福島原発事故にかかる強制起訴議決にもとづく公訴提起の意義と今後の展望


海渡雄一

第1 公訴提起される

本日、東京第五検察審査会が平成27年7月17日に検察審査会法第41条の6第1項の議決をした事件につき,本日,検察官の職務を行う指定弁護士は,下記被疑者勝俣恒久、武藤栄、武黒一郎を業務上過失致死傷罪(平成25年法律第86号による改正前の刑法211条1項前段)で東京地方裁判所に公判請求した。
我々は、検察官の職務を行う指定弁護士から、本日お昼頃、直接公訴提起の事実を告知され、また、公訴事実の要旨の交付を受けた。

第2 公訴事実の要旨

公訴事実の要旨は次のとおりである。
「被告人3名は,東京都千代田区に本店を置く東京電力株式会社の役員として,同社が,福島県双葉郡大熊町に設置した発電用原子力設備である福島第一原子力発電所の運転,安全保全業務等に従事していた者であるが、いずれも各役職に就いている間,同発電所の原子炉施設及びその付属設備等が,想定される自然現象により,原子炉の安全性を損なうおそれがある場合には,防護措置等の適切な措置を講じるべき業務上の注意義務があったところ,同発電所に小名浜港工事基準面から10メートルの高さの敷地を超える津波が襲来し,その津波が開発電所の非常用電源設備等があるタービン建屋等へ浸入することなどにより,同発電所の電源が失われ,非常用電源設備や冷却設備等の機能が喪失し,原子炉の炉心に損傷を与え,ガス爆発等の事故が発生する可能性があることを予見できたのであるから,同発電所に10メートル盤を超える津波の襲来によってタービン建屋等が浸水し,炉心損傷等によるガス爆発等の事故が発生することがないよう,防護措置等その他適切な措置を講じることにより,これを未然に防止すべき業務上の注意義務があったのにこれを怠り,防護措置等その他適切な措置を講じることなく,同発電所の運転を停止しないまま,漫然と運転を継続した過失により,平成23年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震に起因して襲来した津波が,同発電所の10メートル盤上に設置されたタービン建屋等へ浸入したことなどにより,同発電所の全交流電源等が喪失し,非常用電源設備や冷却設備等の機能を喪失させ,これによる原子炉の炉心損傷等により

1 同年3月12日午後3時36分ころ,開発電所1号機原子炉建屋において,水素ガス爆発等を惹起させ,同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果, 3名に,これにより飛び散ったがれきに接触させるなどし,よって,そのころ,それぞれ同所付近において,傷害を負わせ,

2 同年3月14日午前11時1分ころ,同発電所3号機原子炉建屋において,水素ガス爆発等を惹起させ,同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果,1 0名に,これにより飛び散ったがれきに接触させるなどし,よって,そのころ,それぞれ同所付近において,傷害を負わせ,

3  4 3名を,上記水素ガス爆発等により,長時間の搬送・待機等を伴う避難を余儀なくさせた結果,死亡させ,

4 上記水素ガス爆発等により,病院の医師らが避難を余儀なくさせられた結果,同病院で入院加療中の者1名に対する治療・看護を不能とさせこれにより同人を死亡させたものである。」

第3 公訴事実の構成の特徴

予見可能性の対象を小名浜港工事基準面から10メートルの高さの敷地を超える津波が襲来するかどうかの点においている。この論理からすれば、貞観の津波に関する予測津波高さは誤差を含めると軽く10メートルを超えており、貞観の津波の想定の報告は受けていたが、東電設計の15.7メートルのシミュレーションを知らされていなかった保安院関係者も起訴できることとなる。
また、結果回避措置については、「防護措置等その他適切な措置を講じることなく,同発電所の運転を停止しないまま,漫然と運転を継続した」と構成されており、対策を講じないで運転を継続したこと自体を過失と捉えている点は、告訴団が主張していたことを正面から認めたものであり、高く評価することができる。

第4 公訴提起の意義

1. 世紀の裁判で裁かれるのは東電・保安院そして原子力ムラに取り込まれた検察庁である。

今回の起訴の画期的な意義は、市民の正義が原子力ムラの情報隠蔽を打ち破ったことにある。
福島原発事故に関してはたくさんの事柄が隠されてきた。この議決の根拠となった東電と国による津波対策の方針転換に関する情報の多くは2011年夏には検察庁と政府事故調の手にあったはずである。この隠蔽を打ち破ったのが、今回の検察審査会の強制起訴の議決である。市民の正義が政府と検察による東電の刑事責任の隠蔽を打ち破ったのである。
告訴団の事故の真実を明らかにし、責任を問う真摯な態度が検審の委員の心を揺り動かしたのである。東電を中心とする原子力ムラや検察からの圧力のもとで二度にわたって、検審の委員11人のうちの8人の起訴議決への賛同を得ることができた。原発事故で人生を根本から変えられた福島の人々の切実な思いが東京の市民にも伝わったのである。今回の強制起訴は、明らかにされた事実関係からすれば当然のことではあるが、情報の隠ぺいの闇から真実を救い出したという意味で、奇跡のように貴重なものだ。

2. 政府事故調と検察が真実を隠ぺいしたことはもうひとつの事件である

これらの情報は徹底的に隠された。それはなぜだったのか。考えられる推測はただひとつである。原子力推進の国策を傷つけるような事実は、隠ぺいするしかないと、2011年夏の段階で、政府事故調と検察のトップは決断したのだろう。このことは、福島原発事故そのものに匹敵するほどの、行政と司法と検察をゆるがせる「もう一つ」の福島原発事故真相隠ぺい事件と呼ぶべき事件である。

3. 指定弁護士チームは最強

起訴により、今後開かれる公開の法廷において、福島原発事故に関して隠されてきた事実を明らかにする作業が可能となった。第二東京弁護士会の推薦を受け、東京地裁は石田省三郎、神山啓史、山内久光ほか2名の5名を検察官役に指定した。石田・神山コンビは無実のゴビンダさんの再審無罪を実現した刑事弁護のプロである。望みうる最高の刑事弁護士が検察官役に選任され、検察官役の体制はドリームチームと言っていい。

第5 今後の展開と残された未解明の謎

1.今後の手続きはどのように予測されるか

予測される手続き展開としては、起訴後、おそらく公判前整理手続きが実施されると思われる。争点整理と証拠調べの方針を固めるまでにかなりの時間を要することは避けがたい。
証拠調べが始まったら、集中的に審理が進む可能性がある。検察官役の弁護士たちは、東電の内部資料、政府事故調の調書等を見ることができ、その立証には大いに期待できる。

2.法的論点より事実の争いが中心になる

第一次議決の際には、過失責任を巡る具体的危険説と危惧感説の対立構造になると言う見方もあり、通説と異なる法的見解は裁判所には受け入れにくいという見方もされていた。
しかし、第二次議決の認定した事実関係を前提とする限り、本件は何も法的には難しい点のない、普通の業務上過失事件である。もと東電役員の被告人は災害の結果を具体的に予見し、対策まで検討しながら、対策のコストと原子炉運転停止のリスクという経済的な理由から、いったんやると決めていた方針を転換し、対策を先送りしたのである。

したがって、法的な争点よりも事実に関する争点が重要である。とりわけ2007年に福島沖の大地震を想定して津波対策を講ずる方針が決まっていたかどうか、2008年3月のQA集(福島県向けに作成されたものと思われる)で推本の長期評価をとりいれる方針が決まっていたことは重大な意味を持っている。また、2008年6月に東電の土木調査グループが武藤副社長に防潮堤など対策を説明し、その当否が現実に検討されたかなどが決定的に重要な争点となる。

3.残された未解明点

また、残された問題としては、保安院の役割を解明することが重要である。
すなわち2006年には3年以内に津波対策を含めて耐震バックチェックを完了させる方針であったのに、これが骨抜きにされていった経過を明らかにする必要がある。
告訴団としては、津波第二次告訴として、森山善範(保安院原子力発電安全審査課長,ついで保安院審議官)、名倉繁樹(保安院原子力発電安全審査課審査官)野口哲男(保安院原子力発電安全審査課長)と、酒井俊朗(東電の津波対策の責任者・マイアミレポートの作成者・土木学会委員)と、高尾誠(東電の津波対策のサブ責任者・土木学会幹事)の5名を追加告訴している。この件は現在東京第1検察審査会に係属している。
我々は東電の勝俣、武藤、武黒の3名の強制起訴を実現した。彼らと同様に本件において中枢的役割を果たした東電2名と保安院関係者3名についても、検察審査会の強制起訴決定を勝ち取り、東電役員の刑事責任を追及する裁判との併合審理を目指している。
また、これと関連するが、東電の1F3のプルサーマル計画との関連も解明しなければならない。QA集は福島県に対する説明などのために作成されたものと考えられるが、福島県は、プルサーマルの実施は耐震性の確保が前提としてきたが、耐震性の確保から津波対策が除かれた経緯には、福島県の幹部が関与していた。
その全貌を明らかにしなければならない。

海渡 雄一
(福島原発告訴団弁護団
東電株主代表訴訟弁護団
脱原発弁護団全国連絡会共同代表)

首相官邸の前で


西川直子

あの社会学者、小熊英二氏が映画初監督!貴重な資料映像が小気味良く編集された
『首相官邸の前で』。
おすすめの映画を築50年の木造民家を耐震補強改修再生した「谷中の家」(西川自宅)で
上映します。見逃した人も、知らなかった人もふるってお集まりください。

…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…
第44回月1原発映画祭
『首相官邸の前で』上映+交流カフェ
…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…

■日時:2016年3月5日(土)16:00開場
16:30 上映
18:40 交流カフェ(トークシェア)
20:00前後 終了

■映画『首相官邸の前で』
2012年夏、東京。約20万の人びとが、首相官邸前を埋めた。
NYの「ウォール街占拠」の翌年、香港の「雨傘革命」の2年前のことだった。しかしこの運動は、その全貌が報道されることも、世界に知られることもなかった。
人びとが集まったのは、福島第一原発事故後の、原発政策に抗議するためだった。事故前はまったく別々の立場にいた8人が、危機と変転を経て、やがて首相官邸前という一つの場につどう。
彼らに唯一共通していた言葉は「脱原発」と「民主主義の危機」だった――。はたして、民主主義の再建は可能なのか。現代日本に実在した、希望の瞬間の歴史を記録。
(2015年/日本/109分/日本語[英語字幕つき])
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/kanteimae

■監督プロフィール
小熊英二(おぐま・えいじ)
1962年生まれ。東京大学農学部卒業、出版社勤務を経て、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。現在、慶應義塾大学総合政策学部教授。福島原発事故後、積極的に脱原発運動にかかわり、メディア上での発言も多い。著書に『単一民族神話の起源』『(民主)と(愛国)』『1968』『日本という国』『社会を変えるには』など。

■会場:谷中の家(東京都台東区谷中3-17-11)
メトロ千代田線千駄木・JR日暮里・JR西日暮里下車徒歩7分。
よみせ通り、延命地蔵を東へ入る、2筋目を南へ入って東側。
築54年の木造耐震補強民家。目印は格子戸。
http://www.jtgt.info/sites/default/files/2013-05-14.jpg

■参加費
・上映:800円(学生500円)
・交流カフェ:500円(軽食+ワンドリンク付)

■定員:各30名

■予約方法:以下いずれかの方法で必ず予約してください。
1.申込みフォーム(上映と交流カフェ、別々にお申し込みください)
上映 http://kokucheese.com/event/index/376716/
交流カフェ http://kokucheese.com/event/index/376717/

2.メール eigasai@jtgt.info
*件名を「月1原発映画祭申込み」として
参加者氏名(複数お申し込みの場合は全員のお名前をお書きください)、
参加内容(上映、交流カフェ)を明記してください。

3.電話 090-1265-0097(植松)、または090-9492-0075(西川)

*交流カフェは上映会に参加される方が優先となります。
*キャンセルされる場合は必ず事前にご連絡ください。

■主催:月1原発映画の会
問い合わせ先  eigasai@jtgt.info
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

原発事故被害者の救済を求める全国運動:第三期キックオフ集会


満田夏花

原発事故子ども・被災者支援法は骨抜きにされ、区域外避難者の住宅支援は2017年3月で打ち切り、避難指示区域は帰還困難区域を除いて2017年3月までに解除、賠償も2018年3月までで打ち切りなど、原発事故被害者の切り捨てが国家レベルで進められています。多くの避難者が「貧困」を強いられる状況に追い込まれて
います。
今こそつながりあい、避難の権利と健康に生きる権利を確立しましょう。

第二部では、国会議員との意見交換を行います。

【日時】2016年2月24日(水)15:00~18:30
【場所】参議院議員会館 B107会議室

【詳細】http://www.act48.jp/index.php/2014-01-07-02-41-36.html

3.2福島原発事故から5年、被害者を切り捨てるな!全国集会


佐藤和良

原発被害者団体連絡会(ひだんれん)から、3月2日「福島原発事故から5年、被害者を切り捨てるな!全国集会」のお知らせです。

東京電力福島原発事故から5年。
この未曽有の原子力災害を引き起こした原因は何か。
その責任はどこにあるのか。被害の総体はどれほどのものであるのか。
それらの根本問題は今も解明されていない。

加害者の立場にある日本政府は、原発政策を再び推進し再稼働と輸出を進めながら、2017年3月末を目途に被災地の避難指示を解除し、東京電力は賠償を打ち切り、福島県は避難者への住宅無償提供を打ち切るとしている。 原子力災害に蓋をして無かったものとし、被害者を見捨てる「棄民政策」である。

「謝れ」「償え」「保障せよ」—。

私たち原発被害者団体連絡会は、
国民の命と生活を守るべき立場にある政府と福島県、
直接の加害責任者である東京電力に対し、
全被害者の悲痛な叫びに耳を傾け、誠実に応えることを要求する。

―福島原発事故事故から5年―
被害者を切り捨てるな!全国集会
2016年3月2日
東京都 日比谷野外音楽堂

13:30 開場
14:00 開会
15:30 デモ出発
16:30 終了予定
参加無料
*10:00 政府交渉(衆議院第一議員会館)

☆福島からバスがでます。
中通りコース
往路8:00福島駅西口→9:00郡山教職員組合
復路21:00郡山教職員組合→22:00福島駅西口
浜通りコース
往路8:00南相馬原町区 高倉公会堂→9:00いわき市役所前
復路20;30いわき市役所前→21:30高倉公会堂
申し込み 締め切り2/25(木)ひだんれん事務局 TEL:080-5739-7279

311シンポジウム 福島を忘れない


満田夏花

3・11に、参議院議員会館にて、以下のシンポジウムを開催します。
この5年、ともに悩み、考え、たたかったみなさまとともに、3・11を振り返り、新たな一歩を踏み出したいと思いす。
ぜひご参加ください。

——————–
311シンポジウム 福島を忘れない

~福島第一原発事故から5年、チェルノブイリ原発事故から30年~
http://www.foejapan.org/energy/evt/160311.html
フェイスブック・ページ(ぜひ、お友達をお誘いください)
https://www.facebook.com/events/532428603584808/
ちらし
http://www.foejapan.org/energy/evt/pdf/flyer_160311.pdf
——————–

□日時:2016年3月11日(金)14:00~17::30 開場13:30
※13:30から参議院議員会館ロビーにて、入館証を配布します。
□会場:参議院議員会館 講堂
※最寄り駅;東京メトロ 永田町駅(徒歩1分)、国会議事堂駅(徒歩5分)

□プログラム(予定)

<第1部>福島
○基調講演:福島原発事故から5年…長谷川健一さん(飯館村・元酪農家)
○避難者はいま…宇野朗子さん(「避難の権利」を求める全国避難者の会)
○福島の母親たちが直面していること…福島のお母さんが参加します

<第2部>チェルノブイリ
○保養から見えてくること…佐々木真理さん(チェルノブイリ子ども基金)
○福島とチェルノブイリの比較…吉田由布子さん(「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク
○ベラルーシでみた「希望」と「かけはし」… 深草亜悠美(FoE Japan)
○ドイツからの報告…フーベルト・ヴァイガーさん(FoEドイツ代表)

<第3部>今、必要なこと
帰還政策/健康影響/保養/原発フリーの電力会社を選ぼう…FoE Japanより
コメント:メアリー・オルソンさん(生物学者。 米国・原子力情報サービス(NIRS)所属)、
核なき世界へ~脱原発と核不拡散
川崎哲さん(ピースボート)、スティーヴン・リーパーさん(平和活動家)
□参加費:500円 (学生・FoEサポーターは無料)
□主催:FoE Japan
□協力:
「さようなら原発1000万人アクション」実行委員会、eシフト(脱原発とエネルギーシフトを実現する会)、チェルノブイリ子ども基金、ピースボート、「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク、「避難の権利」を求める全国避難者の会、原発事故被害者団体連絡会