有限責任性反対! 日弁連院内集会

海渡 雄一

原子力委員会損害賠償制度専門部会はじまる
海渡雄一です。飯舘村民救済弁護団や福島原発告訴団の仕事を通じて、この事故の被害者の方々の救済と責任を明確にする活動をしてきました。原発事故賠償に関する新たな制度の検討が始まっています。遂に恐れていたことが始まりました。
原子力委員会の下に設置された原子力損害賠償制度専門部会(部会長=濱田純一・前東京大学総長)が2015年5月21日に、初会合を開き、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた賠償制度の見直しの作業を開始しました。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/siryo01/index.htm
会合では委員から、原子力事故の損害賠償に関わる国の役割や事業者の責任範囲を明確化するよう求める意見が相次いだとされます。

聞かれない、被害当事者の意見
次の原発事故が起きても、電力会社は一定額の保険にさえ入っていれば、それ以上の責任を問われない法的仕組みが作られようとしています。そんな制度を作れば、深刻な原発事故を起こしても、電力会社の経営には何の影響もないこととなります。
この部会には原子力事業者と保険関係者などが集められていますが、このような重大な事項について議論する会合の場に、事故の被害者や今後の事故の潜在的な被害者というべき全国の原発立地地域住民の代表が選ばれていませんし、何人かの弁護士は委員に選ばれていますが、被害を受けた住民の委任を受けて損害賠償
の実務に当たっている弁護士も選ばれていません。

日弁連は有限責任の導入に反対する
日弁連は、2015年7月17日付けで原子力発電所事故による損害賠償制度の見直しに関する意見書を取りまとめ、2015年7月21日に内閣総理大臣、経済産業大臣、原子力委員会委員長に提出しました。その趣旨は、「原子力損害賠償制度において、原子力事業者の有限責任制度の導入に強く反対し、無過失・無
限責任制度を維持することを求める。」というものです。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2015/150717.html

究極のモラルハザードもたらす有限責任制
無限責任を限定することとすれば、電気事業者はその賠償措置額を賠償するための損害保険契約を締結することしか求められず、どのような重大事故が発生したとしても、それ以上の損害の補償を求められることはありません。原子力発電以外に、安全なエネルギーの供給方法があるにもかかわらず、なぜ民間企業の事業にすぎない原子力発電にこのような優遇策を講ずる必要があるのか、合理的な説明は不可能です。ドイツでは過去、有限責任を定めていた原子力損害賠償制度が改正され、無限責任に転換されています。もし今後の議論によって国が無限責任を負うとしても、原子力事業者の無限責任を否定することは、電気事業の市場の自由化が展望される中で、原発の事故リスクを国が肩替わりすることとなり、再生可能エネルギーや天然ガスなどの様々なエネルギー供給業者間の公正な競争条件を阻害することが明らかです。

次の事故が起きても、被害者は最初から切り捨てられる
また、国が無限責任を負わないとすれば、将来、原子力発電所事故が生じた場合にその被災者が本来得られるべき損害賠償額が、定められた賠償負担の上限額によっては、失った財産価値に全く見合わない賠償しか受けられなくなり、被害救済が十分に図られなくなるおそれがあります。
いずれにしても、原子力事業者にとっては深刻な事故を起こしても倒産の危険はないこととなり、原子力災害に対する厳格なリスク評価がされないというモラルハザードをもたらし、ひいては原発事故防止のための対策がおろそかになる危険性すらあります。このように、このような法改正は焼け太りもいいところであって、絶対に容認することはできません。
福島原発事故は、電気事業者の深刻な過失に基づいて発生した人災であり、被害者に対する完全な賠償が行われるべきであることは当然です。福島原発事故による被害は、家族の分断など生活環境の破壊、ふるさとの喪失、地域ブランドの喪失など多岐にわたる、深刻かつ継続的なものである。その完全賠償こそが、望ま
れていました。
日弁連は、事故の損害賠償請求権については、民法上の消滅時効(民法第724条前段及び同法第167条第1項)及び除斥期間(民法第724条後段)の規定を適用せず、消滅時効に関する特別措置法の制定を求め、成立させることができました。

有限責任制が導入されれば、次なる原発の大事故が発生したとしても、被害者の賠償は最初から不可能で、最初から切り捨てられることとなってしまうでしょう。
このような制度が日の目を見ないよう、多くの人たちに議論に加わっていただき、反対の声を上げていきたいと思います。

日弁連院内集会にご参加を!
日弁連では、次の院内集会を開催します。福島原発告訴団の武藤類子さんもアピールのために参加されます。広報ができておらず、事前申し込みがほとんどありません。ふるってご参加を!

 院内集会
これでいいの?!原発事故賠償制限,原子力事業者の経済的優遇策

福島第一原発事故から4年半が経過し、今年7月、経済産業省は、2030年の電力に占める原子力割合を20~22%とする「長期エネルギー需給見通し」を定めました。
他方、電力システム改革も進められており、2016年4月から電力の小売が全面自由化され、2020年には発送電の分離、電気料金規制もなくなります。
原子力事業は投資額が巨大で、廃炉や使用済み燃料の処理処分費用が嵩み、福島事故のように、事故が起これば損害賠償額が巨大になる恐れなどから、苦戦が予想されています。そこで、原子力委員会や資源エネルギー庁の原子力小委員会などで、原子力事業について、事業コストの予測可能性が立ち、それらを確実に電
気料金で回収できるよう、損害賠償に上限を設けることや、英国の制度を参考に、原子力による電気を固定価格で買い取る制度の導入の検討が進められています。
原子力にだけ、このような制度が導入されれば、原発事故の被害者はどうなるのでしょうか。電力システム改革と矛盾しないのでしょうか。
様々な角度から検討したいと思います。ふるってご参加ください。

日時:2015年8月31日(月)
午後2時~午後4時(開場 午後1時40分)
場所:衆議院第二議員会館第1会議室 (千代田区永田町2-2-1)
① 報告
●福島第一原発事故被らみた原子力事故の賠償制度
●電力システム改革と原子力への経済的優遇の可否
高橋 洋(都留文科大学教授)
●原子力と電力コスト(仮題)
大島堅一(立命館大学教授)
②質疑応答・原発立地住民の声
③国会議員からの御挨拶

事前申込み制・参加費無料
[返信先]  FAX:03-3580-2896 日本弁護士連合会人権部人権第二課宛

【お問合せ】 日本弁護士連合会人権部人権第二課(電話: 03-3580-9956)


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