マンガ「美味しんぼ」への福島県の対応に対して異論・反論を!


佐々木慶子

みなさま

私は福島市在住の佐々木慶子です。

去る4月28日と5月12日発売の雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」掲載の漫画「美味しんぼ」に対する執拗な程のバッシングは異常・異様としか言いようがありません。これこそ民主主義の根幹に関わる「言論・表現の自由」を脅かすものと言えます。

この度、福島県はこの「美味しんぼ」に対して、「遺憾の意の表明」を行いました。

「美味しんぼ」の表現に対して「共感」の意を伝える多くの県民もいる中、公正であるべき自治体が自分たちに不都合と思える論を封じ込めるような態度は不謹慎と言わざるを得ません。

私たちは未曾有の原発事故被災県民としての自由な言論を封じるかのような福島県の対応を看過してはならないのではないでしょうか

以上の理由から、私は「ふくしまWAWAWA-環・話・和ーの会」として以下の内容を盛り込んだ申し入れ書を福島県に届けます。みなさんもそれぞれの立場から、できればグループや団体として異論・反論を

福島県秘書課
024-521-7005/FAX 024-521-7900
に文書(又は電話)で伝えませんか。

現時点おいて、被曝と健康被害については医学的にも科学的にも因果関係が立証できないことは事実です。「安全」とも「危険」とも断言できないのであればなおさらのこと、グレイゾーンを含めて様々な意見が出て当然です。事実に真摯に向き合いしっかり論議する必要があるはずです。異論にしっかり耳を傾け自己の考えや利害関係に惑わされない冷静な論議が必要です。この中で双葉町前町長や福島大学准教授も実名で見解を述べています。彼らの見解は多くの県民の共感を得るものであり、一方的に断じられるもの
ではありません。

この度、福島県はこの「美味しんぼ」に対して、「遺憾の意の表明」を行いました。現段階で、一方の論を封じ込めるような意思表明は時期尚早であり、厳に慎むべきです。公正であるべき自治体として取るべき対応ではないと思います。

一人一人が小さくてもいいから声を上げ、一歩踏み出すことが今、問われています。

お互いがんばりましょう!

漫画「美味しんぼ」への福島県の対応について


2014年5月14日

福島県知事 佐藤雄平 様

子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク
ふくしま集団疎開裁判の会
会津放射能情報センター
子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山

漫画「美味しんぼ」への福島県の対応について(抗議)

まずは、これまでの福島原発事故の対応に敬意を表します。さて、5月12日に、雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載の漫画「美味しんぼ」の内容について福島県が出版社である小学館に抗議しました。

しかし、私たちは福島県のかかる行為は、日本国憲法で保障されている表現の自由や知る権利を侵害するのみならず、事実を歪曲するものであり、到底、看過することができません。そこで、以下のとおり抗議文を提出いたします。

ご多忙の中、誠に恐縮ですが、ご一読のうえ、ご高配いただければ幸いです。

「抗議文」

周知のとおり、人権のカタログにおいて最も重要な1つが表現の自由です。世界最初の人権宣言である米国のヴァージニア人権宣言もこう宣言しました「言論出版の自由は、自由の有力なとりでのひとつであって、それを制限するものは、専制的政府といわなくてはならない」(12条)

重要なことは、表現の自由を保障する意義があるのは、政治的、学問的権威に盲従する自由ないし賛成する自由のときではなく(そもそも制限されることがない)、こうした権威を批判する自由ないし反対する自由つまり少数者の意見のときです。

表現の自由を保障する真髄とは、「権威の座にある人たちの気に食わない意見を発表する自由」を保障することにほかなりません。

去る4月28日と5月12日に発売された雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載の漫画「美味しんぼ」に福島県双葉町の前町長や福島大学の准教授が実名で登場し発言した内容をめぐって物議をかもしています。

およそ良識を備えた人なら、次の認識は共有できるものです。

「被ばくによる人体への影響は、いまも科学的に十分解明されていないことが多くあり‥‥内部被曝によって起こる病気や症状のほとんどが、明らかに外部から被曝していない人にも発症するものだということです。それでいて、原因が被曝によるものだと特定する検査方法が確立されていませんから、病院に行ってもよほどのことがない限り、それが被曝によるものだと確定診断されることはありません」(1991年から5年半チェルノブイリに医療支援活動を行った菅谷昭松本市長「原発事故と甲状腺がん」52頁)

被ばくと健康被害の関係が科学的に十分解明されていないとは、或る健康被害が発生したとき、現時点の科学ではそれが被ばくの影響である(危険)とは断定できず、影響がない(安全)とも断定できないことを意味します、つまり危険の可能性を帯びた灰色だということです。それが今日の科学の到達点であり限界です。 その結果、この「灰色の評価」をめぐって、限りなく黒(危険)に近い灰色から、限りなく白(安全)に近い灰色まで複数の見解が生じ得ることになります。

前述の「美味しんぼ」に紹介された双葉町の前町長や福島大学の准教授の見解も、今日の科学の限界を踏まえて、自身の被ばく体験と同様の境遇に置かれた市民たちから得た情報から導かれる範囲で、自身の見解を述べたものであって、根拠のない噂=風評ではありません。

事実、被ばくの鼻血と関係を明言する専門家(西尾正道北海道がんセンター名誉院長)もいれば、除染の効果が十分上がらないことがチェルノブイリで証明済みであることもつとに指摘されている専門家も存在します(菅谷昭松本市長「これから100年放射能と付き合うために」67頁以下)。

しかし、この「灰色の評価」をめぐって、福島県の見解と異なるというだけで、これらの見解を根拠のない噂=風評と決めつけ、「本県への風評被害を助長するものとして断固容認できず」と非難しています。

それは前述した「権威の座にある人たちの気に食わない意見を発表する自由」を保障しないことにほかならず、表現の自由に対する重大な侵害です。

のみならず、双葉町の前町長や福島大学の准教授の見解は、彼らの個人的な見解にとどまらず、世界で最も過酷な「福島の現実」と向き合おうとしている多くの人たちにとって注目し共感せずにおれない重要な見解です。

福島県の非難は、こうした人々の声を上げる自由をも抑圧するものであり、民主主義社会の基盤である自由な発言と討論の広場を奪う結果になっているという由々しき事態を深く自覚すべきです。

福島第一原発事故の後、福島の人たちの間で、鼻血が多発したのは明白な事実です。そのことについては多くの記録があります。そして、人々がその原因が放射能ではないかと考えたのも当然のことです。

福島県が今回公表された見解は、今、福島で、放射能に対する不安を抱きながら生活している人たちが、自由な意見表明をすることを抑圧する結果を生じさせます。それは、福島の人たちを二重に苦しめるものです。「物言えば唇寒し」の社会を作ってはなりません。

以上より、私たちは、福島県のかかる侵害行為は断固容認できず、ここに厳重な抗議を表明すると共に、ただちに福島県の抗議を撤回することを求めるものです。