【報告】健康管理のあり方めぐり、厚労省・環境省と交渉

満田夏花

「放射線被ばくと健康管理のあり方を考える市民・専門家委員会」(事務局:FoE Japan)は、9月11日、参議院議員会館にて、環境省・厚労省交渉を行いました。下記のサイトに図と報告を掲載しました。
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/140911_report.html

交渉は、市民側は、吉田由布子さん、崎山比早子さん、山田真さん、阪上武さん、瀬川嘉之さん、温品淳一さん、木本さゆりさん、中井ゆみこさん、伊藤恵美子さん、きくちゆみさん、福島から、高橋誠子さん、橋本さん、田口さん、人見やよいさん、森園かずえさんなどが参加しました。満田が司会進行を務めました。
福島みずほ議員が同席してくれました。
名前上げきれなかったので、漏れていましたらすみません。

交渉の背景については、以下のURLにまとめています。
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/911-1030-4438.html

OurPlanet-TVで当日の模様をみることができます。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1831
冒頭の吉田さんのプレゼン、13分くらいからの厚労省とのやりとりは、ぜひご視聴ください(後半の環境省とのやりとりは、ダメダメな感じですが)。

まず、主催の市民・専門家委員会の委員で、チェルノブイリ被害調査・救援 女性ネットワークの吉田由布子さんが、短いプレゼンを行いました。
(たいへんすばらしいプレゼンで、パワポ資料も貴重なものなので、ここだけでもぜひご覧ください。本メールの末尾にプレゼンのポイントを記しました。)

その後、厚労省・環境省と質疑を行いました。

【厚生労働省】
質問:
福島県では福島原発事故当時18歳未満であった人々に約、30万人の検査で、甲状腺がんないし疑いが103名出ている。福島県立医大は原発事故との関連はないとしている。一方、一部医療者の間で「過剰診療」と言った言説も出ている。
福島県立医大で手術された54例のうち、8割の45名は腫瘍の大きさが10ミリ超かリンパ節転移や肺転移(2名)があり、残り9名は腫瘍が10ミリ以下で転移はないものの、うち7名は「腫瘍が気管に近接など」のリスク例、2名は経過観察でもよいと判断されたが、本人や家族の意向で手術したとされている。手術した54
名の約9割が半摘ということである(2014年8月29日、日本癌治療学会にて福島
県立医大の鈴木真一氏発表)。
福島県で発見されている甲状腺がんについて、保健・公衆衛生、がん検診の見地から、厚生労働省のお考えを伺いたい。

回答:厚労省としては、がん検診については、科学的見地を踏まえて行うべきという立場。
甲状腺癌については、一部検診が実施されているが、成人において死亡率減少のエビデンスが得られていない。過剰診断による不利益の指摘もある。
子どもについてはいまのところ十分な科学的なデータの集積がない。今回の状況については、注意深く推移を見守っていきたい。

吉田由布子さんから「おとなの死亡率が高くないといっても子どもはわからないのではないか」「チェルノブイリの状況をみても、子どものうちに甲状腺癌になった子どもたちがその後さまざまな健康影響が生じたりもしている」「いつまでデータを集積されるのでしょうか」といった指摘がありました。
山田真先生が、「福島の子どもたちのことが心配ではないのですか?」という問いかけが印象的でした。

厚労省の藤下課長補佐は、この問いかけに対して、かなり真剣になって、答えてくれたと思います。今後の厚労省の対応をフォローしていきたいと思います。

質問:福島県民健康調査検討委員会や環境省の「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康診断のあり方に関する専門家会議」では、がん検診のあり方にまで言及されていまる。しかし、現在の事態は既に環境省の対応する範囲を超え、日本の保健・公衆衛生、がん検診を担当する厚生労働省が、早急に研究班の設立などを行い、対応を示さなければならない問題であると考えるがいかがか。

回答:あらたながん検診をはじめるには、死亡率が低下するというエビデンスや、不利益がすくないという根拠がなければならない。

質問:福島原発事故後の住民の健康管理体制の構築に当たっては、省庁横断的に取り組むべきであると考えられるがいかがか。環境省との連携はどのようにされているか。

回答:省庁横断的に取り組むべきという点については、その通り。厚労省は、福島県民健康調査委員会、環境省専門家会合にもオブザーバーしている。

【環境省】 環境省とのやりとりは、かなり空虚な部分が多かったため、記録する価値のある部分だけについてポイントをまとめます。

質問:
福島原発事故後の住民の健康管理に関する所掌が、厚生労働省ではなく、環境省に置かれたのは、なぜか。法的根拠などが存在するのか。その場合、その箇所を示されたい。

回答:もともと、環境基本法、環境省設置法で、環境省は公害の予防を所掌することになっているが、その中に、「放射性物質を除く」という文言があった。このたび、平成24年の原子力規制委員会設置法により、その「放射性物質を除く」が削除されたため、放射性物質による健康被害の未然防止も環境省が所掌することになった。

注)しかし、これは厚労省が所掌しないということに対する説明ではないように思います。さらに、福島における甲状腺癌の増加は、「放射性物質の影響ではない」というのがいまのところの政府見解であり、環境省の専門家会合も結論こそだしていませんが、そのような方向性でまとめようとしています。矛盾しています。もう少し我々側での法的検討が必要かもしれません。

質問:
復興庁、内閣官房、外務省、環境省は、2014年8月17日、「放射線についての正しい知識を。」と題する全面広告の政府広報を出した。
これは中川恵一氏の談話の形式をとり、「100mSv以下の被曝ではがんの増加は確認されていない」「原爆被ばくの遺伝的影響はなかった」などの内容であるが、誤りもしくは根拠不明な記述が散在しており、問題が多い。我々の税金で、このような広告を出されては困る。この根拠を示してほしい。

環境省:すぐには答えられない。なお、当方は、この広告の内容を事前には確認していなかった。

市民側:しかし環境省名で出ている。事前に確認していないわけはない。担当部署は、「射線健康管理担当参事官室」のはず。これについては、後日、再度、質問を送らせていただく。

質問:
「福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方」に関して、被災当事者や一般市民の声を聴く場を、環境省として正式に設けるべきだと考えるが、いかがか。少なくとも標記専門家会議の取りまとめ結果についてはパブリック・コメントに付すべきだと考えるが、いかがか。

環境省:専門家会議とも諮り、検討する。一方で、早く取りまとめを行わなくてはならない。

市民側:今までダラダラと線量評価ばかりやってきていた。今になって急がねばならないことはないはず。それとも来年度の概算要求に反映するという明確な方針があるのか。

環境省:そのような方針はない。

※環境省の専門家会議は、どうやら、「何もやる必要はない」という結論ありきで開催しているような疑惑が生じています。

質問:
8月27日に示された「健康管理のあり方に関する主な論点(案)」に関して、これまで委員、外部専門家、市民等から指摘のあった、以下の事項が含まれていないのはなぜか。

①甲状腺がんや心の健康以外の多様な疾病に着目した健診項目の拡大
②避難区域からの避難者向けに行われている健診の地理的拡大
③福島県外での健診の実施

環境省:これから、専門家会合の委員の指摘も踏まえ、改定していく。

市民側:これらの点をぜひ明確に盛り込んでほしい。

環境省:ご意見として承る。

※そのほか、専門家会合で招聘された外部専門家からの意見が反映されていないことや、「健康リスク評価の各論点に関するこれまでの議論」(第9回会議・資料2)の問題点などを具体的に指摘しました。詳細は、以下の質問書の「6.」をご覧ください。
https://dl.dropboxusercontent.com/u/23151586/kankyosho_korousho_shitsumon.pdf
しかし、環境省からは、「ご意見として承る」という回答しか得られませんでした。

最後に、市民側として、以下を要請しました。

・長瀧座長は、外部専門家の意見を無視し、強引な議事運営が目立つ。低線量被ばくワーキングのときも、招聘された外部専門家を威嚇するような態度であった。委員会の構成を抜本的に見直すべき。

・診療報酬に放射線障害が対象として記載され、一定の検査ができるようにしてほしい。

政府側対応者:
<厚生労働省>
・健康局がん対策・健康増進課 藤下課長補佐
・ 同 中川係長
・大臣官房厚生科学課健康危機管理・災害対策課 姫野室長
・ 同 亀山補佐
・ 田中主任
<環境省>
・環境保健部放射線健康管理担当参事官室 参事官補佐 鈴木・後藤・藤井

※当初、直接「専門家会議」に実質的にかかわっている佐藤参事官補佐が出席予定だったのですが、「急用ができた」ということで、鈴木さんがピンチヒッターとして出席されました。
鈴木さんはおそらく誠実な方で、批判することは申し訳ないのですが、それでもまったく内容的なことは答えられませんでした。

以下は吉田由布子さん(「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク)のプレゼンの主たる内容です。画像はすべて吉田由布子さんのパワーポイントファイルからの引用です。

・東電福島事故とチェルノブイリ事故(初期避難者は除く) 実効線量は変わらない。むしろ福島の方が高め? ・UNSCEAR2013年報告による 大気中ヨウ素131の拡散状況を見ると プルームは何度も福島県の県境を越えて、広範囲にわたって広がっている。関東にも達している

(UNSCEAR、アニメーション 2011年3月11日18時~4月1日01時)
http://www.unscear.org/unscear/en/publications/2013_1_ATT.html

・環境省の専門家会合は、以下の点で問題あり。
– 長時間の議論で、現段階でのデータの不十分性・不確実性が浮き彫りにされた。断定的評価は無理。原爆もチェルノブイリも線量把握と評価、線量再構築に長期間を費やしている。今後も線量再構築に向けた情報収集と分析が必要。
– 健康管理については、やっと議論が始まったばかり。外部専門家の意見は考慮されていない。被爆者援護法やチェルノブイリの健康管理に学ぶことは多いはずだが、論題に載っていない。

・一方、福島1県で子ども・未成年層に103名もの甲状腺がんまたはその疑いのある者が見つかっているが、国(厚労省)として何らの評価や対応もない。
・チェルノブイリ原発事故後、甲状腺がん以外、あらゆる疾病が増加した。

・私たちは、もっとチェルノブイリ原発事故後の対応や、「被曝者援護法」に学ぶべき。

・福島原発事故によって被曝した人たちに対する健康管理体制は、福島県民に限られていたり、避難指示区域と区域外に健診の内容に差があったり、合理的ではない。

・予防原則および「子ども・被災者支援法」に のっとり、 (1)健診エリアの大幅な見直し (2)健診項目の大幅な拡充 (3)居住地選択の権利の保障、保養を含めた 総合的支援 (4)科学的な検証に活用可能なデータベース の構築 (5)国の責任による一元的取り組み (6)被災者の信頼を得られる体制の構
築 これらの実現を!

以上、吉田由布子さんのプレゼン内容より。


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