては、もっと確実に、健康影響や何世代 にも亘った影響を証明することができるということなのです。ー 核災害が発生した時に生きており、居合わせた動物だけでなく、その動物の子孫や将来の世代においても証明することができるのです。

そして、蝶やネズミにおいては、それらの何世代にもわたる影響を研究する上で、明らかに、モルモットでない人間集団よりも、より良いチャンスに恵ま れているのは明白なことです。それで、科学者達が何をやってきたかと言いますと、ティム・モソーのまわりに大変にアクティヴな米国のグループがあるので す。ティム・モソーとは科学者で、何年もの間、チェルノブイリに旅して、鳥を捕まえたり、異なった種類の動物や、放射能汚染における、それらの健康影響を 調査し、生殖能力や突然変異に関する、幾つかの非常に有意な健康影響を発見することができたのです。このような知識の全てが現に存在しているのです。彼ら の研究は、ピアレヴューされたジャーナルで発表されており、インターネットで、それを調査することもできるのですが、そのことに関してUNSCEAR報告 書には出てこないのです。

そして、UNSCEAR報告書は、人間以外の生物相に関する実際のデータが存在しないため、このことについて考慮しなかったと述べているのです。で すから、明らかに私たちはこのことを批判しているわけです。ー 蝶に何らかの変化が起ったからと言っても、同様なことが人間にも起るとは言えませんがー少なくとも、このことは薬理学研究や他の健康研究から分かっている ことであり、そこからある推論を出すことができるのです。そうして、こう言えるでしょう:「さて、もしこのことが全ての種類の哺乳動物に起こるのだとした ら、人間に起ることだってあり得るのではないかな?」と。 特に、人間集団において立証することが非常に困難である何世代にも亘る影響が、動物集団におい ては見ることができ、証明することができるのです。このことは、少なくとも、考えるべき事柄であり、考慮すべきことです。

ここで言うべきことは: そう、動物にはこのような影響を見ている、植物にも、このような影響を見ている。ということは、人間にも同様の影響が期待 されるのではないかということです。この時点において、私たちは未だ、その影響がどのぐらいのスケールであるのかは分かりません。しかし、少なくとも、こ の研究をするための論拠は十分にあるのです。でも、そうしたことは起っていません。これが私たちIPPNWの批判なのです。私たちがUNSCEAR報告書 の批判的分析の中でやっていることは、要するに、ティム・モソーと彼のグループの幾つかの調査結果を列挙して、UNSCEARに、これらを今後のパブリ ケーションには含めてくれるようにと頼んでいるのです。

5. 胎芽/胎児の放射線に対する特別な敏感性/脆弱性が考慮されていない

LH: (27:26) 次の問題は、胎芽/胎児の放射線に対する特別な敏感性/脆弱性が考慮されていないということですが….。

AR:  そうです。 これは、小児科医である私にとって大変に重要な問題です。人間は、放射能に対して同じようには反応しません。放射能には、確率的な影響があ ります。これは、ある一定の放射線量もしくは、ある一定の放射能量を定めて、それが有害であり、それ以下であれば安全であるといった意味ではないのです。

そういったことではありません。それは、事実、喫煙について議論する時と似ています。「タバコ2本は大丈夫だけど、3本吸ったら死んじゃうよ」なん て、到底言えないことです。これは、あなたが、どれだけのチャンスを賭けるのかに、かかってくる、それだけのことです。タバコを多く吸えば吸うほど、また は、放射線への接触が多ければ多いほど、実際に病気になり、がんになるリスクが高くなっていきます。

これは、明らかに喫煙のようなもので、その人の遺伝的背景、その人自身の免疫システムに左右されます。ですから、大変によい免疫システムを持ってい る人は、放射線や他の毒素による細胞の欠陥を修復することが、むしろ得意ですし、(例えば、被曝した後などに)実際に発がんする可能性も低いのです。

例を挙げれば、免疫欠乏のある人達や免疫機能を低下させる薬物治療を受けている人達、そして、放射能の影響に対してはるかに敏感であり、まだ完全に 免疫システムが発達していない子供たちが存在するのです。そして、このことが考慮されていないのです。特に胎児は放射能に対して最も脆弱です。

これは、1950年代における研究から分かっていることです。大人は、後になってがん発症することなしに、胸部レントゲン照射を受けることができま す。しかし、母親の胎内の胎児は、放射能もしくは電離放射線に対して、とても敏感であり、従来のレントゲンからのような、ほんのわずかな放射線量であって も、その子が、がんになるリスクが、かなり相当な度合いで、高まってしまうのです。ですから、妊婦が腹部へレントゲン照射を一回受ければ、小児がんの発症 のリスクが50%増えることになります。これは、ただ一回のレントゲンの話ですが、私たちは、フクシマのもっと遥に高い線量について話しているのです。

ですから、全ての人間は同様であり、全ての子供達は同様であり、胎児や5歳の子供の間には何の違いもないと言うことによって……UNSCEAR報告 書は、 私たちが過去数十年にわたり蓄積してきた、この放射線生物学の知識を完全に無視しているのです。彼らは(UNSCEARは)、私たちが、子供、とりわけ胎 児が放射線に対して非常に敏感であることについて、まるで無知であるかの如く振る舞っているのです。この点は、私が特に小児科医として強く感じていること です。このことは修正されなければなりません。私たちが、放射線量レベルに関する自分達の勧告を、実際に最も脆弱な集団である胎児をベースにする代わり に、健康な大人、健康な男性をベースにするなんていうことは、あってはならないことなのです。

~~~~~to be continued…….次回の(2)へと続きます

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2774:140924〕

【報告】健康管理のあり方めぐり、厚労省・環境省と交渉


満田夏花

「放射線被ばくと健康管理のあり方を考える市民・専門家委員会」(事務局:FoE Japan)は、9月11日、参議院議員会館にて、環境省・厚労省交渉を行いました。下記のサイトに図と報告を掲載しました。
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/140911_report.html

交渉は、市民側は、吉田由布子さん、崎山比早子さん、山田真さん、阪上武さん、瀬川嘉之さん、温品淳一さん、木本さゆりさん、中井ゆみこさん、伊藤恵美子さん、きくちゆみさん、福島から、高橋誠子さん、橋本さん、田口さん、人見やよいさん、森園かずえさんなどが参加しました。満田が司会進行を務めました。
福島みずほ議員が同席してくれました。
名前上げきれなかったので、漏れていましたらすみません。

交渉の背景については、以下のURLにまとめています。
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/911-1030-4438.html

OurPlanet-TVで当日の模様をみることができます。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1831
冒頭の吉田さんのプレゼン、13分くらいからの厚労省とのやりとりは、ぜひご視聴ください(後半の環境省とのやりとりは、ダメダメな感じですが)。

まず、主催の市民・専門家委員会の委員で、チェルノブイリ被害調査・救援 女性ネットワークの吉田由布子さんが、短いプレゼンを行いました。
(たいへんすばらしいプレゼンで、パワポ資料も貴重なものなので、ここだけでもぜひご覧ください。本メールの末尾にプレゼンのポイントを記しました。)

その後、厚労省・環境省と質疑を行いました。

【厚生労働省】
質問:
福島県では福島原発事故当時18歳未満であった人々に約、30万人の検査で、甲状腺がんないし疑いが103名出ている。福島県立医大は原発事故との関連はないとしている。一方、一部医療者の間で「過剰診療」と言った言説も出ている。
福島県立医大で手術された54例のうち、8割の45名は腫瘍の大きさが10ミリ超かリンパ節転移や肺転移(2名)があり、残り9名は腫瘍が10ミリ以下で転移はないものの、うち7名は「腫瘍が気管に近接など」のリスク例、2名は経過観察でもよいと判断されたが、本人や家族の意向で手術したとされている。手術した54
名の約9割が半摘ということである(2014年8月29日、日本癌治療学会にて福島
県立医大の鈴木真一氏発表)。
福島県で発見されている甲状腺がんについて、保健・公衆衛生、がん検診の見地から、厚生労働省のお考えを伺いたい。

回答:厚労省としては、がん検診については、科学的見地を踏まえて行うべきという立場。
甲状腺癌については、一部検診が実施されているが、成人において死亡率減少のエビデンスが得られていない。過剰診断による不利益の指摘もある。
子どもについてはいまのところ十分な科学的なデータの集積がない。今回の状況については、注意深く推移を見守っていきたい。

吉田由布子さんから「おとなの死亡率が高くないといっても子どもはわからないのではないか」「チェルノブイリの状況をみても、子どものうちに甲状腺癌になった子どもたちがその後さまざまな健康影響が生じたりもしている」「いつまでデータを集積されるのでしょうか」といった指摘がありました。
山田真先生が、「福島の子どもたちのことが心配ではないのですか?」という問いかけが印象的でした。

厚労省の藤下課長補佐は、この問いかけに対して、かなり真剣になって、答えてくれたと思います。今後の厚労省の対応をフォローしていきたいと思います。

質問:福島県民健康調査検討委員会や環境省の「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康診断のあり方に関する専門家会議」では、がん検診のあり方にまで言及されていまる。しかし、現在の事態は既に環境省の対応する範囲を超え、日本の保健・公衆衛生、がん検診を担当する厚生労働省が、早急に研究班の設立などを行い、対応を示さなければならない問題であると考えるがいかがか。

回答:あらたながん検診をはじめるには、死亡率が低下するというエビデンスや、不利益がすくないという根拠がなければならない。

質問:福島原発事故後の住民の健康管理体制の構築に当たっては、省庁横断的に取り組むべきであると考えられるがいかがか。環境省との連携はどのようにされているか。

回答:省庁横断的に取り組むべきという点については、その通り。厚労省は、福島県民健康調査委員会、環境省専門家会合にもオブザーバーしている。

【環境省】 環境省とのやりとりは、かなり空虚な部分が多かったため、記録する価値のある部分だけについてポイントをまとめます。

質問:
福島原発事故後の住民の健康管理に関する所掌が、厚生労働省ではなく、環境省に置かれたのは、なぜか。法的根拠などが存在するのか。その場合、その箇所を示されたい。

回答:もともと、環境基本法、環境省設置法で、環境省は公害の予防を所掌することになっているが、その中に、「放射性物質を除く」という文言があった。このたび、平成24年の原子力規制委員会設置法により、その「放射性物質を除く」が削除されたため、放射性物質による健康被害の未然防止も環境省が所掌することになった。

注)しかし、これは厚労省が所掌しないということに対する説明ではないように思います。さらに、福島における甲状腺癌の増加は、「放射性物質の影響ではない」というのがいまのところの政府見解であり、環境省の専門家会合も結論こそだしていませんが、そのような方向性でまとめようとしています。矛盾しています。もう少し我々側での法的検討が必要かもしれません。

質問:
復興庁、内閣官房、外務省、環境省は、2014年8月17日、「放射線についての正しい知識を。」と題する全面広告の政府広報を出した。
これは中川恵一氏の談話の形式をとり、「100mSv以下の被曝ではがんの増加は確認されていない」「原爆被ばくの遺伝的影響はなかった」などの内容であるが、誤りもしくは根拠不明な記述が散在しており、問題が多い。我々の税金で、このような広告を出されては困る。この根拠を示してほしい。

環境省:すぐには答えられない。なお、当方は、この広告の内容を事前には確認していなかった。

市民側:しかし環境省名で出ている。事前に確認していないわけはない。担当部署は、「射線健康管理担当参事官室」のはず。これについては、後日、再度、質問を送らせていただく。

質問:
「福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方」に関して、被災当事者や一般市民の声を聴く場を、環境省として正式に設けるべきだと考えるが、いかがか。少なくとも標記専門家会議の取りまとめ結果についてはパブリック・コメントに付すべきだと考えるが、いかがか。

環境省:専門家会議とも諮り、検討する。一方で、早く取りまとめを行わなくてはならない。

市民側:今までダラダラと線量評価ばかりやってきていた。今になって急がねばならないことはないはず。それとも来年度の概算要求に反映するという明確な方針があるのか。

環境省:そのような方針はない。

※環境省の専門家会議は、どうやら、「何もやる必要はない」という結論ありきで開催しているような疑惑が生じています。

質問:
8月27日に示された「健康管理のあり方に関する主な論点(案)」に関して、これまで委員、外部専門家、市民等から指摘のあった、以下の事項が含まれていないのはなぜか。

①甲状腺がんや心の健康以外の多様な疾病に着目した健診項目の拡大
②避難区域からの避難者向けに行われている健診の地理的拡大
③福島県外での健診の実施

環境省:これから、専門家会合の委員の指摘も踏まえ、改定していく。

市民側:これらの点をぜひ明確に盛り込んでほしい。

環境省:ご意見として承る。

※そのほか、専門家会合で招聘された外部専門家からの意見が反映されていないことや、「健康リスク評価の各論点に関するこれまでの議論」(第9回会議・資料2)の問題点などを具体的に指摘しました。詳細は、以下の質問書の「6.」をご覧ください。
https://dl.dropboxusercontent.com/u/23151586/kankyosho_korousho_shitsumon.pdf
しかし、環境省からは、「ご意見として承る」という回答しか得られませんでした。

最後に、市民側として、以下を要請しました。

・長瀧座長は、外部専門家の意見を無視し、強引な議事運営が目立つ。低線量被ばくワーキングのときも、招聘された外部専門家を威嚇するような態度であった。委員会の構成を抜本的に見直すべき。

・診療報酬に放射線障害が対象として記載され、一定の検査ができるようにしてほしい。

政府側対応者:
<厚生労働省>
・健康局がん対策・健康増進課 藤下課長補佐
・ 同 中川係長
・大臣官房厚生科学課健康危機管理・災害対策課 姫野室長
・ 同 亀山補佐
・ 田中主任
<環境省>
・環境保健部放射線健康管理担当参事官室 参事官補佐 鈴木・後藤・藤井

※当初、直接「専門家会議」に実質的にかかわっている佐藤参事官補佐が出席予定だったのですが、「急用ができた」ということで、鈴木さんがピンチヒッターとして出席されました。
鈴木さんはおそらく誠実な方で、批判することは申し訳ないのですが、それでもまったく内容的なことは答えられませんでした。

以下は吉田由布子さん(「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク)のプレゼンの主たる内容です。画像はすべて吉田由布子さんのパワーポイントファイルからの引用です。

・東電福島事故とチェルノブイリ事故(初期避難者は除く) 実効線量は変わらない。むしろ福島の方が高め? ・UNSCEAR2013年報告による 大気中ヨウ素131の拡散状況を見ると プルームは何度も福島県の県境を越えて、広範囲にわたって広がっている。関東にも達している

(UNSCEAR、アニメーション 2011年3月11日18時~4月1日01時)
http://www.unscear.org/unscear/en/publications/2013_1_ATT.html

・環境省の専門家会合は、以下の点で問題あり。
– 長時間の議論で、現段階でのデータの不十分性・不確実性が浮き彫りにされた。断定的評価は無理。原爆もチェルノブイリも線量把握と評価、線量再構築に長期間を費やしている。今後も線量再構築に向けた情報収集と分析が必要。
– 健康管理については、やっと議論が始まったばかり。外部専門家の意見は考慮されていない。被爆者援護法やチェルノブイリの健康管理に学ぶことは多いはずだが、論題に載っていない。

・一方、福島1県で子ども・未成年層に103名もの甲状腺がんまたはその疑いのある者が見つかっているが、国(厚労省)として何らの評価や対応もない。
・チェルノブイリ原発事故後、甲状腺がん以外、あらゆる疾病が増加した。

・私たちは、もっとチェルノブイリ原発事故後の対応や、「被曝者援護法」に学ぶべき。

・福島原発事故によって被曝した人たちに対する健康管理体制は、福島県民に限られていたり、避難指示区域と区域外に健診の内容に差があったり、合理的ではない。

・予防原則および「子ども・被災者支援法」に のっとり、 (1)健診エリアの大幅な見直し (2)健診項目の大幅な拡充 (3)居住地選択の権利の保障、保養を含めた 総合的支援 (4)科学的な検証に活用可能なデータベース の構築 (5)国の責任による一元的取り組み (6)被災者の信頼を得られる体制の構
築 これらの実現を!

以上、吉田由布子さんのプレゼン内容より。

個人線量計での被ばく管理に異議! 報告


満田夏花

FoEジャパンから賛同署名を呼び掛けていました「個人線量計での被ばく管理に異議!除染以外の被ばく低減措置を」につきましては、短期間の間に662名の方のご賛同およびたくさんのメッセージををいただき、ありがとうございました。
引き続き、下記より賛同署名を募集していますので、どうぞよろしくお願いいたします。
http://www.foejapan.org/energy/news/140814.html

18日、崎山比早子さん、吉田由布子さん、青木一政さん、阪上武さんに同行していただき、環境省・復興庁に要請書および署名を提出に行きました。その後、1時間ほどやりとりをしました。以下簡単に概略を報告します。
要請項目1:
政府の除染対策地域の指定基準および除染目標として、少なくとも空間線量率0.23μSv/h基準を堅持すること。

環境省:除染の長期目標としての年1mSv、その推定値としての空間線量率毎時0.23マイクロシーベルトを維持することには変わりない。汚染状況重点調査地域の基準も0.23マイクロシーベルトを維持する。
一部報道で、除染の目標値を緩和するとしているのは、報道の間違いである。今回の「中間報告」では、個人線量計と空間線量率の関連についての知見をまとめたもの。

当方より:
・報道が間違えているということであれば、報道側に訂正を求めるべきではないか。
・放射能が環境中に拡散しており全方位から照射される場合にはガラスバッチの測定結果は過小評価となる。
・報告書では個人線量計の値について、各地域の平均値がとられており、最大値が示されていない。
・そもそも、ガラスバッチを家の中や車内に放置している人も少なくない。
・何よりも、「場の規制」に加えて、どうしてもその場に入らなければならないときに個人線量計で管理するのが基本なのに、それをごっちゃにしているのは問題ではないか。個人に被ばくの責任を負わせるのか。

環境省:報道には、根気よくこちらの考えを説明していく。その他のご指摘は検討する。今回はあくまで「中間報告」に過ぎない。

要請項目2:
除染により0.23μSv/hが容易に達成できないのであれば、住民の健康リスクを極力低減させるために自主避難者への支援、移住の支援、保養推進、保養計画への援助、検診の充実などあらゆる取り組みを充実すること。

復興庁:子ども・被災者支援法の基本方針は、これで終わりというものではなく、さまざまな意見を反映していきたい。避難指示のでていない地域のみなさんからはどのような要望がでているのか?

当方:子ども・被災者支援法をめぐっては、被災当事者の意見を復興庁に届け続けて、結局はきいてもらえなかった。
復興庁として、被災当事者・支援者との協議の場を設けてほしい。被災者・避難者への支援、健康調査の内容を改善すべき、地理的に拡大すべき、抜本的な住宅支援制度を確立すべき、保養に関して国として取り組むべきなど、多くの要望がある。

復興庁:復興庁としてそういう場を設けるということではなく、みなさんの設ける場に行って、要望をきくことをしている。

当方:復興庁はそう言い続けて、確かに市民団体の主催する場にはきてくれたが、その場できいているだけで、政策には反映してくれなかった。

当方:基本方針の見直しについて、内部で議論は行われているのか?

復興庁:「住宅の問題についてなど、検討した。借上げ住宅制度は、1年延長が実現した。

当方:抜本的な解決ではない。復興庁として、積極的に被災者の要望をきく努力を。

要請項目3:
「場の線量」と「個の線量」の二重の防護の考え方の堅持。ガラスバッチ配布による個人線量重視の被ばく防護の考え方は取らないこと。

環境省:「場の線量」には限界もある。それぞれの場所によって違う。より、住民の方々の安全のために、個人の被ばく量の着目した。

当方:労働安全衛生法・電離放射線安全規則では放射線業務従事者の被ばく防護のために「場の線量」と「個の線量」の二重の被ばく低減策を取ることを事業者に求めている。事業者は年間5mSv以上(空間線量)となる恐れのある場所を放射線管理区域として指定し労働者がみだりに立ち入ることが無いよう管理すること
を求め、その上で業務の都合上一時的に立ち入る場合にその労働者個人の被ばく量(個人線量)を管理することを求めている。
「場の線量」を軽視することは、そういった放射線防護の既存の法律を蔑ろにすることになる。
繰り返しだが、除染以外の被ばく低減策、避難・保養への支援をご検討いただきたい。むだな除染については見直すべき。

当方:なお、昨日、朝日新聞・毎日新聞などに出た政府広報の全面広告は、ひどいもの。科学的な根拠も示さす、福島原発事故の健康影響を過小評価する中川恵一氏などのコメントを掲載する内容だった。
(復興庁、内閣官房、外務省、環境省)
このようなことに国税を使うことは大問題である。

環境省:違う部署なので、答えられない。

対応者
環境省 水・大気環境局 放射性物質汚染対策担当参事官室
参事官補佐 玉谷雄太さん
復興庁 法制班 参事官補佐 中村崇志さん

同要請書については、引き続き、賛同を集めています。みなさんご協力をよろしくお願いいたします。

http://www.foejapan.org/energy/news/140814.html
(フォーム1)https://pro.form-mailer.jp/fms/36d661ea63542
(フォーム2)https://pro.form-mailer.jp/fms/004558b363576

マンガ「美味しんぼ」への福島県の対応に対して異論・反論を!


佐々木慶子

みなさま

私は福島市在住の佐々木慶子です。

去る4月28日と5月12日発売の雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」掲載の漫画「美味しんぼ」に対する執拗な程のバッシングは異常・異様としか言いようがありません。これこそ民主主義の根幹に関わる「言論・表現の自由」を脅かすものと言えます。

この度、福島県はこの「美味しんぼ」に対して、「遺憾の意の表明」を行いました。

「美味しんぼ」の表現に対して「共感」の意を伝える多くの県民もいる中、公正であるべき自治体が自分たちに不都合と思える論を封じ込めるような態度は不謹慎と言わざるを得ません。

私たちは未曾有の原発事故被災県民としての自由な言論を封じるかのような福島県の対応を看過してはならないのではないでしょうか

以上の理由から、私は「ふくしまWAWAWA-環・話・和ーの会」として以下の内容を盛り込んだ申し入れ書を福島県に届けます。みなさんもそれぞれの立場から、できればグループや団体として異論・反論を

福島県秘書課
024-521-7005/FAX 024-521-7900
に文書(又は電話)で伝えませんか。

現時点おいて、被曝と健康被害については医学的にも科学的にも因果関係が立証できないことは事実です。「安全」とも「危険」とも断言できないのであればなおさらのこと、グレイゾーンを含めて様々な意見が出て当然です。事実に真摯に向き合いしっかり論議する必要があるはずです。異論にしっかり耳を傾け自己の考えや利害関係に惑わされない冷静な論議が必要です。この中で双葉町前町長や福島大学准教授も実名で見解を述べています。彼らの見解は多くの県民の共感を得るものであり、一方的に断じられるもの
ではありません。

この度、福島県はこの「美味しんぼ」に対して、「遺憾の意の表明」を行いました。現段階で、一方の論を封じ込めるような意思表明は時期尚早であり、厳に慎むべきです。公正であるべき自治体として取るべき対応ではないと思います。

一人一人が小さくてもいいから声を上げ、一歩踏み出すことが今、問われています。

お互いがんばりましょう!