IPPNWドイツ支部 : フクシマから6年


IPPNWドイツ支部 アレックス・ローゼン小児科医の論評

フクシマから6年:原子力災害は今も進行中

原文(独語)へのリンク

Sechs Jahre Fukushima: Die Atomkatastrophe besteht fort

著者:アレックス・ローゼン(Alex Rosen)小児科医/IPPNWドイツ副代表)

〈和訳:グローガー理恵〉

2017310

フクシマ原子力災害が始まってから6年経った今も、日本の人々は、福島第一原発事故によってもたらされた結果とともに生きている。福島第一原発で破損された原子炉(複数)は相変わらず、制御不可能な状態にある。 最近は福島第一の2号機原子炉格納容器内で、ヒトが数分間浴びたら即死してしまうような非常に高い放射線量が計測された。ロボットも、それだけ高い線量のある原子炉内では機能することができない。溶融した炉心(コリウム)を取り出すことは、チェルノブイリと同様に、何十年もの間、不可能であると推測されている。そのような状況のもとで、将来、地震/津波/暴風のような自然災害が発生したとすれば、廃墟となった福島第一原発が、その地帯全域を多大な危険に晒すことになる。

毎日毎日、何トンもの放射能汚染された冷却水が地下水/海水に流れ込み、地下水や海洋の放射能汚染をますます悪化させている。また、陸地の除染作業も行き詰まり、せっかくの作業も断続的に起こる暴風/降雨/洪水のために無駄に終わっている。放射性ごみは絶え間なく増え続け、山のように堆積されていく。そのため、最近、選抜された市町村において建設資材の放射能汚染制限値が引き上げられた。これは、放射能濃度が高い土を公共道路建設のために利用できるようにするためである。ー しかし、この影響を被った地域の住民による猛烈な反対運動があったため、” 制限値の引き上げ ” は中止されなければならなくなった。

一方、国は、放射能汚染された故郷から離れることを余儀なくさせられた10万人近くの人々への圧力を強めている。故郷を逃れた人々は ” 原発避難者 ”として、今日に至るまで、日本中に散らばっている 。 そして今や、避難者たちはできるだけ早く、福島のゴーストタウンと化した故郷ヘ帰還せよ、ということになったのである。未だに放射線量が非常に高く、健康ヘのリスクなしで生活することのできないような所であっても、帰還すべきであるというのだ。何よりも、若年家族や免疫不全症者、子どもたちが、そのような場所へ帰還するとは到底容認のできないことである。さらに、帰還したい人の人数が少ない状況が続いているため、国から出る原発避難者のための援助金はカットされることになるという。

そして福島では、小児甲状腺がんと診断された症例数がさらに増加している。201110月から20143月における最初のスクリーニング(先行検査)では甲状腺がん症例数がまだ101件であった。しかし、その後に(2014年から)行われた二巡目のスクリーニング(本格検査)では、2年後(2016年)に、症例数が145件になった。ということは、新たに診断された44人の子どもたちにおける甲状腺がんは、この2年間という期間 (2014~2016年)に発生したに違いないということを意味している。これは、年間の小児甲状腺がん発生率が【100,000人当たり8.1件】に相当するということである。フクシマ・メルトダウン以前の日本の小児甲状腺がん発生率は年間で【100,000人当たり0.3件】であった。甲状腺の腫瘍の進行や転移があったため手術を受けた子どもたちの数は145人である。そのほかに、穿刺吸引生検でがんと診断された子どもたちが38人いるのだが、彼らはまだ手術を待っている状態である。毎年、新規症例が追加されている。これまでのところ、子どもたちの71%足らずが [*訳注 ]検査を受けたのみであるので 、今後は、さらにもっと、がん診断数が増加するものと予測される。ーチェルノブイリ事故後に辿られた経過と酷似している。

甲状腺がん症例の早期発生後、福島においては、さらに、これから何十年間にも亘り、白血病や肺・腸の腫瘍、皮膚腫瘍、その他の器官の腫瘍の発生が増加するものと予測される。しかし、これらの症例が、目下のところは未だきちんと記録されている甲状腺がん症例のように、正確に記録されていくものかどうか、これは疑わしいことである。なぜなら日本政府は政治的に原子力産業に依存しており、何年もの間、原子力フレンドリーな宣伝活動や地元の農協への励ましの支援を通して、トリプル・メルトダウンを伴ったフクシマ超大規模原子力事故のネガティヴなイメージをもみ消そうとしているからである。

そして、甲状腺検査でさえもが、まもなく停止されるかもしれないのである。すでに今、集団スクリーニングの中止についての話があり、甲状腺調査を担当している福島医学大学からの代表者が福島県の学校をまわって、子どもたちや青少年たちに、「理不尽ながん診断」を望まない人は集団検査を受けることを拒否する ようにと勧めているのである。

その一方では、フクシマ災害の影響を受けた人々のニーズに応えようと全力を尽くしている多くの日本人がいる。福島県いわき市にある独立ラボ、いわき放射能測定室「たらちね」は市民の要望に応じて放射能測定を行い、独立クリニック、「たらちね検診センター(20175月に開設予定))」は超音波検査(エコー検査)についてのセカンドオピニオンを提供してくれることになっている。岐阜の医師たちは、原子力災害による影響を正確に評価することを可能にするために、日本の子どもたちの乳歯中のストロンチウム-90の濃度を測定する研究調査に取り組んでいる。

ドイツIPPNWは、これらのイニシアチブを支持する。我々は、日本からの新しい調査結果を科学的に評価することを通して、フクシマ惨事によって影響を受けた被災者のために、事実を解明する情報を提供することに尽力する。IPPNW/ PSRによる報告書『チェルノブイリと共に生きる30年間ーフクシマと共に生きる5年間30 years living with Chernobyl – 5 years living with Fukushima )(未邦訳)は、ここ数十年間における意義深い科学的知見を列挙し、それらをわかりやすく提示している。

以上

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

[ *訳注 ]

子どもたちの71%足らずが :福島医大によると、2巡目のスクリーニングを受けることになっている受検者数は計381,281人だが、これまでのところ270,486(71%)の検査結果データが出されているのみである。 (情報提供:アレックス・ローゼン医師)

IPPNW:「フクシマとともに生きる-5年間」から


グローガー理恵

2016年の3月、IPPNWドイツ支部とPSR米国支部が共同で“5 Years Living with Fukushima(フクシマとともに生きる-5年間)”と題された報告書を公表した。報告書は、二人の共著者、IPPNWドイツ支部副議長、アレックス・ローゼン(Alex Rosen)医師とIPPNWヨーロッパの副議長、アンゲリカ・クラウセン(Angelika Claußen)女医によって作成された。
報告書は、フクシマ原子力災害を巡る4つの問題点を呈示している:
1. いかにしてこの原子力災害が起こったのか?
2. どれだけの量の放射能が放出されたのか?
3. どのような影響が環境に及ぼされるのか?
4. 予測される、被災住民への健康影響とはどんなものか?
そして、これらの問題点を中心にその回答を見出そうと努めながら、今も進行中であるフクシマ大惨事を直視し、その実態を明らかにしていっている。
報告書の最後には、この論文の重要な結論と言える「日本への勧告」が掲載されてある。ここでIPPNW/PSRは、日本の原子力産業、政治家、原子力規制機関の間にはびこる汚職/癒着を徹底的に調査してクリーンアップしないのなら、フクシマのような大惨事が再び起こることになるであろう、との警報を鳴らしている。「日本への勧告」は、フクシマ大惨事に関わる責任当局者全員が真摯に受け止めるべき重大な警告だと思う。
それを抄訳したものをご紹介させていただく。なお抄訳することについては、アレックス・ローゼン医師からの快諾を頂いている。
原文 (英語)へのリンク:http://www.psr.org/assets/pdfs/fukushima-report.pdf

IPPNW と PSRによる日本への勧告 (33頁)

(抄訳:グローガー理恵)

1.フクシマ災害によって影響を受けた人々/被災者が持つ人権である「健全な環境の中で生活し健康に生きられる」という権利 ─この事こそが、フクシマ災害に関するすべての議論および政策決定における中心事項となるべきである。そのためには、被災者集団が意思決定プロセスに効力的に参加するということを確実にしなければならない。
2.被ばくした、または、これから被ばくする可能性がある ─ 原子力災害の事故処理/クリーンアップ作業員全員 ─ に信頼性ある正確な線量計が与えられなければならないし、彼ら全員が定期検診を受けなければならない。また、定期検診は原子力産業と関わりのない独立した医師によって行わなければならない。このことは、下請け業者に雇われた労働者、臨時労働者およびボランティアにも適用される。今後は、東電のような原発運営者が調査やデータに影響を及ぼすようなことがあってはならない。
3.日本政府は、チェルノブイリ事故の後に旧ソビエト連合によって設定された登録制度と同様に、フクシマ核災害の結果として放射能被ばくした全てのヒバク集団を登録する制度をつくり、その登録作業を持続していかねばならない。この登録の対象者となるのは:
»  放射能汚染区域からの避難者および汚染区域にまだ住んでいる住民
»  福島第一原発現場の作業員およびクリーンアップや除染作業に携わる人たち
4.汚染地域からの住民には、まだ汚染されている地域へ帰還するのか、それとも、汚染のない地域へ移住するのかを自分たちで決めることができる” 決定権利 “ が与えなければならない。移住することを決めた場合には引越し代や経済的援助が提供されなければならない。
5.避難した人々を汚染地域に強制帰還させることはストップされなければならない。とくに、人々が放射能汚染した自分たちの故郷には戻りたくないというのに、彼らへの経済的援助を打ちきることで帰還を強いるようなことがあってはならない。
6.原子力災害による影響についての疫学研究調査が実施されることを確実にしなければならない。また、被ばくした人々全員のために無料の健康診断や治療が提供されねばならない。日本国民に及ぼされる健康上のリスクについての評価は、原子力産業やその政治的支援者たちとは利害衝突のない独立した科学者たちによって、なされるべきである。
7.多量の放射性降下物が太平洋を覆ったのであるから、日本および米国を含む国際的海洋研究機関による海洋生物への影響についての組織的な研究調査が行わなければならない。
8.原子力災害によって及ぼされる影響/結果について報告することやその研究調査が、日本で新しく制定された”特定秘密保護法”のような国の抑圧によって妨げられるようなことがあってはならない。
9.福島原発メルトダウンの後、全ての原発が停止された数年間の間、日本は原子力発電なしで電力不足の問題もなくやってきた。しかし今、原子力ロビーは、大多数の日本国民の意思に反して、原子炉を再稼働させようとしている。日本は、50基の全ての原発を永久閉鎖して、その代わりとして、再生可能かつ持続可能なエネルギーの生産に投資をすべきである。日本は、ソーラーパワー/風力/水力/地熱エネルギーのような再生可能エネルギーを開発できる、と同時に、省エネルギー/エネルギー効率対策にも取り組んでいける、ずば抜けた潜在的能力/可能性を持っているのである。
10. それまで、原子力ロビーが日本政治に及ぼす甚大な影響力および政界、原発運営者/原子力産業、原子力規制機関の間にはびこる汚職や癒着について調査を行うことが必要である。そして、将来、フクシマのような大惨事が再び起こるのを防ぐために、このような汚職/癒着の横行に、事実上、ストップをかけなければならない。
以上

如何に福島医大が彼ら自身の調査をサボタージュしているか


IPPNWドイツ支部 アレックス・ローゼン(Alex Rosen) 小児科医による批判:如何に福島医大が彼ら自身の調査をサボタージュしているか

ご紹介させていただきますアレックス・ローゼン医師の論評は、2016615日に福島民友オンラインに掲載された甲状腺検査の在り方は 受けない意思も尊重』」と題された記事に基づいたものです。福島民友の記事は、甲状腺検査を巡るコミュニケーションを担当する福島医大の緑川早苗准教授が、昨年から学校を訪れ、子ども向けの出前授業を始め、そこで緑川氏が「がんが見つかったら嫌だと思う人は、甲状腺検査を受けない意思も尊重されます」と、子どもたちに話しているという事について触れています。その他の詳しい内容については下記のリンクをご覧になって下さい:

http://www.minyu-net.com/news/sinsai/michishirube/FM20160615-084642.php

アレックス先生は、如何に福島医大が彼ら自身の甲状腺調査をサボタージュしているか、様々な点を挙げながら、明確に批判しています。そして最後に、残された唯一の希望は、子どもたちや、その親御さんたちが福島県立医学大学の方略を見抜いて、これからも集団スクリーニング検査に参加することを続けていってくれる事であると結論しています。

下記が原文(ドイツ語)へのリンクです:

このアレックス先生の論評の中で下記の動画へのリンクが紹介されてありますので、ぜひご覧になってみて下さい:

原発事故当時15歳だった女性の勇気ある証言

福島における「理不尽ながん診断」

如何に福島県立医学大学が彼ら自身の調査をサボタージュしているか

著者:アレックス・ローゼン (Alex Rosen)医学博士 (小児科医/IPPNWドイツ支部副議長)

(和訳:グローガー理恵)

201684

福島で大規模な子どもたちの甲状腺がん検査/集団スクリーニングが実施されるようになってから、今や5年経った。複数の原子炉メルトダウンを伴ったフクシマ超大規模原子力事故による影響が原子力に好意的な日本政府によって故意に過小評価されているが、少なくとも、科学者、医師、保護者会は、この集団スクリーニングの実施を押し進めることができた。 福島県立医学大学によって行われている集団スクリーニングは、福島県のみに制限されていることや透明性の低さ、原子力ロビーによる福島医大への影響力など尤もな批判があるのだが、スクリーニングすることによって甲状腺がんの早期診断や早期治療ができるという可能性を提供してくれている。

さらにチェルノブイリの場合とは違い、この調査を通して、原子力災害が被曝した住民へ及ぼす影響について重要な知見を得ることができる。

一方、5年後になって終了した1巡目と2巡目にわたる甲状腺検査の結果は、検査を受けた住民における甲状腺がんの症例数が、はじめに予測されていたよりも、はるかに高い数値であることを明示している。しかし、この事に対する日本政府の反応の仕方は独特である: 彼らは家族に、誰もが自由意志でこの検査をやめることができるということを提案しているのである。

福島医学大学の 内分泌学者/コミュニケーション担当者である緑川早苗准教授は、去年から、福島県内の学校をまわって、子ども向けの”出前授業”をやっている。”出前授業”で緑川准教授は、「理不尽な がん診断」を望まない人は、集団検査を受けることを拒否する権利があることを説明する。このような表現 (「理不尽ながん診断」)が何を意味しているのか。それは、福島医学大学の出版物を読めば、はっきりとしてくる: 彼らは、これまでに福島県の172人の子どもたちに見つかった甲状腺がん症例はいわゆる「スクリーニング効果」に関連性がある、との見解を示しているのである。福島医大は、「甲状腺がん症例がフクシマ原子力災害に起因しているとの可能性は低く、これらの甲状腺がん症例は、集団スクリーニングが実施されなかったのなら、まったく見つからなかったか、もしくは、後になった時点ではじめて見つかったであろう」との見解を唱えている。なぜ、一目瞭然である原子力災害との因果関係が最初から否定されるのか、福島医大は解説しない。また、早期転移を伴った悪性度の高い進行性がん、そして、腫瘍の浸潤性増殖および腫瘍の急速な成長が高率に発生していることについても、何の説明もなされていない。一方で、131人の子どもたちに腫瘍および転移の摘出手術が適応された。摘出手術を受けた患者は、これから一生ずっと甲状腺ホルモン剤を服用していかねばならないし、がん再発の早期発見と早期治療ができるようにするためにアフターケア検診にも臨んでいかねばならない。さらに福島医大は、なぜこのような数値 (予想外に高かった甲状腺がんの罹患率)を単に ”スクリーニング効果” と関連づけて考えるのか、はっきりとした解説をしていない。

福島医大の代表者 (緑川早苗)は学校の出前授業で、「がんが見つかったら嫌だと、がん診断を望まない子どもたちがいるのなら、その意思も、また尊重されなければならないと提唱する。また、コミュニケーション担当者でもある彼女は、子どもたちやその家族が持つべき権利について一言も触れようとしない。子どもたちやその家族が持つべき権利とは、放射線汚染の危険性原子力事故後に発生する甲状腺がんに関する知識悪性腫瘍の発見が遅すぎる場合のリスク について、偏りのない公平な情報を得ることである。その代わりに、彼女はこう述べたのである: 「原発事故の後に子どもたちは検査を受けるべきだと(汚染地域の)住民 が考えたのは当然のこと。また、検査結果を放射線と結び付けて不安に思ったの も当然のこと。でも今思えば、その全て が理不尽な体験だった」と。

そして現在、多くの科学者や医師、両親たちが、検査の受診者数が減ることで甲状腺調査の価値が失われてしまうことになるだろうと、尤もな懸念を懐いているのである。できるだけ多くの年少者に検査を受けるのをやめるようにと、それとなく提案している福島医大の打算は瞭然としている。患者の自律性というものは、今まで尊重されてこなかった – したがって、子どもに甲状腺の異常が見つかった場合、家族はそのことをなかなか知らせてもらえなかったり、検査結果に関する情報も十分に与えてもらえなかったり、他の医師によるセコンド・オピニオンは概して否定されたり、診察結果や超音波画像が両親に渡されなかったりしたのである。そうして、今や、甲状腺検査の結果は甲状腺がんと原子力災害の相関関係を更にいっそう明白に示しているため、彼らは、この 患者の自律性という美名の下に、歪曲させた、計画的かつ意図的な事実の曲解を生み出そうと狙っているのであり、この事は最終的にすべての甲状腺検査を取り消し無効にしてしまうのである。既に、福島県民健康管理調査検討委員会の前検討委座長である山下俊一医師をはじめとした日本の責任担当者たちは、集団スクリーニングを止めることを告知している。これに対して抗議をすることや、独立した公正な公衆情報を要請することこそが、当を得ており適切なのであろうが、残念ながら、そのような行動を起こすことは、日本の現在の政治情勢・経済状況を考慮すると、おそらく現実的だとは言えない。

しかし、まだ希望は残っている:それは、両親や子どもたちが福島県立医学大学の方略を見抜いて、これからも集団スクリーニング検査に参加することを続けていってくれる、という希望である。

以上

乳歯中のストロンチウム90を探す


アレックス・ローゼン

医学博士/小児科医/IPPNWドイツ副議長

和訳:グローガー理恵

フクシマ原子力災害によって、はかりしれないほど膨大な量の放射能が環境中に拡散された。放射性ヨウ素とセシウムによる汚染については、日本の当局によって度々言及されており、これらの放射性同位体は土壌、水、食物のサンプルをもとに定期的に測定されているが、放射性ストロンチウムによるヒトの被曝や環境汚染の事実は黙殺されている。

汚染マップは存在しない。ストロンチウムの測定は、せいぜいのところ時折、個々の研究グループによって行われるぐらいである。また、放射能汚染された食物の摂取によって人々が受ける被曝線量を算定するために使われる食物データベースには、ストロンチムの調査がまったくない。ストロンチウムに関して分かっていることは、福島の家畜の歯中や骨中に有意な量の放射性ストロンチウムが検出されたということである。*1)

そこで、日本の独立した科学者たちは、日本市民が受けた放射性ストロンチウム被曝の研究調査に取り組むことを自分たちの目標と定めたのである ー そうすることで、これまでずっと黙殺されてきた、汚染地域に住む住民における白血病や悪性骨腫瘍の発症リスクへの注意を喚起するー とくに、子どもたちの方が大人よりもはるかに高い発症リスクを抱えていることへの注意を促すことである。

今後何年かの間に、日本全国から乳歯が収集されることになっている。これは、乳歯中のストロンチウム濃度を測定するためである。ここで重要なことは、とくに汚染がひどい地域からの子どもたちばかりでなく、ありとあらゆる年齢層の日本全国からの人々も乳歯を提供してくれることである。そうすることで、ストロンチウム濃度の経年変化や地域差の分析ができるようになる。さらにまた、これらの乳歯調査の測定データは、個々の住民集団や年齢グループにおけるストロンチウム被曝の総量を評価するためのバイオマーカーとして使うことができるだろう。

また、乳歯提供の際には乳歯と共に、提供者の乳児の時の栄養 (母乳、粉ミルク、混合 )や 飲み水 (水道水、井戸水、ミネラルウォターなど)についての詳細、および提供者の生誕地から居住地転換についての記録も提供されることになっている。過去のストロンチウム・スタディーから、乳児が生後一年間に摂取する栄養が、体のストロンチウム被曝にはっきりとした影響をもたらすことが分かっている。日本では、この局面についても研究調査がなされるべきである。そうすることで、必要な場合には、乳児のための適切な勧告ができるからである。

歯中のストロンチウム検出は技術上、大変な時間と忍耐を要する、とても込み入った仕事である。そのため、この研究調査の発起人たちは、ストロンチウムの検出方法によく精通しているスイス・バーゼル州立研究所からの国際的ノウハウを取り入れることにした。目下のところ、日本で最初に集められた200本の乳歯はバーゼル研究所で調査されている。将来は日本において研究調査を実施することが計画されているが、そのためには先ず調査目的に適った測定研究所を設立して、スタッフも養成されなければならない。しかし、研究者チームは、最終的には研究調査の結果が、研究のために費やされたすべての苦労や努力を正当化してくれるであろうとの確信に満ちている。彼らは、住民のストロンチウム被曝の経年変化を記録するために、研究調査を数十年間にわたり実施していくことを計画している。ストロンチウムの物理的半減期は28.8年である。

この研究調査の目的は、ストロンチウム汚染の実際の程度/範囲を確認し、被曝した子どもたちの健康を守るために、影響を受けた自治体や県に提言することである。IPPNWドイツは、この乳歯研究調査を支援しており、乳歯保存ネットワーク(PDTN) 呼びかけ人ネットワーク のメンバーでもある。” 呼びかけ人ネットワーク “ とは、乳歯スタディーが実際に遂行されるために、応援し助ける人々・団体のネットワークである。*2)

この重大な研究調査を実施するのが公的機関ではなく、独立した科学者たちであるという事実が、日本の政局について多くを物語っている:日本においては、全ての階層の国家機関が原子力産業の甚大な影響下にあり、彼らは政府から、できるだけ早く“フクシマ 問題 “を棚上げにして決着をつけるようにと要請されているのである。PDTNの科学者たちが取り組もうとしている研究調査は重要である。なぜなら、この研究調査は、放射能汚染地域に住む人々をその運命に任せることではなく、優れた科学によって政治や関連当局に圧力を加えることに寄与していくのであるから。

       ✫ ✫ ✫ ✫

訳注:

*1) 参考文献:二瓶英和, 福島第一原子力発電所警戒区域内被災家畜の歯中の放射性ストロンチウムとセシウムの測定, 東北大学 博士論文 2013http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/56584/1/Nihei-Hidekazu-2013-Tour03-334.pdf 

*2) 乳歯保存ネットワークの詳細についてはホームページを参照:http://pdn311.town-web.net/

原文(ドイツ語)へのリンク:  Suche nach Strontium-90 in Milchzähnen

ストロンチウムが歯中と骨中に


IPPNWドイツ支部-Fukushima Newsletter (201512月号):         

原文(ドイツ語)へのリンク:Hohe Strontium-Konzentrationen in Zähnen und Knochen

高濃度のストロンチウムが歯中と骨中に

新しい研究結果

(和訳:グローガー理恵

ストロンチウム-90は、半減期が28.8年のベータ線のみを放出する向骨性 の放射性同位元素であり、核災害における最も危険な放射物の一つである。ストロンチウム-90 はカルシウムと似ていて、体内に吸収されると骨中に蓄積され、そこで敏感な骨髄を傷つけ白血病を誘発することがある。

この非常に測定困難なアイソトープは、仙台の東北大学の一つの博士論文*が示しているように、放射能汚染地域の土壌サンプルの中に検出されたばかりでなく、損壊された福島原発周辺の避難区域の若年牛の歯中にも見つかった ー 検出されたストロンチウム-90の放射能濃度はおよそ【150Bq/kg】である。

何よりも警戒すべきことは、放射能汚染度の比較的低い地域からの牛にもストロンチウム-90が検出されたことである。このストロンチウム-90の問題は、これまで想定されてきたよりも、はるかに深刻な問題なのかもしれない。とりわけストロンチウムはセシウムよりも容易に栽培植物から取り入れられる可能性があり、検査されたサンプルの中には、ストロンチウムの濃度がセシウムよりも高い場合が幾つかあった。

また、避難区域のみがストロンチウム-90で汚染されているということは決してない。例えば、福島原発から北部の40キロ離れた沿岸区域にある相馬市に非常に濃度の高いストロンチウム-90が検出されている。さらに、福島原発から195キロ離れた、東京の北部30キロほどのところに位置する千葉県の柏市や福島から244キロ離れた大都市/横浜で、また東京首都圏でも、土壌に低い濃度のストロンチウムが見つかったのである。

放射性ストロンチウムを吸収したのは牛や家畜ばかりでなく、ヒトも、その相当量を空気、水、食べ物を通し吸収したという懸念が大きい。それゆえに、フクシマ問題に真剣に取り組んでいる日本の科学者たちは、ストロンチウムを検出調査するために、日本中の子どもたちの乳歯を集める活動を開始した。1960年代に米国で類似した研究調査が実施されたが、その結果、アメリカの子どもたちの乳歯中に非常に高い濃度のストロンチウムが検出され、この調査結果は、世界中の地上核兵器実験を禁止することに寄与したのだった。

乳歯保存プロジェクトを進める日本人科学者たちは、今後の研究調査を通して日本国内の放射能汚染区域における健康リスクに関するデータを得られることを期待している。

以上

✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫

訳注

東北大学の一つの博士論文 :二瓶英和氏が作成した論文 ’福島第一原子力発電所警戒区域内被災家畜の歯中の放射性ストロンチウムとセシウムの測定  

http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/56711/1/nihei-2794.pdf 3ページ

 

もはや”スクリーニング効果” で理由づけることはできない


IPPNWドイツ支部 — アレックス・ローゼン(Alex Rosen)小児科医の論評: 毎月のように発生する甲状腺がん症例 – もはや”スクリーニング効果” で理由づけることはできない

グローガー理恵

アレックス・ローゼン医師著の ”11月30日に公表された福島県の甲状腺検査の最新データ” に関する論評がIPPNWフクシマ・ニュスレターに掲載されているので、それを和訳してご紹介させていただく。

アレックス・ローゼン先生は論評の最後のパラグラフでこう述べている:「甲状腺がんを発病したために、すでに甲状腺の手術を受けなければならなかっ た115人の子どもたちの家族の運命は、看過することのできない別の問題である。福島の人々が持つべき、健康を享受し健全な環境に住めるという普遍的権利 が黙殺されているのだ。」 被災者への深い共感に満ちた言葉だと思う。また、責任当局者が真摯に受け止めるべき言葉だとも思う。

原文(ドイツ語)ヘのリンク:Jeden Monat neue Schilddrüsenkrebsfälle

毎月のように発生する甲状腺がん症例

福島県立医科大学が行った甲状腺検査の結果

著者:アレックス・ローゼン (Alex Rosen)医学博士 – IPPNWドイツ支部

(和訳:グローガー理恵)

2015年11月30日、福島県立医科大学が福島県の子どもたちにおける甲状腺検査の最新データを公表した。これらの検査は、いわゆる先行検査 (Baseline Screening)と本格検査(Full Scale Examination) と呼ばれる2部の検査で成り立っている。

先行検査 (Baseline Screening)

2011年10月から2014年3月までにおける、いわゆる ’’先行検査 (ベースライン・スクリーニング)” の 範囲内では、小児/青少年集団における甲状腺がんの有病率、すなわち甲状腺がん症例の静的な頻度が決定されることになっていた。日本の厚生労働省による と、日本国内における小児甲状腺がんの年間発症率は【10万人当たり0.3件】であるという。この数値に従うと30万人の子どもたちから成る一つの集団に おいては、年間【1件】の甲状腺がん症例数が確定されることが予測されるーこれは病徴や偶発病変を通して診断される場合である。

集団スクリーニングを通して、所謂 スクリーニング効果 (独語:Screening-Effekt)” が 生じるということは周知の事実であるーすなわち集団スクリーニングにおいて健康な受検者も検診することで、通常ならずっと後になってから初めて症候が現れ たであろういうような疾病がすでに早期段階で検出され診断が確定されるという事である。したがって、3年間半にわたる先行検査 においては、単に3件から4件以上のがん発症が診断されるであろうと予測された。この (3件〜4件の)件数を超した過剰症例は(スクリーニング効果がもたらしたとされるため)非常に早期段階のものであり、したがって罹患者にとって差し迫っ たリスクはないものと判定されるものと推測された。

しかし、実際の先行検査の結果は異なった状況を描いていた:超音波検査(エコー検査)で537人の子どもたちに甲状腺の異常が見つかった事が確認さ れたため、穿刺吸引生検が実施されなければならなかったのである。そして細胞診の結果、計114人にがん疾患の疑いがあることが明らかになった。 さらなるモニタリングで、 その圧倒的大多数が悪性度の高い進行性がんであることが判明し、その内の101人の子どもたちには転移や危険な腫瘍の増大があったため手術が行わなければ ならなかった。

手術後、一人は良性腫瘍と確定され、手術を受けた100人に甲状腺がん疾患の診断が下された (97人が乳頭がん、3人が低分化がん)。その結果、先行検査が完了した後すぐに、「このように予期しなかった、悪性の甲状腺腫瘍(がん)の多発の原因は 何なのであろうか」との厄介な疑問が生じてきたのである。少なからず、福島第一原発でメルトダウンが起こった後に日本当局が被災者たちにヨウ素剤を配布し ないと決定したことは、この甲状腺検査の結果を鑑みると非常に理解しがたいことである。

本格検査 (Full Scale Examination)

2014年4月から2巡目の甲状腺検査として、本格検査が始まっている。この検査には先行検査に含まれた子どもたち全員と、原発事故のすぐ後に生まれた子どもたち*も同様に検査対象となっている。

したがって、 この検査の対象集団は先行検査の対象集団よりも規模が大きい。現在計画されているのは、これらの検査対象者たちが、20歳 まで(21歳になる直前まで)2年ごとに、それ以降は5年ごとに検査を受けることである。2014年4月から2016年3月までの間に実施される、本格検 査における検査対象者数は計379,952人となっているが、これまでに本格検査を受けたのは199,772 人である。その中で検査結果が確認されたのは、これまでのところ、182,547 人のみ (48.0%)である。今まで、そのうちの124人に超音波検査(エコー検査)で、著しい変化/異常が見つかったため穿刺吸引生検を実施することが必要と なった。そして、細胞診により、新たに計39人にがん症例の疑いありとの結果が出た。そのうちの15人に転移や危険な腫瘍の増大があったため手術を受け、 その全員に甲状腺乳頭がんの診断が確定された。

これで、甲状腺がんの診断が確定された子どもたちの総数は115人となった。彼らには転移や腫瘍の急速な成長があったため、甲状腺手術を受けなけれ ばならなかったのである。さらに37人の子どもたちに甲状腺がん疾患の強い疑いがある。彼らはまだ手術を待っている状態である。甲状腺がん症例が確認され た15人に、がんが発生したのは1巡目の検査(先行検査)と2巡目の検査と(本格検査)との間の期間である。

2巡目のスクリーニング(本格検査)で受検者の58.9%に結節もしくは嚢胞が見つかった。1巡目の検査(先行検査)におけるその割合は、まだ 48.5%であった。ということは、1巡目の検査では甲状腺の異常がまったく検出 されていなかった32,227人の子どもたちに、新たに、嚢胞や結節が確認されたということである ー そのうちの308人に見つかった嚢胞/結節のサイズが非常に大きかったため、さらなる解明が緊急に必要とされた。さらに最初のスクリーニング ( 先行検査)で小さな嚢胞もしくは結節が見つかっていた656人の子どもたちに、再検査 ( 本格検査)では、非常に急速な(嚢胞/結節の)増大が確認されたため、さらなる診断検査が実施されなければならなかった。

残念ながら、 新たに甲状腺がんの診断が下された新規症例に関するデータは、当局によって差し控えられているため、最初のスクリーニングが正確に、いつ実施されたのか明 らかではない。先行検査と本格検査の間の期間が、予定されたように2年間であると仮定するのなら、現時点における小児甲状腺がん発生率は年間で 【100,000人当たり3.8件】になるものと推定される。

フクシマ・メルトダウンの以前の日本における小児甲状腺がん発生率は、年間で【100,000人当たり0.3件】であった。このような10倍以上にもなる小児甲状腺がん発症率の増加を、いわゆる ”スクリーニング効果 で理由づけることは、もはやできない。

単なる氷山の一角?

これまでに、まだ検査を受けていない子どもたちの数が、あることを暗示している:それは、今後、甲状腺がん症例が、この年間発症率を超えて、さらに 増加することが予測されるということである。福島県において放射線被曝をした67,000人以上の子どもたち**が、まず先行検査にまったく入っていな かったし、180,000人以上の子どもたちがまだ2巡目の検査(本格検査)を待っている状態である。そうであるから、今後何年かの間に、甲状腺がん症例 数がさらに上昇するかもしれないと憂慮すべき正当理由が存在するのである。

さらに憂慮すべきことは、ー放射性ヨウ素を含んだフォールアウトが東京都の北部までにも及び、原子力災害が始まった何日/何週間後に、さらに何十万 人という子どもたちが高い放射線量を被曝したという事が分かっているのにもかかわらずー福島県外に住む子どもたちがまったく検査を受けていないという事実 である。集団スクリーニングなしでは、これらのフォールアウトの影響を受けた人々の間で発生するものと予測される、がんの過剰症例と危険な放射線との因果 関係を確立させることはできない。

福島県は、安倍晋三の率いる日本政権と同様に、原子力産業 と深く深く癒着しており、日本では、いわゆる原子力ムラの影響力が相変わらず甚大であるということを重ねて述べねばなければならない。”原子力ムラ ’’とは、原子力企業、原子力フレンドリーな政治家たち、買収されたメディア、腐敗した原子力規制当局から成る集団を称するものである。彼らは共同で国の原子力産業の存続を推進している。

2012年には、国際原子力ロビー・IAEA (International Atomic Energy Agency-国際原子力機関)が、甲状腺検査を行っている福島県立医科大学への資金援助を通して影響力行使している可能性がある事が分かった***。

このような状況のもとで、福島県立医科大学による甲状腺検査が、放射線誘発甲状腺がん症例に関する真面目で信頼できる調査になるとは期待できない し、調査の公式結果も、もうすでに既定された結論と一致することになるだろう:すなわち、甲状腺がん発症の著しい増加とフクシマ超大規模原子力事故との因 果関係は見つからないとの結論が出されることになるのだ。

しかし、甲状腺がんを発病したために、すでに甲状腺の手術を受けなければならなかった115人の子どもたちの家族の運命は、看過することのできない別の問題である。福島の人々が持つべき、健康を享受し健全な環境に住めるという普遍的権利が黙殺されているのだ。今、この時点において必要なのは:  – 原子力災害によって及ぼされた健康ヘの影響結果を提供し、被災者の憂慮、苦悩を真摯に受け止め、経済的利害関係に非依存である独立した、科学的根拠に基づいた隠蔽性のない公平な分析調査の体制を確立させることができる、責任のある信頼できるガバナンスである。

以上

✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫

【訳注】

*      原発事故のすぐ後に生まれた子どもたち: 事故後から2012年4月1日までに生まれた福島県民

**     福島県において放射線被曝をした67,000人以上の子どもたち:  先行検査の受診対象者数は    367,685人だったが、実際の受診者数は300,476 人 (367,685人 – 300,476人≒ 67,000人)

***   2012年には、国際原子力ロビー・IAEA (International Atomic Energy Agency-国際原子力機関)が、甲状腺検査を行っている福島県立医科大学への資金援助を通して影響力行使している可能性がある事が明かになった:   参照:外務省リンクに掲載された資料  –  ”人の健康の分野における協力に関する福島県立医科大学と国際原子力機関との間の実施取決め”

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3180:151225〕

福島における子どもたちの甲状腺がん


あってならない事は、存在し得ない
福島における子どもたちの甲状腺がん

2015年9月8日

アレックス・ローゼン

医学博士 – IPPNWドイツ支部

(和訳:グローガー理恵

2015年8月31日、福島県立医科大学は県の甲状腺検査の最新データを公表した。この検査は過去4年間において2回の異なった時点に実施されており、調査に含まれたのは、計30万人以上の18歳未満の子ども/青少年である。

1巡目の スクリーニング(先行検査)の1次検査における超音波検査で、受診者の内の537人に、非常に疑わしい甲状腺の異常が見つかったため、穿刺吸引細胞診が実施されなければならなかった。その結果、113人に ’がんの疑い’ があることが分かった。さらに、その113人の内、99人に、転移や危険な腫瘍の成長が見つかったため、手術が行わなければならなかった。手術の結果、99人の内、1人が良性腫瘍と確定され、98人に がん疾患の診断が下された。

2巡目のスクリーニング(本格検査)の検査対象集団には、福島原発事故のすぐ後に生まれた子どもたち*も含まれるため、最初のスクリーニング(先行検査)の検査対象集団よりも大きくなっている。

2014年4月から2016年3月の間に行われるスクリーニング(本格検査)の検査対象者総数は378,778人であるが、これまでに検査を受けた受診者数はたったの169,445人だけである。2巡目のスクリーニング(本格検査)で受診した169,445人のうち、これまでのところ、153,677人の検査結果が確定されたのみである(40.5%) 。そのうち(153,677人)の88人に 穿刺吸引細胞診が必要とされた。その結果、計24人にがんの疑いがあることが新たに判明した。そして、その内の6人に転移や危険な腫瘍の拡大が見つかったため、手術が行われなければならなかった。そして、手術をうけた6人全員にがんの診断が確定した。

すなわち現在、104人の子どもたちに甲状腺がんの診断が下されたことになる。彼ら全員に転移やがん腫の急速な成長が見つかったため、甲状腺手術が行わなければならかったのである。さらに他の33人に、甲状腺がん疾患の 強い疑いありとの判定が出されており、彼らはまだ手術を待っている状態である。

2巡目のスクリーニング(本格検査)で、受診者の58.4%に結節もしくは嚢胞が見つかった。最初のスクリーニング(先行検査)では、この(結節もしくは嚢胞が見つかった)割合が、まだ48.5%であった。ということは、最初のスクリーニング(先行検査)においては、甲状腺の異常が全く検出されなかった28,438人の子どもたちに、新たに、再検査(本格検査)で、嚢胞と結節が確認されたということであるーしかも、その内の270人に見つかった嚢胞/結節のサイズが非常に大きかったため、さらなる解明が緊急に必要とされたのだった。

さらに、最初のスクリーニング(先行検査)で小さな嚢胞もしくは結節が見つかった553人の子どもたちに、再検査(本格検査)においては、非常に急速な(嚢胞/結節の)増大が 確認されたため、さらなる診断検査が実施されなければならなかった。 1巡目のスクリーニング(先行検査)と2巡目のスクリーニング(本格検査)との間の期間に、確定された甲状腺がん症例が6件発生したのである。

先行検査と本格検査の間の期間が、予定されたように2年間であると仮定すれば、小児甲状腺がん年間罹病率(発病率)は、【100,000人当たり2件近く】になると推算される。フクシマ原子力事故以前の日本における、小児甲状腺がんの年間発病率は【100,000人当たり0.3件】であった。 所謂 ”スクリーニング効果 ” を理由にして、 このような子ども/青少年たちにおける甲状腺がん発病率の増加を正当化することは、もはやできないのである。

さらに、放射線被曝をした福島県の67,000人以上の子どもたち**が、これらの検査(先行検査および本格検査)に全く含まれていなかった事、そして、残りの209,000人以上の子どもたち***が未だに2巡目の検査(本格検査)を受けていない状態である事が挙げられる。そうであるから、今後数か月間に、甲状腺がん症例数が、さらに上昇するかもしれないと懸念すべき正当な理由が存在するのである。放射能汚染による最も著しい影響は、がん発病までの潜伏期間があるため、いずれにせよ、今後何年か後に現れることが予測される。

福島県立医科大学で甲状腺検査の最新データが公表された同じ日、福島県は既にこれらの憂慮すべきデータに対する反応を示した。彼らは、予測できなかったほどに高い子どもたちの甲状腺がん症例数が、福島第一原発のトリプル・メルトダウンがもたらした放射性ヨウ素の放出と関連しているのかどうかを調査することを研究チームに委託したのである。しかしながら、福島県にとってこの研究調査の結論は、もう最初の書類に目を通す以前に既に決まっているのである:「福島県で見つかった甲状腺がん症例が福島原発事故に由来するとは、ありそうにない。」 そのような早すぎる結論既定には驚かされる。なぜなら、この研究調査の真剣さ/重大性に対しての疑念を呼び起こさせるからである。

認識せねばならないことは、福島県が東京の日本政府と同様に、国の原子力産業の影響力に深く浸透されている事、そして、所謂 “ 原子力ムラ ” の勢力が引き続き甚大であるという事である。日本で、”原子力ムラ’’とは原子力企業、原子力フレンドリーな政治家たち、買収されたメディア、腐敗した原子力規制庁から成る集団を呼ぶ名称である。彼らは共同で国の原子力産業の存続を促進している。このような状況のもとで、福島県による放射線誘発された甲状腺がん症例の研究調査が、真剣で信頼性のあるものになる事は期待できない。そして、今年中に出されることになっているその研究調査結果も、すでに存在する既定結論と一致するものになるだろう:甲状腺がん発病率の著しい増加と、2011年3月に発生したフクシマ超大規模原子力事故との因果的な関連性は見つからなかった – なぜなら、あってならない事は、存在し得ないのであるから****。

✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫ ✫

【訳注】

* 福島原発事故のすぐ後に生まれた子どもたち:事故後から2012年4月1日までに生まれた福島県民

** 放射線被曝をした福島県の 67,000人以上の子どもたち’が、これらの検査に全く含まれていなかった事: 先行検査の受診対象者数は367,685人だったが、実際の受診者数は300,476 人であった。

*** 残りの209,000人以上の子どもたちが未だに2巡目の検査(本格検査)を受けていない状態: 本格検査の受診対象者数は378,778 人だが、実際の受診者数は169,455人 である。

**** あってならない事は、存在し得ない(独語: Da nicht sein kann was nicht sein darf ):ドイツの詩人/著作家、クリスティアン・モルゲンシュテルン (Christian Morgenstern)の作品 ”Die unmögliche Tatsache (仮訳:不可能な事実)” から引用された句。福島県や日本政府にとって、甲状腺がん発病率の著しい増加と、2011年3月に発生したフクシマ超大規模原子力事故には因果的な関連性があるという事が判明することは、”あってならない事”であり、そのような因果関係は “存在し得ない”、ということを示唆している。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3086:150920〕

原文(ドイツ語)へのリンク:

http://www.fukushima-disaster.de/deutsche-information/super-gau/artikel/c0954b1c87134eef0b3444d988c2d152/da-nicht-sein-kann-was-nicht-sein-da.html

なぜ日本は、ヒロシマ・ナガサキの大惨事にもかかわらず、 原子力を受け容れたのか


IPPNWドイツ支部

広島、長崎の大惨事から70年目を記してIPPNWドイツ支部が論評を出した。「なぜ日本は、ヒロシマ・ナガサキの大惨事にもかかわらず、原子力を 受け容れたのか 」との記事のタイトルが既に物語っているように、IPPNWの論評は、原爆攻撃のために数多くの被爆犠牲者を出した日本が、なぜいとも簡単に核エネルギー を受け容れていったのか、その背景を掘り下げると共に、私たちに大きな疑問を投げかけている。論評は日本人にとって、大いに思考を促すものなのではないか と思う。

原文(ドイツ語)へのリンク:

http://www.ippnw.de/atomwaffen/humanitaere-folgen/artikel/de/yin-und-yang-weshalb-japan-sich.html

なぜ日本は、ヒロシマ・ナガサキの大惨事にもかかわらず、原子力を受け容れたのか
ヒロシマ・ナガサキから70

2015年8月11日

(和訳:グローガー理恵

1945年8月6日、原子爆弾 リトルボーイは広島で炸裂し、市は灼熱の地獄へと 化した。その3日後 の1945年8月9日には長崎が、同様の過酷な運命に襲われたのだった。広島、長崎と、原子爆弾が炸裂したその日、数万人の人々が亡くなり、その年の末ま でに命を奪われた人々の数は、20万人近くに及んだ。あとの何十万人という犠牲者には、彼らの生涯にとって消えることのない傷痕が残った。それは、ー 負傷や火傷を負い、放射線被曝の影響を受け、自分の家族や故郷を喪失し、精神的外傷を負い、被爆者としての烙印を押されたー傷痕であった。

この8月には、広島と長崎が原爆爆撃されてから70年目を記することになるが、この広島と長崎で起こった大惨事ほど、強く日本人の集団的記憶の中に 焼き付いた史実はない。それ以後、日本市民の大多数は、広島・長崎原爆投下の生存者である被爆者たちと共に、全ての核兵器の廃絶を唱え、世界中で2千回以 上行われた核兵器実験の被害者たちとも連帯している。さらに、今年の11月には広島で、初の 世界核被害者フォーラムが開催され、そこにおいて、放射能汚染されたウラン採掘地帯に住む住民や民間および軍事核事故の犠牲者など、すべての被害者が話す機会を得られることになっている。

しかし、それ以上にもっと驚くべき事実がある。それは、今日において、日本の原子力産業が世界で最大かつ最強な原子力産業のひとつとして数えられるということである。いわゆる 原子力ムラと も呼ばれている日本の原子力ロビーは、日本国内で何十年もの間ずっと政治や社会に決定的な影響を及ぼしてきており、与党とも密接に結託している。彼らは実 際、日本で最も影響力の強い産業ロビー団体なのである。ここで、ある疑問が湧く:それは、「いかにして、この軍事核産業が産み出した原爆のためにあれほど 酷く苦しんだ国が、民間原子力産業を自国の産業の柱石としていく事になったのか?」という疑問である。我々は、IPPNWドイツ支部と交流/繋がりのある 日本の人々に、この疑問を提示してみた。
広島市大学・広島平和研究所で働くロバート・ジェイコブス (Robert Jacobs) 博士/准教授は、「原爆投下後の何年かの間、日本人は全ての原子核テクノロジーを猛烈に拒絶した」と説明する。戦後日本と結びついた米国は、「日本人は原 子力に対して非理性的な恐怖感を懐いている」とすら報告している。1945年の8月、人類は核の破壊的な力を知ることになったのであるから、 おそらくは、世界中のほとんどの人々が、原子力というものに対して、日本人と同様な反応を示したのではないだろうか。しかし米国は、このような世界的な拒 絶反応を阻止したかった。冷戦が始まった頃、アメリカの核兵器保有は、軍事上ドクトリンの最も重要な軸足となり、核兵器基地が太平洋にも、且つ一番うまく いった場合には、ソ連への飛行距離をできる限り短くするために、日本にも出来ることになっていた。つまるところ、日本人の原子力への非理性的な恐怖が原子力の受容に変わることが肝要となったのである。

これを踏まえて、1953年、ドワイト・アイゼンハワー米国大統領 は‘’平和のための原子力 (Atoms for Peace) ”  計画を開始した。それは、「兵器級プルトニウムの生産過程で多量のエネルギーが発生する ー そのエネルギーを電力生産のためにも利用することができる」という提案であった。すなわち、この 平和のための 原子力’’ を世界中に広めることで、原子核テクノロジーの悪いイメージを糊塗して、広い社会的受容を得るための道を拓くという意図であった。

このアイディアは日本においても素早く支持者を見つけた。ー特に、勢力や威力、そして大儲けを嗅ぎ出したや政治家や企業家の中に…。日本では従来、 政治と企業が非常に密接に絡み合っている。ー原子力の場合だと、企業、政治家、原子力規制庁との間の密接度が、容認できるような限度を超えてしまってい る。

しかしながら、原子力支持者にとって、まず、やらなければならなかったことは、日本社会に存在する原子力への根強い不安を打ち破ることであった。そ して、日本人がどのように語義を捉え把握するのか、原子力の主唱者は 心得ていたのである。彼らはまず第一に、用語表現を変更緩和させることにした:いわゆる 【peaceful use (平和利用)of nuclear energy(核エネルギー)】 という言葉は【核エネルギーの平和利用】ではなく【原子力の平和利用】と和訳された。日本語で 【nuclear(核) weapons (兵器)】 は 【核兵器】と呼ばれるため、【原子力】は【核兵器】とは異なった事柄を表す言葉であるとして、多くの日本人が心の中で、民間と軍事核産業は別々のものであ ると区別して考えるようにさせた。単に核を原子力と呼ぶことで、その事が可能になった。しかし事実は、米国の核産業が示したように、民間核産業も軍事核産 業も密接にかみ合っていたのである。

次のシンボリックなステップは、再建された広島市の都心に原発第一号機を建てることであった。ー 広島市を破壊し、あれだけの多くの人々の命を奪い去った、あのの原子に続いて、今度は、有益で、市を復興させて、国やその経済に新しい生を与えてくれるであろうという の 原子がやって来ることになる、との明白な印として…。このような陰陽的思想は、多くの日本人の共感を得たかもしれないし、それ自体で何人かの被爆者にとっ ては、「何のためにこのような事が起きなければならなかったのか?」という彼らの問いに対する答えとなったかもしれない。…しかし、被爆者と広島市民の圧 倒的多数は、原子核テクノロジーを拒絶し続けたのだった。そして、広島に原発を設置する計画は、地元住民による猛烈な反対のために失敗に終わった。朝日新 聞の新しい調査によると、全ての被爆者の内その“3分の2 (⅔) “が、これまで、原子力を拒否している、という。

しかし米国は、日本国内に民生原子力を根づかせようと、〝原子力平和利用博覧会〞と名付けられた大規模な宣伝活動に資本提供することにした。〝原子力平和利用博覧会〞は、1955年から1957年にかけて日本の10都市で開催された。この〝博覧会〞は、 広島の平和記念資料館にもやって来た。そのために、資料館に常時展示されていた、原爆の惨状や放射線の恐怖を伝える資料、被爆者の遺品などの展示品が館外 に移され、博覧会の後も、原子力平和利用をテーマにした展示物が、何年もの間、資料館内の展示会場を占めることになった。そして、これらの出来事は、事態 を傍観するしかなかった多くの被爆者の怒りをかったのだった。

この原子力ロビーによる集中的なプロパガンダは、政府と繋がりのあるテレビ局や新聞の高揚的報道によって盛り立てられた。「原子力の平和利用は我々 の経済を成長させる」とのスローガンは、間もなく、日本社会に浸透遍在していき、テクノロジーの進歩に好意的な日本市民の心に刷り込まれていった。その頃 から日本人の間で、”とは、ヒロシマとナガサキの恐るべき大量虐殺と結びついたものであり、”原子力は、経済成長と人々の幸福に結びついたものであるとの概念が生まれるようになった。

1956年以後、日本原子力研究所が東京から東北の地域にある小さな東海村に発足した。それに続いて出来たのが、核燃料生産工場、使用済燃料再処理 施設、そして日本で最初の原子力発電所であった。東海村は、日本の原子力産業の核心となった ーとともに、フクシマ原発事故以前に20以上の所在地に位置した58基の原子炉を有していた、腐敗した、規制不十分な、事故慣れした産業のシンボルとも なった。すでにフクシマ超大規模原子力事故が起こったずっと以前から、原子力施設において漏洩や爆発、火災が発生し、その度ごとに、一部で大量の放射能放 出を伴っていた事があったという事実が、日本の原子力産業の特色を現わしている。

「今日、多くの日本人は、なぜ、地震、津波、火山噴火で度々悩まされている国が、なんら疑問を発することもなく単純に、原子力を受け容れることがで きたのだろうか、と思案している。さらに彼らは、経済界・政界の有力者が当時から間違っていると分かっていながら、これらの危険性を無視した背後には何が あったのだろうか、と問うている」と、広島平和研究所の ジェイコブス博士は述べる。

さらに、見て見ないふりをする習慣や政治家、企業、原子力規制庁の間の癒着といった背景が原因として付け加わり、東海村やフクシマの原子力災害の発生に寄与していった。

そして、国会事故調査委員会は2012年6月、「フクシマ原子力災害の原因は、これまでの規制当局の原子力防災対策への怠慢と、当時の官邸、規制当 局の危機管理意識の低さ、そして責任を持つべき官邸及び規制当局の危機管理体制が機能しなかったためであり、自然災害というよりも人的ミスに帰する」との 結論に至った。今回、再び、日本市民に高レベルの放射能を浴びさせたのは外敵ではなく、自分の国の規制当局と企業の過失/怠慢によるものであったという認 識は正に、多くの被曝者に諦めと茫然自失をもたらした。

ジェイコブ氏は書く:「原爆被爆者たちは、核時代の終わり、核兵器の廃絶、そして、自分たちの身にふりかかった、あの苦しみを、もう誰一人として味 わう必要のない世界を渇望している」と。 だが、その逆に彼らは、フクシマ原子力災害の後、あるイメージと向かい合わされている:それは、自分たちの故郷 が放射能汚染されてしまったために避難施設で生活し – 線量計をつけて学校へ通い– 健康診断に一生涯、臨まなければならず– そして原爆被爆者と同様に、がん発病率の増加や子孫への遺伝的影響、社会的烙印を恐れている – 女性、子ども、老人たちのイメージなのである。

これらのイメージは、原爆の犠牲者たちが実際に目指している未来とは全く正反対のものを描き出している。臨床心理学者である福島県・いわき明星大学 の窪田文子 (のりこ)教授は彼女の論評をこう結んでいる:「ヒロシマは、70年経った今も放射線被曝の影響と闘っている。だからこそ広島の人々は、自分たちと同様 に、今、放射線被曝と取り組んでいる福島の人々に対して特別な心情を懐いている。」

(日本語訳:グローガー理恵)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3068:150825〕

22,000人以上の子供たちに 見つかった 新たな嚢胞と結節


IPPNWドイツ支部:福島の小児甲状腺がん症例数が100件以上に – 22,000人以上の子供たちに 見つかった 新たな嚢胞と結節

和訳:グローガー理恵

2015年6月10日

5月18日、福島県の甲状腺検査の最新結果データが公表された。その間、急速に成長した腫瘍や、または転移が見られた甲状腺がん症例のある計103人の子供たちが手術を受けなければならなかった。

それに付け加えて23人に甲状腺がんの ’強い疑い’  があるとの診断が下されている。ここで懸念されることは、過去2年間の間に、解明が必要とされるような検査結果がさらに増えているということである:最初 のスクリーニング(先行検査)においては、まだ何の甲状腺異常も検出されなかった22,837人の子供たちに、今、2巡目のスクリーニング (本格検査)で嚢胞や結節が確認されたのである。

しかも、その内の235人に見つかった嚢胞/結節のサイズが非常に大きかったため、さらなる解明が緊急に必要とされたのだった。これまでの時点で、 5人に新しいがん腫瘍が見つかり、手術が行われた。- もう単なる「スクリーニング効果」だけで説明がつけられない、憂慮すべき現象である。

そして更に、日本全国で甲状腺がん症例数がもっと上昇することが予測されなければならない。2013年のUNSCEAR報告書には、フクシマ原子力事故により日本国民が受ける甲状腺の集団預託実効線量 (生涯甲状腺線量の集団積算線量) は 【112,000人・シーベルト】になるであろうと推計されている。この数値にしたがい、BEIR-VII報告*のリスク係数【0.009/人・グレイ】 を用いて算定すると、およそ1,000件の甲状腺がん症例数を予測しなければならなくなる。しかしながら、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連 科学委員会)によって示された集団線量はシステマティックな過小評価に関わる数値であろうから、おそらく、もっとはるかに高い症例数を予測しなければなら ないだろう。

原文(ドイツ語)へのリンク:

http://www.fukushima-disaster.de/deutsche-information/super-gau/artikel/f8c64211e80db4835cad2d7c8d865abc/mehr-als-100-schilddruesenkrebsfaell.html

(注)

*BEIR 委員会:「電離放射線の生物学的影響」に関する委員会。米国科学アカデミー(NAS)/ 米国研究評議会(NRC)の下に置かれている放射線影響研究評議会(BRER)内の1 つの委員会である。もともとは、1954年のビキニ事件をきっかけに、アメリカ国内の放射線防護基準の策定に資するために設けられたBEAR(原子放射線 の生物学的影響)委員会が前身で、1970 年に名称変更されBEIR 委員会となっている。BEIR 報告は、アメリカ国内にとどまらず、国際的な放射線防護基準の基礎とされるICRP(国際放射線防護委員会)の勧告やUNSCEAR(国連・原子放射線の 影響に関する科学委員会)の報告にも大きな影響をこれまで与えてきた。(ソース:http://www.csij.org/01/archives/radiation_002.pdf )

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3021:150625〕

フクシマ作業員の健康調査における難題


アレックス・ローゼン

IPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン医師による福島を巡る論考は、発表される度ごと、ドイツ在住のグローガー理恵さんが翻訳されたうえで、ご連絡いただいています。本サイトでは継続して掲載させていただいていますが、また新しい原稿をお送りいただきました。

2015年4月10日

和訳: グローガー理恵

フクシマ原子力災害の後、福島第一原発の敷地の中で働いてきた作業員たちは、途方もなく最も高い放射線被曝量を浴びたと言ってよいであろう。 しか し、現場の作業員たちの圧倒的多数は東電の従業員ではなく、もっと著しく酷い労働条件のもとで働く、下請け業者に雇われた臨時雇用労働者たちである。 労 働者の多くは、まともに登録もされておらず、彼らが受けた放射線被曝量も適切に記録されていないし、彼らの健康状態の実態や変化もモニターされていないの である。 多くの場合、現場で働く作業員は、短期間の臨時仕事に動員された不熟練の日雇い労働者たちであり、その後に、彼らを追跡できるような手がかりは ない。

日本のメディア報道によれば、日本のマフィア・やくざは、フクシマ原発現場のクリーンアップ作業、放射能汚染された冷却水の処理作業、または、事故 現場周辺における巨大な建設-構築計画などを請け負っている、東電の下請け業者との有利な労働契約のお蔭で利益を得ているという。

また、自ら進んで、または、善意からではあるが無鉄砲なボランティア活動の一環として、放射能汚染された地域において除染作業に関わっている数多く のボランティアもいるのだが、その中にも、高いレベルの放射線被曝量を浴びている人達がいるのである。 ボランティアの多くは、当局による除染作業努力に 成果が見られないために絶望しており、そのために彼らは、自分たちの手で、自分たちの故郷を再び住居可能にするための手助けをしたいのである。 しかし、 そうすることによって、彼らは自らを長期的健康被害に晒すリスクを冒していることになる。さらに、彼らの被曝がコントロールされるようなことはなく、被曝 線量も測定されることはないのである。

現在、広島・長崎原爆犠牲者の調査を長年にわたって行ってきた日米共同研究機関 「放射線影響研究所 (RERF-Radiation Effects Research Foundation)」が、 少なくとも、福島原子力災害の事故処理作業に従事したことが確認されている作業員達に及ぶ長期的な健康影響の調査をしようと試みている。 放射線影響研究 所 (RERF)は、2011年の3月から同年の12月までフクシマ原発現場での作業に従事していた計2万人以上の作業員を対象にして健康調査をしたいと述べ ている。 しかし実際に、不熟練の臨時雇用労働者や下請け業者の従業員として何年もの間、損壊した原子炉が並ぶ福島第一原発の敷地の中で危険な作業をして きた人々を、この大規模な調査に含めることができるのかどうか、疑わしい。

一例を挙げるなら、これまでに健康診断の参加を求められた凡そ2,000人の原発事故処理作業員達の中で、その内の35%だけが健康診断に参加する ことを明らかにしているのみである。 放射線影響研究所(RERF)の方は、作業員たちとの連絡がとれなかったり、または、作業員たちの現住所を突き止め ることができない、と主張している。 このことは、健康調査に、過度のレベルの放射線被曝量に晒された作業員たちのほとんどを引き入れることができないと いう懸念を確かなものにしているようである。  したがって、放射線被曝がもたらす長期的な健康影響に関する疫学上の評価をすることは不可能になるということである。

IPPNWドイツ支部は既に長い間、フクシマ作業員たちのための包括的な健康上のアフターケアを要求してきている。 そして、我々が繰り返し力説し てきたことは、「そのような健康調査には、安全規制・規準の対象に全くなっていない多数のボランティア作業者たちや、下請業者に雇われ、東電の従業員に適 用される安全-健康管理の基準に適わないような労働条件のもとで働く労働者たちも含めた、ありとあらゆる全ての作業員を引き入れなければならない」という ことである。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2955:150413〕

原文(独語)へのリンクです: http://www.fukushima-disaster.de/deutsche-information/super-gau/artikel/8c2ad6cfb8f78853ae03dd40ca40d3af/fukushima-arbeiter-verweigern-gesund.html