如何に福島医大が彼ら自身の調査をサボタージュしているか


IPPNWドイツ支部 アレックス・ローゼン(Alex Rosen) 小児科医による批判:如何に福島医大が彼ら自身の調査をサボタージュしているか

ご紹介させていただきますアレックス・ローゼン医師の論評は、2016615日に福島民友オンラインに掲載された甲状腺検査の在り方は 受けない意思も尊重』」と題された記事に基づいたものです。福島民友の記事は、甲状腺検査を巡るコミュニケーションを担当する福島医大の緑川早苗准教授が、昨年から学校を訪れ、子ども向けの出前授業を始め、そこで緑川氏が「がんが見つかったら嫌だと思う人は、甲状腺検査を受けない意思も尊重されます」と、子どもたちに話しているという事について触れています。その他の詳しい内容については下記のリンクをご覧になって下さい:

http://www.minyu-net.com/news/sinsai/michishirube/FM20160615-084642.php

アレックス先生は、如何に福島医大が彼ら自身の甲状腺調査をサボタージュしているか、様々な点を挙げながら、明確に批判しています。そして最後に、残された唯一の希望は、子どもたちや、その親御さんたちが福島県立医学大学の方略を見抜いて、これからも集団スクリーニング検査に参加することを続けていってくれる事であると結論しています。

下記が原文(ドイツ語)へのリンクです:

このアレックス先生の論評の中で下記の動画へのリンクが紹介されてありますので、ぜひご覧になってみて下さい:

原発事故当時15歳だった女性の勇気ある証言

福島における「理不尽ながん診断」

如何に福島県立医学大学が彼ら自身の調査をサボタージュしているか

著者:アレックス・ローゼン (Alex Rosen)医学博士 (小児科医/IPPNWドイツ支部副議長)

(和訳:グローガー理恵)

201684

福島で大規模な子どもたちの甲状腺がん検査/集団スクリーニングが実施されるようになってから、今や5年経った。複数の原子炉メルトダウンを伴ったフクシマ超大規模原子力事故による影響が原子力に好意的な日本政府によって故意に過小評価されているが、少なくとも、科学者、医師、保護者会は、この集団スクリーニングの実施を押し進めることができた。 福島県立医学大学によって行われている集団スクリーニングは、福島県のみに制限されていることや透明性の低さ、原子力ロビーによる福島医大への影響力など尤もな批判があるのだが、スクリーニングすることによって甲状腺がんの早期診断や早期治療ができるという可能性を提供してくれている。

さらにチェルノブイリの場合とは違い、この調査を通して、原子力災害が被曝した住民へ及ぼす影響について重要な知見を得ることができる。

一方、5年後になって終了した1巡目と2巡目にわたる甲状腺検査の結果は、検査を受けた住民における甲状腺がんの症例数が、はじめに予測されていたよりも、はるかに高い数値であることを明示している。しかし、この事に対する日本政府の反応の仕方は独特である: 彼らは家族に、誰もが自由意志でこの検査をやめることができるということを提案しているのである。

福島医学大学の 内分泌学者/コミュニケーション担当者である緑川早苗准教授は、去年から、福島県内の学校をまわって、子ども向けの”出前授業”をやっている。”出前授業”で緑川准教授は、「理不尽な がん診断」を望まない人は、集団検査を受けることを拒否する権利があることを説明する。このような表現 (「理不尽ながん診断」)が何を意味しているのか。それは、福島医学大学の出版物を読めば、はっきりとしてくる: 彼らは、これまでに福島県の172人の子どもたちに見つかった甲状腺がん症例はいわゆる「スクリーニング効果」に関連性がある、との見解を示しているのである。福島医大は、「甲状腺がん症例がフクシマ原子力災害に起因しているとの可能性は低く、これらの甲状腺がん症例は、集団スクリーニングが実施されなかったのなら、まったく見つからなかったか、もしくは、後になった時点ではじめて見つかったであろう」との見解を唱えている。なぜ、一目瞭然である原子力災害との因果関係が最初から否定されるのか、福島医大は解説しない。また、早期転移を伴った悪性度の高い進行性がん、そして、腫瘍の浸潤性増殖および腫瘍の急速な成長が高率に発生していることについても、何の説明もなされていない。一方で、131人の子どもたちに腫瘍および転移の摘出手術が適応された。摘出手術を受けた患者は、これから一生ずっと甲状腺ホルモン剤を服用していかねばならないし、がん再発の早期発見と早期治療ができるようにするためにアフターケア検診にも臨んでいかねばならない。さらに福島医大は、なぜこのような数値 (予想外に高かった甲状腺がんの罹患率)を単に ”スクリーニング効果” と関連づけて考えるのか、はっきりとした解説をしていない。

福島医大の代表者 (緑川早苗)は学校の出前授業で、「がんが見つかったら嫌だと、がん診断を望まない子どもたちがいるのなら、その意思も、また尊重されなければならないと提唱する。また、コミュニケーション担当者でもある彼女は、子どもたちやその家族が持つべき権利について一言も触れようとしない。子どもたちやその家族が持つべき権利とは、放射線汚染の危険性原子力事故後に発生する甲状腺がんに関する知識悪性腫瘍の発見が遅すぎる場合のリスク について、偏りのない公平な情報を得ることである。その代わりに、彼女はこう述べたのである: 「原発事故の後に子どもたちは検査を受けるべきだと(汚染地域の)住民 が考えたのは当然のこと。また、検査結果を放射線と結び付けて不安に思ったの も当然のこと。でも今思えば、その全て が理不尽な体験だった」と。

そして現在、多くの科学者や医師、両親たちが、検査の受診者数が減ることで甲状腺調査の価値が失われてしまうことになるだろうと、尤もな懸念を懐いているのである。できるだけ多くの年少者に検査を受けるのをやめるようにと、それとなく提案している福島医大の打算は瞭然としている。患者の自律性というものは、今まで尊重されてこなかった – したがって、子どもに甲状腺の異常が見つかった場合、家族はそのことをなかなか知らせてもらえなかったり、検査結果に関する情報も十分に与えてもらえなかったり、他の医師によるセコンド・オピニオンは概して否定されたり、診察結果や超音波画像が両親に渡されなかったりしたのである。そうして、今や、甲状腺検査の結果は甲状腺がんと原子力災害の相関関係を更にいっそう明白に示しているため、彼らは、この 患者の自律性という美名の下に、歪曲させた、計画的かつ意図的な事実の曲解を生み出そうと狙っているのであり、この事は最終的にすべての甲状腺検査を取り消し無効にしてしまうのである。既に、福島県民健康管理調査検討委員会の前検討委座長である山下俊一医師をはじめとした日本の責任担当者たちは、集団スクリーニングを止めることを告知している。これに対して抗議をすることや、独立した公正な公衆情報を要請することこそが、当を得ており適切なのであろうが、残念ながら、そのような行動を起こすことは、日本の現在の政治情勢・経済状況を考慮すると、おそらく現実的だとは言えない。

しかし、まだ希望は残っている:それは、両親や子どもたちが福島県立医学大学の方略を見抜いて、これからも集団スクリーニング検査に参加することを続けていってくれる、という希望である。

以上

福島医大とIAEAとの2013年12月協定書


竹内雅文

2013年12月に福島県は国際原子力機関(IAEA)との間に幾つかの協定書を取り交 しました。その中に、「福島県立医科大学とIAEAとの間の実施取決め」という題目の協定書があり、医大学長の菊地臣一氏と、IAEA事務次長(原子力科 学・応用担当)のモハマド・ダウド氏が署名をしています。(原文英語版:http://www.mofa.go.jp/policy/energy /fukushima_2012/pdfs/fukushima_iaea_en_06.pdf 日本語版:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/atom/fukushima_2012/pdfs /fukushima_iaea_jp_06.pdf )

この文書には見過しにできない文言が色々と含まれています。

「1目的」という条項には、「事故後の福島県における放射線が人の健康に与える影響及び放射線リスク管理の分野において、協働活動を発展させ実施することを目的とする。」とあります。
この「放射線が人の健康に与える影響」という言葉は、次の条項にも現われます。
「2協力の範囲」という条項を読むと、「●啓発の強化:IAEAは、放射線が人の健康に与える影響に関する啓発を強化し、福島県民の放射線に対する不安及 び心的外傷後ストレス障害に取り組むことを目的として、大学と協力して、会議、セミナー及びワークショップを開催するよう努める。」となっています。
「放射線が人の健康に与える影響」という言葉には、例えばどのようなものを指しているのか、何ら具体的な説明はありません。そして、これとほとんど同じ比重で「県民の放射線に対する不安及び心的外傷後ストレス障害」なるものが並置されています。

私たちはこうした文言を、この覚書締結当時まだ県立医大の副学長であった山下俊一氏の発言として繰返し伝えられている「100mSvでもニコニコしていれば大丈夫」という文言と、相通ずるものとして理解しないわけにはいきません。
かねてよりIAEAは、放射線被曝による疾病であることが疑われる個々の症例で、その真の原因を被曝によるものと特定し連関を確実に立証することが困難で あることを論拠に、放射線の人の健康への影響をほとんど丸ごと否認してきました。そして、それに変る病因として、ストレス障害なるものを繰返し持ち出して います。
けれども、チェルノブイリ周辺で事故後に発現した大量の死者や病者、障害者、死産等に関して、個々の症例の立証が困難であるからと言って、まとめて否認す るのは、一かけらの科学性もない暴挙であり、さらに、彼らの言うストレス障害なるものに、どのような学説的論拠があるのか、一度として説得的に示されたこ とはありません。

一方の「放射線リスク管理」という言い方は、「××癌による死亡可能性は0.0×パーセントの上昇です」といった枠内に問題を押し込めるもので、こういったリスク論なるものは、実際に発病してしまった人の命の問題を確立統計の中に疎外するものです。

この医大とIAEAとの協定は、放射能による健康障害の問題を、ストレス論、リスク論という2つの軸によって成り立つ軸の中に押し込めようというもので、このような設定を行なった福島県知事の佐藤雄平氏と医大の菊地臣一氏との責任は重大であると言わなければなりません。

以上の点が、この協定の最大の問題点と思いますが、それ以外にも、幾つか留意しておくべき条項があります。

「9 知的財産」には「IAEA憲章上の任務を尊重しつつ、適当な場合かつ必要に応じ、知的財産及び知的財産権に関連する事項について相互に協議する。」とあり ます。総じてこの協定には、福島県側のみがIAEAの立場に留意するべきことが規定されています。そうした力関係に立った協定であることに注意しておく必 要があります。

「10特権及び免除」には「日本国政府が1963年4月18日にIAEAの特権及び免除に関する協定を受諾したことに留意する。」と書かれています。この協定については、別に項目を立てて解説していますので、そちらを参照してください。(準備中)

«資料» 福島での国際専門家シンポジウム


2011年9月14日

www.icrp.orgのニュース欄より

2011年9月11日と12日、日本財団は福島医科大学で、世界の専門家たちから助言を受け、放射線の健康上の危険性に関する情報を伝えあい、実効性のある危険性意識を構成するものが何であるのかを理解するための、「国際専門家福島シンポジウム:放射線と健康リスク」を開催した。世界各地からの31人の専門家が、福島に暮す人々の直面する健康上のリスク査定を集団で行う目的で招かれた。そのうち16人はICRPのメンバーである。副委員長、主幹委員会メンバー6人、科学書記、主幹委員会の元メンバーが1名、その他、7名の委員である。

シンポジウムのセッションの主題を幾つか挙げれば:低水準被曝と健康・救急医療での困難な課題:汚染地域での線量、計測、線量評価:放射線生物学と放射線疫学:チェルノブイリ事故の教訓:そして、放射線安全と健康リスクのガイドラインである。記者会見には100人近い報道陣が詰めかけ、シンポジウムの成果が披露された。

二日目にはシンポジウムに参加したICRPメンバーを含む多くの国際的な専門家が、園田康博政務官・衆議院議員が20kmの避難地域にあるJヴィレッジと福島第一原子力発電所をアドヴァイザーとして訪問するのに、同行した。一行には東京電力の小森明生常務取締役も同行した。