内部被曝をめぐるキエフでの論争


ミシェル・フェルネ VS ノーマン・ゲントナー

2001年6月、キエフの国際会議の幕間。チェルトコフ著「チェルノブイリの犯罪」より

ミシェル・フェルネ
ここまで会議をずっと聴いてきたわけですが、あなた方の組織(UNSCEAR)の主張によればチェルノブイリが原因と言える死者は31人で、その中で被曝によるのは28人、他に200人が被曝し、また甲状腺の腫瘍は1800人ということになります。あなたも同じお考えですか?

ノーマン・ゲントナー
データからはそういうことが言えます。これ以外にも甲状腺癌の症例は今後出てくるかも知れないとすれば、傷ましいことです。幸い、この癌は生存率が上っています。もっと高い線量を浴びた人々というカテゴリーがあるとすれば、そこでは癌の発症率が上ると考えられますし、それは統計的に明きらかになってくることでしょう。

F
激症の被曝に対して出されている数値だけをお認めになる考えはお変えになられないのですか? 今日、色々お聞きになられたと思いますが、そこからは影響はお受けになられなかった?

G
国際的に確かなものとされている病気について、症状と経過をご覧になれば、それはあらゆる国際機関が合意しており、データによっても裏付けられている数値なのです。傷を受けた人たち、あるいは受けたと思い込んでいる人たちが色々と申立をしていますが、けれども私たちが参照しているデータは加盟国の保健当局のものです。私たちはできうる限り完全で、確証されてもいるデータの収集に努力しています。そこから明かになった結論は、どのようなものであれ、科学的に確証されているのであれば、できうる限り広く拡散できるよう保障しています。

F
特定のもの以外の放射性核種の効果について、あなた方の作業グループではどなたも研究なさっておられないようなので、たいへん驚きました。

G
そういうものにも、私たちは常に気を配っています。私たちは統合原則は線量によって表象されていると確信しています。私たちは線量が何であり、それはどこから来るのかを、私たちは研究しているのです。そのもっとも大きな部分を占めているのは放射性セシウムです。格別に毒性の強い他の放射性核種、あるいは特定の人々に強く作用を及ぼす核種も、状況次第では、重大な被曝を引き起す潜在的な可能性はあります。

F
あなたのご意見では、セシウムがいちばん高い値に凝縮されてくるのは、どの病気ですか?

G
セシウムでの一番の問題は外部被曝です。セシウムは野菜と一緒に吸収されもしますが、その主題についてはUNSCEARの報告書の附録Jで議論されています。

F
この15年間、セシウムが一番大きな問題であったのは、内部の方だとはお考えになられないのですか?

G
違います。内部なんかじゃありません。人々が外部から受けた被曝のことをお話しになっていらっしゃるんじゃないんですか?

F
内部被曝のお話をしているのです。多くの地域で、人々が栽培した食品や、森で採れたものを通じて摂取した結果の内部被曝ですよ。

G
一時、最初の頃のことですが、被曝の計測に使われていたモデルからは内部被曝も外部被曝も同じように重要だということになりましょうか。

F
今日では90%は内部で、10%が外部だとは、お考えにならないのですか?

G
私は線量計測の専門家ではありません。

F
人々の全身を計測したデータをお持ちじゃないんでしょうか?

G
そういう計測データはあります。大部分の人たちの被曝総量はごく僅かだということがデータから分ります。しかしセシウムの場合には、体のどこが被曝したかといったことには、何ら重要性はないです。

F
ホメリ地方では子どもたちの線量は常に低いですよね?

G
裏付けされたデータがお望みなんでしょうか? なら、お見せできますよ。

F
確かなデータをどなたがお持ちですか? どなたが所有しているのでしょうか? どこにそういうデータがありますか?

G
例えば、ケニグスベルク博士のところになら、お連れできますよ。ベラルーシ国立医療統計局の副局長さんです。その方とお話しになれます。専門家ですよ。今からでもお連れしましょうか。

F
ええ、ケニグスベルク博士なら私も存じ上げていますし、博士のデータのことだろうと思っておりました。それとは他の計り方をしたデータも色々あります。計測されてきましたし、今でもされています。子どもたちの線量は、上ってきているんです。はっきり分る上昇の仕方です。

G
私たちはデータの物語っていることを凝視するべきです。でも、私は、被曝総量に内部と外部との区別を付けるというのは拒否します。受けた汚染の水準が問題なのであって、汚染のメカニズムがどうであれ、違いはありません。内部だからより重大だとか言って人々の信じ易さに付け込むのは、人々の爲になる行為ではありません!

F
私たちは子どもたちの心臓病を見てきているんです。死んでしまうこともあります。

G
そうです。そういう困難な症例なら存じています。増加もしています。だからと言って、それが事故の結果であると単純に断言したり、放射能の作用によるものだという盲目的な確信から吹き込んだりするのは、人々の健康を預る立場の人たちを助けることにはなりません。

F
放射能の作用による疾病は子どもたちの間に存在しています….

G
そんな情報は私は一度も目にしたことはありません。

F
このことについてはベラルーシのあちこちの大学で、9年にわたって研究されています。あの人たちの研究に一度も興味をお持ちになられたことはないのでしょうか?

G
その方たちは大学で多分、研究なされているのでしょう。けれども、大事なことは専門家たちの追認を得たうえで、そういした情報が発表されていることです。そうした情報を私たちに下さい。どこかにありますなんていう話を私たちにしに来ないでください。私たちはベラルーシとは公式の関係を結んでいます。ロシア連邦とも、ウクライナともです。私たちに情報を転送し、私たちのまだ知らないかもしれない情報に対して私たちの注意を喚起して下さる責務を負った方々がいらっしゃいます。意識の高い、保健の増進に献身されている方々です。科学者たちであり、専門家たちであるわけで、私たちはこの方々を情報源にしているのです。