何千、何万という「がん疾病」の過剰発生を危惧


IPPNW プレスリリース

何千、何万という「がん疾病」の過剰発生を危惧

IPPNW記者会見 – フクシマ原発災害4周年にあたって

2015年3月3日

(和訳: グローガー理恵

フクシマ原子力災害から4年、日本の人々への健康影響が現れ始めている。原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (UNSCEAR)によるデータは、日本では放射能汚染のために16,000件までのがん症例の過剰発生と9,000件までのがん死の過剰発生が予測されるということを示している。  医師団体IPPNWは、実際の数値は、それよりも、もっとはるかに高くなるかもしれないと見なしている。 なぜなら、UNSCEAR報告書に記載された放射能放出量(ソースターム)の数値は、日本原子力研究開発機構(Japan Atomic Energy Agency)からの情報だけをベースにしており、独立した研究所/機関によって出された明らかにもっと高い数値を考慮していないからである。

さらに、UNSCEARによる内部被曝線量の算定やフクシマ原発の作業員の線量 計算に関しても深刻な懸念がある。

甲状腺がん症例は、予測される 「がん罹患」のほんの一部を示しているにすぎない。 最初の一巡目の甲状腺集団スクリーニング(先行検査)の枠内での細胞診において、計109人の子供た ちに甲状腺がん診断が確定された。 その間、この内の87人が、手術を受けた。 これまで、県民健康調査検討委員会は、これらの予期されなかった高い症例 数は 「スクリーニング効果」のためである、としてきた。 スクリーニング効果とは、もっと後になった時点になってから初めて臨床症状が出たであろうという症例 が、集団スクリーニングで発見されることの知見である。

しかし、2014年の12月から再検査 (本格検査 )の最初のデータが出ている。 再検査を受けた子供たちの57.8%に結節や嚢胞が見つかったのである。 最初のスクリーニング(先行検査 )においては、これらの(結節もしくは嚢胞が見つかった)割合が、まだ48.5%であった。 この事は、最初のスクリーニング (先行検査 )において、まだ何の異常も見つからなかった12,000人以上の子供たちに、現在、再検査(本格検査 )で、嚢胞と結節が確認されたということを意味する。 すでに、これらの子供たちの内11人に穿刺吸引細胞診がなされ、今、その内の8人にがん疾患の ‘強い 疑い’があるとの診断が下された。 過去2年間の間に発生したに違いない、これらの ”がん症例” を、もはや、「スクリーニング効果」で説明することはできない。

甲状腺スクリーニング(検査)は、福島県のみに限定されている。 日本の他の地域においてや非常に放射能汚染された福島に隣接した県(複数)におい てでさえも、同じ類の集団スクリーニングは実施されていないのである。 究極的には、他の県においても多数の甲状腺がん疾患が発生するかもしれない可能性 があるにもかかわらずである。

「二巡目のスクリーニング(本格検査)結果は憂慮すべきことです。 確かに、これまでのところは、まだ再検査結果の部分的なデータのみが提示されて いるだけですし 、原子力災害による長期的な健康影響を評価できるには、まだ時期が早過ぎます。  しかし、チェルノブイリからの経験に基づきますと、甲状腺がんの疾患数が、長年に亘り、さらに増加していくことが予測されます」と、IPPNW副会長、ア レックス・ローゼン医師は説明する。

甲状腺がんは、放射能汚染が人々に及ぼす健康影響のほんの僅かな一部を提示しているに過ぎない。IPPNWは、過去の原子力事故の体験に基づき、① 白血病、②リンパ腫、③固形がん、④心臓血管系疾患、⑤ホルモン障害、⑥神経障害、⑦精神障害などの罹患率の上昇を予測する。 さらに、精神的外傷や当局に失望させられ、放置されたという感情が及ぼす、甚大な心理社会的影響が付け加えられる。

以上

*(注)何千、何万という「がん疾病」の過剰発生: フクシマ核災害がなかったら、がんを発病をしなかったであろうという人々がフクシマ核災害が誘因となってがんを発病する。そういった人々の数が何千、何万になるであろうということを意味する。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2921:150305〕

甲状腺がんは氷山の一角にすぎない


Deutsche Welleがアレックス・ローゼン医師(IPPNW)にインタビュー: ローゼン医師 「フクシマにおける子供たちの甲状腺がんは氷山の一角にすぎない」

このインタビューは、ちきゅう座で1月10日にご紹介させて頂きました、IPPNWドイツ支部公表の論評「甲状腺がん症例がさらに増加」に関連したものです。

インタビューの最後にアレックス・ローゼン先生は、こう述べています:

『我々は、「人々が放射能汚染された環境に残るのか、そこを去って移住するのかについて、自分たちで決定することができないということ」 を批判します』と。

このローゼン先生の言葉は、岐阜環境医学研究所所長、松井英介医師、そして国連特別報告者、アナンド・グローバ氏の訴えでもある「被災者は健康な環境に住める権利があり、移住したいと願うのなら移住できる権利がある」ということに、共鳴するものです。

フクシマ大惨事から4年、状況が日々悪化していく中で、今、緊急にフクシマの被災者の方々に援助の手を差し伸べることこそが、政府に課された最大の義務であり、何よりも最も優先しなければならない課題ではないでしょうか。

原文(独語)へのリンク:http://www.dw.de/rosen-schilddr%C3%BCsenkrebs-bei-kindern-in-fukushima-ist-nur-die-spitze-des-eisbergs/a-18176688

ドイチェ・ヴェレ (Deutsche Welle)

ローゼン医師: 「フクシマにおける子供たちの甲状腺がんは氷山の一角にすぎない

2015年1月9日

(和訳: グローガー理恵)

フクシマ原発大災害の後、子供たちの甲状腺がん症例数が増加している。 大人は全く甲状腺検査を受けていない。 核戦争反対医師団 (IPPNW)のアレックス・ローゼン医師は日本の当局を批判する。

–  Deutsche Welle (以下DWと省略): 甲状腺スクリーニングは、どのような検診が土台となって行われたのでしょうか?

Alex Rosen (以下ARと省略): 日本の甲状腺集団スクリーニングは、福島県全域における年齢18歳以下の子供たち36万人以上を対象にした大規模なスクリーニングに関わるものです。 今までに、このような検査が行われたことはなかったのです。 先ず、住民からの大きな圧力があって、検査が実施されるようになりました。 

スクリーニングの土台となった検診は、甲状腺の触診、そして、甲状腺の結節、嚢胞またはがんの疑いある異常に関する超音波検査です。 当局 は、それぞれの検査結果を公表することを躊躇しています。 多くの親達は、検診が大急ぎでなされたことや検査結果を通知してもらえなかったことの不満を訴 えています。 また、指令によって、他の医師たちはセコンドオピニオンを与えることを禁止されているのです。

–  DW: 60,505人の子供たちが再検査 (本格検査 )されて、その内の57.8%に結節や嚢胞が見つか りました。 これらの数値は、どのように評価されるのでしょうか?

AR: これは、正確には言えないことです。 なぜなら、これと比較できるような全世界に及ぶ国際的なスタディーが存在しないからです。 ですから、ある健康な年齢18歳以下の人口集団において、実際に、嚢胞や結節の数が、いくつなら正常であるのかということが分からないわけです。 しかし、スクリーニングが始まったころ、日本の担当当局者らはこう述べました:  「検査で何も出てくるようなことはないだろう」と。 そうですから、検査によって、このような非常に多数の子供たちに異常が見つかり、100人以上の子供たちにがんの疑いありと分かったとき、彼らはびっくり仰天したわけです。 

これまでのところ、当局はずっとスクリーニング効果を引き合いに出しています。 我々は、集団スクリーニングにおいて確定される検出結果を、そのように(スクリーニング効果と)呼んでいるのです。

多数の健康な人が検査される集団スクリーニングでは、何年か後になってから初めて気づいたであろうというような疾患の検出結果がはっきりと 出ます。 すなわち、何の病気の症状もない患者たちを検査することで、それが時には、ある疾患の初期段階を発見することになることになるわけです。 集団 スクリーニングによって、症状のある人が医者にかかるまで待ってから明らかになる疾患の数よりも、もっと多数の疾患数を見つけることができます。

新しい(本格検査の)データをベースにしますと、この2年間の間に、結節や嚢胞、そして、がん疾患が新たに生じた子供たちの数が多いことが分かります。 このことを、スクリーニング効果」で片づけることはできません。

–  DW:チェルノブイリでの経験に従って判断すると、フクシマ地域の住民には、がん疾患する高いリスクがあるということを予測しなければならないのでしょうか?

AR: その通りです。 我々は、1986年にウクライナで起こった原発事故を通して、放射性放射線の、そして何よりも放射性ヨウ素の放出が、特に甲状腺がん発病のような極めて深刻な健康被害をもたらすことを学びました。 日本では2011年3月に、多量の放射能が放出されました。 人々は、水、空気、食べ物を通して放射性ヨウ素を吸入しました。 放射性ヨウ素は、とりわけ、子供たちや青少年の甲状腺に付着して、そこで 甲状腺がんを誘発するのです。 これはよく知られていることです。 それだから、我々は、今後数年間、何十年間の間に、日本において甲状腺がん発病率が増加することを予測しているのです。 悲しいことですが。

–  DW:想定可能超大規模原子力事故の後、なぜ甲状腺という器官は健康被害に冒されるのでしょうか?

AR: 原子炉大災害により、放射性物質は環境中へと広まっていきますが、その放射性物質の中にヨウ素131があるので す。 身体は、普通のヨウ素と放射性のヨウ素との区別をすることができず、呼吸する空気、食べ物、水を通して放射性ヨウ素を吸入してしまいます。 ヨウ素 は甲状腺ホルモン生産に必要な元素です。 ヨウ素131は周辺の組織を被曝させ、甲状腺の異常や発がんを誘発していく可能性があります。 

原子炉事故の後、通常は、予防ヨウ素剤が全住民に配布されるべきなのです。 予防ヨウ素剤を摂取すれば甲状腺がヨウ素で詰まって、放射性ヨ ウ素を吸入できなくなります。 日本では、こういった知識があるにもかかわらず、ヨウ素剤の摂取がなされませんでした。 この事も、また日本の災害管理に 関して批難すべき点です。

–  DW: 多数の子供たちに転移が見られました。 そして、甲状腺の部分的摘出手術が実施されなければなりませんでした。 これは、子供たちの人生にとって、どのようなことを意味しているのでしょうか?

AR: 「がん」の診断結果が出た子供たちの数は112人です。 その内の84人 に転移があり、がんが拡がってしまっていたり、または、がんが非常に大きかったため、子供達の命にかかわるような問題となっていました。 それで、彼らは 手術を受けなければならなかったのです。 甲状腺の部分が摘出された場合、子供たちは一生、甲状腺ホルモンを摂取していかなければなりません。 しかし、 過酷なファクターは、彼らが生涯ずっと、超音波検査や血液検査などのアフターケア検診を受けていかなければならないことです。 なぜなら、いつでも再発す る可能性があるからです。 甲状腺がんのために死に至るケースは、甲状腺がん症例のおよそ7%ぐらいです。

–  DW: 大人はフクシマ原子力事故の後、検診を受けていないのでしょうか?

AR: 受けていません。 日本の大人は、一般に、この疾患に関する検診を受けていません。 また、そのような計画もありません。 大人が甲状腺がんを発病するリスクというのは、そんなに高くないのです。 これはチェルノブイリの経験から分かっていることです。

甲状腺がんは最も早い時期に現れる病気であり、氷山の一角にすぎません。 我々は、他の疾病の発生を予測しているのです: 放射線によって、白血病、乳がん、腸がん、心血管疾患が誘発されます。 日本では一般に、これら全ての疾患に関する検診が行われていません。

–  DW: 原子力災害から4年近く経って、もうすでに長期的な健康への影響を評価することができるのでしょうか?

AR: いいえ、できません。 我々は、潜伏期間が長い、すなわち、これから40年後になってから現れるような可能性の ある幾つかの疾病を予測しています。 これは、原子力災害時に生まれた子供たちは、放射線による影響が原因となって病気になる、高いリスクを生涯抱えてい くであろうということを意味しています。 この事が、健康影響の科学的な研究調査作業をする上で難題となります: がんという病気は、その出所の表示を掲げていないのですから。 我々が、発がんの原因がフクシマの放射性放射線によるものなのか、それを確実に証明できるようなことは決してないでしょう。

-DW: 核テクノロジーのない世界を促進する、国際的に組織化された医師団であるIPPNWは、どのような援助を提供していますか?

AR:  IPPNWは、日本の医師たち、科学者たち、被災者の方々、そして市民社会との繋がりを持っており、スクリーニング(検診)のデータに関する我々の解釈や 我々の「ノウハウ」を、彼らに提供しています。 これは、我々がチェルノブイリ災害後にウクライナやベラルーシで集積してきたものです。 我々は論説を書 き、それが日本語に翻訳されます。 日本から専門家をドイツやベラルーシに招き、そこで彼らが専門家たちと意見交換できるようにしています。

我々の仕事は、何よりも先ず、科学的、医学的分野において進められます。 日本は経済的に豊かな国です。かつてのチェルノブイリ事故後の状況とは違い、我々が日本に医療援助を提供する必要はありません。 チェルノブイリ事故があった、あの頃は、ドイツからの献身的な医師が超音波機器をウクライナへ持っていったり、病院を建てたり、被災者を検診したりしまし た。

日本の人々が必要としているのは、そして、彼らが国内のメディアから得られないものとは:  信用できる、真実性が確認された情報であり、自分たちの持つ 「健康への権利」が真摯に受け止められているのだということを、彼らが感知することです。

日本で、そのような事は起こっていません。 人々は放射能汚染された環境で生活することを強いられています。  ほんのわずかな人たちだけが、このような環境から離れられる可能性を持っています。 でも、そうすると、彼らはもう医療支援を得られなくなってしまうのです。

我々は、「人々が放射能汚染された環境に残るのか、そこを去って移住するのかについて、自分たちで決定することができないということ」 を批判します。

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2910:150224〕

甲状腺がん症例数がさらに増加


IPPNWドイツ支部

(和訳: グローガー理恵 )

2015年 1月 6日

福島で甲状腺集団スクリーニングの最新データが公表された。 データは初めて、日本の子供たちにおける甲状腺がんの新規症例数の増加を示している。 最初の一巡目のスクリーニング(先行検査 )の枠内で既に、84人の子供たちに甲状腺がん診断が確定され、その中の一部には既に転移が見られた。 その結果として、これらの子供たちにおいて甲状腺の部分的摘出手術が実施されなければならなかった。 さらに、24人の子供たちに、「がんの疑いあり」との細胞診の結果が出ている。 これまでのところ、日本の当局は、これら全ての症例は所謂「スクリーニング効果 (独語:Screeningeffekt )」に起因するものであるとしている。 「スクリーニング効果」とは、まだ臨床症状がなく、もっと後になった時点になってから初めて臨床症状が出たであろうという症例が、集団スクリーニングで発 見されることの知見を説明する用語である。

しかし今、最初のスクリーニング(先行検査)で既に把握されていた子供たちにおける再検査 (本格検査 )の最初のデータがある。 これまで、60,505人の子供たちに再検査が実施され、その内の57.8%に結節もしくは嚢胞が見つかった。 最初のスクリーニング(先行検査 )において、これらの(結節もしくは嚢胞が見つかった)割合は、まだ48.5%であった。 これを具体的な数値で表すと:  最初のスクリーニング (先行検査 )においては、まだ何の異常も見つからなかった12,967人の子供たちに、現在、再検査(本格検査 )で、嚢胞と結節が確認されたということである。 しかも、その内の127人に見つかった嚢胞/結節のサイズが非常に大きいため、さらなる解明が緊急に必要とされている。

また、最初のスクリーニング(先行検査)で小さな嚢胞もしくは結節が見つかった206人の子供たちの再検査において、非常に急速な(嚢胞/結節の) 増大が確認されたため、さらなる診断検査が始まった。 目下のところ、これらの子供たちの内11人に穿刺吸引細胞診がなされ、今、その中の4人にがん疾患の ‘強い 疑い’がある。 これら(4人)のケースにおいて、がん疾患の診断が確定されるのであれば、もはや、この事を「スクリーニング効果」で理由づけることはできなくなる。なぜ なら、これは、過去2年間の間に発生した新規症例に関わる問題となってくるからである。

「確かに、原子力災害による長期的な健康影響を評価できるには、まだ時期が早過ぎますが、これらの最初の検査結果は確かに憂慮すべきことです」と、IPPNW副会長、アレックス・ローゼン (Alex Rosen) 医師は説明する。

「これまでのところは、まだ再検査結果の部分的なデータのみが提供されているだけです。 チェルノブイリからの経験に基づきますと、甲状腺がんの疾患数が、さらに長年に亘り増加していくことになるでしょう。」

UN (UNSCEAR)によって出されたデータに従えば、フクシマ原子力災害がもたらす健康影響として1,000件以上の甲状腺がん症例数が予測されている。 一方、UNは彼らの算定を疑わしい仮定に基づかせているため、実際に予期される症例数は、多分、その何倍も高い数値となる。

同時に、甲状腺がんは、放射能汚染が人々に及ぼす健康影響のほんの僅かな一部を提示しているに過ぎない: 過去の原子力事故の体験に基づけば、①白血病、②リンパ腫、③固形がん、④心臓血管系疾患、⑤ホルモン障害、⑥神経障害、⑦精神障害などの罹患率の上昇 が予測される。 さらに、精神的外傷や当局に失望させられ、放置されたという感情が及ぼす心理社会的な影響を無視することはできないということが、付け加えられる。
福島や日本におけるその他の放射能汚染地域の人々が緊急に必要としているのは:

①包括的な医療支援/アドバイス

② それぞれの人々の必要に適合した透明な健康診断の提供

③ その提供された健康診断によって、疾病を早期発見し早期治療できるようにすること

④ 患者が自分たちの健康診断の結果にアクセスできるようにすること

現在、日本では、これら全ての事柄が存在していない。

IPPNWドイツ支部は当局責任者に訴える:

「被災者になおこれ以上の健康被害が発生することを防ぐために、必要な措置を講ぜよ」と。

 

以上

県民健康調査「甲状腺検査(先行検査)」結果概要PDFへのリンク: http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96850.pdf

県民健康調査「甲状腺検査(本格検査)」実施状況 PDFへのリンク: http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96851.pdf

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2866:150110〕

UN原子力機関はフクシマについての真相を否定


IPPNWプレスリリース (2014年12月1日付)

ドイツ連邦国会・科学研究調査局がIPPNWの論評批判を取り上げる

2014年12月1日

(和訳:グローガー理恵

ドイツ連邦国会の科学研究調査局 (der Wissenschaftliche Dienst des Deutschen Bundestages)は、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)のフクシマ報告書を評価する上で、IPPNW医師団による論評批判を取り上げて いる。

科学研究調査局発行の情報文書には、IPPNWによる幾つかの重要な批判点が引用されている。引用されているのは、例えば、①UNSCEAR委員会 の委員構成に、いかに原子力国家(複数)が強い影響力を及ぼしているのか、②透明性に欠けるデータベース、③経営会社-東電による不正問題、④破損された 原子炉(複数)から絶え間なく放出される放射性物質などについてである。また、情報文書は、現在すでに、被災地域の子供たちの間で、予期されなかったほど に多数の甲状腺異常が発見されたことにも言及している。

科学研究調査局は、フクシマに関しての存在するデータに基づき最終的リスク評価を出すことは不可能であり、長期的研究調査が必要であるとの結論に達している。

10月末には既に、9ヶ国から40以上のNGO(非政府組織)が、IPPNWによる論評に基づき、国連総会の担当委員会にUNSCEAR報告書の改訂を要求した*。更に、彼らは、UNSCEARを原子力産業の影響/勢力から脱させてUNSCEARの本来の役割を果たすことができるようにすべきである として、UNSCEARの改革を要求している: UNSCEARの本来の役割とは、すなわち、電離放射線によってもたらされる健康影響について中立的な科学研究調査を行うことである。

「我々は、UNSCEAR委員会の委員たちがフクシマ原子力災害による広範で複雑なデータを評価する上で、かなりの努力を費やしたことを知ってい る。しかし、現在においても今後将来においても”識別可能な健康影響なし”という彼らの結論は、常識では受け入れられないものであり、UNSCEARの信頼性を蝕み破壊するものである」と、UN宛の公開書簡には述べられてある。

その間、明らかになったことは、UNSCEARが今年、日本の外務省から7100万円(約48万3千ユーロ)の金を受け取り、福島の住民に産業や政 府にとって都合のよい情報を提供し「放射線によってもたらされる影響に関しての余計な心配を取り除くようにすること」を頼まれていたことである。

「そのような虚偽の約束で福島の人々は救われません。彼らが待ち望んでいることは、公正な現実に即した情報であり、医療支援であり、何よりも、健康 への、そして健康な環境で生活することへの侵すべからざる人権が認められることです。このことが、フクシマにおける健康影響を評価する上での指針となるべ きでです。;経済や政治の権益ではなく…」

と、IPPNWドイツ支部理事会メンバー、そしてIPPNWによるUNSCEAR報告書の論評の共著者であるアレックス・ローゼン医師は述べる。

原文(独語)へのリンク:

http://www.ippnw.de/startseite/artikel/e8ee7f0f2dc41258e481d137e15cf7d8/un-atomorganisation-leugnet-wahrheit.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2835:141209〕

IPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン(Alex Rosen)小児科医が「IPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析」について説明:”Nuclear Hotseat” ポッドキャストから…(2)


グローガー理恵

6. UNSCEARは非がん疾病および遺伝的影響を無視している

LH:(30:28)  これは、IPPNWがUNSCEASRに対して申し立てた異論表の中で、私にとっては大変に印象深い点だったのですが、非がん疾病と遺伝的影響がUNSCEARによって無視されているということですね。

AR: そうなのです。これは、また別の大きなイシューなのです。長年の間、私たちは、放射線、電離放射線が、「がん」だけでなく、例えば、心臓血管系疾患、緑内障、心理的/神経的影響、内分泌系疾患、甲状腺疾患などのような非がん疾病も誘発するということを知っているのです。

私たちは、これら全てのことを、広島や長崎の犠牲者達や、また、チェルノブイリのリクビダートル(爆発の後に事故処理のために現場へ送り出された人々)からも認識しているのです。そして、このことはUNSCEARによって完全に無視されました。彼らは、あたかも、それを証する科学的証拠が存在しないかのように振る舞っています。しかし、例えば、広島や長崎で低線量被曝をした人々の中に心臓血管系疾患や甲状腺疾患が発生したという放射線による顕著な影響を明らかにしている、多数のスタディーが存在しているのです。

そして、同じことが、例えば、私が前に言及しましたティム・ムソーによる動物の研究調査のような、将来世代における何世代にも及ぶ影響や遺伝的影響に当て嵌まるのです。そればかりでなく、英国の核作業員の子供たちにおける白血病罹患率の増加ー 子供たちの親が放射線被曝した場合ー も同様のことなのです。したがって、これらの影響/結果は簡単に言い逃れができるようなことではないのです。しかし、この事実はUNSCEARによって簡単に無視されました。

7. 核フォールアウトと自然放射線の比較は誤解を招く

LH:(32:13) さらにIPPNWの分析によりますと、UNSCEARは、核フォールアウトと自然放射線とを比較することで誤解を招くようなことをやったということですが…。

AR: これは、UNSCEARや他の機関/組織が度々やっていることなのです。彼らは、「やあ、私たちは、年間1ミリシーベルトか2ミリシーベルトの追加放射線量について議論してるだけのことだから、これが実際に有害だなんてことはあり得ないよ。だって、自然バックグラウンド放射線なんていうのは、もうすでに年間で2ミリシーベルトになるんだから。」と言っているのです。

ここが、彼らの誤っているところなのです。明らかに、自然バックグラウンド放射線というものは、私たちが完全に避けられることができないものです。そして、世界にはバックグラウンド放射線量が他の地域よりも高かったり低かったりする地域があるのです。しかし、研究調査が再三再四、明らかにしていることは、線量が高い地域では実際に、より多くのがん発症があり、線量が低い地域における人々のがん罹患率はもっと低いのです。

そして、地殻内の放射性物質が多い環境に住んでいるために、より多量のラドンガスに晒されている人々における発がん率はより高く、飛行機で旅することが多い人達、大西洋横断飛行は宇宙放射線に照射される度合いが増えますが、このような人達における発がん率は高くなります。より高いレベルの地殻放射線に晒されている人達においても、がん発症率がより高くなります。なぜなら、がん、または、発がんするリスクと被曝線量の相関関係は直線的であり閾値なしの直線で、それはゼロまでに下がります。低い放射線量でさえも、かなりの、がん発症のリスク上昇をもたらすのです。そして、彼らが人々に伝えようとしているような、ある境界値以下だったら安全であると言えるような閾値なんてないのです。

フクシマのフォールアウトのために、年間たったの1ミリシーベルトか2ミリシーベルトの被曝線量を浴びるのだとしたら、あなたは心配することは何もありません、というのは真実ではありません。これは、ある人が、「いいかい。君が一日に一本のタバコを吸っているだけのことじゃないか。それはみんながやっていることだよ。だから心配することなんてないよ」と、言っているようなものです。

でも、健康な生活を営みたい人達、放射線に晒されたくない人達、発がん率の上昇を望まない人達、ー 彼らは、健康で核フォールアウトによる放射能汚染のない環境に住む権利を持つべきです。これは人為的なものであり、防ぐのが可能なことなのです。フォールアウトが起こったために、もうそれを防ぐことができない地域に居る人々には汚染区域を離れて別の場所へ移る選択が与えられるべきです。ーでも、そのようなことは、起こっていないのです。

8. UNSCEARのデータ解釈には疑問がある

LH:(34:32) 次の結論はナンバー8です。私は、これは、見事で控えめな表現だと思うのですが、IPPNWが

UNSCEARのデータ解釈は疑わしいと述べていることです。

AR: はい。 私たちがここで、意味していることは: それは、単に、データと仮定についての基本的な算定に関するだけのことではないし、また単に、彼らの算定の方法に関するだけのことでもない。しかし、最終的には、結論を引き出すことであり、結論として、「オーケー。これで、我々は(UNSCEARは)、何人の死亡者、もしくは、何件のがん症例数が予測されるのかを推算することができる」と、述べることができるのではないだろうか、という意味です。

しかし、UNSCEARはそういったことをしていないのです。彼らは自分達が出したデータについて真剣に考察していないのです。そうです。私たちの言っていることは、両天秤策のようなものです。一方で、私たちはUNSCEARがシステマティックに過小評価していると批判し、他方では、UNSCEARは少なくとも、自分達の手中にあるデータを利用して、それらを、人々が理解できるような方法で解明するようにせよ、と求めているのですから。

これが、住民が晒される集団線量であると人々に告げたところで、それが大いに役立つとは言えません。なぜなら、集団線量の数値をもらったところで、人々は実際、何もすることができないのです。しかし、公にアクセスが可能であるリスク係数を実際に用いて、健康影響はどうであるか、何件のがん症例数またはがん死亡をもたらすかを算定するのです。そうすれば、人々に、実際に何が予測できるのかということを教示することができます。同時に、私たちが前述しましたような要因が理由となって、おそらく、これらの予測や評価はやはり過小評価になるものと、私たちは述べなければなりません。

9. 政府によってとられた防護措置が誤って伝えられている

LH:(36:07) もうひとつ持ち出された批判というのが、政府によって為された防護措置が誤って伝えられているということですが…..。

AR: そうです。UNSCEARは報告書の中で、「もし政府が、あれだけよく住民を防護していなかったのなら、住民の被曝線量はもっと高くなっていたであろう」と言及しているのです。

日本の住民がもっと高い放射線量に晒されたかもしれないということは、明らかに事実ですが、私たちは、日本政府の素晴らしいクリーンアップの努力とか素晴らしい防護への努力とか言って、喝采を送る気にはなれないのです。なぜなら、福島で実際に何が起こったのかと言えばーこれは私たちの意見ではないのです、これは日本の国会事故調によって言明されたことなのです: 「住民を実際には守るべきであったはずの危機管理体制がまったく機能しなかった。完全なる大混乱の中で、住民は何をしてよいものか分からず、手元には何のプランもなく、首相は完全に不意打ちを喰わされた状態であった。例えば、彼は、住民に放射線の拡散状況を知らせることができたはずである、緊急時環境線量情報予測システム(Speedi)の存在を知らなかった。それどころか、ある人々は低線量の区域から高線量の区域に避難させられた。なぜなら政府の上層部において誰一人として、このシステムが存在することを知らなかったからである。」

私たちは皆、安定ヨウ素剤が、核災害によって放出された放射性ヨウ素が甲状腺へと入り込み、甲状腺がんを誘発するのを防ぐことができることを知っているのです。しかし、日本では、集団パニックを防ぐために、ヨウ素剤は住民に配布されませんでした。ですから、災害への緊急対応や避難、避難範囲やクリーンアップの取り組みに関してたくさんの問題があるのに、「全てが完璧でうまくいった。そうでなかったら災害はもっと大変なものになっていたのだ」と、実際に述べるのは、まったく有益なことではありません。

「緊急対応が如何に酷かったのか、何をもっと適切に為すことができたのか」との国会事故調の批判に、私たちも加わるということは、この時点で、まさに適切なことだと感じています。なぜなら、私たちは、50以上もの原子力サイトがあり地震多発国である日本において、核事故はいつでも起こり得る可能性があるという問題について論じているからです。それは一度起こったことなのだから、もう二度と起こるようなことはない、というようなことではないのです。私たちは、チェルノブイリから、フクシマから、ハリスバーグ(スリーマイル島原発事故)から、核災害というはいつでも、どの国でも起こり得るのだということを知っているのです。住民のための安全対策と公衆安全を改善するために、「今回は、全てがうまくいった」と、単に述べるだけのことでは何の役にも立ちません。なぜなら、そうでは、なかったのですから。

そして、明らかに、もっと酷いことになっていたかもしれないのです。そうです。日本は、言わばラッキーだったのです。風が東方に向かって吹いていたために、放射能の80%以上が海の方へと吹かれていったことで、日本の人達はラッキーだったのです。もし風が、たったの一日でも南方向へ吹いたのだとしたら、首都東京は放射性フォールアウトを被っていたことでしょう。これは、それが、どんなことをもたらしたのであろうかと想像したくもないようなことなのです。しかし、実際において、一日だけ風が北西方向に吹いたということが、今、私たちが見ているような、放射性フォールアウトの影響を受けた都市やコミュニティーにおいて、ほとんどの問題を引き起こしているのです。そうです。ある意味で、この核大災害はもっと酷いことになっていたかもしれないと言えます。

10. 集団線量推計値からの結論が提示されていない

LH: (39:27) 最後のポイントは、集団線量推定値からの結論が提示されていないということですが……。

AR: はい。私が言いましたように、UNSCEAR報告書は集団線量推定値について言及しています。これは、UNSCEARは、今後何十年間の間に、日本国民が「何人・シーベルト」に晒されるのかということを述べているわけですが、彼らは、それが人々にとって、どんなことを意味するのか、実際に述べていないのです。例を挙げてみますと: UNSCEARは、日本全国の生涯線量の集団積算線量が【48,000人・シーベルト】になると述べています。合計集団線量(生涯線量の集団積算線量)とは、フクシマ核事故のために被曝した日本における全ての人の生涯における、一人当たりの個人被曝線量の全てを加算したものです。これが【48,000人・シーベルト】なのです。

そして、国際的に認められているリスク係数を使って、これを計算しますと、日本におけるがん過剰症例数が4,000件 から16,000件になるとの結果が出ます。これは、すでに説明しましたように、過小評価されたものをベースにしているのです。

したがって、もし、実際に正しいデータおよび正しい仮定を用いるのだとしたら、この数値は、おそらく、もっとはるかに高いものとなるでしょう。しかし、UNSCEARが表示し算定している数値だけを用いるのだとしたら、4,000件から6,000件のがん症例の過剰発生、2,000件から9,000件のがん死の過剰発生を論じていることになります。

すなわち、もし、フクシマ核災害がなかったら、がんを発病しなかったであろうという人々が、フクシマ核災害が誘因となってがんを発病する、そういった人々の数が16,000人になるであろうということです。また、化学療法、手術もしくは放射線治療を受けて生き延びる人々は多数いるけれども、フクシマ核災害によって誘発されたがんのために死ぬ人々が9,000人もしくは9,000人以上ちょっとになるであろうということになります。このことは、人々に知らされなければならない事柄です。

これは、認めなくてはならないことであり、「いいかい、聞いてくれたまえ。フクシマは大惨事だったのだ。だから、こういった結果を誘発することになるのだ」と、言わねばなりません。そして、私たちができることは、ー ①実際に食物の放射能汚染を厳しくコントロールすること、②人々を、特に若年世帯と子供たちを放射能汚染地域から移住させること、③彼らが放射能汚染区域を離れるために、私たちができる、ありとあらゆる全ての支援を提供すること、④がんや他の疾病を早期発見して、より良い治療が施されるために充てられた健康管理と健康診断を提供することー によって、この数値を低減させるように試みることです。

しかし、これに関しては、ほとんど何も起こっていません。人々は、経済的要因のため、放射能汚染された地域へ帰還することを奨励されている、これが事実なのです。彼らは、これらの地域が空になってほしくないのです。彼らは、この核災害が起こったことを忘れたいのです。彼らは、人々が何事もなかったが如く、いつものように生活し続けていってほしいのです。彼らは、これから何十年間の間に核災害による健康影響が生じることを認めたくないのです。彼らは、人々が、健康被害に苦しむであろうということを認めたくないのです。私が、ここで「彼ら」と呼んでいるのは、核エネルギーからお金を受け取っている、核エネルギーの陰に潜む原子力ムラの政治家たち、核エネルギーを支持する会社、国家の規制機関を指しているのです。

「彼ら」の全てが、この大惨事を隠蔽しており、UNSCEARもこの動きの一部なのです。UNSCEARは「彼ら」を援助しています。 私たちは、科学者として医師として、このことを、すなわち、UNの組織体が実際にこの大惨事を隠蔽して取り繕っていることが、容認できないのです。

ーIPPNWによるUNSCEAR報告書の破滅的分析ー

LH:(42:44) これは、UNSCEARおよび彼らの報告書の破滅的分析ですね。あなたの評価では、UNSCEARによるこのような振る舞いは、意見の相違や彼らが用いているデータの別の解釈から来ているのことなのでしょうか、それとも、核産業を守るためのUNSCEARによる虚言やプロパガンダが多少あるのでしょうか?

AR: これは取り組む上で、とても困難なイシューだと思います。まず、UNSCEARはUNの組織体なのであるということを分からなければなりません。そして、UNの組織体として、UNの加盟国が派遣団員や代表者を、この組織体に派遣しているのです。ここで問われることは:「どの国が代表者を派遣しているのか?」ということです。それは、原子力国家です。それは米国であり、カナダであり、ドイツであり、日本であり、インドで…..あるのです。

これらの国は核エネルギーを保有しており、核プログラムを持てる能力があるのです。そして、明らかに、これらの国には、核エネルギーおよび核能力を保持していく上での既得権益があります。したがって、彼らは、核プログラムから直接出てきた科学者や、これらの核プログラムの中で育て上げられた科学者をUNSCEARに派遣しているのです。それらの科学者の中には、IAEAで専門家として働いてきた経歴のある科学者もいますし、核燃料企業で働いてきた科学者もいます。

ですから、これらの人達が核エネルギーに批判的であるとは言えません。核エネルギーや電離放射線による健康被害に関する批判的論文を発表した何れの科学者もUNSCEARに入るのを認められたことがありません。UNSCEARは、原子力国家の権益を代表する科学者達のクラブなのです。このことに人々は気づかなければなりません。UNSCEARは、独立した研究組織体ではありませんし、一方では、批判的な科学者で成り立っている組織体ではなく、他方では、核を支持する科学者で成り立っている組織体なのです。

UNSCEARは全くの核支持派です。UNSCEARのメンバーには、自分達の国で、一生涯、核産業のために働いてきた科学者達がいます。また、UNSCEARの報告書に引用されている科学者にも、やはり自分達の国で、一生涯、核産業のために働いてきた人達がいるのです。ですから、私は、彼らが虚言していて、プロパガンダをやっているとまでは言いません。しかし、彼らの思考は集団思考であり、彼らは非常に核支持派である組織からの出身者なのです。

彼らは決して異なった見解などを耳にしたことがないのです。そして、彼らは、全く逃れることが不可能であるような特定の意見/判断の偏りを持っているのです。科学において、真の科学において必要なことは、科学者それぞれが様々の異なった意見を持っていて、種々の異なった分野からの科学者達がお互いに論議しあい、実際に、各々の仮説を査定して、それぞれの見解をお互いに評価し合うことです。そうすれば、そこから最終的に出されるものが、可能な限り、真実に近い結論となるのです。ですから、私は、UNSCEARが故意に虚言しているとかプロパガンダを用いているのだとは言いません。しかし、私が言わなければならないことは、UNSCEARの情報と論文は、そのために、誰が勘定を支払っているのか、また勘定支払人はどこから来ているのかを明らかに示しているということです。

ーIPPNWの批判的分析は、メディア、政府、UNSCEARによってどのように受けとめられたか?ー

LH: (45:41) IPPNWの批判的分析はメディアによってどのように受けとめられたのでしょうか?それに対する政府からの反応はありましたか?UNSCEARはIPPNWによる批判的分析の存在を認め、それに対して応答してきたのでしょうか?

AR:  大変に興味深い質問です。私たちは、この批判的分析を公表する前にUNSCEARから連絡を受けました。去年の10月、UNSCEARは、彼らの報告書の一種のエグゼクティヴ・サマリー、ティーザーと言うかプレビューのような類のものを国連総会で公表したのです。それで私たちは、そのプレビューを読んでから、即座にUNSCEARに返答を出して、彼らに告げました。:「さて、聞いてください。私たちは、あなた方のエグゼクティヴ・サマリーを通読したのですが、私たちには、これらの点、イシューに問題があるのです。これらの点を、私たちは批判的に見ているのですが、あなた方は、私たちと意見交換をしたくありませんか?」

そこで彼らが何をしたかと言いますと、実際に、彼らは私たちの言い分を幾らか受け入れたのです。今、私たちは、彼らの最終報告に、幾つかの私たちの表現や言い分を見つけています。しかし結論は、そのまま、以前と同様です。

私たちがUNSCEARに宛てた最初の文書の中で、私たちは、彼らを、こう批判しました。: 彼らは象牙の塔に座っていて、実際に、遠方の他国に住む人々の一人一人が持つ苦悩や個人個人の状況を検討することなしに、これらの人々についての判決を下している。そして、ただ、「心配することはないですよ。全て、大丈夫になるでしょう」と言っているが、実際に福島に行って、そこの人々と話をして、彼らがどのような状況/気持ちでいるのかを尋ねることもしないでいる。

それで、UNSCEARの最終報告書で彼らが述べている結論は同じです。ー「全て、大丈夫になるでしょう」ーでも彼らは、そこに「被災者達が苦しんでいることを認識し、現地の人々の一人一人のストーリーに気を配ることは、明らかに非常に重要なことである」との文章を付け加えているのです。

ですから、私たちは、ある意味では、彼らが応答してきており、私たちの批判をいくらかは取り上げたのですが、彼らの結論においては何も変わっていなかった、と見ています。私たちは、何れにせよ、そのようなことを期待してはいません。また、UNSCEARの組織を弱めるようなインパクトを与えるようなことも期待していません。なぜなら、明らかに、彼らは、批判的思考もしくは、核エネルギーに関する批判点を許さないようなバックグラウンドから来た人達なのですから。

彼らがお金を儲け、このような地位に収まって、UN組織体の中で世界中のあちらこちらを飛び回っていられるのは、彼らが核エネルギーに批判的であるからではなく、彼らが、政府に、こう言ってほしいと頼まれたことを言っているからなのです。

私たちの論文に対するメディアの反応に関してですが: 2つの大きな記者会見がありました。ひとつはニューヨークの国連の前でヒューマン・ライツ・ナウと一緒にした記者会見と、もう一つはベルリンでの記者会見でした。

両方ともかなりよい参加者数でした。私たちの所見に関しての、テレビ出演もありました、新聞記事にもなりました、ラジオでも放送されました。

全体的にみれば、これは、とても科学的で特定なテーマですので、メインストリームメディアには余り受けません。でも、それが私たちの意図ではないのです。私は、今後何年もの間、UNSCEAR報告書が言及され引き合いに出されることになり、人々は常に、「そうだね。UNSCEAR報告者は、ああ述べているよ。こう述べているよ」と言うことになるだろうと考えています。

私たちの意図は、人々にUNSCEARとは別の見解を提供したいということだけなのです。私たちは、「そう…UNSCEAR報告書ではそう述べられているかもしれないけれど、UNSCEAR報告書に書かれていることが実際に真実なのか、私たちの批判と疑問について読んでくれませんか」と言いたいのです。私たちは、私たちが真実を自分達の掌中に握っているのだとは思っていません。IPPNWの組織は余りにも小さすぎますし、日本における何十万人という人達を対象にして、実際に、これらの人々にどのような影響が及ぼされたのかを突き止めていくための非常に大規模な研究調査を行うには、私たちのリソースは余りにも限られています。

しかし、私たちが科学者および医者として、また人間としてできることは、批判的な疑問を提示して問うていくことです。: 「これは本当に信じられることだろうか?これが本当に真実なのだろうか?」と。そして、この私たちの「問い」を理解してくれたジャーナリスト達は、私達が、- ①自分達の患者を、とにかく守りたいと試みている、②公衆衛生に害をもたらしている産業ロビーに立ち向かおうと試みている、③放射能汚染のない健康な世界を促進している、 – 医者達なのである、ということに気づいてくれたのだと、私は考えます。そして、彼らは正しく理解してくれており、私たちのメッセージを広めてくれるものと、思うのです。

私たちは、これから何年か何十年か後に、人々がUNSCEAR報告書を考察するとき、IPPNWによる批判的分析も見つけてくれ、その結果、彼らが、UNSCEARの調査結果について、より批判的で偏らない見解を、おそらく、持ってくれるであろうということを望んでいます。

ー どのようにすれば、この重要な分析に国際的注目が向けられるようになるか? ー

LH:(49:49) この重要な分析に国際的注目が向けられるように援助するために、私たちは何をすることができるでしょうか?

AR: そうですね。 今、私たちは、このIPPNWの批判分析を、この10月に催される国連総会で、UNSCEAR報告書を再検討することになっている様々な国連代表団に、実際に届けようと試みています。

個人、ブロガー、ジャーナリスト、このテーマに関わっている全ての人ができることは、この情報を広め、こう述べることです: 「そう。これがUNSCEAR報告書です。読んでごらんなさい。いろんな情報を見つけることができます。それから、これがIPPNWによるUNSCEAR報告書の批判的分析です。これは、UNSCEAR報告書の限界や問題点がどこにあるのかをよく理解するために役に立ちますよ。」

例えば、あなたの(Libbeさんの)ショーやブログ、Wikipedia記事のようなニュース・アウトレットを通じて、誰かが、この情報をもっと広く知らせることができれば、ですね。ー 私は、この情報が人々に届くことがとても重要だと思います。

この情報をもっと広く知らせることができる人とは、自分のクラス・プロジェクトのための調査をしている学生になるかもしれません。自分達の生徒に何を教えていこうかと探索している先生になるかもしれません。政策を形付けるために調査している政治家たちや彼らの助力者かもしれません。バックグラウンド調査をしているジャーナリストになるかもしれません。または、原子力発電所に近接したところに住んでいて、フクシマで何が起こったのかを知りたいと願っている一般大衆かもしれません。

これら全ての人々は、企業・産業、ロビー団体の利害関係、強力なロビー団体によって色づけされていない、そして、フクシマ・フォールアウトの結果として電離放射線がもたらす健康影響について、実際に理解しようとの意図を持った医師達や科学者達によって注釈された、「UNSCEAR報告書に対する科学的で偏りのない取り組み方」から学び、利することになるでしょう。

LH: 以上はアレックス・ローゼン、ベルリンからの電話でした。彼はドイツ人の小児科医、IPPNWドイツ支部副議長、IPPNW理事会の前副会長です。彼が言及していたUNSCEAR報告書の批判的分析は英語、独訳、和訳があります。

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2779 :140927〕

IPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン(Alex Rosen)小児科医が「IPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析」について説明:”Nuclear Hotseat” ポッドキャストから…(1)


グローガー理恵

Nuclear Hotseat ポッドキャストは、スリーマイル島原子力発電事故を体験し生き延びた女性、リベ・ハレヴィー(Libbe HaLevy)氏によって営まれているポッドキャスト・ステーションです。彼女の番組のメイン・イシューは核問題であり、彼女は核問題に関わる人達や核エ キスパートを番組に招待しインタビューしています。そして、7月22日、ハレヴィー氏はIPPNWのアレックス・ローゼン医師をインタビューし、6月6日 に公表された「IPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析」に関して様々な興味深い事柄を質問しています。

アレックス・ローゼン先生は、それに答えて、科学的/医学的な論文である「UNSCEARフクシマ報告書に対する批判的分析」を、できるだけ解りやすいように説明して下さっています。

Nuclear Hotseat Podcastによる放送、アレックス・ローゼンとのインタビュー(英語)へのリンクです:

ー 6月6日に公表されたIPPNWによるUNSCEARフクシマ報告書の批判的分析*の中で、IPPNWは「UNSCEARによる仮定とデータ は、計画的且つ意図的な過小評価であると見なされなければならない」と批判し、その理由として次の10点を挙げています; Podcastでは、HaLevy氏がAlex Rosen医師に、これらの主要点について、一つずつ取りあげながら質問していきます。:

1 UNSCEARのフクシマ報告書のソースターム推定値の妥当性に疑問を持つ
2 UNSCEARの内部被曝線量の算定に関して深刻な懸念がある
3 フクシマ作業員達の線量評価は信頼できない
4 UNSCEAR報告書は、放射性降下物による人間以外の生物相への影響を無視している
5 胎芽/胎児の放射線に対する特別な敏感性/脆弱性が考慮されていない
6 UNSCEARは非がん疾病および遺伝的影響を無視している
7 核フォールアウトと自然放射線の比較は誤解を招く
8 UNSCEARのデータ解釈には疑問がある
9 政府によってとられた防護措置が誤って伝えられている
10 集団線量推計値からの結論が提示されていない

《(注):*IPPNWによるUNSCEAR報告書の批判的分析の和訳は下のリンクに掲載されています:
https://docs.google.com/file/d/0B9SfbxMt2FYxYV9QZERZRXppaTA/edit?pli=1》

Nuclear Hotseat Podcastから:アレックス・ローゼン医師にIPPNWのUNSCEAR報告書の批判的分析について訊く

(日本語訳:グローガー理恵)

-IPPNWのUNSCEARに対するスタンスについてー

Libbe HaLevy(以下LHと省略): (14:20) UNSCEARに対する、IPPNWの従来の関係やスタンスは、どういったものですか?

Alex Rosen (以下ARと省略 ): UNSCEAR、国連放射線影響科学委員会は、核エネルギーや特にチェルノブイリ核大災害に対する彼らのスタンスを、IPPNWだけでなく、世界中の医師 達や科学者達によって、広く批判されてきています。そして、UNSCEARが、フクシマについて発表したステートメントやプレス・リリースを見れば、また もや、歴史、同じストーリーが繰り返されていることが分かります。私たちは、UNSCEAR報告が、現地で実際に何が起っているかということを明確に示し ているものではないと考えているのです。

IPPNWドイツは、チェルノブイリ以来ずっと、取り繕って核大災害の事実を隠蔽してきているUNSCEARのスタンスを批判しつづけてきました。 現在、私たちは、米国の支部やその他世界の12以上のIPPNW支部と共に、UNSCEARのフクシマに関する報告は間違っている、どこが間違っているの か、実際に指摘しそれを公表するために活動しています。

LH: IPPNWは論評、すなわち、UNSCEARのフクシマ報告書の注釈付き論評を発表しました。まず、この具体的なトピックにはいるまえに、質問ですが、この論評はどのように作成されたのでしょうか?

AR: そうですね。私たちは国際的な組織ですから、このUNSCEAR報告書を課題として研究している人たちが、世界中にいるわけです。主に、アメリカやドイツ の支部がこのUNSCEAR報告書について、Skypeコールをしたり、お互いに関連文献を送ったり、意見を交換しあったりして、世界中からの専門的知識 を得ています。インド、英国、オーストラリア、オーストリア、スイス、ナイジェリアのようなアフリカの支部からです。世界中の科学者達や医師らが電離放射 線の健康被害に関する専門的知識を寄せ合ってまとめ上げること、これは、実際にUNSCEARの調査結果を批判的に見つめ、私たちが誤っている、または欠 けていると見なしたことを公表するためなのです。

1. UNSCEARのフクシマ報告書のソースターム推定値の妥当性に疑問を持つ

LH:(16:28)  UNSCEAR報告書について、IPPNWの分析は、10の具体的な結論を出しています。ーその結論について、それぞれ個別的に見てみることにしましょ う。そうして、UNSCEAR報告に関して、このような結論と批判へと導いた正確な要因について説明して頂きましょう。まず一番目は、「UNSCARのソースターム推定値の妥当性は疑わしい」についてですが…。

AR:  はい。 まず私たちがUNSCEARの報告書を見て、一番最初に浮かんだ明らかな疑問というのは: どのようなファクトをベースにして、フクシマにおける健康被害 の算定をしたのか、ということです。放射能汚染を検査する上で、最も重要なパラメーターの一つは、もちろん、核事故によって、どれだけの放射性核種、放射 能量が放出されたのかということです。

国際的に、いろいろな研究組織/機関による算定もしくは推定評価が公表されています。それらは、放射能放出の数量または規模に関するいろいろな数値 を出しています。しかし、ここで、UNSCEARがやっていることは、最も信用できると主張できるような、最も中立的な情報源からの数値や、最も高い推定 値と最も低い推定値の間にある中央値をとっていないのです。

彼らは日本原子力研究開発機構の科学者達が出した放射能放出量の推定値をとっており、その値は、ノルウェー大気研究所またはオーストリア気象学中央研究所のような中立的ソースによる推定値よりも数倍低いのです。

例を挙げてみますと:UNSCEAR報告書には、セシウム137の推定値が、-放射能汚染の話をする場合、この特定の核種を知っていることは重要な ことですが-【9 PBq(ペタベクレル)】であると述べられてあります。これは、【9千兆Bq】のことです。ノルウェー大気研究所が出したセシウム137の推定値は 【37PBq(ペタベクレル)】ですが、これはUNSCEARの推定値の4倍以上になります。ここで、私たちは、ノルウェーがまったく正しくて、日本原子 力研究開発機構が完全に間違っている、と言っているわけではないのです。

私たちが言っているのは、いろいろな数値が出ているけれど、誰がこれらの数値を公表しているのか、どのような関心を持ってか、彼らの計算にはどれだ け妥当性があるのだろうかと、もっとよく検討しなければなりません。 また、フクシマ核災害の共同責任者として、国会事故調から厳しく批判された組織である日本原子力研究機構からの最も低い数値を使うということは、理に適っ ていることでしょうか?そして、もし彼らの低い推定値をとるのなら、明らかに、その数値を使った計算は、結果として、健康被害をシステマティックに過小評 価していることになります。

2. UNSCEARの内部被曝線量の算定に関して深刻な懸念がある

LH:(19:11)  内部被曝量の計算に関して深刻な懸念があるということですが……。

AR:  はい。これは、UNSCEAR報告書に関する、私たちの分析の中で取り組まれている次のイシューです:内部被曝線量の計算に関する懸念。放射能放出量を 検討した後の次のパラメーターは、放射能放出の規模ですが、これは、どれぐらいの放射能が実際に人々によって取り込まれたのかを調べたいということです。 取り込むということは、大気中に浮かぶ放射性塵を吸入したり、または、飲み物/食べ物で摂取するという意味です。

ということは、日本の特に、東北本州の汚染地域における飲食物の放射能汚染を調査し、どれだけの放射能の量が人々によって摂取されたり吸入されたり するであろうかということを検討することが、とても重要になってきます。そのためには、食物サンプルが必要になってきます。まず一番最初に、みんなの食物 の中にどれだけの放射能が含まれているのかを計算し推定するために、畑やマーケットに行って、実際にサンプルを手に入れてくることが必要です。それから、 人々が食べる量、食物の生産地を仮定する必要があります。

UNSCEARは、まず第一に、内部被曝線量の全部の計算を単一の情報源を基にして、やっています。

さて、独立した検査が為される独立した科学委員会もしくは機関を、この情報源にするということも可能なのですが、UNSCEARは、その代わりに、 内部被曝線量を算定する上で、国際原子力機関、IAEAを単一のソースとしているのです。このIAEAというのは、民間の核エネルギーを促進するために設 立されたことは、誰もが知っていることです。ですから、彼らには、実際にフクシマ核大災害の多くの弊害を明かにすることに大きな関心がないのです。

事実、IAEAのソースは偏っており、内部被曝線量の計算のベースとして、最も確実で信頼できるものとは言えないでしょう。しかし、UNSCEAR は、彼らの算定の単一のソースとして、IAEAの食物データベースを用いているのです。そして、UNSCEAR報告書のどこにも、①どのようにしてこれら のサンプルが採取されたのか、②誰が採取したのか、③どこから採取されたのか、④いつ採取されたのか、まったく述べられていなくて、ただ単に、「スプレッ ド・シート/食物のデータベース」を引き合いに出しているのですが、これらが報告書に現れてくるようなことは全くなく、「スプレッド・シート/食物のデー タベース」は、後になってから、追補のような形で公表されることになっていると、述べられてあるのです。しかしながら、このデータがどこから出たのか、そ の出所を確かめたいと願っている私たちのような研究者や独立した科学者達は、未だに、それにアクセスができない状態でいるのです。

ですから、これらの食物サンプルが、どれだけ確実な根拠を持ったものであったのかということをチェックする、またはコントロールする方法がないわけ です。私たちが分かっていることは、IAEAのデータベース(その中のある部分はWHOによって公表されている)によって示された最高レベルの放射能汚染 濃度値が、日本政府によって示された数値よりもはるかに低いということです。

ですから、私たちは、(UNSCEARが)このデータベースを唯一のソースとして用いることで、内部被曝による影響が、実際に、過小評価されている ことを非常に懸念しているのです。さらに付け加えて言うならば、UNSCEARが算定のベースにしている仮定、 ①人々が、どれだけの量の放射能汚染地域からの食物を摂取しているのかの仮定、②フクシマでは、食物の放射能汚染検査やコントロールが、どれだけ為されて いるのかの仮定 ……これらの仮定が、とにかく間違っているのです。

3. フクシマ作業員達の線量評価は信頼できない

LH:(22:40) IPPNWによるUNSCEAR報告書の論評で挙げられている別のイシューは、フクシマ作業員らの線量評価に信頼が置けないということですが…。

AR:  はい。また、これも、どのようなソースをベースにして算定するのかというポイントに関わることです。フクシマ作業員の集団について検討するとき、彼らの 健康影響を算定評価するために、作業員達に関する独立した調査データを用いるのが当然だと思うのですが…。しかし実際は、そうではなく、UNSCEAR は、単独的に東電からだけの数値をベースにしているのです。でも考えてみて下さい。東電は、核災害で破産した以前には、福島第一原発を運営していた会社な のです。東電は、日本で何基かの原子力発電所を所有している会社であり、核エネルギーで、何十億ドルでないとしても何百万ドルもの金額を稼いでいた会社で すから、この大災害をこれ以上酷く見せることには、明らかに興味を持っていないのです。

それどころか、私たちが見ているのは、東電が自分達自身で人々を雇うのではなく、しばしば下請負業者を雇っていることです。そして、これらの下請負 業者は、また更に別の下請負業者を雇うのです。ですから、結局は、東電の中で東電のために、実際に汚い仕事をやっているのは、東電の規則/基準とは、ずっ とかけ離れたところにいる人達になってしまうわけです。そうなると、これらの下請負業者たちが、放射能汚染に晒された作業員達の被曝線量を適切に測定する 安全基準を固守しているのか、それを実際に確かめることが非常に難しくなってきます。

線量計が紛失していた報告や、線量表示をごまかすために線量計を鉛のカバーで被っていた報告や、下請負業者のグループがやくざとの関係があるとの報 告がありました。ですから、これらの段階で、たくさんの疑わしい取引や頽廃があるわけです。それで、作業員たちの健康影響を算定評価する上で、使用可能な 独立性のあるデータはなし、政府からのデータは何もなし、独立した研究者達からのデータは何もなし、ただ東電自身のデータだけで、東電からの数値を単独の ソースとして用いることは、再び、システマティックに健康被害の過小評価へと導くことになります。

4. UNSCEAR報告書は、放射性降下物による人間以外の生物相への影響を無視している

LH:(24:43) IPPNWが出した別の結論は、UNSCEAR報告書が、放射性降下物による人間以外の生物相への影響を無視しているということですが…。

AR: はい。 これがどういうことを意味するのかと言いますと、私たちは明らかに人間だけについて議論しているのではなく、植物や動物についても 議論しているのだということです。そして、私たちがチェルノブイリから何を学んだのかと言えば、特に動物集団においては、もっと確実に、健康影響や何世代 にも亘った影響を証明することができるということなのです。ー 核災害が発生した時に生きており、居合わせた動物だけでなく、その動物の子孫や将来の世代においても証明することができるのです。

そして、蝶やネズミにおいては、それらの何世代にもわたる影響を研究する上で、明らかに、モルモットでない人間集団よりも、より良いチャンスに恵ま れているのは明白なことです。それで、科学者達が何をやってきたかと言いますと、ティム・モソーのまわりに大変にアクティヴな米国のグループがあるので す。ティム・モソーとは科学者で、何年もの間、チェルノブイリに旅して、鳥を捕まえたり、異なった種類の動物や、放射能汚染における、それらの健康影響を 調査し、生殖能力や突然変異に関する、幾つかの非常に有意な健康影響を発見することができたのです。このような知識の全てが現に存在しているのです。彼ら の研究は、ピアレヴューされたジャーナルで発表されており、インターネットで、それを調査することもできるのですが、そのことに関してUNSCEAR報告 書には出てこないのです。

そして、UNSCEAR報告書は、人間以外の生物相に関する実際のデータが存在しないため、このことについて考慮しなかったと述べているのです。で すから、明らかに私たちはこのことを批判しているわけです。ー 蝶に何らかの変化が起ったからと言っても、同様なことが人間にも起るとは言えませんがー少なくとも、このことは薬理学研究や他の健康研究から分かっている ことであり、そこからある推論を出すことができるのです。そうして、こう言えるでしょう:「さて、もしこのことが全ての種類の哺乳動物に起こるのだとした ら、人間に起ることだってあり得るのではないかな?」と。 特に、人間集団において立証することが非常に困難である何世代にも亘る影響が、動物集団におい ては見ることができ、証明することができるのです。このことは、少なくとも、考えるべき事柄であり、考慮すべきことです。

ここで言うべきことは: そう、動物にはこのような影響を見ている、植物にも、このような影響を見ている。ということは、人間にも同様の影響が期待 されるのではないかということです。この時点において、私たちは未だ、その影響がどのぐらいのスケールであるのかは分かりません。しかし、少なくとも、こ の研究をするための論拠は十分にあるのです。でも、そうしたことは起っていません。これが私たちIPPNWの批判なのです。私たちがUNSCEAR報告書 の批判的分析の中でやっていることは、要するに、ティム・モソーと彼のグループの幾つかの調査結果を列挙して、UNSCEARに、これらを今後のパブリ ケーションには含めてくれるようにと頼んでいるのです。

5. 胎芽/胎児の放射線に対する特別な敏感性/脆弱性が考慮されていない

LH: (27:26) 次の問題は、胎芽/胎児の放射線に対する特別な敏感性/脆弱性が考慮されていないということですが….。

AR:  そうです。 これは、小児科医である私にとって大変に重要な問題です。人間は、放射能に対して同じようには反応しません。放射能には、確率的な影響があ ります。これは、ある一定の放射線量もしくは、ある一定の放射能量を定めて、それが有害であり、それ以下であれば安全であるといった意味ではないのです。

そういったことではありません。それは、事実、喫煙について議論する時と似ています。「タバコ2本は大丈夫だけど、3本吸ったら死んじゃうよ」なん て、到底言えないことです。これは、あなたが、どれだけのチャンスを賭けるのかに、かかってくる、それだけのことです。タバコを多く吸えば吸うほど、また は、放射線への接触が多ければ多いほど、実際に病気になり、がんになるリスクが高くなっていきます。

これは、明らかに喫煙のようなもので、その人の遺伝的背景、その人自身の免疫システムに左右されます。ですから、大変によい免疫システムを持ってい る人は、放射線や他の毒素による細胞の欠陥を修復することが、むしろ得意ですし、(例えば、被曝した後などに)実際に発がんする可能性も低いのです。

例を挙げれば、免疫欠乏のある人達や免疫機能を低下させる薬物治療を受けている人達、そして、放射能の影響に対してはるかに敏感であり、まだ完全に 免疫システムが発達していない子供たちが存在するのです。そして、このことが考慮されていないのです。特に胎児は放射能に対して最も脆弱です。

これは、1950年代における研究から分かっていることです。大人は、後になってがん発症することなしに、胸部レントゲン照射を受けることができま す。しかし、母親の胎内の胎児は、放射能もしくは電離放射線に対して、とても敏感であり、従来のレントゲンからのような、ほんのわずかな放射線量であって も、その子が、がんになるリスクが、かなり相当な度合いで、高まってしまうのです。ですから、妊婦が腹部へレントゲン照射を一回受ければ、小児がんの発症 のリスクが50%増えることになります。これは、ただ一回のレントゲンの話ですが、私たちは、フクシマのもっと遥に高い線量について話しているのです。

ですから、全ての人間は同様であり、全ての子供達は同様であり、胎児や5歳の子供の間には何の違いもないと言うことによって……UNSCEAR報告 書は、 私たちが過去数十年にわたり蓄積してきた、この放射線生物学の知識を完全に無視しているのです。彼らは(UNSCEARは)、私たちが、子供、とりわけ胎 児が放射線に対して非常に敏感であることについて、まるで無知であるかの如く振る舞っているのです。この点は、私が特に小児科医として強く感じていること です。このことは修正されなければなりません。私たちが、放射線量レベルに関する自分達の勧告を、実際に最も脆弱な集団である胎児をベースにする代わり に、健康な大人、健康な男性をベースにするなんていうことは、あってはならないことなのです。

~~~~~to be continued…….次回の(2)へと続きます

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2774:140924〕

n-tv オンライン記事: 驚くべき国連のフクシマ報告書- IPPNW ドイツ支部 アレックス・ローゼン(Alex Rosen)博士の論評


グローガー理恵

4月 2日、国連放射線影響科学委員会( UNSCEAR )は、 東京電力福島第1原発事故の健康への影響に関する最終報告書を公表しました。報告書は、「フクシマでの被曝によるがんの増加は予想されない」と述べています。

「UNSCEARの最終報告書」については、福島民報が報道しています。http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2014/04/post_9745.html
報告書の概要が、国際連合広報センターのサイトにプレス・リリースとして、日本語で掲載されています。http://www.unic.or.jp/news_press/info/7775/

この国連のプレス・リーリースは、国連科学委員会(UNSEAR)について下記のように説明しています。:

UNSCEARについて

1955年に設置された原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、電離放射線源のヒトの健康と環境への影響を広範に検証するこ とを目的としている。UNSCEARの評価は、各国政府や国連機関が電離放射線に対する防護基準と防護のためのプログラムを作成するための科学的基盤と なっている。

世界中の80名以上の著名な科学者が、福島第一原子力発電所の事故に伴う放射線被ばくの影響を解析する作業に取り組んだ。彼らがとりまとめた解析結 果は、2013年5月に開催された委員会の年次総会で、27の加盟国により、技術的かつ学術的に精査された。科学者らは全員、本評価に参加するにあたり、 利益相反の有無を申告することを義務付けられた。」
80人の著名な科学者達がUNSCEARのフクシマ報告書作成に取り組み、彼ら全員が、利益相反の有無を申告することを義務付けられということですが、そ うだとすると、このことを、彼ら全員に利益相反の問題がなかったものと理解すべきなのか、その点が不明確なように思えるのですが…。

何れにせよ、このUNSCEAR最終報告書に対して、IPPNWドイツ支部のアレックス・ローゼン(Alex Rosen)医学博士が、非常に批判的な論評をドイツメディア「n-tvオンライン」に寄稿しています。ローゼン博士は、「フクシマ大災害の影響結果につ いての論議は、それぞれ一人一人の人間が持つ、放射能汚染のない健康な環境に住めるという権利に関する問題であるのだ」と、人間が持つ当然の権利である放 射能汚染のない環境に住めることの重大さを訴え、論評を結んでいます。
そのローゼン医師の論評を和訳して、ご紹介させて戴きます。なお、論評を和訳することについては、ローゼン博士より許諾を頂いております。

原文へのリンクです。:

http://www.n-tv.de/panorama/Der-erstaunliche-UN-Bericht-zu-Fukushima-article12588996.html

n-tvオンライン-2014年4月2

死亡者って? どの死亡者のこと?  驚くべき「 国連のフクシマ報告書」

論評寄稿者: アレックス・ローゼン(Alex Rosen)医学博士―IPPNW ( 核戦争防止国際医師会議 )

( 和訳: グローガー理恵 )

国連の報告書が明白にしていること: 日本の原子力事故が、より多くのがん死亡者をもたらすことはない。これに対し、IPPNW医師団は「この報告書は、産業に好意的な原子力国家のメッセージと全く同様に、被曝がもたらす健康被害を故意に軽視し、被災者を侮っている」との見解を表明している。結局のところ、フクシマ大災害は全く収束していないのである。

今週の水曜日、原子力放射線の影響に関する国連科学委員会 ( UNSCEAR )は、フクシマ核大災害についての報告書を発表した。報告書の中で、筆者たちは「フクシマ原発事故による放射線被曝と関連づけられるような、がん発生率に おける著しい変化 (増加)が、今後あるとは予想されない」と主張している。我々、IPPNW医師団は、このような (UNSCEARの) 過小評価への試みを批判する。「がん」という病気は、その出所の表示を掲げていないこと、そして「がん発病」の理由を明らかで疑問の余地のないような、た だ一つの原因に帰せることができないこと、― これらの事実が、いかなる因果関係をも否認する上で、都合よく利用されているのである。我々は、この種の策略を既に、タバコ産業やアスペスト企業から知っ ている。

UNSCEAR報告書の作成者たちは、まるで、どんなに僅かな放射線被曝量であっても、がん発病のリスク上昇を伴うことが、一般的には知られていな いかのように、振る舞っているのである。報告書の筆者たちは、これらのリスクについて被災者達に率直に、はっきりと説明する代わりに、疑わしい推定や選択 的な(食物の)抜き取り検査、そして修整軽減された被曝線量をベースにして、「フクシマの人は、ただ怯えただけで、ことが済んだ」との、産業に好意的な メッセージを広めようと試みている。原子力大災害の結果、何万ものがん症例が予測されていることを「重大ではない」と称することは、被災者を侮っているこ とである。

UNSCEAR報告書は、被災者集団における被曝線量を算定する上で、IAEAの食物サンプリングを決定的なベースとしている。― この「IAEA」という機関は、「世界中におよぶ原子力利用の促進」を目標に設立されたものである。 好ましくない独立した食物抜き取り検査は、それに対して、無視されている。放射能総放出量を算定する上で、報告書の筆者たちは、独立した研究所による明ら かに、より高い放射能総放出量の算定を鑑みることなしに、日本の原子力当局のスタディーによる推定値を使っている。フクシマ現場作業員たちの被曝線量推定 には、大部分が、物議を醸す、大災害を引き起こした重大責任者である福島原発の運営者、東京電力からのデータが直接使われている。

フクシマについての論議に終止符を打つことは不可能

このUNSCEAR報告書によって、原子国家は、フクシマを巡る論議に急いで決着をつけようと試みている。しかしながら、フクシマ原子力大災害は未 だに、全く終わっていないのである。日々、何百トンもの放射性廃棄物が海洋へと流れ込んでいっている。除染作業は行き詰まっている。破損された原子炉(複 数 )から放射性物質を救出する危険な作業は、これから未だ何十年も続いていくことであろう。放出されたセシウム-137の半減期はおよそ30 年である。原発事故から、たった3年後に、原子力大災害がもたらす長期的な影響結果について最終的な報告書を作成したいと願うこと、これは非科学的なこと である。被災地域の人々が必要としているのは、信頼できる情報であり、教示であり、援助であり、被災者を惑わせる虚偽の希望ではない。

去年の秋、アナンド・グロバー (Anand Grover ) 国連特別報告者は、健康への権利/人権を課題とした、フクシマの状況に関する報告書を公表した。彼は報告書の中で、「被災者達の健康への権利および健康な 環境に住む権利が、計画的且つ意図的に拒否されている」と、公然と非難している。被災者達は、自分たちの医療データへのアクセスを持たず、セコンドオピニ オンを求める可能性もなく、汚染地域を去りたいと意を決しても、何の援助も得ることはなかった。公平でバランスがとれ、よく調査され、被災者への共感に満 ちたグローバー氏の報告書を読むと、UNSCEAR報告書との際立った違いが、極めてはっきりとしてくる。

フクシマ大災害の影響結果についての論議は、経済的および政治的な利害関係に服さない医学的調査研究の独立性に関するだけの問題ではない。それは、それぞれ一人一人の人間が持つ、放射能汚染のない健康な環境に住めるという権利に関する問題でもあるのだ。
以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye25975:140425〕

IPPNW Peace& Health Blogより: フクシマ核災害から3年後


グローガー理恵

IPPNW (International Physicians for the Prevention of Nuclear War-核戦争防止国際医師団会議)のPeace&Health Blogに「3.11」を記念した、IPPNW共同議長であるティルマン・ラフ医学博士の記事が掲載されていますので、それを和訳してご紹介させて戴きます。ラフ博士は腐敗した「原子力ムラ」、避難者の生活の状況を無視し被曝リスクを軽視する無責任な施策を打ち出す政府を厳しく非難し、フクシマを巡る様々な問題に触れています。

訳注は訳文の下に述べられてありますのでご参照ください。なお、後に訳を訂正する可能性もありますので、その旨どうぞご了承ください。

原文へのリンクです。:

http://peaceandhealthblog.com/2014/03/11/fukushima-three-years-on/

フクシマ核災害から3年後

著者: テイルマン・ラフ(Tilman Ruff)

2013年3月11日

(抄訳: グローガー理恵)
世界で最も複雑な原子力発電所災害は、3年経った今も続いている。そして、これから何年もの間、災害は引き続いていく。一日あたり、凡そ1000トンほどの、制御不能な地下水の流れが現場へと流れ込み続けている。; 日々、400トンの水が損壊された原子炉と建屋に流入し、そこで放射能汚染されていく。その一部は収集処理される。 ー 今、430,000トン以上の放射能汚染された水が、約1,000基の当座しのぎにつくられた貯水タンクに収容されている。その中の多くの貯水タンクは溶接されるのではなく、ボルトで継目が締められており、タンクの中にどのぐらいの水量が収容されているのかを表示する水位計もなく、何度も漏水を繰り返している。

先月、2つの弁が誤って開けっ放しになっていたことと、ひとつが機能不全だったことが起因となって、1リットルあたり2億3千万ベクレルのベータ放出体 ( 主にストロンチウム-90、2億 3 千万ベクレル/リットルは飲料水における最大許容量の3.8百万倍に相当)が含まれている100トンの放射能汚染水が漏出するという事故があった。放射能は多数の経路を経て土壌に漏出していっており、当然、海洋にも漏れ出していっている。2013年10月16日、台風26号「ウィファ」に日本が襲われていた間、タンクを囲む堰や12基の貯水タンクから汚染水が溢れたことが報告された。2013 年10月25日、マグニチュード7.3の地震が発生したが、震源地はフクシマから300キロ以内のところであった。

フクシマ現場周辺の放射線は増加している。現在、32,000人以上の作業員達が現場のクリーンアップ作業に巻き込まれている。比較的被曝度が軽い熟練労働者の供給が益々不足していっており、殆どの現場作業員達は十分に訓練されていなく、多重下請けを通して雇われた日雇い労働者である。いまだに日本には、原子力産業労働者のための、国によって設定された放射線被曝登録制度がない。

2014年2月中旬、242体の使用済核燃料集合体と 22体の新核燃料集合体が、破壊された4号機原子炉上にある損壊した4号機使用済燃料プールから取り出され近くの敷地内にある共有プールへ移送さた。; 今年の末までには、さらに1,533体の燃料集合体が4号機プールから移送される予定である。原子炉の廃炉作業はまだ始まっていない。

およそ150,000人の人々が未だに避難したままの状態にある。その多くは未だに、「もし、または、いつ」以前の我家に帰還できるのかどうか分からないままでいる。メンタルヘルスや薬物乱用問題、家族の崩壊、そして自殺が報告されている。しかし、それに関する確かなデータは殆ど存在していないのである。日本では2006年以来、学童の平均体重が少し減った一方、福島においては遊ぶことや屋外運動することが少なくなったため、子供達の肥満率が上昇するという結果をもたらしている。核災害以前の5年間において、福島県の肥満児の割合が全ての都道府県の中で一番高かったのは、一つの学年においてだけであった。2013年までには、福島県の肥満児の割合が、(幼稚園-5歳、小1~小6、中1~中3、高1~高3の )13ある学年の内6つの学年においてトップを占めており、残りの7つの学年においては2位から4位の間にランキングしている。

2013年の11月および12月、政府機関は、避難者が放射能汚染されたホームタウンへ帰還することを促進することを目指すとの声明を公表した。この施策には支払いが含まれているー恵まれない不利な立場にある人々にとって、これは事実上の買収である。ー帰還する者には9万円 (US$10,000)が支払われることになる。

また政府は、個人が放射線被曝量のレベルを放射線量測定によって測定することを提案している。この提案は、表面的には個人のことや場所によって被曝線量の値に差異があることを考慮した分別あるやり方のように思えるのだが、その結果が有害となることが予測できる。なぜなら提案は、比較的に環境放射線量の高い地域への帰還を容易にし奨励することを目論んでいるようであるからだ。そして、被曝線量を最小化することや、人々が過度な放射線量リスクに直面することのないような環境に住むための援助を保証するという政府や東電の責務を個人に転嫁しているからである。

この政策の中身は実質上、これからも当局からの否認や誤報、放射線リスクの軽視が続いていくということである。未だに公文書は頑なに、100ミリシーベルト以下の電離放射線被曝量が健康に有害であるということは証明されていないと力説し、国民に誤った情報を与えている。原発災害から3年後、災害の急性期は終ったと宣言されたが、日本の国家施策は未だに、放射線による健康被害を最も受けやすい子供たちや胎児も含めた全市民にとって、*年間追加積算放射線量20ミリシーベルトまでの被曝は許容できるということをベースにしている。年間5ミリシーベルトという被曝量が、白血病に罹った労働者の労災補償保険を受ける資格を決定する基準値となっている事実があるにもかかわらずである。

3年前にIPPNWによって勧告された、ー ➀著しく放射能汚染された地域の住民と福島第一原発の全作業員の包括的な登録作業、➁被曝の早期評価と長期的な(生涯にわたる)健康モニタリングー がまだ実施されていないし、これから実施されるような見込みもない。我々はまた、健康保護対策や健康モニタリングの対策を、どこに住民が居住しているのかとは無関係に、住民の被曝線量レベルに基づいて、適用するようにと勧告した。これは重要なことである。なぜなら、放射能汚染は、隣接する千葉県や群馬県、茨城県、宮城県、そして栃木県へと広まったからである。これらの県の中には、福島県内の地域よりも放射能汚染度が、より高い区域もある。しかし、災害関係の健康モニタリングやサポートは未だに、原発災害が発生した当時福島に住んでいた住民達だけのためにあるのみである。

ただひとつ実施されている包括的な健康管理は、原子力災害が起こった当時18歳以下だった福島の子供たちのための、2年ごとに行われる超音波検査のみである。1999年に茨城県の東海村で発生した核燃料加工施設での事故後に設けられた、年間に1ミリシーベルト以上の被曝量を受けたかもしれないという地域の住民のために実施されている無料の健康診断とは違い、 系統/計画立った無料の包括的な健康状態のフォローアップ(事後検査 )が行われていない。

現在も進行中のフクシマ核災害への対応と日本における原子力の行く末は、世界的インパクトをもたらす可能性を持った、日本市民そして日本の環境にとって重大な歴史的転機を意味するものである。

日本は核災害の結果として本質的に一夜で、国の電力生産量の約⅓を生産する54基の実動原子力発電炉すべてを停止させた。省エネルギーおよびエネルギー効率プログラムが驚くほど欠乏していること、日本の高度な技術からして、国内の違った地方で違った**商用電源周波数が使われていること、人口密度が非常に高く地理的にもコンパクトな国において国内の電力送電網が不足していることーこういった事実があるにもかかわらず、日本は、原子力による発電を完全に断ってから、この3年間うまく対処してきたのである。

工業生産は実質的に持続されてきており、複数の( 過去3回あった )暑い夏の間、電力不足はなかった。(原子力発電が停止したために)増えたガス使用の発電は、エネルギー効率と再生可能エネルギーへ投資することにより容易に相殺することが できるばかりでなく、相殺必要量以上の余剰の電力量を生産できるようになる。日本は原子力を必要としないということが十分に証明されたのである。日本国民の圧倒的多数が原子力の段階的廃止を望んでいる。

しかし、極度に結託し腐敗した、福島第一原子力災害と誤った災害の管理処置に責任のある産業や政府、原子力規制機関を含んだ「原子力ムラ」は、公衆安全よりも、被災者の移住・賠償金を最小化することや企業・官僚の利益を優先した。そして、自分達の陣営の砦をしっかりと固め、いつものようにビジネスを大いに営んでいこうと企てている。

新しい原子力規制庁の大部分がベテラン・メンバーで成り立っていて、彼らは、喫緊の優先課題である福島第一原発現場の状況を安定化させることや犠牲者のため/環境的損害に対処することよりも、原子炉再稼働のために大半の時間を費やしてきている。「原子力ムラ」は安部晋三政権によって支援幇助されている。安部政権は、以前の政府が公約した脱原発政策を捨て、原子力発電炉を再稼働させることに熱心であり、誰にでも原子炉の輸出を促進し、核兵器利用可能の分離されたプルトニウムを、もっともらしい弁明もなく、蓄積している。

2013年9月、安部首相は恥知らずにも、福島第一原発の状況は「アンダーコントロール」であり、放射能汚染水は港湾内0.3平方キロメートル範囲内で「完全にブロックされている」と、国際オリンピック委員会 (IOC)を安心させるための嘘をついた。IPPNWの医師たちや学生たちは、我々がこれからやってくる東京オリンピックを使って役立たせていくことを、確実にしていくべきである。: フクシマでは何が起こっているのか、何が起こらなければならないのか、何が起こっていないのか、―これらに世界の焦点が向け続けられていくようにすることによって、である。

以上

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訳注:

*年間追加積算放射線量: 年間積算放射線量から自然放射線量を除いた、年間の人工の放射線量。

** 日本の商用電源周波数: 原文には「voltage=電圧」となっていますが、国内で異なっているのは電圧ではなく商用電源周波数ですので、そのように訳しました。日本国内には、交流電源の周波数について、東日本の50Hz以下と西日本の60Hzの相違があります。(ソース: Wikipedia )

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2578:140322〕

IPPNWドイツ支部:「システマティックに核災害の結果を過小評価」


グローガー理恵

IPPNWは、この記事の中で、当局によって汚染区域に設置された放射線モニタリング・ポストの殆どが実際の線量よりもはるかに低い線量を表示して いることや健康管理当局が被災者の健康被害を故意に過小評価しようとしている、いわゆる「システマティックな核災害結果の過小評価」を暴露しています。

なお、この記事を和訳することの快諾をIPPNWドイツ支部のプレス担当者、ヴィルメン氏から得ることができましたことをお伝えしておきます。

原文(独語)へのリンクです。http://www.ippnw.de/startseite/artikel/440830c468/systematische-verharmlosung-der-fol.html

 IPPNWプレス・リリース 2014年 2月 17日

システマティックに核災害の結果を過小評価 

原子力大災害後の日本で生きること

(和訳:グローガー理恵)

原子力大災害から3年経っても、やはり日本当局の秘匿、もみ消し、否定が続いている。しかも、不都合な事実の秘密保持が、新制定された日本国家秘密 保護法によって、更に容易くなり(秘密保持できる)範囲が広まった。もみ消しは既に、当局設置の放射線モニタリング・ポストで始まっている。

彼らは環境放射線量をシステマティックに縮小表示しているのである。「3,141ある当局設置の放射線モニタリング・ポストの80パーセント以上が 低すぎる局所線量を表示していて、実際の放射線量の半分から⅔までの量だけしか表示していないことが度々ある」と、環境ジャーナリストのアレクサンダー・ ノイロイター(Alexander Neureuter)氏は、彼のフクシマ地域での調査について報告している。一方、日本の環境省は放射線測定装置が構造上の欠陥を示していることを認め た。: 装置の測定センサの周りに、間断なく電力を供給するための鉛の蓄電池が設置されたのだった。しかし、鉛は最も放射線遮断性のある物質なのである。
それに加えて、放射線による健康被害がシステマティックに過小評価されている。原発事故当時、福島県に住んでいた18歳未満の子供たちや青少年たち 360,000人全員が甲状腺検査を受けている。しかし、診察担当の医師達は、病歴、触診、超音波検査を含めた全ての診察を、たったの3分以内に行うよう にと指示されていたのである。このような時間制限は、綿密な診察検査をする上で、全く現実に即していないことである。

検査結果は詳細に解説されておらず、診察結果や超音波画像、または医師のコメントなどのような診断証書が両親に渡されることは全くない。他の医師の セコンドオピニオンを求めることが予め考慮に入れられているようなことはなく、しかも、開業医達は被災した子供たちの診察検査を行わないようにと文書で指 図されていたのである。この次の超音波検査(再検査)は、一定の順番間隔により2年後にやっと実現されることになる。「結節の検出と次の再検査の間の期間 が2年間だというのは余りにも長すぎる」と、アレックス・ローゼン博士(Alex Rosen-IPPNW)は断言する。

2014年2月 7日、日本で、現時点における甲状腺検査のデータが公表された。2013年 12月 31日までに269,354人の子供および青少年が検査を受けた。: 受診者の47パーセントに甲状腺結節と甲状腺嚢胞が検出された。33人の子供達が甲状腺癌に罹っていることが確認され、さらに41人に悪性疑いがある。こ のことは、有病率 (検査時点の疾患数)が、住民100,000人中13.0人であることを意味している。日本の18歳未満の子供たちにおける通常の甲状腺-癌腫の罹病率 (発病者数)は住民100,000人中0.35人である。「それゆえに、福島における甲状腺癌症例数は憂慮すべきことだ」と、ローゼン博士は述べる。

2014年の4月から実施されることになっている集団スクリーニングの第2ラウンドが、実際の新症例数を決定することを初めて可能にすることになる。

更に、批判的コメントとして、ー 例えば、❶固形腫瘍-白血病-リンパ腫のような他の悪性疾患、❷白内障-内分泌疾患-心臓血管疾患のような非悪性の健康被害、❸被曝した集団における遺伝的影響などの診察検査が適切に為されていないこと ー を付け加えておく。

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/

IPPNWドイツ支部:フクシマの健康被害-日本とIAEAは「秘密保持」に賭ける


グローガー理恵:ドイツ在住

「ちきゅう座」より転載

去年の大晦日、「IAEAと秘密指定条項 福島、福井 共有情報非公開に」とのヘッドラインで、東京新聞が衝撃的なスクープ報道をしました。IPPNWドイツ支部がこの報道に対する反応を表明していますので、それを和訳してご紹介させて戴きます。大変に印象的なのは、IPPNWドイツ支部議長代理ののアレックス・ローゼン博士が、「IAEAのような『ロビーグループ』が広範囲に及び情報の自由(知る権利)を侵害をしていることを阻止する責務は、公衆、メディア、そして政治にある」と言明していることです。私は、公衆に責務があるという言葉に重みを感じました。

原文へのリンクです。:
http://www.ippnw.de/startseite/artikel/7ec97d9a04/japan-und-die-iaeo-setzen-auf-geheim.html

IPPNWドイツ支部プレスリリース (2014年 1月 14日付)

日本とIAEA (国際原子力機関)は「秘密保持」に賭ける
フクシマ原子力大災害の健康被害

(和訳: グローガー理恵 )

医師団体IPPNW(核戦争防止国際医師会議)は、公式な相互協力覚書が、IAEA(国際原子力機関)と福島県、福井県との間で交わされたとの報道を聞くにあたり、ただならぬ懸念を抱いている。去年の大晦日の日、1)東京新聞は、その相互協力覚書からしかるべく条項を引用している。: 「IAEAか県か一方が要求すれば、共有している情報を非公開にできる。」すでに、このIAEAとの覚書は、福島県が2012年の12月、福井県は2013年の10月に、それぞれ締結している。

協力覚書は、福島県においては、県立医科大学による健康影響調査のデータ、そして県内での核廃棄物処理方法を重点にしている。福井県においては、秘密指定条項が、地域にある原子力発電所における原子力分野の人材育成に適用されている。

「我々医師にとって、IAEAが、チェルノブイリで『被害もみ消し』をしてから何十年間経った今、今度は日本において、フクシマ原子力大災害の結果を故意に過小評価し秘匿しようと試みているという事実は、受け入れることができないことだ。これらの『ロビーグループ』の広範囲に及ぶ情報の自由(知る権利)への侵害を阻止する責務は、公衆、メディア、そして政治にある。」と、アレックス・ローゼン(Alex Rosen)医学博士/小児科医(IPPNWドイツ支部議長代理)は述べる。

この協定覚書は、1959年にWHO(World Health Organization-世界保健機関)とIAEAとの間で結ばれた2)附従契約 (独語:Knebelvertrag)を思い起こさせる。その附従契約によると、WHOは、チェルノブイリやフクシマのような核災害がもたらす医学的な影響結果について、IAEAから独立した独自の調査研究することや独自の報告をすることができなくなっている。

「今日に至るまで、日本政府も東電も、放射能被曝や現在のフクシマ事故現場処理作業員の健康状態に関する信頼の置けるトレース可能なデータを公表していない」と、3)最近フクシマ地方を訪れたIPPNWのアンゲリカ・クラウセン( Angelika Claußen)女医は述べる。「ほとんどの現場作業員は下請業者に雇われていて、当局のモニタリング統計(作業員の被曝量/健康状態などに関するデータ)には完全に含まれていない。」

2013年 11月、福島医科大学は甲状腺診断に関する現下数を発表した。: 検査を受けた400,000人の子供の内26人が甲状腺癌に罹患していることが確認され、289,960人の甲状腺に結節もしくは嚢胞が見つかった。

上記の情報のソースはここ(hier)

以上

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1)東京新聞 2013年 12月 31日朝刊 オンライン記事へのリンク: http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013123102000114.html

2)附従契約とは: 1959年に結ばれたIAEAとWHOの協定のことを意味する。-協定文の和訳へのリンク:http://www.crms-jpn.com/doc/IAEA-WHO1959.pdf

3)アンゲリカ・クラウセン( Angelika Claußen)女医のフクシマ訪問に関する記事:http://chikyuza.net/n/archives/39868

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2518:140117〕