大津地裁高浜3、4号機運転禁止仮処分決定に関する声明


脱原発弁護団全国連絡会

2016年3月10日

大津地裁高浜3、4号機運転禁止仮処分決定に関する声明

2016年3月9日、大津地裁(山本善彦裁判長、小川紀代子裁判官、平瀬弘子裁判官)は、関西電力高浜原発3、4号機の運転を禁止する仮処分決定を行い、10日にも3号炉は運転を停止するとされる。トラブルで停止中の4号炉と併せ、同原発は運転を停止することとなる。
現に運転中の原発に対して運転を禁止する仮処分決定が出され、現実に運転を停止させるのは今回の決定がはじめてである。まさに、司法が市民から付託された力を用いて、原発事故による災害から住民の命と健康を守ったのである。

この決定は、まず判断基準の枠組みとして次のように判示する。
「債務者において,依拠した根拠,資料等を明らかにすべきであり,その主張及び疎明が尽くされない場合には,電力会社の判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。
しかも,本件は,福島第一原子力発電所事故を踏まえ,原子力規制行政に大幅な改変が加えられた後の(前提事実(7)) 事案であるから,債務者は,福島第一原子力発電所事故を踏まえ,原子力規制行政がどのように変化し,その結果,本件各原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され,債務者がこの要請にどのように応えたかについて,主張及び疎明を尽くすべきである。」(決定文43頁)
「当裁判所は,当裁判所において原子力規制委員会での議論を再現することを求めるものではないし,原子力規制委員会に代わって判断すべきであると考えるものでもないが,新規制基準の制定過程における重要な議論や,議論を踏まえた改善点,本件各原発の審査において問題となった点,その考慮結果等について,債務者が道筋や考え方を主張し,重要な事実に関する資料についてその基礎データを提供することは,必要であると考える。そして,これらの作業は,債務者が既に原子力規制委員会において実施したものと考えられるから,その提供が困難であるとはいえないこと,本件が仮処分であることから,これらの主張や疎明資料の提供は,速やかになされなければならず,かつ,およそ1年の審理期間を費やすことで,基本的には提供することが可能なものであると判断する。」(決定文43頁)との基本的な枠組みを提示している。我々が求めてきた判断の枠組みを福島原発事故の重い現実を踏まえて肯定したものであり、正当な判断枠組みである。

そして、原発の安全性をめぐる過酷事故対策(争点2)、耐震性能(争点3)、津波に対する安全性能(争点4)、テロ対策(争点5)、避難計画(争点6)の5つの争点のうち、テロ対策を除く4つの争点に関して、安全性は疎明されていないとして、裁判所は運転の差し止めを認めた。

まず、過酷事故対策に関しては、「福島第一原子力発電所事故の原因究明は,建屋内での調査が進んでおらず,今なお道半ばの状況であり,本件の主張及び疎明の状況に照らせば,津波を主たる原因として特定し得たとしてよいのかも不明である。その災禍の甚大さに真撃に向き合い二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講ずるには,原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。この点についての債務者の主張及び疎明は未だ不十分な状態にあるにもかかわらず,この点に意を払わないのであれば,そしてこのような姿勢が,債務者ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとするならば,そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるものといわざるを得ない。」(決定文44頁)とした。 福島原発事故の事故原因が完全に明らかになっていないとの認識を示したものである。
つづいて、
「福島第一原子力発電所事故の経過(前提事実(6)イ)からすれば,同発電所における安全確保対策が不十分であったことは明らかである。そのうち,どれが最も大きな原因であったかについて,仮に,津波対策であったとしても,東京電力がその安全確保対策の必要性を認識してさえいれば,同発電所において津波対策の改善を図ることが不可能あるいは極度に困難であったとは考えられず,防潮堤の建設,非常用ディーゼル発電機の設置場所の改善,補助給水装置の機能確保等,可能な対策を講じることができたはずである。しかし,実際には,そのような対策は講じられなかった。このことは,少なくとも東京電力や,その規制機関であった原子力安全・保安院において,そのような対策が実際に必要であるとの認識を持つことができなかったことを意味している。現時点において,対策を講じる必要性を認識できないという上記同様の事態が,上記の津波対策に限られており他の要素の対策は全て検討し尽くされたのかは不明であり,それら検討すべき要素についてはいずれも審査基準に反映されており,かつ基準内容についても不明確な点がないことについて債務者において主張及び疎明がなされるべきである。」(決定文44頁)とし、非常用電源と使用済み燃料ピットの冷却設備について、安全性の疎明が不十分であるとした。

住民側が、もっとも力を入れて主張してきた耐震性能の確保については、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動を検討する方法自体は,従前の規制から引き続いて採用されている方法であるが,これを主たる考慮要素とするのであれば,現在の科学的知見の到達点として,ある地点(敷地)に影響を及ぼす地震を発生させる可能性がある断層の存在が相当程度確実に知られていることが前提となる。そして,債務者は,債務者の調査の中から,本件各原発付近の既知の活断層の15個のうち, FO-A ~FO-B~熊川断層及び上林川断層を最も危険なものとして取り上げ,かつこれらの断層については,その評価において,原子力規制委員会における審査の過程を踏まえ,連動の可能性を高めに,又は断層の長さを長めに設定したとする。しかしながら,債務者の調査が海底を含む周辺領域全てにおいて徹底的に行われたわけではなく( 地質内部の調査を外部から徹底的に行ったと評価することは難しい。),それが現段階の科学技術力では最大限の調査であったとすれば,その調査の結果によっても,断層が連動して動く可能性を否定できず,あるいは末端を確定的に定められなかったのであるから,このような評価(連動想定,長め想定)をしたからといって,安全余裕をとったといえるものではない。また,海域にあるFO-B断層の西端が,債務者主張の地点で終了していることについては, (原子力規制委員会に対してはともかくとしても)当裁判所に十分な資料は提供されていない。債務者は,当裁判所の審理の終了直前である平成28年1月になって,疎明資料(乙132~136等)を提供するものの,この資料によっても,上記の事情(西端の終了地点)は不明であるといわざるを得ない。」(決定文48頁~49頁)
「(3) 次に,債務者は,このように選定された断層の長さに基づいて,その地震力を想定するものとして,応答スペクトルの策定の前提として,松田式を選択している。松田式が地震規模の想定に有益であることは当裁判所も否定するものではないが,松田式の基となったのはわずか14地震であるから,このサンプル量の少なさからすると,科学的に異論のない公式と考えることはできず,不確定要素を多分に有するものの現段階においては一つの拠り所とし得る資料とみるべきものである。したがって,新規制基準が松田式を基に置きながらより安全側に検討するものであるとしても,それだけでは不合理な点がないとはいえないのであり,相当な根拠,資料に基づき主張及び疎明をすべきところ,松田式が想定される地震力のおおむね最大を与えるものであると認めるに十分な資料はない。また,債務者は,応答スペクトルの策定過程において耐専式を用い,近年の内陸地殻内地震に関して,耐専スペクトルと実際の観測記録の乖離は,それぞれの地震の特性によるものであると主張するが,そのような乖離が存在するのであれば,耐専式の与える応答スベクトルが予測される応答スベクトルの最大値に近いものであることを裏付けることができているのか,疑問が残るところである。」(決定文49頁~50頁)と判示している。
また、「債務者のいう,地震という一つの物理現象についての「最も確からしい姿」(乙16 ・53頁)とは,起こり得る地震のどの程度の状況を含むものであるのかを明らかにしていないし,起こり得る地震の標準的・平均的な姿よりも大きくなるような地域性が存する可能性を示すデータは特段得られていないとの主張に至っては,断層モデルにおいて前提とするパラメータが,本件各原発の敷地付近と全く同じであることを意味するとは考えられず,採用することはできない。ここで債務者のいう「最も確からしい姿」や「平均的な姿」という言葉の趣旨や,債務者の主張する地域性の内容について,その平均性を裏付けるに足りる資料は,見当たらない。」(決定文50頁~51頁)とした。
この部分の判示は、現在全国の原発訴訟において、中心的な論点として真剣に議論されている論点に関し、住民側が主張してきた事実と論理を認めたものであり、その影響は全国に波及するものと評価できる。

続いて、津波に関する安全性の確保に関しては、「西暦1586年の天正地震に関する事項の記載された古文書に若狭に大津波が押し寄せ多くの人が死亡した旨の記載があるように,この地震の震源が海底であったか否かである点であるが,確かに,これが確実に海底であったとまで考えるべき資料はない。しかしながら,海岸から500mほど内陸で津波堆積物を確認したとの報告もみられ,債務者が行った津波堆積物調査や,ボーリング調査の結果によって,大規模な津波が発生したとは考えられないとまでいってよいか,疑問なしとしない。」(決定文52頁~42頁)として、安全性は疎明されていないとした。

さらに、避難計画について次のように重要な判示を示した。
「本件各原発の近隣地方公共団体においては,地域防災計画を策定し,過酷事故が生じた場合の避難経路を定めたり,広域避難のあり方を検討しているところである。これらは,債務者の義務として直接に関われるべき義務ではないものの,福島第一原子力発電所事故を経験した我が国民は,事故発生時に影響の及ぶ範囲の圧倒的な広さとその避難に大きな混乱が生じたことを知悉している。安全確保対策としてその不安に応えるためにも,地方公共団体個々によるよりは,国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり,この避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準が望まれるばかりか,それ以上に,過酷事故を経た現時点においては,そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているといってもよいのではないだろうか。このような状況を踏まえるならば,債務者には,万一の事故発生時の責任は誰が負うのかを明瞭にするとともに,新規制基準を満たせば十分とするだけでなく,その外延を構成する避難計画を含んだ安全確保対策にも意を払う必要があり,その点に不合理な点がないかを相当な根拠資料に基づき主張及び疎明する必要があるものと思料する。しかるに,保全の段階においては,同主張及び疎明は尽くされていない。」(52~53頁)としている。
避難計画の問題が、規制委員会の判断の対象外とされていることを前提として、国家主導の具体的で可視的な避難計画の策定が必要であり、過酷事故を経た現時点では信義則上の義務が国にはあるとの立場を示したものである。諸外国では当然とされている考え方ではあるが、このような考え方が日本では採用されていないことの不合理を明確に指摘したものであり、画期的な判断である。

大津地裁決定は、市民の意識の変化に対応して、司法も大きく変化してきていることを明確に示した。福島原発事故のような深刻な災害を二度と繰り返してはならない、そのため安全性が確実に疎明されていない原発の再稼働は認められないということを、公平、冷静に、かつ明確に宣言したものといえる。
政府は、原発をベースロード電源に位置づけるようなエネルギー基本計画こそが非現実的なものであり、これを転換させることこそ現実的であることを認識しなければならない。また、政府と原子力規制委員会は、この決定の指摘を重く受け止め、新規制基準を根本から見直し、また避難計画の問題を規制に明確に取り込むべきである。
脱原発弁護団全国連絡会は、この決定を心から歓迎し、このような決定を下した裁判所に深い敬意を表するとともに、この決定を導いた原告団、弁護団の努力に深く感謝する。
そして、全国の市民の脱原発を願う運動と深く連動して、全国の原発を司法の力で止めていくための闘いを全力で展開していくことを宣言する。

以上

脱原発弁護団全国連絡会
共同代表 河合 弘之
同  海渡 雄一

福島原発事故にかかる強制起訴議決にもとづく公訴提起の意義と今後の展望


海渡雄一

第1 公訴提起される

本日、東京第五検察審査会が平成27年7月17日に検察審査会法第41条の6第1項の議決をした事件につき,本日,検察官の職務を行う指定弁護士は,下記被疑者勝俣恒久、武藤栄、武黒一郎を業務上過失致死傷罪(平成25年法律第86号による改正前の刑法211条1項前段)で東京地方裁判所に公判請求した。
我々は、検察官の職務を行う指定弁護士から、本日お昼頃、直接公訴提起の事実を告知され、また、公訴事実の要旨の交付を受けた。

第2 公訴事実の要旨

公訴事実の要旨は次のとおりである。
「被告人3名は,東京都千代田区に本店を置く東京電力株式会社の役員として,同社が,福島県双葉郡大熊町に設置した発電用原子力設備である福島第一原子力発電所の運転,安全保全業務等に従事していた者であるが、いずれも各役職に就いている間,同発電所の原子炉施設及びその付属設備等が,想定される自然現象により,原子炉の安全性を損なうおそれがある場合には,防護措置等の適切な措置を講じるべき業務上の注意義務があったところ,同発電所に小名浜港工事基準面から10メートルの高さの敷地を超える津波が襲来し,その津波が開発電所の非常用電源設備等があるタービン建屋等へ浸入することなどにより,同発電所の電源が失われ,非常用電源設備や冷却設備等の機能が喪失し,原子炉の炉心に損傷を与え,ガス爆発等の事故が発生する可能性があることを予見できたのであるから,同発電所に10メートル盤を超える津波の襲来によってタービン建屋等が浸水し,炉心損傷等によるガス爆発等の事故が発生することがないよう,防護措置等その他適切な措置を講じることにより,これを未然に防止すべき業務上の注意義務があったのにこれを怠り,防護措置等その他適切な措置を講じることなく,同発電所の運転を停止しないまま,漫然と運転を継続した過失により,平成23年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震に起因して襲来した津波が,同発電所の10メートル盤上に設置されたタービン建屋等へ浸入したことなどにより,同発電所の全交流電源等が喪失し,非常用電源設備や冷却設備等の機能を喪失させ,これによる原子炉の炉心損傷等により

1 同年3月12日午後3時36分ころ,開発電所1号機原子炉建屋において,水素ガス爆発等を惹起させ,同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果, 3名に,これにより飛び散ったがれきに接触させるなどし,よって,そのころ,それぞれ同所付近において,傷害を負わせ,

2 同年3月14日午前11時1分ころ,同発電所3号機原子炉建屋において,水素ガス爆発等を惹起させ,同原子炉建屋の外部壁等を破壊させた結果,1 0名に,これにより飛び散ったがれきに接触させるなどし,よって,そのころ,それぞれ同所付近において,傷害を負わせ,

3  4 3名を,上記水素ガス爆発等により,長時間の搬送・待機等を伴う避難を余儀なくさせた結果,死亡させ,

4 上記水素ガス爆発等により,病院の医師らが避難を余儀なくさせられた結果,同病院で入院加療中の者1名に対する治療・看護を不能とさせこれにより同人を死亡させたものである。」

第3 公訴事実の構成の特徴

予見可能性の対象を小名浜港工事基準面から10メートルの高さの敷地を超える津波が襲来するかどうかの点においている。この論理からすれば、貞観の津波に関する予測津波高さは誤差を含めると軽く10メートルを超えており、貞観の津波の想定の報告は受けていたが、東電設計の15.7メートルのシミュレーションを知らされていなかった保安院関係者も起訴できることとなる。
また、結果回避措置については、「防護措置等その他適切な措置を講じることなく,同発電所の運転を停止しないまま,漫然と運転を継続した」と構成されており、対策を講じないで運転を継続したこと自体を過失と捉えている点は、告訴団が主張していたことを正面から認めたものであり、高く評価することができる。

第4 公訴提起の意義

1. 世紀の裁判で裁かれるのは東電・保安院そして原子力ムラに取り込まれた検察庁である。

今回の起訴の画期的な意義は、市民の正義が原子力ムラの情報隠蔽を打ち破ったことにある。
福島原発事故に関してはたくさんの事柄が隠されてきた。この議決の根拠となった東電と国による津波対策の方針転換に関する情報の多くは2011年夏には検察庁と政府事故調の手にあったはずである。この隠蔽を打ち破ったのが、今回の検察審査会の強制起訴の議決である。市民の正義が政府と検察による東電の刑事責任の隠蔽を打ち破ったのである。
告訴団の事故の真実を明らかにし、責任を問う真摯な態度が検審の委員の心を揺り動かしたのである。東電を中心とする原子力ムラや検察からの圧力のもとで二度にわたって、検審の委員11人のうちの8人の起訴議決への賛同を得ることができた。原発事故で人生を根本から変えられた福島の人々の切実な思いが東京の市民にも伝わったのである。今回の強制起訴は、明らかにされた事実関係からすれば当然のことではあるが、情報の隠ぺいの闇から真実を救い出したという意味で、奇跡のように貴重なものだ。

2. 政府事故調と検察が真実を隠ぺいしたことはもうひとつの事件である

これらの情報は徹底的に隠された。それはなぜだったのか。考えられる推測はただひとつである。原子力推進の国策を傷つけるような事実は、隠ぺいするしかないと、2011年夏の段階で、政府事故調と検察のトップは決断したのだろう。このことは、福島原発事故そのものに匹敵するほどの、行政と司法と検察をゆるがせる「もう一つ」の福島原発事故真相隠ぺい事件と呼ぶべき事件である。

3. 指定弁護士チームは最強

起訴により、今後開かれる公開の法廷において、福島原発事故に関して隠されてきた事実を明らかにする作業が可能となった。第二東京弁護士会の推薦を受け、東京地裁は石田省三郎、神山啓史、山内久光ほか2名の5名を検察官役に指定した。石田・神山コンビは無実のゴビンダさんの再審無罪を実現した刑事弁護のプロである。望みうる最高の刑事弁護士が検察官役に選任され、検察官役の体制はドリームチームと言っていい。

第5 今後の展開と残された未解明の謎

1.今後の手続きはどのように予測されるか

予測される手続き展開としては、起訴後、おそらく公判前整理手続きが実施されると思われる。争点整理と証拠調べの方針を固めるまでにかなりの時間を要することは避けがたい。
証拠調べが始まったら、集中的に審理が進む可能性がある。検察官役の弁護士たちは、東電の内部資料、政府事故調の調書等を見ることができ、その立証には大いに期待できる。

2.法的論点より事実の争いが中心になる

第一次議決の際には、過失責任を巡る具体的危険説と危惧感説の対立構造になると言う見方もあり、通説と異なる法的見解は裁判所には受け入れにくいという見方もされていた。
しかし、第二次議決の認定した事実関係を前提とする限り、本件は何も法的には難しい点のない、普通の業務上過失事件である。もと東電役員の被告人は災害の結果を具体的に予見し、対策まで検討しながら、対策のコストと原子炉運転停止のリスクという経済的な理由から、いったんやると決めていた方針を転換し、対策を先送りしたのである。

したがって、法的な争点よりも事実に関する争点が重要である。とりわけ2007年に福島沖の大地震を想定して津波対策を講ずる方針が決まっていたかどうか、2008年3月のQA集(福島県向けに作成されたものと思われる)で推本の長期評価をとりいれる方針が決まっていたことは重大な意味を持っている。また、2008年6月に東電の土木調査グループが武藤副社長に防潮堤など対策を説明し、その当否が現実に検討されたかなどが決定的に重要な争点となる。

3.残された未解明点

また、残された問題としては、保安院の役割を解明することが重要である。
すなわち2006年には3年以内に津波対策を含めて耐震バックチェックを完了させる方針であったのに、これが骨抜きにされていった経過を明らかにする必要がある。
告訴団としては、津波第二次告訴として、森山善範(保安院原子力発電安全審査課長,ついで保安院審議官)、名倉繁樹(保安院原子力発電安全審査課審査官)野口哲男(保安院原子力発電安全審査課長)と、酒井俊朗(東電の津波対策の責任者・マイアミレポートの作成者・土木学会委員)と、高尾誠(東電の津波対策のサブ責任者・土木学会幹事)の5名を追加告訴している。この件は現在東京第1検察審査会に係属している。
我々は東電の勝俣、武藤、武黒の3名の強制起訴を実現した。彼らと同様に本件において中枢的役割を果たした東電2名と保安院関係者3名についても、検察審査会の強制起訴決定を勝ち取り、東電役員の刑事責任を追及する裁判との併合審理を目指している。
また、これと関連するが、東電の1F3のプルサーマル計画との関連も解明しなければならない。QA集は福島県に対する説明などのために作成されたものと考えられるが、福島県は、プルサーマルの実施は耐震性の確保が前提としてきたが、耐震性の確保から津波対策が除かれた経緯には、福島県の幹部が関与していた。
その全貌を明らかにしなければならない。

海渡 雄一
(福島原発告訴団弁護団
東電株主代表訴訟弁護団
脱原発弁護団全国連絡会共同代表)

福井地裁高浜原発異議決定を受けての弁護団声明


高浜原発3・4号機については、本年4月14日、福井地方裁判所の樋口英明裁判長、原島麻由裁判官、三宅由子裁判官による運転差止仮処分命令が発令されていましたが、本日、同裁判所の林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官により仮処分命令は取り消されました。

私たちは、福島原発事故のような事故を二度と招いてはならないという観点から新規制基準の不合理性、基準地震動の策定手法の不合理性、津波の危険性、工学的安全性の欠如、シビアアクシデント対策・防災対策・テロ対策の不備といった様々な危険性を指摘しました。

これに対して、本決定は、原子力規制委員会の判断に追随するだけの形で私たちの主張立証を排斥しました。
とりわけ、基準地震動に関しては、「最新の知見に従って定めてきたとされる基準地震動を超える地震動が到来しているという事実」は、「当時の基準地震動の想定が十分でなかったことを示すものである」と認めながら、「いずれも福島原発事故を踏まえて策定された新規制基準下での基準地震動を超過したものではない」とし(113頁)、新規制基準下ではこのようなことは起こらないとされています。
しかしながら、一方で、本決定は、「新規制基準の策定に関与した専門家により『基準地震動の具体的な算出ルールは時間切れで作れず,どこまで厳しく規制するかは裁量次第になった』との指摘がされていること」も認めており(105頁)、
この認定からすれば、新規制基準における基準地震動の策定手法は見直されていないのですから、上記決定は、論理矛盾を来しているといわざるを得ません。
さらに、本決定は、「あらかじめ判明している活断層と関連付けることが困難な地震でマグニチュード7を超えるものが起こる可能性を完全に否定することはできない」とし(122頁)、「本件原発において燃料体等の損傷ないし溶融に至るような過酷事故が起こる可能性を全く否定するものではないのであり,万が一炉心溶融に至るような過酷事故が生じた場合に備え」なければならないとしています(223頁)。本決定は、福島原発事故の深刻な被害から何も学ぼうとしない、極めて不当な決定であり、原発周辺住民が事故によって被害を受けることを容認していると言わざるを得ません。

林潤裁判長は、11月13日の審尋期日の際に「常識的な時期」に決定を出すと発言しましたが、私たちが指摘したすべての問題点について正面から検討した上で本日12月24日に決定を出すというのは「常識的な時期」とは到底いえず、年末も押し迫った常識外れなこの時期に出した本決定は、高浜原発3・4号機の再稼働スケジュールに配慮した、結論ありきの決定であると言わざるを得ません。
高浜原発3,4号機が再稼働して重大事故を起こした場合、その責任の重要部分は再稼働を許した3人の裁判官にあるということになります。

しかし、私たちは、このような不当決定に負けることはありません。なぜなら、理論的正当性も世論も私たちの側にあるからです。福島原発事故のような事故を二度と招いてはならない、豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪われたくない、子ども達の未来を守りたいという国民・市民の思いを遂げ、ひいては失われた司法に対する信頼を再び取り戻すため、最後まで闘い抜くことをお約束します。

2015年(平成27年)12月24日
脱原発弁護団全国連絡会、大飯・高浜原発差止仮処分弁護団
共同代表 河合弘之・海渡雄一

東電株主代表訴訟の学習会


東電株主代表訴訟は11月5日に、21回目の口頭弁論を迎えますが、4年間続いた裁判闘争も佳境を迎えております。東電は、津波対策が急務であることを認識しながら、一旦決定した津波対策を、堤防を築くためには膨大なお金がかかることなどから取りやめ、その結果、3.11以降の津波震災を引き起こしたことが決定的になりました。裁判官から東電への審尋も核心を突くものになってきております。

口頭弁論後、毎回開催している学習会では、この裁判を精力的に担っている海渡雄一弁護士と、元原研の技術者として、告発を続けている田辺文也さんをお迎えし、東電は何故津波対策を怠ったのか?政府事故調査委員会はどこまで知っていたのか?何故国民を欺いたのか?など東電から提出させた秘密書類などからわかったことなどを論じていただきます。

福島事故の真実を闇に葬った人びと
 政府事故調の犯罪
11月5日(木)
12時30分(12時から入館証をお配りいたします)

スタッフも学習会に参加しておりますので、遅刻はご容赦ください)

参議院議員会館 講堂

海渡雄一さん、田辺文也さんからの基調報告
対談(司会は岩波書店「科学」編集長 田中太郎さん)

参加費は無料ですが、訴訟へのカンパを受け付けております。

詳細は添付チラシをごらんください。

尚、10時30分からは東京地裁103号法廷で、口頭弁論が開かれます。
傍聴を希望される方は10時までにお越しください。
[☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆][☆]
木村結   yui-k@k3.dion.ne.jp

有限責任性反対! 日弁連院内集会


海渡 雄一

原子力委員会損害賠償制度専門部会はじまる
海渡雄一です。飯舘村民救済弁護団や福島原発告訴団の仕事を通じて、この事故の被害者の方々の救済と責任を明確にする活動をしてきました。原発事故賠償に関する新たな制度の検討が始まっています。遂に恐れていたことが始まりました。
原子力委員会の下に設置された原子力損害賠償制度専門部会(部会長=濱田純一・前東京大学総長)が2015年5月21日に、初会合を開き、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた賠償制度の見直しの作業を開始しました。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/songai/siryo01/index.htm
会合では委員から、原子力事故の損害賠償に関わる国の役割や事業者の責任範囲を明確化するよう求める意見が相次いだとされます。

聞かれない、被害当事者の意見
次の原発事故が起きても、電力会社は一定額の保険にさえ入っていれば、それ以上の責任を問われない法的仕組みが作られようとしています。そんな制度を作れば、深刻な原発事故を起こしても、電力会社の経営には何の影響もないこととなります。
この部会には原子力事業者と保険関係者などが集められていますが、このような重大な事項について議論する会合の場に、事故の被害者や今後の事故の潜在的な被害者というべき全国の原発立地地域住民の代表が選ばれていませんし、何人かの弁護士は委員に選ばれていますが、被害を受けた住民の委任を受けて損害賠償
の実務に当たっている弁護士も選ばれていません。

日弁連は有限責任の導入に反対する
日弁連は、2015年7月17日付けで原子力発電所事故による損害賠償制度の見直しに関する意見書を取りまとめ、2015年7月21日に内閣総理大臣、経済産業大臣、原子力委員会委員長に提出しました。その趣旨は、「原子力損害賠償制度において、原子力事業者の有限責任制度の導入に強く反対し、無過失・無
限責任制度を維持することを求める。」というものです。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2015/150717.html

究極のモラルハザードもたらす有限責任制
無限責任を限定することとすれば、電気事業者はその賠償措置額を賠償するための損害保険契約を締結することしか求められず、どのような重大事故が発生したとしても、それ以上の損害の補償を求められることはありません。原子力発電以外に、安全なエネルギーの供給方法があるにもかかわらず、なぜ民間企業の事業にすぎない原子力発電にこのような優遇策を講ずる必要があるのか、合理的な説明は不可能です。ドイツでは過去、有限責任を定めていた原子力損害賠償制度が改正され、無限責任に転換されています。もし今後の議論によって国が無限責任を負うとしても、原子力事業者の無限責任を否定することは、電気事業の市場の自由化が展望される中で、原発の事故リスクを国が肩替わりすることとなり、再生可能エネルギーや天然ガスなどの様々なエネルギー供給業者間の公正な競争条件を阻害することが明らかです。

次の事故が起きても、被害者は最初から切り捨てられる
また、国が無限責任を負わないとすれば、将来、原子力発電所事故が生じた場合にその被災者が本来得られるべき損害賠償額が、定められた賠償負担の上限額によっては、失った財産価値に全く見合わない賠償しか受けられなくなり、被害救済が十分に図られなくなるおそれがあります。
いずれにしても、原子力事業者にとっては深刻な事故を起こしても倒産の危険はないこととなり、原子力災害に対する厳格なリスク評価がされないというモラルハザードをもたらし、ひいては原発事故防止のための対策がおろそかになる危険性すらあります。このように、このような法改正は焼け太りもいいところであって、絶対に容認することはできません。
福島原発事故は、電気事業者の深刻な過失に基づいて発生した人災であり、被害者に対する完全な賠償が行われるべきであることは当然です。福島原発事故による被害は、家族の分断など生活環境の破壊、ふるさとの喪失、地域ブランドの喪失など多岐にわたる、深刻かつ継続的なものである。その完全賠償こそが、望ま
れていました。
日弁連は、事故の損害賠償請求権については、民法上の消滅時効(民法第724条前段及び同法第167条第1項)及び除斥期間(民法第724条後段)の規定を適用せず、消滅時効に関する特別措置法の制定を求め、成立させることができました。

有限責任制が導入されれば、次なる原発の大事故が発生したとしても、被害者の賠償は最初から不可能で、最初から切り捨てられることとなってしまうでしょう。
このような制度が日の目を見ないよう、多くの人たちに議論に加わっていただき、反対の声を上げていきたいと思います。

日弁連院内集会にご参加を!
日弁連では、次の院内集会を開催します。福島原発告訴団の武藤類子さんもアピールのために参加されます。広報ができておらず、事前申し込みがほとんどありません。ふるってご参加を!

 院内集会
これでいいの?!原発事故賠償制限,原子力事業者の経済的優遇策

福島第一原発事故から4年半が経過し、今年7月、経済産業省は、2030年の電力に占める原子力割合を20~22%とする「長期エネルギー需給見通し」を定めました。
他方、電力システム改革も進められており、2016年4月から電力の小売が全面自由化され、2020年には発送電の分離、電気料金規制もなくなります。
原子力事業は投資額が巨大で、廃炉や使用済み燃料の処理処分費用が嵩み、福島事故のように、事故が起これば損害賠償額が巨大になる恐れなどから、苦戦が予想されています。そこで、原子力委員会や資源エネルギー庁の原子力小委員会などで、原子力事業について、事業コストの予測可能性が立ち、それらを確実に電
気料金で回収できるよう、損害賠償に上限を設けることや、英国の制度を参考に、原子力による電気を固定価格で買い取る制度の導入の検討が進められています。
原子力にだけ、このような制度が導入されれば、原発事故の被害者はどうなるのでしょうか。電力システム改革と矛盾しないのでしょうか。
様々な角度から検討したいと思います。ふるってご参加ください。

日時:2015年8月31日(月)
午後2時~午後4時(開場 午後1時40分)
場所:衆議院第二議員会館第1会議室 (千代田区永田町2-2-1)
① 報告
●福島第一原発事故被らみた原子力事故の賠償制度
●電力システム改革と原子力への経済的優遇の可否
高橋 洋(都留文科大学教授)
●原子力と電力コスト(仮題)
大島堅一(立命館大学教授)
②質疑応答・原発立地住民の声
③国会議員からの御挨拶

事前申込み制・参加費無料
[返信先]  FAX:03-3580-2896 日本弁護士連合会人権部人権第二課宛

【お問合せ】 日本弁護士連合会人権部人権第二課(電話: 03-3580-9956)

東電・勝俣元会長ら幹部 3 人「原発事故」で 強制起訴


東京電力の幹部3名が、検察審査会により重ねて「起訴相当」と議決されました。これによって、3人は強制起訴になります。以下、弁護士ドットコムより記事を転載します。

東電・勝俣元会長ら幹部3人「原発事故」で強制起訴 「市民の正義が勝ち取った」記者会見した「福島原発告訴団」の武藤類子団長(中央)と弁護団の河合弘之弁護士(左)、海渡雄一弁護士(右)

福島第一原子力発電所の事故をめぐり、東京電力の勝俣恒久・元会長をはじめとする元幹部3人が、刑事裁判の場で責任を問われることになった。一般市 民からなる検察審査会が7月31日、東電の元幹部3人を業務上過失致死傷罪で「起訴すべき」だと判断した。3人の「起訴相当」議決は2回目のため、強制起 訴となる。

3人を告訴・告発していた「福島原発告訴団」のメンバーらが東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、「市民の正義が強制起訴を勝ち取った」「刑事裁判で事故の真実が明らかにされ、正当な裁きが下されることと信じている」と話した。

事故当時の東電幹部らの刑事責任については、検察が「不起訴」と判断したため、検察審査会で審査されていた。強制起訴が決まったのは、勝俣恒久・元会長と武藤栄・元副社長、武黒一郎・元副社長の3人。

●「ようやくここまで来た」

福島原発告訴団の武藤類子団長(61)は「私たち被害者はようやくここまで来たという思い」「東電が大津波を予見しながら対策を怠ってきたことは、次々に明らかになっている。元幹部らの罪は明らかだ」と力を込めた。

弁護団の海渡雄一弁護士は検察審査会の議決について、「1回目の議決よりも、内容が格段に具体的で、証拠も分厚い。有罪判決に近いような議決になっていると思う」と指摘した。

弁護団の河合弘之弁護士は次のように述べ、刑事裁判の場で、事故の原因究明が進むことを期待していた。

「もし、この事件が不起訴に終わってしまったら、この福島第一原発事故の真の原因は、永久に闇に葬られたと思う。

政府事故調も、国会事故調も、その後まったく活動をしておらず、別の調査を始めようという動きもない。

福島原発事故の原因の90%は、事故前の津波対策・地震対策の不備にある。そこをきちんと究明しないと、福島原発事故の原因究明はできない。

今回、からくも市民の正義感で、(事故原因究明の)ドアを開いた。この意味はすごく大きい。私たちは刑事法廷において、真の原因がもっともっと明らかにされていくだろうと思う」

 

捜査期間延長へのコメント


福島原発告訴団弁護団   (河合弘之・保田行雄・海渡雄一)

1 捜査期間延長を歓迎する

本日 東京地検は、福島原発事故に関する東京電力役員に対する刑事責任について、来年2月2日まで捜査期間を延長すると発表した。

告訴人らは、検察官は、十分な捜査を行うために検察審査会法41条の2 第2項に基づき、再捜査の期間について延長を必要とする期間(3ヶ月が適当であると思料する)とその理由を通知するよう求めていた。

今回の決定は、十分な時間を掛けて再捜査してほしいという告訴人らの意向に沿うものであり、歓迎する。

2 被疑者武藤、武黒は、大きな津波の可能性を知り、対策を検討しつつ、これを土木学会に投げて、先送りした

東京電力役員らは、推本の予測に基づいて行った数々の津波の試算についても試算が現実に起きるとは思わなかった,念のために土木学会に検討を依頼しただけであるなどと言い訳している。東京地検は、先の不起訴決定では、このような不合理きわまりないいいわけをそのまま認めてしまった。

これに対して,検察審査会は,市民的良識を発揮し,東電の役員たちは,対策が必要であることはわかっていて,途中まではその検討や予算の見積もり、準備までしたのに,改良工事のために原発が長期停止になることをおそれ,時間稼ぎのために土木学会に検討を依頼して,問題の先送りをしたと認定している。

まさに,被疑者武藤と武黒は明らかに本件事故のような深刻な災害を予見し,その回避のために必要な対策についても具体的に検討しながら,その対策に要するコストと時間,そして一定期間の運転休止を見込まなければならないという事態のなかで,問題を先送りするために土木学会に検討を委ねたのであり、勝俣、小森もこれを承認した重大な責任がある。

3 土木学会への検討依頼の真相を検察は徹底して再捜査すべき

土木学会に検討を依頼したというが,それについては,①回答期限を付したのか,②検討依頼内容は何か,③検討依頼文書は有するのか,④回答は返ってきたのか,⑤その内容はどうだったのかが究明されなければならない。回答期限も定めない依頼だとすればまさに時間稼ぎということになろう。②ないし⑤の究明結果によって時間稼ぎであったことが立証される可能性は高い。検察の再捜査では、この点の解明が最重要の課題である。

4 勝俣の言い訳はうそだったことが吉田調書で裏付けられた

当時,「中越沖地震対策会議」が社長,会長,武藤,武黒,吉田らで話し合う会議が持たれていた。当時の会長は田村,社長は本件被疑者勝俣である。最初は毎日会議が持たれていた。平成20年頃には月1回の会議であった。この中で,津波対策の費用も議論されていた(同9-~12ページ頁)。

また吉田調書によれば,「太平洋側の場合は,いろんな学説が今,出ておって,大きい津波が来るという学説もあります。それをベースに計算すると,今,想定している津波高の,…要するに,今,想定している5m何十cmという設計のベースよりも大きい津波が来る可能性が否定できない。…場合によっては高い津波が来れば,それなりの対策が必要です。…かなり桁の大きいお金が来ますよということを説明した」(甲3の17頁),「会長の勝俣さんは,そうなのか,それは確率はどうなんだと」(甲3の19頁),「貞観地震というのは,私はたしかその後で,ここで一回,社長,会長の会議で話をしました」(甲3の26頁),「日曜日にやる月1の社長,会長もでた中越沖地震対策会議の席では,皆さんに,その時点での最新のお金のものをお配りして」(甲3の27頁),「20年の6月,7月ころに話があったのと,12月ころにも貞観とか,津波体制,こういった話があれば,それはその都度,上にも話をあげています。」(甲3の36頁)とされている。

この会議には被疑者勝俣が毎回出席していたことは明らかで,勝俣の聞いていないという証言がウソであったことが,この吉田調書で明らかに裏付けられたのである。

規約人権委員会 日本政府第6回審査を終えて


海渡雄一

はじめに

2014年7月15日、16日の両日にわたって、自由権規約委員会による第6回日本政府報告書審査がジュネーブの国連欧州本部パレデナシオンで行われた。私は、1998年第4回、2008年第5回に引き続いて3回目の審査立会となったが、これまでにもまして、日本の人権状況に照らして白熱した審議となった。
審査を受けた日本政府に対する勧告=総括所見は7月24日に公表される予定となっている。
今回の審査については、日弁連としても市民向けのパンフレット、審査の全貌を記録した単行本などの作成を計画している。以下に、審査の終了を受けた一参加者の見聞と感想を記しておきたい(この文章で述べたことは、特に断らない限り、私の個人の見解であり、日弁連の見解を代表するものではない)

第1 概観

1 新たにとりあげられたテーマ

今回の審査では、これまで委員会が継続して取り上げてきたテーマだけでなく、いくつかの重要なテーマが、あらたに審査で取り上げられた。
その代表的なものが、多くのNGOが強く取り上げることをもとめた秘密保護法とヘイトスピーチの問題であった。
それ以外にも朝鮮高校が無償化の対象から外された問題、ムスリムの人々に対する包括的な情報収集について、政府が停止せず、謝罪もしていないこと、福島第1原発の被害者に対して正確な情報が提供されていないことなども取り上げられた。

2 国際人権保障システム 議定書と国内人権機関

他方で、委員会が一貫して取り上げてきた、第1選択議定書の批准、条約の国内法的効力、国内人権機関の設立など国際人権保障システムについても、フリンターマン委員からかなり詳細な質問がなされ、フォローアップもなされた。日本政府は、民主党政権の下で、第1選択議定書の批准、国内人権機関の設立がかなり具体化していたにもかかわらず、安倍政権となってからこのような動きが止まっていることについて明解な説明ができず、委員会のフラストレーションを高めたように見受けられた。

3 刑事司法と少数者の差別
刑事司法、死刑制度、死刑確定者の処遇、難民、入管収容、技能実習生制度などの外国人に対する人権問題なども、前回と同様に取り上げられた。女性、アイヌ、琉球などのエスニックマイノリティ、LGBT・性的マイノリティに対する差別、慰安婦問題についての政府の責任なども引き続き取り上げられた。

第2 袴田事件を契機に大きく取り上げられた代用監獄、取調、死刑制度、死刑確定者の処遇

1 メインイシューに

今回の審査の大きな特徴は、袴田事件を題材に代用監獄、取調、死刑制度、死刑確定者の処遇などが大きなメインイシューになったことである。とれわけ3人の委員が袴田ケースに具体的に言及して発言したことが大きな特徴であった。

2 代用監獄の廃止の意図はあるのか(マジョディナ委員)

1988年から勧告している。代用監獄の廃止について、なぜ、代用監獄制度の使用が停止されないのか。世界の他の地域では全く許されない制度である。CATでも取り上げられている。30年問題が提起されているのに変わらない。予算の制約があると政府はいわれるが、代用監獄の問題における自白の強制が多くのケースで発生している。最近では、PC遠隔操作事件で明確に無罪の人が自白させられた。袴田さんが代用監獄で長期間の取調の結果自白させられた時とどう変わったのか。長期の取調による自白の強要がなされていることに変わりはない。日本政府は、勾留施設を増やし、人権違反を防ぐべきではないか。代用監獄を廃止する意図はあるのか。勾留の削減はあるのか。

3 死刑制度の廃止を、それまでの間も改善を(ニューマン委員)

アメリカのニューマン委員は死刑制度の死刑確定者の処遇について包括的な質問を行った。彼も袴田氏が40年以上も拘禁されたことを取り上げた。ニューマン氏が取り上げたことは広範にわたるが、
○第2選択議定書を批准し、世界に範を示して欲しい。
○恩赦が1975年以来ないこと。規約の6条のパラ4に反している。恩赦の申請中の処刑はあるのか。
○19の犯罪のリストに爆発物犯罪は入っているのか。
○死刑囚は長期に独房収容され、死刑執行は数時間前にしか知らされない。家族にも知らされない。政府は「心の安寧を得るため。」というが、委員会は非人道的と言ってきた。
○死刑判決を見直すために必ず再審査の機会を与えるべきではないか。
○裁判員制度の下で、全会一致でなくても死刑が可能となっている。再審査が必要である。
○最高裁判決によって、死刑確定者との面会への弁護士の立会に一部の変化をもたらしたというが、どのような変化か。
○心神喪失の者の処刑を避けるため、独立の審査がない。
○高齢者の処刑が続いているようだ。
○法務大臣による検討会は、まだ得られていないのか。

4 なぜ、取調に弁護人は立ち会えないのか、より包括的な取調可視化を(シャニイ委員)

イスラエルのシャニイ委員は取調の問題を包括的に取り上げた。
○裁判員対象の3パーセントが対象になると言うNGOの見解は正しいのか。
○パイロットケースでは、どういうものが試行から外されているのか。残りの事案はなぜしないのか。
○対象事件の選び方はどうなっているのか。
○弁護士はもともとの録画を見ることができるのか。
○身体的な暴力や言葉で脅すようなことはあるのか。
○手錠をしたまま、椅子に縛られて取り調べを受けているというのは本当か。手錠をするのは一般的なのか。
○弁護士はなぜ立ち会えないのか。
○99パーセント以上が有罪判決というが、このような刑事司法制度は正しいと見られているのか。
○事前の検察官の選別の判断によって有罪率高いという説明であるが、このような高い有罪率は警告的な情報ではないか。裁判官は検察官の起訴を斥けることをおそれているのではないか。
○自白に依存することの危険性は学術的な調査によって示されている。プレッシャーがあると25-30パーセントの被疑者が自白を強要されていると言う報告がなされている。
○袴田ケースでは再審が開始されたという。そのことは、高く評価されるが、そのような人が他にもいるのではないか。

5 日本政府が死刑制度を維持する理由を聞きたい(レスキア委員)

アルゼンチンのレスキア委員は、フォローアップ質問の中で、死刑について重ねて質問した。彼は、ニューマン委員の質問は繰り返さないとしつつ、「国からの適切な対応がなされてない。死刑廃止に向けて、刑事司法ポリシーが示されていない。日本政府に死刑を維持する理由について聞きたい。対象犯罪に国に対する犯罪が含められている。19もの罪が上げられている。内乱が含められている。このような制度に合理性があるのか。」
「刑事司法は市民の気持ちに沿うべきと言うが、政府としての方向が示されるべきだ。死刑確定者の心の安静をはかるというが、それは国が決めるものではない。事前に通知を受けることで死刑確定者が、状況を把握できるようにするべきだ。」
6 まとめ

最後には、ロドリー議長が日弁連の代用監獄と取調に関するレポートの一部を読み上げ、政府に事実と違う点があれば、具体的に指摘するようにとの質問もあった。
多くの委員は報道を通じて袴田事件の内容を理解していたようだったが、日弁連が映画BOX袴田事件をジュネーブプレスセンターで上映し、この事件の具体的な内容とこの事件から浮かび上がる日本の刑事司法システムと死刑制度の問題点について記載したチラシを配布しながら、多くの委員と対話したことが、このような成果を生み出したと思う。

第3 秘密保護法について厳しい質問

1 事前の活動

すでにNHKが「国連委員会 特定秘密保護法に意見」として、流している。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140717/k10013071791000.html
7 月 17 日 0 時 31 分
秘密保護法については、事前のLOIには入っていなかった。したがって、これを審査で取り上げてもらうことには、最初から困難が予想された。NGOは、事前によく話し合い、委員会にレポートを提出しているNGOだけでなく、他のNGOにも呼びかけ、19団体のジョイントレポートを実現した。
他に、日弁連、アムネスティもこの問題を取り上げ、ツワネ原則を起草したオープンソサエティ・ジャスティスイニシアティブも、秘密保護法の内容を検討した詳細なレポートを作成してくれた。
公式ブリーフィングでは19のNGOを代表して小川隆太郎弁護士が秘密保護法の問題点について発言した。このブリーフィングでは、フリンターマン委員から、法律は既に適用されているのかという質問があった。翌日には法は施行前であり、適用例はないが、日本では過去に西山記者事件があり、この法律によるジャーナリスト、市民活動家、内部告発者に加えられているリスクは現実のものであることを説明するペーパーを19NGOのステートメントとして提出した。

2 フォー委員の包括的質問

審査の第二日目にドイツのフォー委員が表現の自由について質問する中で、秘密保護法について取り上げた。
(秘密保護法について質問するフォー委員)
フォー委員の質問を少し詳しく紹介しよう。
「表現の自由についての権利制約は、非常に狭いものに限定しなければならない。公共の福祉による制約は広くなっている。規約で認められたに限定していくことについてそのステップを明らかにして欲しい。これまで、この問題についての司法審査が限られているようにみえる。
ここで最近の例をとりあげる。去年のリストオブイシューの採択のあとに生じたことで、かなりの懸念を生んでいる秘密保護法に関してである。この問題について委員会の一般的意見34において、国家の保有する情報へのアクセスを拒否するときには相当な理由が必要だとされ、不服申立の機会を慎重に締約国は確保するとされている。安全保障に関する情報も厳しい要件を満たした情報を保護すべきだ。
日本政府が法律の全文を翻訳して下さったので、その翻訳を読んだが、この法律は、翻訳を読んでも理解できない。アネックスの表の目的とされる防衛、外交、テロの防止、特定有害活動の分類基準が明らかでない。10年の刑は重すぎる。
24条は、メディアに対して萎縮効果をもたらすのではないか。22条がニュースの報道の自由にどのような保障をもたらすのかも明らかでない。日本としては、規約19条に即してセーフガード措置を用意しているのか、人権活動家や環境活動家が逮捕されないようにどう確保するのか。」

3 日本政府代表団による回答

これに対して、日本政府代表団(内閣府)は「日本政府は表現の自由を最大限保障している。情報公開制度は、特定秘密保護法にも適用される。規約19条は、国の安全、公共の秩序に基づく一定の制約を認めている。秘密保護法は、19条に反するものではない。
秘匿性の高い情報をを保護する制度、その指定と解除に関する制度は、米国や英国で整備されている。秘密の定義や指定の要件は、法的に明確されている。
附属表については、「賢人会」(情報保全諮問会議)により詳細な基準が審議されていて、閣議で決められることとなっている。特に秘密性が高い、限定的で具体的な情報に限って秘密に指定されるのであり、行政機関の恣意的な運用はなされない。
法24条により、自己の不正の利益を図る場合にのみ取り締まりの対象となるとされており、報道目的の取得は処罰されない。このような規制は国民の知る権利を不当に制限するものではなく、自由権規約19条と整合的である。

4 ロドリー議長による立法事実に関する質問

このやりとりを受け、委員会の最後のロドリー議長による質問の中でも、「特定秘密保護法について、懸念が表明されている。この法律はどのように既存の法律を変えるのか。いま、なぜ、このような法律が必要となったのか説明して欲しい。」という根本的な立法事実の有無に関する鋭い質問がなされた。
この点については、日本政府は審査終了後48時間以内に書面で回答することができる。
このように、日本の市民社会が共同で取り組んだ秘密保護法を国際人権法の視座から検討してもらうというミッションは成功したようである。どのような具体的な勧告がなされるかを見守りたい。

第4 ヘイトスピーチ

1 審査でのやりとり

ヘイトスピーチについて、イスラエルのシャニイ委員が取り上げた。このようなデモが350件も報告され、広範に起きていることが確認された。そして名誉毀損の場合以外は取り締まれないのか、他の刑事的規制はないのか質問された。このように、ヘイトスピーチについて具体的な防止策がとられていないことが大きく取り上げられた。
これに対して、政府代表団は、極めて深刻なヘイトスピーチが起きているにもかかわらず、政府の答弁は名誉毀損や脅迫にあたる場合に民事責任と刑事責任を問いうる、啓発活動に取り組んでいるという答弁に終始した。このやりとりを通じて、日本に包括的な差別禁止法制がないことの問題点も明確になった。

2 求められる限定された刑事法的規制

日本から出席していたNGOは Japan NGO Network 2014 ICCPR として、ヘイトスピーチに関して、人種差別撤廃委員会の一般的見解35 para15,16 にもとづいて、一定の行為の犯罪化を求める勧告を求めた。この点について、二日目のフォローアップ質問において、シャニイ委員は表現の自由の保障は重要であるとしつつ、規約20条がバイオレンスの防止のため、人種差別の煽動をするヘイトスピーチ抑制しなければならないことを定めていることを指摘し、民事法的な措置だけに委ねることは問題であり、民事提訴ができない場合もあり、国が抑制することが望ましいと述べた。
人種差別撤廃委員会の前記の見解は、法律により処罰されうる流布や扇動の条件として、委員会は以下の文脈的要素が考慮されるべきであると考える。として、スピーチの内容と形態、経済的、社会的および政治的風潮(委員会は、ジェノサイドに関する指標において、人種主義的ヘイトスピーチの意味および潜在的効果を評価する際に地域性が関連することを強調した)、発言者の立場または地位、スピーチの範囲、スピーチの目的を考慮すべきだとしている。
また、締約国は、扇動罪の重要な要素として上記の考慮事項に加えて、発言者の意図、そして発言者により望まれまたは意図された行為がそのスピーチにより生じる差し迫った危険または蓋然性を考慮に入れるべきであるとされている。
日本の状況は、放置すれば、人種差別的暴力への歯止めが利かなくなる一歩手前まで来ている。委員会がどのような具体的な勧告を行うか、ここでも大いに注目される。

第5 慰安婦問題をめぐる委員会内外のできごと

1 異常な事態

今回のセッションには、慰安婦は強制連行されておらず、売春婦だったと主張している日米の団体の人たち約10人が来て、NGOのブリーフィングに入れるかどうかでもめたり、セッションで慰安婦が性奴隷ではないとした政府代表発言に一斉に拍手したり、慰安婦問題について発言したマジョディナ委員をセッションの終了後に取り囲んでつるし上げたりという事件が起きた。

2 委員会でのやりとり
委員会では、マジョディナ委員が慰安婦問題を取り上げた。河野談話の検証についても質問がなされた。これに対する政府の回答は、これまでの経緯をふまえ、日本政府としては強制連行の事実は確認できないが、当時植民地統治下にあり、「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して」なされたと述べた。そして、今後も河野談話を継承すると述べたが、アジア女性基金を超える慰藉措置は示されず、慰安婦を「性奴隷」と呼ぶことは相応しくないとも述べた。
これに対して、マジョディナ委員は最後のフォローアップ発言の中で、性奴隷制という発言は1926年の奴隷廃止条約の定義に基づくと発言したのに対し、政府代表はさらに、「奴隷制度の定義について、条約上の検討をした上で、この制度は性奴隷制の問題ではない。その定義に当てはまるものとは理解していない。性奴隷制度は不適切な表現である」と強く反論した。
この時に、慰安婦の存在を否定するグループの人たちが一斉に拍手をしたのである。 これに対して、ロドリー議長はこのような行為(慰安婦を性奴隷ではないとする発言に拍手する)ことは、許されない行為であると言明した。

3 まとめ

今回のセッションでは、慰安婦とヘイトスピーチ、秘密保護法が大きく取り上げられたが、このような慰安婦否定派の人たちが審査に来たことにより、日本の民主主義と人権状況の悪化が委員の皆さんにも肌身で感じられたのではないかと思う。それが勧告にどのように反映されるかも興味深い注目点である。

第6 福島原発事故後の知る権利も議題に

1 委員の質問
スイスのケリン委員は、委員の一巡目の最後の質問で福島原発後の状況に懸念があるとし、特別報告者(アナンダ・グローバー氏)も提起しているとして、国際基準(年間1ミリシーベルト)の20倍の線量地域に帰還政策がとられていること、福島における災害関連死亡(1704人)の中に健康被害の者が含まれているのか、帰還した者に月次の補償がなされるのか、避難している人々にどの程度の情報が提供されているのか。情報へのアクセスに問題はないのかなどの質問がなされた。

2 政府の回答
これに対して、政府代表団は、福島の放射線影響については、わかりやすくリスクコミュニケーションをしている。科学的知見をまとめた基礎的な情報のパンフレットを作成し、 責任を持って長期的リスクについて、正しい情報を住民と労働者に提供していると説明した。

第7 審査を総括したロドリー議長総括発言

1 感動的だった総括発言

審査の最後にロドリー議長が次のように発言した。これは、委員会全体の偽りのない日本政府に対する気持ちを表していると考えられる。

(総括発言を述べたロドリー議長)

********************************

二つの問題が指摘された。
代表団が察知されているように、繰り返しのプロセスがあるということである。
政府り説明には、繰り返しが多い。このようなプロセスは資源の有効活用といえない。
人権の尊重がリソース次第という状況は日本のような先進国ではあってはならないことである。
代用監獄の制度を取り上げる。代用監獄は暫定的なものとして、1908年に当時「資源がない」という理由で、捜査の対象となる被疑者を警察に拘禁してきた。
これに加えて、今回政府は「家族や弁護士に利便だ」という説明を付け加えられた。便宜だというが、全く反する意見を持っている団体もある。このような説明は無意味に聞こえる。こういう制度が維持されている理由は、起訴側が自白を求めたいと考えているためであるとしか考えられない。このような状況は明らかに規約に矛盾している。
可視化については、改善が進むでしょう。でも、もっと多くの人と金を投入するべきである。取調に弁護士の立会は認められていない。
日本政府は、委員会がこれまでよりも強い形で勧告を出しても驚かれることはないでしょう。日本政府は明らかに国際コミュニティに抵抗しているようにみえます。
もうひとつの繰り返しは慰安婦の問題です。意見の対立があるようである。私には理解ができない。頭が悪いのだろうか。「強制連行されたのではない。」といいつつ、「意図に反した」という認識が示されている。これは、理解しにくい。
性奴隷である疑念があるなら、意図に反して行われたのなら、河野談話でも謝罪がなされたとしても、日本政府はなぜこの問題を国際的な審査によって明確化しないのか。政府のこのような言葉を受け容れるしかないのか。
政府には48時間以内に反論できる機会がある。
このセッションでなされた拍手は適切なものではない。とりわけ人権侵害の被害者を辱めるような拍手は適切でない。
日本はこの委員会にとって重要な国である。自由を認めているである。この場に市民社会はたくさん参加している。でも、人権にマイナスな影響を与えるような深刻な問題がないわけではない。次のラウンドでは、こういうことが続かないようにしたい。
ぜひ、日本政府から、追加情報を頂きたい。最終見解を出し、フォローアップをしていきたい。

*********************************

2 総括所見の実現は私たちの責務

総括所見について、期待が持てる審査であった。
いろいろな事件があり、また、リストオブイシューになかった問題で取り上げられた問題があった一方で、日の丸君が代問題のように、リストオブイシューに入っていながら、誰も質問しないでイシューから落ちてしまった問題もある。このように、明暗はあったが、最後のナイジェル議長の発言を聞く限り、委員会はかなり踏み込んだ勧告をしてくるにちがいない。この勧告を受け止め、日本国内にひろげ、政府と真剣に対話し、日本を包む人権と民主主義の危機を克服したいと思う。

1/21秘密保護法と民主主義の危機・院内集会


満田夏花

FoE Japanの満田です。1月24日から通常国会がはじまります。
安倍政権の暴走をどこまで止められるのか?
民主主義を守るため、分野横断的な対応が必要になってきているのかもしれません。

以下お知らせです。21日の集会は豪華メンバーです。改めて秘密保護法の問題
点を学び、行動しましょう。はじめての人歓迎!ぜひ連れてきてください!
—————————————————-
【集会案内】 1/21秘密保護法と民主主義の危機・院内集会
http://stophimitsu.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/121-3f83.html
—————————————————-
秘密保護法の全体像を学びましょう。

日 時:1月21日(火)15:00~17:30
場 所:参議院議員会館講堂(最寄り駅 東京メトロ・永田町、国会議事堂前)
(30分前からロビーにて入館証を配布します)

お 話(予定・仮題)
・足立昌勝さん(関東学院大学教授)民主主義を踏みにじる秘密保護法
・山下幸夫さん(弁護士)秘密保護法が狙う国家像~立法・法改定の動き
・青木一政さん(ピース・ニュース)戦争準備の直近の動き
・七戸わこさん(秘密保護法を考える市民の会)自民党の反論を批判する
・海渡雄一さん(弁護士・日弁連)通常国会に向けて

主 催:秘密保護法を考える市民の会

資料代:500円
問い合わせ先:03-5225-7213(311市民プラザ)
090-8116-7155(阪上)
—————————————————-
【秘密保護法と戦争準備に反対!民主主義を壊すな!アピール行動】
・日時:1月24日(金)10:30~12:00
・場所:衆議院第二議員会館前
・主催:秘密保護法を考える市民の会
・問合せ:03-5225-7213(3.11市民プラザ)、090-8116-7155(阪上)
http://stophimitsu.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/post-875d.html
—————————————————-
1月24日(金) 全国一斉行動の情報
◆1月24日(金) 国会周辺での抗議行動予定◆(2014.1.10現在)
★10:30~12:00 @衆議院第二議員会館前
【秘密保護法と戦争準備に反対!民主主義を壊すな!アピール行動】
主催:秘密保護法を考える市民の会
問合せ:03-5225-7213(3.11市民プラザ)、090-8116-7155(阪上)

★12:30~14:00 @国会周辺  ⇒数千人規模が必要です。ぜひご参集を!!
【「秘密保護法」廃止!1・24国会大包囲】
ヒューマンチェーンは13時30分、14時の二回
集合:参議院議員会館前 官邸前
主催:「秘密保護法」廃止へ!実行委員会

★14:30~15:30 @参議院議員会館講堂
【「秘密保護法」廃止へ!院内集会(仮称)】
主催:「秘密保護法」廃止へ!実行委員会
http://www.himituho.com/

★17:30~21:00 @衆議院第二議員会館前
【『特定秘密保護法廃止せよ!自由の無い国絶対反対!永田町大集会』】
主催:火炎瓶テツと仲間たち

★18:30~19:30 @首相官邸「裏」
【首相官邸「裏」からの抗議行動」
呼び掛け:木村(連絡先:080-5062-4196)
http://2011shinsai.info/node/5003

バーナムの森は動いた


海渡雄一

「脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会」(eシフト)メーリングリストより転載

秘密保護法強行採決は安倍政権の終わりの始まりだ!

秘密保護法を廃案へ!実行委員会
海渡雄一

1 参議院で法案採決される

参議院本会議で、法案が可決されました。採決結果は、投票総数212、賛成130、反対82でした。

賛成したのは自民党と公明党。反対したのは、民主、共産、社民、生活、糸数議員、山本議員などでした。みんなの党は欠席しましたが、一部議員は出席して反対しました(川田さんと寺田さんと真山さん)。維新の会は欠席しました。

市民の8割が慎重審議を望んでいる中で、日比谷野音に1万5千人が集まり、全国で抗議集会が続き、数万人の市民が国会を取り巻き、秘密保護法絶対廃案を叫び続ける中での、法案可決です。

「特別秘密の保護に関する法律案【逐条解説】」という文書が12月5日午前11時45分に福島みずほ議員の強い要求によって、ようやく開示されました。これは、法案の策定段階おそらく公明党との修正協議の前の段階の法案について内閣官房が作成したものと考えられ、合計92頁に及ぶ大部なものです。法案の逐条解説を公開して審議していれば、法案の問題点はもっと深く審議でき、浮かび上がったはずです。作成名義は、内閣官房の作成とされています。

さらに、内閣と各省庁の間で、この法案の策定の段階で、多くの意見交換が行われていたことが昨晩わかりました。今のところ人事院と文書のやりとりだけが、公表されています。他の省庁は、各官庁の了解が取れないという理由で、今も不開示となっています。

このような重要な文書をこれまで秘密にしていたことは、国会軽視として決して許されることではありません。すくなくとも、このような重要文書について、きちんと国会での審議の時間を確保するべきことは民主主義政治の元での国会運営として、当然のことでした。

委員会採決は、最後は、全く言葉も聞き取れない、議事録もないような状態での採決であり、手続的にも違法無効です。

2 根本的欠陥法案である

この法案には根本的な欠陥があります。何が秘密に指定されるかが限定されず、政府の違法行為を秘密に指定してはならないことも明記されていません。公務員だけでなく、ジャーナリスト・市民も独立教唆・共謀の段階から処罰されます。

政府の違法行為を暴いた内部告発者やジャーナリスト、市民活動家を守る仕組みが含まれていません。権威ある国際原則であるツワネ原則にことごとく反しているばかりでなく、ふたりの国連特別報告者とピレー人権高等弁務官からも重大な懸念が表明されています。私たちはこの秘密保護法案の内容も手続も絶対に認めることはできません。

3 法案廃止の活動を始めよう

これからの闘いの方向性について、提起したいと思います。今晩の闘いの力で、これからの政府の暴走を止めましょう。

成立した法案は同じ手続で廃止することができます。私たちは、明日から、この法律の廃止を求める活動を直ちに始めようではありませんか。次の国会には、採決に賛成しなかった多くの政党と共同して、秘密法の廃止法案を提案するための活動を始めましょう。

4 弾圧に備えよう

もうひとつ、大切なことを提起します。

この法律は、憲法21条、自由権規約19条で保障された表現の自由を侵害する違憲立法です。この法律が自由権規約19条に違反することは、国連の見解なのです。我々には国際社会が味方してくれています。裁判官も私たちの反対運動を見ていることでしょう。そして、心の内では応援してくれている裁判官も少な
くないはずです。

秘密法違反の被告人は違憲な法律によって起訴されたのですから、絶対無罪としなければなりません。
これは、弁護士の仕事ですが、政府があくまで、この法案を施行しようとするなら、第一号の秘密法違反事件の被告人を弁護するために、1000人の弁護士を組織し、あらかじめ大弁護団を結成しておきたい思います。

5 新しい闘いのはじまり

法案の成立は、私たちの一つの敗北であることは確かです。

しかし、今日一日の私たちの行動は、政府、国会に私たちの秘密法廃案、安倍政権NOの怒りをぶつけ、一人一人の市民に秘密法反対の意思を確認する機会となったことと思います。

まず、私たちは、これだけの多数の市民の反対を押し切って秘密法を成立させた政府与党の暴挙を心にしっかりと刻みつけなければなりません。マクベスのバーナムの森は動いたのです。これから、政権崩壊の日が近いことにおびえなければならないのは、勝ち誇ったような顔をしている安倍首相とその取り巻きたちです。

私たちは、この法律が廃止されるまで、決してあきらめません。明日から、秘密法のある社会を拒否し、その実質化を食い止めるため、新たな闘いを始めましょう。