ガラスバッジは福島のような全方向照射では3-4割低めに検出する


福島老朽原発を考える会

1月15日に伊達市議会議員政策討論会(放射能対策研修会)が開かれフクロウの 会の青木一政と(株)千代田テクノル執行役員線量計測事業本部副本部長佐藤典仁氏が講師としてそれぞれ講演を行いました。同政策討論会は同市議会基本条例 にもとづく公式な会議で市会議員全員が出席する会議です。

この場で、千代田テクノル佐藤氏がガラスバッジは放射線管理区域で使うもので前 方からの照射を前提としているため、福島のような全方向照射では身体による遮蔽効果により約30-40%低くでるとの説明を行いました。福島県内の各自治 体ではガラスバッジによる住民の被ばく量測定を行っていますがこれはガラスバッジの本来の使い方から逸脱したもので、これで住民の被ばく量管理を行うこと は問題であることが明らかになりました。ましてガラスバッジによる測定結果で住民の被ばく量は予測計算より少ないとして除染基準を緩和するような動きは極 めて大きな問題です。

私達はあらためて政府の「個人の被ばく線量重視」「個人線量計による被ばくの自己管理」の動きに対して抗議するとともに、「場の線量」と「個の線量」の二段構えでの住民の被ばく防止の考え方を堅持することを要求します。

伊達市民の働きかけにより実現した今回の放射能対策研修会
伊達市は市民約5万3千人のガラスバッジ調査で個人線量は十分低いとして、空間線量率が0.3~0.6マイクロSv/h程度でも追加被ばく年1ミリSvは達 成できるとした報告書を2014年8月に発表しています。この調査結果も踏まえ仁志田伊達市長は、従来からの持論である線量の低いCエリアの除染は不要と の立場に固執しており市民からの批判が高まっています。

こうした流れの中で伊達市議会放射能対策研修会というフォーマルな場でフクロウ の会/放射能測定プロジェクトの青木一政が伊達市議会議員研修会の講師として招請され1時間ほどの講演をする機会を得るに至りました。伊達市のお母さん方 の議会への熱心な働きかけにより実現したものです。伊達市民の方々の熱意ある取り組みに敬意を表したいと思います。

ガラスバッジによる被ばくの自己管理について、私たちはこれが住民に対して被ばくリスクを強いるものであるとして批判し環境省等への要請行動を行って来ました。この動きについては下記をご覧ください。
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2014/08/post-0694.html
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2014/06/023-1d4b.html

熱心な研修会でのプレゼンと質疑応答
市議会議員ほぼ全員がそろう中で私からは「福島原発事故による放射能汚染-健康リスクをどう考えるか」と題したプレゼンを行いました。

※プレゼン資料はこちら(容量の関係で4つに分割します)

プレゼン資料1 甲状腺検査結果をどうとらえるか」

プレゼン資料2 チェルノブイリ事故の健康影響」

プレゼン資料3 ガラスバッジによる被ばくの自己管理は妥当なのか」

プレゼン資料4 尿検査・大気中塵埃調査・将来起こるかもしれない健康被害を防ぐために
私のプレゼンは焦点のガラスバッジによる被ばく量の管理の問題だけでな く、福島県での甲状腺がんの発生状況やチェルノブイリでの健康影響、チュエルノブイリと比較した伊達市の汚染状況などについて分かり易く説明することに心 がけたつもりです。議員の方々は皆さん熱心に私の報告を聴いてくださり、全体として理解していただけたのではないかと思います。

ガラスバッジは福島のような全方向照射では0.6-0.7倍になると説明-千代田テクノル
私の講演と質疑応答の後、(株)千代田テクノル線量計測事業本部副本部長で執行役員の佐藤典仁氏から「ガラスバッジの測定結果について」というプレゼンが行 われました。報告の結論としてガラスバッジは「全方向から放射線が入射する場合は周辺線量当量(空間線量のこと)の0.6~0.7になると説明があり、私 たちが指摘していたことについて認めました。ただ説明は専門技術的なもので市議会議員の方々にはやや難しいのではなかったかと思います。
高橋一由議員が「ガラスバッジは放射線の入射する方向により身体の遮蔽により低 く出るという報告があるが実際のところどうなのか」と重ねて質問したのに対して「ガラスバッジは放射線管理区域で使うもので福島のような全方向照射では 30%低くでることをきちんと考えず配布した」として謝罪の言葉*があり、「事故直後の混乱時期に、安全を売り物にする企業として福島の方々に少しでも役 立てばと思ってガラスバッジを使ったが配慮が足りなかった」との発言がありました。

*たとえば病院でのX線撮影の場合、ガラスバッジを身に付け撮影をする放射線従事者は決まった一点から放射線を受ける可能性があるだけです。フクシマの事故では、環境中に飛び散った放射性物質により、私たちは上下左右、360度からの被ばくを毎日強いられています。目に見えないだけで、地面や屋根、そして大気中浮遊塵や放射性物質が付着した衣類・髪などから外部被ばくをしています。今回の0.6-07倍という値も水平方向で全方向としての計算で、上下方向からの入射を考慮したものではありません上下方向からの入射を考慮すれば「実効線量と同等だった」(**参照)という千代田テクノルの説明もまだ過小の可能性があります。ガラスバッジで測るやり方が毎日被ばくをしながら暮らさざるを得ない住民の現実感覚からすれば極めて不十分なものです。このような情報を今まで積極的に発信してこなかった千代田テクノルの責任も大きいと考えます。

また菅野善明議員から「30%程度低く出ても検証の結果、実効線量と同等だった という説明**があったが子どもの条件で確認したのか」という質問に対して、「やっていません」「というか実は子どものファントム(検証用の人体模型)を どのようなものとすべきか決まっていない」と率直に認めました。

**実効線量とは個人の臓器毎の被ばく線量を計算しそれに係数をかけ足し合わせたものであり、体格や年齢、性別など個人毎に異なるため実際には個人ごとの実効線量を測定することはできません。そのため実際の測定は実用量として空間線量率を測るサーベイメーターや個人線量を測るガラスバッジ等の個人線量計の値が使われます。個人ごとの実効線量のバラつきを考慮して、実効線量<実用量と いう関係が常に成り立たなければならないということになっています。今回の千代田テクノルの説明では検証の結果、低めに出てしまう全方向照射での測定結果 は実効線量とほぼ同等だった、という説明でした。しかしこの検証は大人の条件でしかやっていなかったことが菅野議員の質問で明らかになったわけです。

問題は個人線量計で被ばくを自己管理させようとする政府・環境省の方針
子どもを含め住民がこれから長期にわたる被ばく量を管理するための測定として、環境中に放射能が散らばって全方向から放射線が入射するにもかかわらず、前方 からの入射を前提とする放射線業務従事者用のガラスバッジを使うことそのものが大変無謀なことであることが今回の説明から明らかになりました。

さらに子どもの被ばく量を検証するためのファントムによるテストは、ファントム そのものがどのようなものにすべきか明確にさだまっておらず、検証テストをやっていないというのは、健康や生命にかかわることですので大きな問題です。ま してガラスバッジの測定結果をもとに住民の被ばく量を推定しそれをもとに除染基準を決めるというのは言語道断です。

これらについて遅きに失したとはいえ、率直に問題点を明らかにした千代田テクノ ルの今回の対応は評価したいと思います。むしろ問題はこうした測定器の誤った使い方だけでなく、個人でバラつきのある測定結果を強引に平均化してその結果 で除染基準を緩めようとしたり、電離放射線障害防止規則にある「場の線量」と「個の線量」の2段構えでの被ばく防護の考え方に反して、「個人線量重視」で 個人線量計配布による被ばくの自己管理の方針をとる政府、環境省、伊達市などにあります。

住民の被ばく低減のために政府自治体はあらゆる取り組みをすべき
ガ ラスバッジによる測定の問題点の説明はどうしても専門的技術的なものとなり素人には必ずしも分かり易いものではありませんでした。ただ、大枠では私たちが これまで指摘してきたガラスバッジの測定結果を元に除染基準の見直しをするようなことはおかしいということが、多くの議員の方々には理解されたのではない でしょうか。
これまで私たちが主張してきたことは
(1) 政府の除染対策地域の指定基準および除染目標として、少なくとも空間線量率0.23μSv/h基準を堅持すること。

(2) 除染により0.23μSv/hが容易に達成できないのであれば、住民の健康リスクを極力低減させるために自主避難者への支援、移住の支援、保養推進、保養計画への援助、検診の充実などあらゆる取り組みを充実すること。

(3) 「場の線量」と「個の線量」の二重の防護の考え方の堅持。ガラスバッジ配布による個人線量重視の被ばく防護の考え方は取らないこと。

の3点です。これにもとづいて伊達市でも他の自治体と同じようにCエリアでも除 染を行うべきだと考えます。さらに除染だけでなく住民の被ばくを下げ健康リスクを下げるためのさまざまな取り組みを取るべきと考えます。このことは伊達市 にとどまらず放射能汚染が拡散した東日本全域に言えることです。今回の結果が各地での被ばくリスク低減の動きにつながることを期待しています。

放射能のまとめ:土壌の中のセシウム137


竹内雅文

 

土壌の中に入ったセシウム137がどういう状態になっているかを考えるには、まず、土壌というものがどういうものであるかを、見ておく必要があるでしょう。

土壌の主成分は、粘土鉱物と呼ばれる細かい粒子と、岩石の細片、そして有機物と水分です。土の中の無機的な部分を見ていく時には、粒子の大きさに応じて、粗砂、細砂、シルト、粘土というような区分が行なわれるらしいのですが、私たちが「土」と感じているものは、粘土質を中心としたもので、粒子が大きくなると、「砂地」という感じになっていきます。粘土と呼ばれるのは、直径2μm以下の細かい粒子ですが、「粘土鉱物」というのはその粘土の組成をさらに細かく見ていく時に出てくる概念です。

地球の長い歴史の中で、地表近くに岩石として生成されたものが、風化、侵食などを経て、粉々になってできあがったものが、土壌の中の無機質細粒であると考えておくことにします。その主成分としての粘土鉱物は、珪素、アルミニウム、酸素などからできているのですが、その中心となる酸素と珪素との結合の仕方をモデル的に示すと、珪素を中にした四面体構造になっているというように、どんな解説にも必ず書かれていますので、ここでもそういう模式図を載せておくことにします。

ele10この「珪素四面体」と呼ばれるものには、たいへんに強固な結合力があって、土壌の温度として通常、考えられる温度のもとでは、絶対に壊れません。そして、四面体の頂点にある酸素を共有しあうことによって、四面体どうしが無限に結合して、ほぼ平面に近い形状の結晶的な強固な構造物になります。その結合の模式図を載せておきます。

この四面体が多数集まって、珪酸塩鉱物というものの骨格を作っています。その時、四面体と四面体とは、酸素を共有することによって、平面的に幾らでも繋がっていきます。こうした珪酸塩の薄い層と、アルミニウム化合物の薄い層が、粘土では交互になって重なっているものらしいですが、山などにある粘土が層のように剥がれることがあるのも、そうした構造のためです。

さて、この結合の模式図を見ていただくと、酸素が六角形に結合している様子が分るかと思います。ここには3個だけしか描いてありませんが、実際には、幾らでも上下左右に繋がっています。蜜蜂の巣のような形になっているわけではありませんが、それでも、この六角形の中は穴になっていて、つまり、ここに元素が1つ入り込める部屋があるのです。

ele11カリウム、アンモニウムなどの陽イオンがやってくると、ここが空いていれば入り込むのですが、いったん入ったものはなかなか抜け出ることがありません。鉱物側はマイナスに帯電しているので、電気的にガッシリ結合してしまうらしく、単に、穴が空いているから入っているということではないようです。これを粘土鉱物によるイオン固定と言っているようです。セシウムもここに入り込みます。いったん入り込んで固定されたセシウム137は、なかなかこの「珪酸塩鉱物」の外には出ていかないのです。

粘土に入り込むこうした陽イオンをカチオンと呼ぶことになっているようですが、カチオンには順位のようなものがあります。H>Ca>Mg>KNH 4>Na というような順位ですが、セシウムはカリウムと性質の似た元素で、粒子の大きさとしてもほぼ同等ですので、Kと書いてある位置にセシウムを嵌めて考えて差し支えないようです。そこで、Mgイオンなどが作用すれば、僅かながら、固定されたセシウムが溶かし出されることもある、ということになります。

セシウム137が入り込んだ土壌に、雨が繰り返し降れば、土壌の中のセシウムはどんどん下の方に移動していきそうに思えますが、実際にはそうなりません。特に、粘土質の土壌では移行が遅く、チェルノブイリ事故後の観察でも、そうした場所では年に1mm程度しか下っていかないことがあるようです。そういう現象は、粘土の水捌けの悪さなどから説明されるものではなく、こうした「固定」によるところが大きいわけです。

放射能のまとめ:β線の挙動


竹内雅文

ele07

セシウム137が崩壊すると、核から電子が飛び出してきます。セシウム137という不安定な人工元素は、ウラン236が壊れてできたもので、陽子の数に比較して余分な中性子を原子核内に抱えています。この中性子を陽子に変身させることによって、安定に向かうのですが、こうして陽子が1つ増える時、同時に電子が1つ、核内で生成されます。プラスが1つ増えると、マイナスも1つ増える必要があるのです。

この電子は、通常原子核の周囲にあって原子を構成している電子と違って、強い運動エネルギーを持っていますセシウム137の不安定な原子核が抱えていた余分なエネルギーを、電子の運動エネルギーとして吐き出すのだと考えれば良いようです。この時の、吐き出し方に2種類あり、電子が全面的に抱えて飛び出していく時と、かなりのエネルギーをなお核内に残したままにしておく場合とがあります。

全面的に電子が抱えて出ていく時には、運動エネルギーは最大で1 117 keV ほどになります。約112eVということです。« eV »は電子ボルトという単位ですが、1電子ボルトは「自由空間内で電子1つが 1V の電圧で加速されるときのエネルギー」と定義されています。カロリーに換算すると、10のマイナス22乗分の3,83カロリー、というような小さな値になります。

こうして、エネルギーを全面的に抱えて出ていくのは、20回に1回くらいで、それ以外の場合は、最大で514 keV、約51eVです。原子核に残ったエネルギーは、後刻、光子として放出されることになります。この、最初に飛び出していく電子をβ線、後から飛び出していく光子をγ線と呼ぶことになっています。

この飛び出した電子は、空間に存在する様々な原子と次々に反応していきます。原子の中にこの強い運動エネルギーの電子が飛び込んで来ると、原子核の外側に幾層かに分かれて存在する電子のうち、どれか1つが弾き飛ばされます。この時、β線側の電子は、その運動エネルギーを3eV程度、消耗すると言われています。そうして、エネルギーを減衰させながら、次から次へと、原子にぶつかっては、その外殻の電子を弾いていくわけです。

ele08β線が通過する原子の中には、陽子と電子があって、それぞれがプラスとマイナスになっています。プラス側、つまり陽子には、通過する電子を引き寄せる力があり、マイナス側、つまり電子には、遠避ける力があります。そこで、β線はクネクネと曲がりながら、原子の中を通過します。曲がる時にはx線が出ます。その際にも、運動エネルギーは減衰します。

運動エネルギーを失なえば、そこで電子は止まります。運動エネルギーの数値として挙げた1 117 keVとか514 keVとかは最大値で、不定です。原子を損傷する毎に3eV減衰し、それ以外にも減衰の機会はあるわけですが、止まるまでに10数万個の原子を間違いなく損傷するということです。

地面からβ線が出ているとして、空気中を飛んでくる電子は、大気中の分子を次々と通り抜けるわけで、だいたい12mで止まってしまうようです。

もっと稠密な物質の中ではもっと短い距離でエネルギーを失うわけです。金属の塊の中ですと、1 mm強でだいたい止まるようです。ですから、かなり薄い鉄板とか、アルミ板とかで、だいたい、遮蔽できることになります。ゴム板のようなものでも、そこそこの厚みがあれば良い、ということのようです。

ですから、汚染された地面の上を歩く時には、しっかりとした靴底のある靴を履くのが大切だということになります。それで真下から来るβ線はほとんど遮蔽できますが、斜めからも当然、電子は飛んできますので、半ズボンとか、ミニスカートとかは避けるべきでしょう。布では完全に遮蔽できないと思いますが、しっかりしたズボンならば、電子のエネルギーをそれなりに減衰させると思われます。

ele09吸引や飲食によって体内にセシウム137が入ってしまった場合には、体内の組織内で、電子が次々と原子を破壊していくことになります。筋肉内では、電子を10数万個弾き飛ばすのまでに、だいたい10mm程度移動して、そこで止まるようです。この途中で弾き飛ばされた電子は、また別の電子に当たって連鎖反応的に原子を壊していきます。こうして弾き飛ばされていく電子にも破壊力があるわけなので、これをδ線として扱う説明も見受けますが、核から出てくる放射線と同列に扱うのは、やや没論理的な感じがします。ただ、ここでは図解の中に入れておきました。有害であることに間違いはありません。

人体の60%以上が水分ですが、体内に入ったセシウム137から出るβ線によって水の分子を結合させている電子が弾き飛ばされると、-OHというような遊離した基(=フリーラジカル)が大量に出現することになります。こうした生成物による害については、また別項で扱うことにしましょう。

放射能のまとめ: セシウム137/バリウム137


竹内雅文

セシウム137からはどういう放射線が出てくるのか、また、放射線が出るというのはどういうことなのかを、まとめてみました。

セシウム137は自然界にはもともと存在しなかった不安定な元素で、いずれは崩壊して安定な元素に変ろうとします。ほぼ30,2年の間に、半数のセシウム137が崩壊すると言われていて、これがセシウム137の「半減期」です。この崩壊の時に、強い運動エネルギーをもった電子が放出されます。この放出される電子をβ線(ベータ線)と呼びます。そしてセシウム137はバリウム137という元素に変わります。この過程をβ崩壊と言います。こうして出来たバリウム137は一部を除いて不安定な状態で、内部に余分なエネルギーを抱えています。これを捨てて安定した状態に移行するために、長くても数時間以内に、高いエネルギーの光子が放出されます。これをγ線と呼びます。この過程をもう少し詳しく見ていきましょう。

ele03β線、γ線が出てくる仕組みを理解するためには、原子というものの成り立ちを頭に入れておく必要があるようです。中心には原子核があり、その周辺に幾つかの電子が、何層かに別れて存在するとされています。原子核の内部には陽子があり、この陽子の数と外側にある電子との数が同じであるのが、その原子の充全な状態で、電子に出入りがあって、数にズレがある時は、その原子が荷電している、ないしはイオン化した状態です。電気的な状態から言うと陽子は常にプラスであり、電子はマイナスです。通常はプラスとマイナスが同数で釣り合った状態になっています。原子は陽子の数=電子の数ごとに違った名前が付けられています。陽子の数=電子の数が「1」ならば、水素です。「6」ならば炭素、「16」ならば硫黄、「29」ならば銅、「80」ならば水銀です。この陽子の数を、原子番号と読んでいます。

ele01ここで、陽子が2つある場合のことを考えます。陽子が2つある元素はヘリウムです。プラスのものが2つ、隣り合わせになっていることになります。プラスとマイナスは引きあいますが、プラスとプラスとは反発しあいます。磁石のN極どうし、S極どうしが反発しあうのに似ています。

ele02そこで、2つの陽子はそれだけでは一緒にいて原子核を構成することができません。1つの陽子に、もう1つ別の陽子を無理矢理ぶつけてくっつけることは、出来るそうです。特定の速度でぶつければ良いということのようですが、その時、片方の陽子は中性子に変わってしまいます。

中性子はもともと陽子と同じような構造のものです。陽子や中性子は、3つのクォークからできていて、陽子は2つのu-クォークと1つのd-クォーク、中性子は1つのu-クォークと2つのd-クォークからできています。u-クォークは+2/3に荷電された粒子、d-クォークは−1/3に荷電された粒子で、

2d+1u = 2× (+2/3) + 1× (−1/3) = +1 (陽子)

1d+2u = 1× (+2/3) + 1× (−1/3) = ±0 (中性子)

ということになります。陽子の中にあるd-クォーク2個のうち1個がu-クォークに変身すれば、 中性子に変れることになります。

ele06陽子と陽子とが一緒にいられるためには、中性子が必要なようです。ヘリウムは通常、原子核の中に陽子2つの別に中性子を2つもっています。中性子は陽子と陽子とをくっつける取り持ち役のような存在になっています。プラスどうしでは反発してしまってくっつかないのに、中性のものが介在するので、一つの原子核の中に共存できるのだということになるようです。水素以外の元素では、すべての原子核中に中性子が存在します。ただ、同じ原子番号の元素でも、中性子の数はいつも同じというわけではありません。

ele04例えば酸素(O)の場合、原子番号は8で、陽子数は8です。中性子も8つあるのが普通ですが、4つしかない場合もあり、20個もある場合もあります。中性子の数から見た場合に、酸素原子には25種類あることになります。こうした違った酸素どうしを互いに同位体(isotope)であると言います。これらを区別するためには、陽子の数と中性子の数を足した数を、元素名の後に付けるようになっています。通常の酸素は酸素16です。25種類ある酸素のうちで、安定しているのは1617183つだけで、あとはすべて不安定な元素で、いつかは崩壊します。つまり、放射性元素であることになります。もっとも安定しているのは酸素16で、すべての同位体のうち99,8%が酸素16です。

酸素の場合、もっとも安定した形では、陽子と同じ数の中性子を原子核に持っていることが分かりました。ところが、色々な元素のいちばん安定した同位体の陽子と中性子の数を比べてみると、原子番号が上がるにつれて、中性子の数が次第に増えていくことが分かります。下の表では、幾つか飛び飛びに元素を選んで、中性子と陽子との比率を出してみました。赤字になっている最下行のセシウム137以外はすべて、それぞれの元素の同位体の中から、一番普通にあるものを選んであります。陽子の数が増えてくると、原子核の中の諸要素が、多分、次第に複雑な構造を形作るようになっていくのでしょう。余分に緩衝材を入れないとうまく結合しなくなっていくようです。

元素

陽子

中性子

中性子/陽子

160 酸素

8

8

1,000

59Co コバルト

27

32

1,185

127I ヨウ素

53

74

1,396

133Cs セシウム

55

78

1,418

137Ba バリウム

56

81

1,446

238U ウラン

92

146

1,587

247Cm キュリウム

96

151

1,572

137Cs セシウム137

55

82

1,491

セシウム137はウラン236の核分裂によって生まれる人工元素です。核燃料にゆっくりした速度で中性子を衝突させると、その中に34%ほど含まれているウラン235がそれを吸収していったんウラン236になりますが、これはたいへん不安定な元素で、2つに割れてしまいます。割れ方は決まっているわけではないので、色々な元素がそこで生まれていくのですが、どちらにしても、半分前後の陽子数のものが2個出てくるわけです。その時、中性子が余ってしまいます。ウラン236の場合、中性子と陽子の比率は1,565ほどですが、原子番号50番前後の元素は1,4前後が安定比率です。分裂の時に数個の中性子が外部に飛び出したりするのですが、それでも、どういう割れ方をした場合でも、たいがい中性子は余分になります。

ウラン236が炉内で分裂する時には、中性子が幾つか炉内に飛び出してきて、それが別のウラン235に当たるので、反応が続いていきます。核分裂は、こうして連鎖反応になりますので、いったん分裂が起こりはじめると、人為的に停止させるのは簡単でないことになります。このように、核分裂反応の時には、中性子が飛び出すので、分裂してできてくる新しい元素が、分裂前の中性子を全部抱え込むのではありません。それでも、セシウム137の場合には、安定したセシウムに比べて中性子が4個も多く、比率も1,491にもなります。これは非常に不安定な状態のようなのです。

そこでセシウム137の原子核の中にある82個の中性子のうち、どれか1個が陽子に変身します。こうして中性子を減らして、不安定性を解決するわけです。陽子や中性子は、3つのクォークからできていて、陽子は2つのu-クォークと1つのd-クォーク、中性子は1つのu-クォークと2つのd-クォークからできています。今度は、中性子の中にあるd-クォーク2個のうち1個がu-クォークに変身すれば、 陽子に変れることになります。

ただ、陽子は電荷1の粒子で、中性子は電荷0の粒子ですが、電荷0の粒子が電荷1の粒子になるということは、それだけを取って見ると自然のバランスを壊してしまっています。つまり、(+)と(−)とは数が釣り合っていないと、この世界は根本的に成り立たなくなるらしいのです。で、どうやら、プラスが1個増える時にはマイナスも1個増えるようにできているらしいのです。

ele05で、セシウム137の原子核から電子が1個、外に飛び出してきます。セシウム137はこの時、陽子は1つ増えて55から56になります。中性子は1つ減って82から81になったわけです。これは上の表に出ているバリウム137と同じです。こうしてバリウムに変化する時には、陽子が1つ増えているのですから、周囲にある電子の数も1つ増えるのですが、飛び出してきた電子は、これには使われません。勢いよく、外に飛び出していってしまいます。

セシウム137はバリウム137になり、その時に電子が飛び出していくのですが、その時にその電子の持つ運動エネルギーは最大で1 117 keV ほどであるとされています。しかし、そうして安定したバリウム137に変わるのは、実は20個に1個程度で、他は不安定な状態のバリウム137になります。不安定という意味は、まだ内部にエネルギーを抱えたままの状態ということなのですが、こういう状態のバリウム137になる時には、飛び出していく電子のエネルギーは最大で514 keVだとされています。その場合のバリウム137は、後でまた別の形でエネルギーをまとめて放出することになります。この不安定なバリウム137は、安定した状態のものと区別するために、バリウム137mと書くことになっています。

ele07この余分なエネルギーの放出は、だいたい、バリウム137mが成立した直後に起こります。半減期2,55分ですので、数時間以内にほぼすべてが無くなると思ってよいでしょう。662 keV のエネルギーを持った光子が放出され、安定した状態のバリウム137になります。セシウム137から出てくる電子のエネルギーはバラバラで一定せず、そのために、「最大●●keV」というような言い方になるのですが、バリウム137から出てくる光子のエネルギー662keVという数値は、いつも同じです。これは光子ですので、光とか、紫外線とか、マイクロ波といったものと同じようなものですが、エネルギーが強いので、波長はたいへんに短くなります。

こうして出てくるβ線、γ線のそれぞれの性質については、項を改めたいと思います。

放射能のまとめ : 空間放射線の測定


竹内雅文

放射能のある空間で暮さざるを得ない人にとっては、空間に常時どの程度の線量があるかを日常的に知っておくことは大切なことだと思います。簡単な測定器を用いて自分で測る場合のことを、まとめておきたいと思います。ここでは、福島事故以後の状況の中で、普通の人が普通の場所で生活するのに必要なことに限定します。

使用するメータは、例えば写真あるようなものです。生活空間の線量を一般の人が測る場合に、大型のNaIのヘッドを備えた蛍光分析式の高価な計測器(シンチレータ)などは、無用の長物です。日常的に測るのが大切なので、扱いやすいものを選んでください。

dosi5メータの裏のあたりに、小型のガイガーミュラー管が仕込んであります。安価なメータにはこの代りに半導体の使ってあるものもあります。簡単に仕組みを説明しますと、飛んできたエネルギーの強い電子や光子が管に封入してあるガスの分子に当たって電離させます。この時に一瞬起こる電圧の変化を読み取って、12回と数えていき、一定の時間の中で何回、飛んできたかを記憶しておいて、何回か繰り返してから平均値を出します。それをシーベルトに換算して表示するようになっています。

ガンマ線を測定します。裏蓋を開いた状態で用いると、ベータ線も測れるようになっている機種もあります。日常的な空間線量を知るという目的にとってはベータ線の測定はほとんど意味がありません。裏蓋を開けた状態は計器を損傷する可能性も高いので、ガンマ線に限定することをお奨めします。

屋外で地面から来るガンマ線を測定する時は、ガイガーミュラー管のある位置を手で塞がないように注意しながら、計器を水平に持ちます。計測スイッチを押してから、数値が安定するまでの間は、動かないことが必要です。動き回りながら測定すると、正確な値にならないことがあります。値が出るまで、計器の種類やその場所の状況によっては、23分かかることもあります。

同じ場所で、地面スレスレ、1cm程度の距離の場所と、体の腰のあたり、100cm程度のところと、両方測ってください。1cmは、地面から出ているままの状態を知るという意味で、100cmというのは、人体の真ん中という意味です。この時、1cmの測定位置から、動かないように、垂直に100cmまで上げて計測し、値がどの程度違うかを見ます。

距離が遠くなると、放射能は弱くなる

dosi1放射線源が点で、測定器も点であると仮定しますと、計器が受けとる放射能の強さは、距離の2乗に反比例して弱くなります。図の例で、距離aの場合と距離2aの場合とでは、距離の長い方の状態では、2×24ですので、強さは1/4になるわけです。

dosi2しかし、実際の放射線源は、地面の場合には広い平面で、測定器の検出部も点のわけではありません。地面スレスレの測定器はその直下から真っ直ぐに来るガンマ線を拾います。

dosi3しかし、ガンマ線は真上に飛ぶわけではありません。ありとあらゆる方向に飛びますので、計器を持ち上げていきますと、脇の方から斜めに飛んでくるガンマ線も拾うようになります。100cm程度の高さに構えている時には、かなり離れた地面から来るガンマ線も拾いますので、それを勘案しますと、だいたい、地面スレスレの場合の23割程度減衰した値になるはずです。

しかし、実際には、そういう値にならないことがあります。その時には、そうならない理由がありますので、なぜそうなのかを、測定した場所の状態にそって考えてみることが大切だと思います。

★ 100cmの数値が、1cmの半分以下になるなど、異様に減衰する場合

この場合は、その測定した場所が周囲に比べて極端に放射能が溜っている場所、いわゆるホットスポットである可能性が高いです。距離が離れると、線量の低い周囲から来るガンマ線が弱いぶん、急激に線量が下っていくことになります。

このような場合、ここだけの数値でそのあたり一帯の線量水準を判断しない方が良いと思いますので、数メートル移動して測り直してみてください。

★100mの数値が1cmに比べてほとんど減衰しない、あるいは、逆に高くなった、などの場合

まず、地面以外のところから、強いガンマ線が来ていないかどうかを考えます。周囲の木立、壁面、あるいは、錆びた鉄册なども放射線源ですので、そうした所により近づいた場所や、あるいは逆にそうした所から離れた場所で測り直して比較してみて下さい。

道路上などで測定した場合、路面は除染作業で削られて線量が低くなっていて、周辺は高いままである、あるいは、駅前広場の舗石の上は削られているが、花壇は高線量、とか、色々な場合があります。いずれにしても、測定器を上に持ち上げた場合の数値が高いのは、周辺部のどこかに、その場所の地面より線量が高い場所がある、ということだと考えて、その場所を突き止めてください。

屋内の数値は低くない

dosi4一般家屋の場合、室内の数値がかなり高い場合があります。特に2階の数値が高いようです。これは、壁面や、屋根にくっついているセシウムが犯人と思います。屋根や壁の材質にもよりますが、高圧水をかけて擦った程度のことでセシウムはなくなりません。

こと細かな測定による生活空間対処を

福島原発事故後、「この町の線量はだいたい●●くらい」といった発表があったり、それに基いた地図が配られたり、「ここに住むと年間●●くらいの被曝になる」といった計算式が発表されたりしてきました。

しかし、事故後3年半が経ち、計測器もかなり行き渡った現在では、こうしたもので満足せず、生活空間の放射能像を、細かに、また立体的に知ることが可能です。

実際に家の内部や周囲を丹念に測定したことのある方なら、「この家のあたりは●●シーベルトです」などということが簡単に言えないことをお分かりかと思います。「家の前の路面は0,25ですが、裏の土手は0,79です」なんていうのは、少しも珍しくないことです。

また、室内にいる間の被曝量を、屋外にいる間の1/2に見積った計算式が出回っていますが、屋外よりも部屋の中の方が線量が高いような場合も、珍しくありません。こういう計算式には何の価値もありません。